2012年07月20日

ドナ・サマー『キャッツ・ウィズアウト・クロウズ』(84年)

Donna Summer:Cats Without Claws(84年)

83年、アトランティック・シティーで行われたコンサートの終了後、ドナは会場に残っていた500人ぐらいのファンと交流をしていました。その中にエイズに罹った男性ファンがいて、ドナに自分のために祈ってほしいとお願いし、ドナはそれに快く応じたそうです。その行為を見ていた他のファンが「そんな事は偽善に過ぎない」と発言、ドナがそれはどういう意味かと尋ね、そこからそのファンと2,3言葉を交わしました。熱心なクリスチャンとなっていたドナは「神様はこの世界を愛しているから独り子(イエス・キリスト)を遣わした」と言ったそうですが、この発言にそのファンが怒り出し、そこからさらに感情的な言葉の応酬になっていったそうです。その中でドナが「エイズがゲイ・コミュニティに広まったのは無謀な生活をしているからだ」と言った事で、その場にいた他のゲイのファンたちも怒りだしてしまった…。

これが、いわゆるドナの「エイズはゲイに対する天罰」発言の顛末のようです。

この件に関しては、「死後もデマを流布され続ける歌姫ドナ・サマー」というサイトに詳しくまとめられてますので、是非ご一読下さい→http://matome.naver.jp/odai/2133731638499210701?&page=1

本当の真実というのは映像や音声が残っているわけではないので検証のしようがないのですが、どうも感情的になって出た発言が切り取られ象徴的な言葉として流布されたというのが真相のようです。全く違うと言えば違いますけど、トシちゃんの「俺ぐらいビッグになれば…」と冗談めかして言った言葉が切り取られて伝えられたのと似ているように思います。ドナの場合、ボーン・アゲイン・クリスチャンとなっていた下地があり、ゲイ・コミュニティからの乖離が囁かれている中での騒動でしたから、余計にそういう発言をしてもおかしくないと思われ、彼女の弁明には一切耳が傾けられなかった模様ですね。人気に陰りが見え始めたアーティストには往々にして逆風ばかりが吹いたりしますが、まさにその典型的な例かもしれません。未だにこの発言に対する誤解が一部で解けていないというのがまた怖いところですし…。

ゲイ・コミュニティという大きな後ろ盾を失ったドナ。丁度時代も変革期を迎えており、エンターテイメント界の勢力地図も大きく変わろうとしている頃の出来事でした。


そんな「事件」が起こった翌84年に発売されたのが今回ご紹介のアルバム『キャッツ・ウィズアウト・クロウズ』。ドナにとって12枚目のオリジナル。アルバムになります。

前作の成功を受けてプロデュースはマイケル・オマーティアンが続投。丁度ロサンゼスル・オリンピックが開催された年でもあり、日本盤LPの帯には「ドナはいつだって愛の金メダリスト!」のキャッチがついてるのが微笑ましいというか何と言うか(smile)。

アルバムからの第一弾シングルに選ばれたのは80年代前半のオールディーズ・ブームを反映したのかドリフターズのカバー曲である「ゼア・ゴーズ・マイ・ベイビー」。
ドナにはリチャード・ハリスの「マッカーサー・パーク」やバリー・マニロウの「恋はマジック」等カバー・ヒットを放った実績があり、バラード・ナンバーを華麗なディスコ・ビートに改変するのはお手の物でしたが、こちらも現代的なポップ・ロック風アレンジを施して、ドナらしさ溢れるゴージャスなバージョンに仕上げて聞かせてくれます。PVも良い出来ですよね。





オープニングを飾るのはセカンド・シングルとなったデジタルと生音の融合感が素晴らしいハイパー・ポップス「スーパーナチュラル・ラブ」。続いてブギウギ調のノリの良いメロディが楽しい「イッツ・ノット・ザ・ウェイ」、「ゼア・ゴーズ・マイ・ベイビー」を挟んでファニーなメロディをレゲエ調の節回しを交えて歌うドナがこれまたファニーな「スザンナ」、不穏で近未来的なサウンド、預言者めいたドナの語りからポップに転調していく構成が面白い「キャッツ・ウイズアウト・クロウズ」でA面終了。
B面はメロディアスなデジタル・アーバン・ポップで離れていく恋人への思いを切なく歌い上げる「オー・ビリー・プリーズ」、うっすらとアラビアンなメロディも絡めるデジタル・グルーブ・ナンバー「アイズ」、泣きのサックスをフューチャーしたバラードでドナの情感溢れる熱唱が胸に迫る「メイビー・イッツ・オーバー」、マイアミ・サウンド・マシーンを彷彿とさせるライトなラテン・ポップ「アイム・フリー」、そして2年連続でのグラミー、ベスト・インスピレーショナル・パフォーマンス賞を受賞する事になるイエスへの祈りと自己の救済をテーマにしたバラード「許して」で美麗に幕となります。







私、前述のようにこのアルバムは『恋の魔法使い』や『情熱物語』等とほぼ同時期に手に入れて聴いていたのですが、当時はその3作に中にあって一番印象の薄いアルバムでございました。サウンドもポップ・ロックとしては平均的でしたし、楽曲も飛びぬけてキャッチーな作品があるわけではなかったので、数回聞いてもういいかなぁという感じだったんですよね。
そんな訳で今回久しぶりにじっくりとこのアルバムに耳を傾けてみたのですが、意外に個々の楽曲に個性があって、全体的に高止まりというかトータルでの完成度はかなり高かったんだなぁと認識を新たにいたしました。聞けば聞くほどに味が出てくる典型的なするめタイプのアルバムだったのですね。味が出る前に食べ止めちゃってたんだなぁ、私(反省)。

そんな『キャッツ・ウィズアウト・クロウズ』でございますが、ファースト・シングルの「ゼア・ゴーズ・マイ・ベイビー」はポップ21位、R&B20位という成績に終わり、アルバムもポップ40位、R&B24位と米国デビュー以降の最低記録を更新。…売れなかったのですね。ドナ自身前作よりもシンプルなサウンドを目指したと発言していますが、若干手堅過ぎ、でしたでしょうか。また前作のように鋭く社会問題に切り込む等の強いメッセージ性も後退してしまい、アルバムの核となる部分がぼやけたように感じられたのかも知れません。

また先に時代の変革期と書きましたけど、84年はマイケル・ジャクソンの『スリラー』が猛威を揮い、マドンナやシンディ・ローパーが頭角を現し、プリンスが「ビートに抱かれて」を特大ヒットさせる等、次世代のスターたちが大活躍をしていた年。ドナもこの『キャッツ・ウィズアウト・クロウズ』でヒットを逃しましたけど、同じく70年代から活躍してきたポップ・クイーンであるダイアナ・ロスやオリビア・ニュートン・ジョンも、翌85年リリースの『イートゥン・アライブ』と『麗しの瞳』で大コケしてしまいますから、新たな時代の波にはやはり勝てなかったのかなとも思います。

様々なトラブルに巻き込まれ、とうとうヒットのミューズからも見放されてしまったドナ。次のアルバムがリリースされるまでに3年のインターバルが必要となってしまいました。


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Cats Without Claws

A-1 Supernatural Love
A-2 It's Not The Way
A-3 There Goes My Baby
A-4 Suzanna
A-5 Cats Without Claws

B-1 Oh Billy please
B-2 Eyes
B-3 Maybe its over
B-4 I'm Free
B-5 Forgive Me

チャートデータ
アルバム
Pop 40位/R&B 24位
シングル
「There Goes My Baby」:Pop 21位/R&B 20位
「Supernatural Love」:Pop 75位/R&B 51位



マイケル・オマーティアンの代表作を2つ。
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2012年07月13日

ドナ・サマー『情熱物語』(83年)

Donna Summer:She Works Hard for the Money(83年)

ドナ・サマー、83年リリースの11枚目のオリジナル・アルバムです。

80年代に入っていまひとつ波に乗り切れない活動が続いたドナ。ゲフィンが用意したプロデューサーであるクインシー・ジョーンズとのプロジェクトも大きな成果を残せませんでしたが、このレコーディングにストリングス・アレンジとして参加していたマイケル・オマーティアンとドナは次のアルバム製作に取り掛かります。マイケルは70年代前半からミュージシャン兼プロデューサーとして活躍しており、80年のクリストファー・クロスの大ヒット・アルバム『南から来た男』でグラミー賞も受賞、ポップ・ロック系の手堅いサウンド作りで定評のある人物でした。

前作のうっぷんを吹き飛ばすようにドナは全曲でソングライトに参加、マイケルや夫ブルース・スーダノの助力を得てアルバムは完成します。が、またしてもゲフィンはこのアルバムの発売を拒否してしまうのです。度重なる期待外れの成績にゲフィン側のハードルは相当に高いものになっていたのでしょう。鉄壁の布陣で製作したクインシー作品もダメだった訳ですから、首脳陣が次の作品へ容易にGOサインが出せなかったというのも、何となくわかる気はいたします。

丁度その頃、80年から調停中だったドナがカサブランカ・レコードを相手に起こしていた契約解除の起訴についての判決が下されます。それは契約として後1枚作る予定だったアルバムをカサブランカからリリースしなければならないというものでした。話し合いの末、ゲフィンはマイケル・オマーティアンと録音したこの音源を提供することに同意。ゲフィンからすれば自社で発売する予定のないお蔵入り音源だからどうぞお好きにという感じだったのかもしれませんが、何とも皮肉なことにこれが80年代ドナ・サマーの最大のヒット・レコードになってしまうのです。

元々この題名だったのか、それともカサブランカ(実際発売されたのは当時カサブランカを吸収していたポリグラム・レーベル傘下のマーキュリー・レコード)に売られた時点で作り変えたのかはわかりませんが、そのタイトルが「She Works Hard For The Money」=「彼女はお金のために懸命に働く」だったのは、何とも出来過ぎですよね。

邦題は、(多分担当者が寝ずに考えたのでしょう)「情熱物語」と命名されたこの曲、ドナのポップ・ロック路線の完成形とも言えるタイトでキャッチーな楽曲、社会の底辺で働く女性にスポットを当てた喚起力のある歌詞、それをわかりやすく表現して更に女性の解放を訴える秀逸なPVも功を奏して発売と共に大ヒット。ポップでは3位、R&B部門では「バッド・ガールズ」以来2曲目となる1位を獲得する大成功を収め、グラミーの最優秀女性ポップ歌手部門にもノミネートされました。





アルバムはその「情熱物語」をオープニングに、ホームレス等の貧困問題を取り上げた「ストップ・ルック・アンド・リッスン」、イエス・キリストをテーマに84年のグラミー・ベスト・インスピレーショナル・パフォーマンス賞を受賞する「恋に裏切り(He's a Rebel)」、女性の人権問題について歌った「ウーマン」、子供の失踪事件を扱った「ピープル・ピープル」等、当時の世相を反映した社会問題を多く取り上げ、そこに英国のティーンによるレゲエ・バンド、ミュージカル・ユースをフューチャーしたトロピカルな「アンコンディショナル・ラブ」、東京の帝国ホテルを舞台に繰り広げられるエキゾチックなロマン・ミステリー(smile)「トキオ」、ゴスペル歌手マシュー・ウォードをフューチャーした爽やかで力強いデュエット・ナンバー「愛を心に」、スピリチュアルな雰囲気も漂わせる「恋の確信」等のラブ・ソングを配した構成になっています。







このアルバムは批評家筋からの評価も高く、一般的にも好評を持って迎えられましたが、私個人としては前作『恋の魔法使い』と同時並列的に聴いてしまったので、やたら完成度の高かったクインシー・プロの作品との比較で、タイトル曲が飛びぬけている以外はあまり強くアピールしてくる部分が正直なかったんですよね。今回改めて内容を吟味する機会を得て、そのメッセージ性や特に後半の楽曲の味わい深さ加減等、ちょっと印象を改めている次第です。

ドナはこのアルバムのリリース後、以前ご紹介した「ホット・サマー・ナイト」と題されたコンサート・ツアーを行います。そこでドナは彼女のキャリアに致命的な疵をつけてしまう「エイズはゲイへの天罰」発言をめぐる騒動に巻き込まれてしまうのですが…その顛末は次回に。




フランク・シナトラの「L.A. Is My Lady」のPV。クインシー・ジョーンズ・プロデュースのこの曲、クインシー人脈の豪華スターに混じってウェイトレス姿のドナが登場!


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She Works Hard for the Money

A-1 She Works Hard For The Money
A-2 Stop, Look And Listen
A-3 He's A Rebel
A-4 Woman

B-1 Unconditional Love
B-2 Love Has A Mind Of It's Own
B-3 Tokyo
B-4 People, People
B-5 I Do Believe (I Fell In Love)

チャートデータ
アルバム
Pop 9位/R&B 5位
シングル
「She Works Hard For The Money」:Pop 3位/R&B 1位
「Unconditional Love」:Pop 43位/R&B 9位
「Love Has A Mind Of It's Own」:Pop 70位/R&B 35位



ドナの5曲入りお手軽PV集。「情熱物語」と「アンコンディショナル・ラブ」が入ってます。
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2012年07月12日

ドナ・サマー『恋の魔法使い』(82年)

Donna Summer:Donna Summer(82年)

82年にリリースされたドナ・サマー10枚目のオリジナル・アルバムです。

80年にゲフィン・レコードに移籍したドナでしたが、第一弾となる『ワンダラー』が微妙な成績に終わり、続いて製作した『アイム・ア・レインボウ』もレーベル側の厳しい判断でお蔵入りとなってしまいました。長年ドナとコンビを組んできたジョルジョ・モロダーとピート・ベロッティはここでドナのプロデュースからの撤退を余儀なくされ、変わりにゲフィンが用意したプロデューサーがあのクインシー・ジョーンズでした。

当時のクインシーと言えばマイケル・ジャクソンの『オフ・ザ・ウォール』や自身のアルバム『愛のコリーダ』をヒットさせて大御所にして旬のプロデューサーでもあるという飛ぶ鳥を落とす勢いの真っ只中。
そんなクインシーにプロデュースを依頼して承諾させたゲフィン側の意気込みというのも相当のものがあったろうと思います。またその仕事を受けたクインシーもこれが特別な仕事だという認識をもっていたのでしょう、マイケルのアルバム以上に豪華な布陣を導入してアルバムを制作、高品質のブラコン・サウンドでドナの新たな世界を構築することに成功いたしました。レーベルもこれなら間違いなし!と太鼓判を押したんじゃないかと思うんですが…結果は残念ながらアルバム・シングルとも前作を下回る成績しか残せず、本作もかつての勢いを取り戻す起爆剤とはなりませんでした。

人気稼業の場合一度離れてしまったファンの心を取り戻すのは容易ではありませんし、またそういう流れの中にある時は何をしても上手くいかないというのは往々にしてあること。80年代最初のステップを踏み外してしまったというのはやはりドナにとって大きかったのかなと思います。また常にバーサイタルな才能を示しながらもやはりドナに求められていたのはディスコ/ダンス・クイーンとしての側面であり、新たなブラック・コンテンポラリー路線というのは思いのほか高いハードルであったのかもしれません。

まぁそんな訳で大きな成功には至らなかった本作なので、世間的にもほとんどこのアルバムに対する評価というのは聞こえてこないのですが、個人的には昔からこのアルバムは大好きで、ドナの代表作のひとつだと思っております。





軽快なリズムとホイッスルの音が高揚感を煽るブラコン・ファンク「恋の魔法使い」、ジェームズ・イングラムをフューチャーしたアーバンなメロディの「ミステリー・オブ・ラブ」、情念薫るミディアム・バラードで後にハートもカバーした「ウーマン・イン・ミー」、オリンピックのテーマ曲にしたらはまりそうな総大なワールド・ミュージック・テイストの「ステイト・オブ・インディペンデンス」、アメリカン・ドリームを歌った米国賛歌「リヴィング・イン・アメリカ」、ブルース・スプリングスティーン製作で一時期はデュエットにする案もあったという暴走ロックン・ロール「プロテクション」、ダイナミックなドナの雄叫びから厚みのあるホーンをフューチャーしてスタイリッシュに展開していく「ハーツ・ジャスト・ア・リトル」、おどろおどろしいオープニング(smile)のマイナーなミディアム・クルーヴ・ナンバー「愛をかなえて」、そして摩天楼に沈んでいく夕日を眺めているかのように美しくジャージーなスタンダード・ナンバーの「ラッシュ・ライフ」(ストリングス・アレンジは名匠ジョニー・マンデル!)という全9曲。







クインシー・ジョーンズのプロダクションに共通して言える事ですが、30年経過した今でもほとんどその音作りは古びることがなく、クインシーを始めロッド・テンパートン、デビッド・フォスター、マイケル&ダニー・センベロ、スティーブ・ルカサー、リチャート・ペイジ、ヴァンゲリス等のヒット・メイカー達が提供した楽曲もそれぞれに完成度の高い仕上がりになっています。

「ステイト・オブ・インディペンデンス」はバック・コーラスにマイケル・ジャクソンを始め、ライオネル・リッチー、スティービー・ワンダー、ディオンヌ・ワーウィック、ケニー・ロギンス、ブレンダ・ラッセル、クリストファー・クロス、マイケル・マクドナルド等錚々たるメンバーが参加しており、クインシーにとってこの時の経験が後の「ウィ・アー・ザ・ワールド」に活かされたと言われています。
大人数でのコーラス参加でそれぞれの声が識別出来るわけでもなく、正直クレジットで名前を見ても当時は実感が湧かなかったのですが、本当に最近のYou-Tubeは凄いもので、その時のレコーディング風景というのが現在はアップされて見る事が出来ます。これを見ると、改めて凄かったんだ!って思っちゃいますね(smile)。





ただしこの作品、曲も魅力的だしその雄大なスケール感も素晴らしいのですが、シングル・ヒットするには若干不向きなタイプの楽曲。また第一弾シングルとなった「恋の魔法使い」も、サビがコーラス主体であり、ドナの出番は後半になるほど少なく(ほとんど合いの手のみに)なるためどこか聴いていて物足りない印象があるんですよね。構成も面白いしトータルでの完成度は非常に高いのですけど、「ドナ・サマー」のシングルとしては若干アピールし難い楽曲だった事が、大きな成功につながらなかった原因かもしれません。

またドナは本作について「時々私はクインシー・ジョーンズのアルバムで歌っているように感じた」と述べているのですが、ドナとクインシーの間で「クリエイティビティ」=「創作権」に関する衝突というのが度々起こったらしいのです。

それまで楽曲のソングライトを中心にアルバムの制作に深く関わってきたドナと、プロデューサーとして当然のようにアルバム製作に対して主導権を握ろうとするクインシー。従来は気心のしれたメンバーと自由に意見交換しながらアルバムを作り上げていた(想像です)ドナにとっては、かなり窮屈なレコーディングとなってしまったようです。またレコーディングの時に丁度ドナは第三子を妊娠中であり、体調が万全でなかった事も一因となっているのかもしれません。

両者の間にはしばらく遺恨が残ったようで、クインシー人脈が中心となった「ウィ・アー・ザ・ワールド」にドナが参加しなかったのも、この辺りが影響してるのかなと邪知してしまいますね。

質の高いサウンドに最高のヴォーカル、時代とは上手くリンク出来ませんでしたけど、80年代のブラック・コンテンポラリーを代表する傑作だと思いますので、是非リイシューされた暁にはお聞きになってみていただきたいと思います。

本当にこれが売れなかったのは…残念。




「Sometimes Like Butterflies」→「恋の魔法使い」のB面に収録されたアルバム未収録曲です。ダスティー・スプリングフィールドのカバーもあり。


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Donna Summer

A-1 Love Is In Control(Finger On THe Trigger)
A-2 Mystery Of Love
A-3 The Woman In Me
A-4 State Of Independence

B-1 Livin' In America
B-2 Protection
B-3 (If it)Hurts just A Little
B-4 Love Is Just A Breath Away
B-5 Lush Life

チャートデータ
アルバム
Pop 20位/R&B 6位
シングル
「Love Is In Control」:Pop 10位/R&B 4位
「State Of Independence」:Pop 41位/R&B 31位
「The Woman In Me」:Pop 33位/R&B 30位



ダスティー「Sometimes Like Butterflies」収録のレア曲集。
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2012年07月11日

『アメリカン・アイドル シーズン11 トップ10 ハイライツ』(12年)

American Idol Season 11: Top 10 Highlights(12年)

小ネタですけど。

アメリカン・アイドルのゴージャスで突っ込みどころ満載だったフィナーレから早一ヶ月と半月。
病を押して出場し見事優勝に輝いたフィリップ・フィリップスは無事に大手術を終えて回復を見せ、準優勝したジェシカ・サンチェスにはあの人気番組グリーからオファーがあって、秋から始まるシーズン4に数話ゲスト出演することが決まりました。

従来準優秀者にはアルバム・リリースと報酬17.5万ドルが約束されていたそうなのですが、昨今の番組の人気低迷からの厳しい台所事情を反映し、今期からアルバム・リリースの保障はなくなりシングル・リリースの報酬として3万ドルが支払われるのみと契約が変わったそうなので、ジェシカにとっては本当に何よりなご褒美&ビッグ・チャレンジになる事と思います。フィナーレのステージでジェニファー・ホリデイにボコられた経験(smile)を活かして、グリーでのあっと驚くような下剋上を期待したいところです。

あちらでは先週7日からラスト10人に残ったコンテスタンツによる毎年恒例のアメリカン・アイドル・ツアーが始まったようですが、タイミングよくうちにも注文しておいたシーズン11のCDが到着いたしました。リリースされたのはツアー・メンバー10人の代表曲を収録した『ハイライツ』と、コンテスト中に披露されたデュエット・ナンバーだけを集めた『デュエッツ』、そしてフィリップ、ジェシカ、ジョシュア、ホリー、スカイラーのトップ5それぞれの単独作品という合計7種類。私がチョイスしたのは『ハイライツ』とフィリップの単独作ですが、先に『ハイライツ』のみが到着したので本日はそちらをご紹介させていただきます。

収録作品は以下の通り。一口コメントつきです。

1.It's A Man's Man's Man's World (Joshua Ledet)
ジョシュアは文句なしのこれ!

2.I will Always Love You (Jessica Sanchez)
ジェシカ…やっぱりどうにもこうにもホイットニーと比較しちゃう…

3.Volcano (Phillip Phillips)
まだ回復前の録音?もっさりしててパフォーマンスに元気がないんですけど。

4.Gunpowder & Led (Skylar Laine)
スカイラーのリトル・ダイナマイトぶりが遺憾なく発揮された好ナンバー。
(※スカイラー、うちの妻には「渡辺絵美」と呼ばれています…。)

5.Master Blaster (Deandre Brackensick)
軽やかさがいいなー、ディアンドレ。

6.The Power Of Love (Hollie Cavanagh)
ホリー…これもなぁ、歴代の歌手だちが凄いからなぁ…

7.New York State Of Mind (Erika Van Pelt)
エリカ様、なかなかどっしり聴かせてくれてます。

8.Whole Lotta Love (Elise Testone)
エリーズ姐さん絶賛妖しく暴走中。

9.Everything (Colton Dixon)
コルトン他に良い曲なかったっけ?

10.A Song For You (Heejun Han)
ステージでの巫山戯た態度さえ思い出さなければ悪くは、ない…。

まぁ卒業制作みたいなものですし、プロの作品という訳ではないので、良い事も悪い事も含めて今シーズンの思い出を噛みしめながら楽しむのが正解といったところでしょうか。
とりあえず正式なレコード・デビューが決まっているのはフィリップだけですし、これが最後という人もいるでしょうけど、多方面での皆さんの活躍を期待したいところです。

既に来シーズンの話題としては、相変わらずのジェニファー・ロペス降板説の他に、審査員候補としてアダム・ランバートの名前が上がってるとのこと!実現したらそれはそれで面白いかもしれませんね。


せっかくなのでコンサートの映像を(あまり画像やアングルはよくありませんが…)。



相変わらず弾けきらないジェシカ、器用なディアンドレ、随所にDIVA感が出てしまうジョシュア…。




gleeか!って話しですが(smile)。最初の大女子小女子の4ショットが笑撃です。そしてどーしてここにる?、ヒュージョンみたいな…。



posted by Suzu at 21:45| Comment(2) | TrackBack(0) | POPS系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月07日

ドナ・サマー『アイム・ア・レインボウ』(81年/96年)

I'm a Rainbow(81年/96年)

ドナ・サマー、81年に製作されたアルバム。

…なんですが、ご存じのように未発売となり96年にCDでリリースされるまで長らくお蔵入りとなっていた作品です。

80年に鳴り物入りでカサブランカから新興のゲフィン・レコードに移籍をしたドナでしたが、その第一弾である『ワンダラー』は従来のような爆発的ヒット作品にはなりませんでした。

前回、『ワンダラー』については若干の方向性の迷いとWアルバムを続けてきた事でのインパクト不足があったように書きましたけど、プロデューサーであるジョルジョ&ピートも同じように考えざるをえなかったようで、ニューウェーブ的な要素も取り入れていた前作からよりヴォーカル・オリエンティッドな作風に路線を修正、黄金時代に習い再びのWアルバムとして作品を完成させました。ところがゲフィン側はこのアルバムの発売を拒否。ドナに別のプロデューサーと組んでアルバムを制作するように指示します。

そしてゲフィンが用意したプロデューサーがあのクインシー・ジョーンズ。ドナはクインシーとアルバムの制作に入り、ここで70年代前半から続いていたジョルジョ、ピート、ドナのトロイカ方式による制作体制は終焉を迎え、これ以降このチームで作品がつくられることはありませんでした。

ジョルジョ・モロダーはその後も「フラッシュダンス」や「トップガン」、「ネバー・エンディング・ストーリー」等主に映画絡みのヒットでスーパー・プロデューサー/作曲家の地位を堅持。ピート・ベロッティは残念ながらこれ以降表舞台に出る事は少なくなってしまいましたね。

お蔵入りとなった作品がまるごとリリースされるというのはかなり珍しい例だと思いますけど、幸運な事にこの作品はその珍しい例として96年に突如CDとして商品化されました。実際のWアルバムがこの曲順だったのかはわかりませんので、とりあえず各曲を簡単にご紹介したいと思います。
制作陣はジョルジョ、ピート、ドナの他にお馴染みのハロルド・フォルターマイヤーにキース・フォーシー、前年にドナと結婚したブルース・スーダノ、そして新たにシルヴァー・コンベンションの「フライ・ロビン・フライ」を作曲し、80年代以降は映画やテレビのスコア制作で活躍したシルベスター・リーバイが加わっています。





1. I Believe (In You)
「ヘブン・ノウズ」で共演したブルックリン・ドリームスのジョー・エスポジットとのデュエットによる南国風味のブラコン・ナンバー。
2. True Love Survives
マイナーでメロディアスな曲調が印象的な作品。
3. You To Me
『オール・システムズ・ゴー』収録の「ジェレミー」等に通じる温かみのあるポップ・バラード。
4. Sweet Emotion
80年代ならではの音使いが今となっては貴重な(smile)ポップ・ヴォーカル作品。
5. Leave Me Alone
ブロンディの「コール・ミー」(ジョルジョ制作)をドナで再現してみました、と言うような双子的位置関係にあるロック・ナンバー。
6. Melanie
きらめくシンセ音が印象的でどこか懐かしさのある軽快なポップ・ナンバー。
7. Back Where You Belong
アーバン・テイストのポップなブラコン作品。
8. People Talk
こちらも若干のアーバン風味を味付けにした軽快なシンセ・ポップ。
9. To Turn The Stone
バブパイプ(?)の音色を全編で奏でるアバの「アライバル」的な民族系ナンバー。このアレンジにインスパイアされたのか元々の予定だったのか、ソロ活動を始めたアバのフリーダが翌年この曲をカバーしてアルバムに収めています。
10. Brooklyn
ブルース・スーダノとの間に誕生した娘ブルックリンちゃんの誕生讃歌。
11. I'm A Rainbow
93年に発売されたベスト盤で先にお披露目されたアルバムのタイトル・トラック。切々と優しい情感を込めて歌い上げるポピュラー・ヴォーカル・ナンバーで、これはゲイ・ピープルに向けられた歌という解釈も出来るのかなと。
12. Walk On (Keep On Movin')
レゲエ風味のポップ・ナンバー。
13. Don't Cry For Me Argentina
ミュージカル「エビータ」の大人気曲のカバー。堂々としたドナの美しいヴォーカルが印象的。こちらも93年のベスト盤で初お目見えしました。
14. A Runner With The Pack
ラップと言うか語り風なヴォーカルがドナならではのアーバン・ポップ作品。
15. Highway Runner
映画「初体験/リッジモント・ハイ」のサントラに収録されて82年に発表された作品。「ホット・スタッフ」のテンポをぐっと抑え目にしたようなロック・ナンバー。
16. Romeo
こちらも映画「ブラッシュダンス」のサントラに収録されて先にリリースされた作品。オールディーズ・テイストのファニーなポップ・ロック曲。
17. End Of The Week
ドライヴィング・ミュージック系の明るいテイストのポップ・ナンバー。
18. I Need Time
威風堂々としたヴォーカルが印象的なクロージングに相応しいナンバー。80年代ドナの定番となるより厚みの増した歌声はここで完成された感じ。





前述したようにヴォーカルに重きをおいたポップ・ナンバーが並んでおり、完全にディスコ・クイーンから脱却したドナの姿が窺えます。曲調もバラエティに富んでいて楽しいものなのですが、今まで革新的なダンス・ナンバーで時代の先を行っていたドナ・サマー・チームの作品としては、いささか(言葉は悪いですが)凡庸な印象になってしまったのかもしれません。加えて前作『ワンダラー』が思った様な成果を上げられなかった事もゲフィン側の厳しい評価を後押ししたのかなと思います。

アルバムはお蔵入りとなりましたが、本作からは「ハイウェイ・ランナー」と「ロミオ」がサントラ曲としてリサイクルされました。また他のアーティストによって以下の楽曲がレコーディングされ、リリースされています。

ザ・リアル・シング:「アイ・ビリーブ・イン・ユー」(81年)
フリーダ:「トゥ・ターン・ザ・ストーン」(82年)※アバのフリーダ
ジョー・エスポジット:「トゥ・ターン・ザ・ストーン」(83年)
エイミー・スチュワート:「ユー・トゥ・ミー」「スウィート・エモーション」(83年)



…しかし、ゲイ・コミュニティーの象徴でもある「レインボウ」をタイトルに冠したアルバムが発売中止になるというのも、どこかその後のトラブルを予兆しているように思えてしまうんですよね。これは少し、考えすぎでしょうか。

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I'm a Rainbow

1. I Believe (In You)
2. True Love Survives
3. You To Me
4. Sweet Emotion
5. Leave Me Alone
6. Melanie
7. Back Where You Belong
8. People Talk
9. To Turn The Stone
10. Brooklyn
11. I'm A Rainbow
12. Walk On (Keep On Movin')
13. Don't Cry For Me Argentina
14. A Runner With The Pack
15. Highway Runner
16. Romeo
17. End Of The Week
18. I Need Time

チャートデータ
チャート入りなし。



それぞれ「To Turn the Stone」収録。
『I'm a Rainbow』もいつの間にか廃盤で馬鹿値に…。
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2012年07月06日

ドナ・サマー『ワンダラー』(80年)

Donna Summer:The Wanderer(80年)

80年にリリースされたドナ・サマー9枚目のオリジナル・アルバム。

80年、ドナはそれまで所属していたカサブランカ・レコードとの契約解消を求める起訴を起こします。
ディスコ・レーベルとして70年代後半に大躍進を遂げたカサブランカでしたが、ディスコの終焉とともにその勢力にも衰えを見せ始め、同80年には社長二ール・ボガードを不正会計と売上不振により解雇。

そんなカサブランカのお家騒動の中、ドナが新天地として選んだのが、70年代にローラ・ニーロやCS&N、ジャクソン・ブラウン等を発掘し、アサイラム・レコードの社長としてリンダ・ロンシュタットやジョニ・ミッチェル等を手掛けたデビッド・ゲフィンが新たに設立したレコード会社、ゲフィン・レコードでした。
やり手のゲフィンはジョン・レノン、エルトン・ジョン、エアロスミス等錚々たる顔ぶれと契約を交わしていきますが、そのゲフィン・レコードの第一号契約アーティストがドナであり、初のレーベルとしてのリリース・レコードが『ワンダラー』でした。当時のドナの勢いからすればこれは当然の事と言えるかもしれませんね。

プロデューサーは従来と同じジョルジョ・モロダー&ピート・ベロッティが務め、ハロルド・フォルタマイヤーやキース・フォーシーが参加とブルックリン・ドリームスのメンバーが抜けた他はほぼ前作と同じラインナップで制作されております。

ファースト・シングルに選ばれたのはアルバムのタイトル曲でもある「ワンダラー」。トリップ感覚のあるニューウェーブ・タッチのエレクトロ・ポップ…とでも言えばいいのでしょうか?エルビス・プレスリー風のちょっとファニーなドナのヴォーカルも併せ、新しいような懐古的でもあるような、とても不思議な印象を残す楽曲です。シングル・チャートでは3位まで上昇、ただし当時のドナのニュー・アルバムからの第一弾シングルとしては若干物足らない成績だったでしょうか。




イントロのメロディー&ピアノ・ソロがかっこいい「ルッキング・アップ」、ガツッ、ガツッとしたビート感が面白い「コールド・ラブ」、しなやかに歌声を操るブラコン・テイストの「愛の隠れ場所」、メロディアスなロック・ナンバー「涙の祈り」、オールディーズ風ロックの「ストップ・ミー」等、よりワイルドにポップ・ロック路線を推し進めた曲がある一方、「ブレイク・ダウン」では従来のハイ・キーな歌声を全編で聞かせたり、「大いなる幻影」なんていうタイトルそのままの幻想的でアートっぽい作品があったりと、どこか試行錯誤感のある本作。




そしてラストを飾っているのはイエス・キリストへの愛をストレートに歌い上げた「イエスを信じて」なんですが、これはこの時期彼女がボーン・アゲイン・クリスチャンになった事により収録されたポップ・ゴスペル。ボーン・アゲイン・クリスチャンとは大人になってからキリスト教に改宗したり、それまでの自分の行いを反省して生まれかわったように熱心にキリスト教を信仰するようになった人を表す言葉で、ドナの場合は後者のよう。

「愛の誘惑」という直接的に性愛を表現したような楽曲でスターになった彼女は、セックスの権化に祭り上げられてしまった自分を嘆き(または反省し)、救いを宗教へ求めることになったようです。この事も後に起こる騒動の火種になるわけですが、それはまた次回に。

ロック、ポップ、ニューウェーブにゴスペル。バラエティに富んでいる、というと聞こえはいいですが、やはりどちらかというと主軸がぶれているというか方向性の迷いが露呈してしまい、中途半端な印象を抱かせる作品になってしまった気がします。
また4作品連続でWアルバムをリリースしてきた事も影響し、こじんまりとまとまってしまった感も否めないんですよね。

アルバムはトップ10に入らず、プラチナ・セールスを続けてきたセールスもゴールド止まり。大きな期待を寄せられていただけに、この成績はドナにとっては「失敗」と言えるものでした。

そしてドナな次作で大きな転換を迫られる事になるのです。


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The Wanderer

A-1 The Wanderer
A-2 Looking Up
A-3 Breakdown
A-4 Grand Illusion
A-5 Running For Cover

B-1 Cold Love
B-2 Who Do You Think You're Foolin'
B-3 Nightlife
B-4 Stop Me
B-5 I Believe In Jesus

チャートデータ
アルバム
Pop 13位/R&B 12位
シングル
「The Wanderer」:Pop 3位/R&B 13位
「Cold Love」:Pop 33位
「Who Do You Think You're Foolin'」:Pop 40位



『ワンダラー』も現在廃盤のため市場では馬鹿値がついてます。リイシューされるといいのですけど。




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2012年07月04日

ベスト盤天国

お買い得ですよ、奥さん!

…とまぁ、大変下世話なお話で申し訳ないのですけど。

最近円の関係とか抜きにしてもCDがお安い。この値段でこのボリューム、この内容のものが買えちゃうの?なんてネットやCDショップで慄然となることもしばしばな訳です。お値段のつけ方はお店によってまちまちではあるんですけど、総じて2枚組で千円前後。英国のDemon Music Groupという会社が出しているMusic Club Deluxe というシリーズですが、Rhinoとかが編集したものを販売してる正規盤。そのアーティストと内容の素晴らしさがわかっている世代としては、お値段と比例して中身までヤスいと思われないかな?…なんて余計な事を考えてみたり。だって本当に安くで腹が立つんですもん(怒)。

私が購入したものをいくつかご紹介いたします(買ってるんじゃん)。


Linda Ronstadt:The Collection



我らが歌姫リンダ・ロンシュタッドの2枚組ベスト。全46曲入りで、ストーンポニーズ時代の「ロング・ロング・タイム」から96年の子守歌アルバムまでをカバー。ヒット曲はもちろんマイナーなアルバム曲まで収録時間の許す限り詰め込んであります。ちゃんと「ホワッツ・ニュー」やラテン・アルバムからのチョイスももあるのがエラい。


Chaka Khan:The Essential



ファンクの女王で先日行われたアメリカン・アイドルのフィナーレでもオレンジのボディ・スーツに身を包んで颯爽と登場、衰え知らずの歌声で会場を沸かせたチャカ(シャカ)・カーンの2枚組ベスト。33曲ですけどこれは1曲の長さの関係。こちらもソロ時代のヒット曲はほぼ網羅されており、+ルーファスとの「エイント・ノーバディ」。それはもう聴きごたえ満点です。


Dionne Warwick:The Essential



説明不要の大御所、ディオンヌ・ワーウィックの2枚組ベスト。全44曲入りで、60年代のバカラック/デイヴィッド=セプター時代と70年代のワーナー時代を中心に、80年代のアリスタ時代も英国で大ヒットした2曲のみチョイス。ランダム収録なので「アルフィー」の後に「ハートブレイカー」が来る等違和感のある構成なのですけど、まぁ我慢いたしましょう。


Sheena Easton:The Collection



80年代を代表する女性ポップ・シンガーであるシーナ・イーストンの2枚組ベスト。なかなかレコード会社の壁を越えられず、今回もEMI期だけ(「ラバー・イン・ミー」等が入らず)の編集ですが、全31曲、シングル曲を中心にB面曲等もチョイス。シーナの硬質だけれども艶のある歌声、そして素晴らしき80年代ポップスの楽しさを満喫できます。


Kim Wilde:The Collection



80年代でもう一人忘れられない活躍をした女性歌手、キム・ワイルドの2枚組ベスト。シーナはニューウェーブ感覚のポップスと言われましたけど、キムはニューウェーブ・ロックとカテゴライズされてましたね。全33曲収録で初期3枚のRAKレーベルの作品にNo.1ヒット「キープ・ミー・ハンギング・オン」や「ユー・ケイム」を追加した構成。


Paula Abdul:Straight Up! the Very Best of



私にとっての「Forever Girl」、ポーラ・アブドゥルの2枚組ベストでございます。最近の若い方だと、アメリカン・アイドルの審査員だった変なオバさんという印象しかないかもしれないですが、彼女は革新的なダンス・パフォーマーでありキュートな歌い手だったのです!全31曲、サントラ曲まで入った初の大容量ベスト、全米No.1が6曲もあるんですよー!!


この他にもカルチャー・クラブやバナナラマ、アン・ヴォーグにシック、シスター・スレッジ等各種取り揃えておりますので(smile)、懐かしい方も初めての方も色々お試し下さいませです。



Music Club Deluxeのサイトはこちら→http://www.demonmusicgroup.co.uk/content/65.chtml?Type=FC&pPage=2
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2012年07月01日

マーカス・コリンズ 『マーカス・コリンズ』(12年)

Marcus Collins:Marcus Collins(12年)

ブログをお読みいただいている方はおわかりかと思いますが、最近私英国産のシンガーに注目しております。

英国産…というとちょっと聞こえがいいですが、ようは英国開催のオーディション番組「Xファクター」出身の歌手の皆様ですね。JLSとかオリー・マーズ、ワン・ダイレクションの情報等を追っていると、どうしても「Xファクター」関係の情報が目に入るようになってしまって、あの人もこの人もぉ♪(by大阪ラプソディー)状態になってしまうのです。

昨年開催された「Xファクター2011」では女性ヴォーカル・グループのリトル・ミックスと言う方々が優勝されたのですが、こちらは現在デビュー・アルバムの制作中。一足お先にとアルバム・デビューを飾ったのが、準優勝となった本日ご紹介のマーカス・コリンズでございます。

「Xファクター」は何度かご説明しているようにボーイズ、ガールズ、グループ、シニアの4セクションに分かれて優勝を争うのですが、マーカスはボーイズ枠の代表としてコンペに参加。惜しくも優勝は逃しましたけど、そのお目々ぱっちりなキュート系ルックスと爽やかソウルな歌声で人気者となり、メジャー・デビューの切符を手に入れました。

爽やかソウル…って、なんか訳わかんないですけど(smile)、あまり粘着性のない歌声でコクは適度にあるけどさらっと聞けるというか、アメリカン・コーヒーで作ったカフェオレみたいな?(余計不明)。クリス・ブラウンと比べるより、ブルーノ・マーズやマルーン5なんかと並べるとしっくりくるようなタイプのシンガーでございます。

ファースト・シングルでトップ10入りのヒットになったのはロック・バンド、ホワイト・ストライブスのカバー曲である「セブン・ネイション・アーミー」。この曲、英国のNMEという音楽誌が選んだ「史上最低のカバー・ソング30曲」の1曲に選ばれてしまったりしたのですが、原曲をうまくクールなポップ・ソウルに変換していて私は嫌いじゃありません。ホワイト・ストライプス自体がかなり崇拝系のバンドなので、その筋の方から反発をくらってしまったのかもしれませんね。



60'sソウルの温かみを再現したような「ドント・サレンダー」、賑やかなホーン隊を引き連れて派手にキメるセカンド・シングルの「マーシー」、ジャッキー・ウィルソンの名曲のマイルド・カバー「ハイヤー・アンド・ハイヤー」、こちらも初期デトロイト・ソウルな雰囲気の「イッツ・タイム」、ファンの「ウィ・アー・ヤング」にフューチャーされて知名度をあげたジャネール・モナエのカバーとなるリズミカルな高速ノリの「タイトロープ」、アゲアゲ系ソウルの「フィール・ライク・アイ・フィール」、イントロが「ユー・キープ・ミー・ハンギング・オン」してる「ブレイク・ディーズ・チェイン」等、古き良き時代のR&Bを今の時代にリファインしたような楽曲が並んでおり、何だかこうまったりしてしまうような心地よさがあるのが好印象でございます。

「Xファクター」でボーイズのメンターを務めているのは我らがテイクザットのゲイリー・バーロウ。教え子のデビューに力を注がない先生はいない訳で、「フィール・ライク・アイ・フィール」のソングライトを手掛けているのはゲイリーですし、エクザクティブ・プロデューサーも彼が務めております。カバー意外の楽曲はマーカス自身が制作にも加わっており、もちろん彼の資質と持ち味あっての事ですが、どこかに漂う品の良さはゲイリーの関与というのも大きいのかなと思いますね。

デビューしたてですし、正直セカンド・シングルの「マーシー」は194位と惨敗してしまいましたけど、まだまだこれから、頑張ってほしいと思いますです。



ちなみに彼はオープンリーなゲイ。目がね、語ってました(smile)。

チャートデータ(UK)
アルバム 7位
シングル
「Seven Nation Army」:9位
「Mercy」:194位



ホワイト・ストライプスの原曲はこちら。なるほどなぁという感じ→http://youtu.be/0J2QdDbelmY
モナエさんの「Tightrope」もいいですよ→http://youtu.be/pwnefUaKCbc


posted by Suzu at 12:15| Comment(2) | TrackBack(0) | R&B系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年06月30日

「追憶」〜オプラ・ウィンフリー・ショーのバーブラとロバート・レッドフォード〜

Oprah Winfrey 2010.11.16 Barbra Streisand Extravaganza

小ネタですけど。

You-Tubeは宝の山だと皆様もお気づきと思いますけど、Tubeサーフィンしてると何ですかこれは?という映像に出会うことが少なくない訳です。
先日もバーブラ・ストライサンドとドナ・サマーが共演した「ノー・モア・ティアーズ」のほんのちょっぴりですがレコーディング・デモ的な音源を見つけ、聴いてみると何とも楽しそうに笑い合っている二人の様子。もう厳戒態勢のピリピリ状態でレコーディングされたと信じていた私の根底を揺るがす「記録」でございました。

そしてつい先日出会ったのがこれ、超有名な米国のトーク番組オプラ・ウィンフリー・ショーに一昨年出演した際のバーブラの映像でございます。

まるまる1時間のバーブラ特番で、懐かしい映像を交えたバーブラの歴史紹介からスタート。そしてかつて映画で共演したジェフ・ブリッジス、ニック・ノルティ、マンディ・パティンキン、クリス・クリストファスンからのコメント映像。これだけでも豪華だなーと思うのに、トークの合間にそんなに気楽に歌っちゃうんだって感じでバーブラが「追憶」を生歌唱。そして本日のハイライト、何とスタジオにロバート・レッドフォードが登場するんです!!!!




(一番前で拍手してる人、gleeに出てるビースト先生ことドット・マリー・ジョーンズじゃありません?)


こんな歴史的な再共演が実現してるなんてお話完全に聞き逃していたので、いやはやもう吃驚。この二人のツー・ショットをどれだけ見たいと思ってきたことか。私がバーブラ・ストライサンドを好きになるきっかけとなった映画「追憶」のケイティとハベルです。「追憶」はバーブラにとっては非常に重要な作品ですけど、正直損な役回りとも言えるハベル役のレッドフォードにとってはそれほどプライオリティの感じられる作品ではないはず。だから両者の温度差というのは歴然としていて、「追憶」がDVD化された時の特別ドキュメントにもレッドフォードは出演どころかコメントも寄せていませんでした。ですからこんな風に二人のツー・ショットが実現し、この映画の事を語る場面が見られるなんて思いもよらなかったのです。そしてまたバーブラの嬉しそうな事。これ真のサプライズって訳じゃないでしょうけど、バーブラ本当にレッドフォードの事が好きなんですよね。

この番組、バーブラが出版したご自宅紹介本「My Passion for Design」の番宣というわかりやすいオチがつくのですが、それにしても、オプラ・ウィンフリー恐るべし。これ、絶対オプラじゃなかったら実現しない企画ですよね。
バーブラにとってもレッドフォードとの共演は最も影響力のある番組で切ってこそのとっておきのカードであったはず。本を宣伝してあげるけどあなたもとっておきのシーンを見せてねという下世話な取引が高次元のパワーバランスで実現してしまったゆえなのでしょう。

理由はどうあれ本当に、いいものを見せて頂きました。まるであのケイティとハベルが、こうして笑い合った日が来たのかもと想像出来るだけで、私にとってはとても幸せな事なのです。

mmm、Memories…。

(しかし、ロバート老けましたね。顎のラインなんて大変なことになってるし。バーブラ腕のいい美容科紹介してあげればいいのに。)






posted by Suzu at 07:30| Comment(4) | TrackBack(0) | エンタメetc | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年06月29日

ミュージカル『サンセット大通り』(12年)

Sunset Boulevard(12年)

赤坂ACTシアターで行われているミュージカル「サンセット大通り」を見てまいりました。

1950年に公開された監督ビリー・ワイルダー、主演にグロリア・スワンスンとウィリアム・ホールデンを迎えた名画を93年にアンドリュー・ロイド・ウェーバーがミュージカル化。
初演のロンドン版はパティ・ルポンが主演、米国上演の際にも当初はパティがキャスティングされていましたが、より役のイメージに近いグレン・クロースに出会ってしまったウェーバーは違約金を払ってパティとの契約を解除。グレン主演で上演された作品はトニー賞で7部門の受賞を果たす高評価と成功を収めました。

その後もベティ・バックリーやペトゥラ・クラーク、ダイアン・キャロル等の大物女優で舞台が上演され、主役のノーマ・デズモンドが歌う「As If We Never Said Goodbye」や「With One Look」は人気曲としてバーブラ・ストライサンドやシャーリー・バッシー等がレコーディングしたりステージのレパートリーに加えたりしております。



お話は売れない脚本家ジョー・ギリスが車の取り立て屋に追われてサイレント映画時代の大女優ノーマ・デズモンドが執事と二人で暮らす屋敷に迷い込むところからスタート。映画界への復帰を目論むノーマはジョーが脚本家と知って自分が執筆中の脚本の手直しを依頼。住み込みで働かせるうちにジョーに魅かれていくノーマ、そして打算的にその愛に応えるジョー。パラマウント映画からの電話に自分の脚本が認めらたと思いこみ撮影所にセシル・B・デミル監督を訪ねるノーマ。しかし本当の目的は彼女のクラシック・カーを借りたいというものであった…というもの。

50年の映画は業界内幕物としての批判精神とブラック・ユーモアに溢れ、本物の往年の大スターグロリア・スワンスンをはじめとする虚と実が混在した出演者たちの好演(怪演)が強烈な印象を残す傑作。舞台版は忠実に原作映画のストーリーをなぞって進行。お話の面白さは揺るぎようがなく、ロイド・ウェーバーが作る美しくも悲劇的なスコアの数々はとにかく素晴らしいものでございました。

今回の日本版は主演のノーマ・デズモンド役に宝塚の男役トップだった安蘭けいさん、狂言回しである脚本家ジョー・ギリス役に田代万里生さん、ノーマの忠実な僕である執事マックス役に元劇団四季の鈴木綜馬さん、ジョーと共同で脚本を書きジョーに惹かれていくヒロイン、ベティ・シェイファー役に同じく宝塚出身の彩吹真央さん、そしてセシル・B・デミル役にこちらも元劇団四季の浜畑賢吉さんというキャスティング。





終演後のプレゼント抽選会でもサービス精神たっぷりな進行で楽しませてくれた鈴木さんの達者で重厚な演技、出番は少ないながらもさすがの存在感を示した浜畑賢吉さん、若干年齢のギャップ(22才の役ですから…)はありましたけど、清楚な雰囲気と歌声が素敵だった彩吹真央さん、そしてダイナミックなダンスとなかなかに個性的なメンバーを揃えたアンサンブルの方々と、脇を固める俳優さんたちはとても素晴らしいものでした。
…ただし、主役のお二人については(ファンの方には大変申し訳ないのですけど)正直ミス・キャストだったかなぁという印象が強いです。

ノーマ・デズモンドは過去の遺物であるサイレント映画の大スターで、過ぎ去った栄光から抜け出せず、執事マックスの支える虚栄の世界だけで生きているような存在。スターとしての威厳と気高さの他に、支える者がいないと崩れ落ちてしまうような弱さ、妄想に囚われた狂気等を体現しなければならない難役です。
安蘭さんも頑張ってらっしゃったとは思うのですが、どこか劇画調の演技も含め、大女優の貫録や狂気を表現しきれていなかったですし、噂では風邪を引いてらしたという事ですが、歌もこじんまりとまとまってしまって、せっかくの見せ場を盛り上げ切れなかったのが残念。

またジョー・ギリスは脚本家として目が出ずにハリウッドの生活に行き詰まり、もう田舎へ帰るしかないという状況に追い込まれた崖っぷちの三十路男。
田代万里生さんは登場のところから颯爽とし過ぎていて、とても落ちぶれてどんずまりの状況にあるようには見えませんでしたし、もう少しシニックな面というのがあってもよかったのに、どうにもギラギラ感が前に出過ぎ。役作りよりも若さが勝ってしまったという感じでしょうか。歌はさすがに素晴らしかったので、10年後にもう一度この役をやってる田代さんを見たいなぁという風に思いましたです。

まぁ予習も兼ねて前日に映画版「サンセット」を見直してから舞台に挑んだので、余計にグロリアやウィリアムの強烈な印象が脳裏に焼き付いて辛くなってしまったというのはあると思うのですけど。
セットも豪華絢爛たるあちらのスチールを見慣れてしまっていたからか、回転する階段をうまく場面転換で使った演出はよかったのですけど、どうしても規模の縮小感は否めなかったですし…。

物語としての面白さ、スコアの素晴らしさにはとにかく魅了されましたので、新たなキャストでの再演とか行われれば、是非もう一度見たいとなぁと思わされる作品でございました。

(出来ればお話もよくわかったので、本場物が見てみたいというのが本音ですけど…。)




↑これ見たばかりでしたからねぇ…。


posted by Suzu at 23:15| Comment(4) | TrackBack(0) | 映画・ミュージカル系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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