2012年12月24日

ドナ・サマー『ホワイト・クリスマス』(94年)

Donna Summer:Christmas Spirit(94年)

皆様、楽しいクリスマスをお過ごしでしょうか?

今年も色んな出来事がありましたけど、やはり個人的に衝撃的だったのはホイットニー・ヒューストンとドナ・サマー、私の音楽人生に素晴らしい彩を与えてくれていた2人の歌姫の逝去でした。

ただ、若干2人の死に対する思いというのは違っていて、ホイットニーの場合はどうしてもこれからの復活を期待していただけに悔しい気持ちというのが拭いきれないのですけど、ドナの場合は、もちろんまだまだ活躍出来た年齢でしたけど、ある程度アーティストとしてやり切ってくれた部分というのを感じるので、安らかに眠ってほしいと素直に思えたりもするのです。
生前度々候補に上がるも逃していた「ロックの殿堂」入りもようやく入殿が決まったりして、どうして生きてるうちに、と憤りを覚えたりもしますし、その兆候が見えていたドナの歌手としての本格的な再評価も生きているうちに味わってほしかったとは思うのですけどね…。

そんな二人の歌姫には素敵なクリスマス・アルバムがあるのですけど、ホイットニーの作品は以前ご紹介した事があるので、本日はドナ・サマーが94年にリリースした作品をご紹介したいと思います。

邦題は『ホワイト・クリスマス』と冒頭に収められたスタンダードをタイトルに冠してしまいましたが、原題は『クリスマス・スピリット』という敬虔なクリスチャンであったドナらしいタイトルがつけられています。
プロデュースはドナとは70年代からのつきあいであり、80年代に『情熱物語』の大ヒットを生んだマイケル・オマーティアンが担当。美しいストリングスを配した手堅い音作りで、3曲あるオリジナルのクリスマス・ソングもドナとドナの旦那様ブルース・スーダノらと共作しています。

収録されているのは「ホワイト・クリスマス」「ザ・クリスマス・ソング」「アイル・ビー・ホーム・フォー・クリスマス」等のよく知られたクリスマス・スタンダードの他、キャロル〜讃美歌系の「神の御子は今宵しも」「クリスマス・メドレー」「オー・ホーリー・ナイト」、コンテンポラリー・クリスチャン・ミュージックの大スターで、80年代後半からポップスへのクロスオーバーを果たし「ネクスト・タイム・アイ・フォール」や「ベイビー・ベイビー」等のNo.1ヒットをものにしたエイミー・グラントのカバー「ブリーズ・オブ・ヘブン」、そしてドナらしいチャイルドライクな表現が可愛らしい「クリスマス・イズ・ヒア」、新たなクリスマス・スタンダードの誕生を予感させるタイトル曲の「クリスマス・スピリット」、ドナの得意なスタイルである語りをフューチャーした芳醇な味わいで物語性豊かな「ラム・オブ・ゴッド」というオリジナル・ソング3曲を加えた全10曲。







本作で聴けるドナの温かみのある美しい歌声は実に素晴らしく、その歌声には自分が歌うべき歌を歌っているという喜びが満ち溢れているように思います。語りから入る「ブリース・オブ・ヘブン」や「ラム・オブ・ゴッド」等は、まるで暖炉の前に座るドナを囲んで、クリスマスの物語を聴かせてもらっているよう。「クリスマス・ソング」や「クリスマス・メドレー」等で聴かれるゴージャスさ=「押し」とセンチメント=「引き」の表現力というのもとても魅力的ですし、数あるドナ・サマーのアルバムの中でも、ヴォーカリストとしての滋味・旨味が一番味わえる作品ではないかと思います。





大スターの条件として挙げられる項目に『グレイテスト・ヒッツ』と『クリスマス・アルバム』のリリースというのがあるのですが、ドナの場合飛ぶ鳥を落とす勢いであった70年代のカサブランカ時代にリリースされていてもおかしくなかったクリスマス・アルバム。
ただもしその時期にレコーディングされていたなら、いわゆるダンス〜ディスコ的な要素というのは回避出来なかったでしょうし、ここまでヴォーカルに焦点を当てたアルバム作りも出来なかったはず。ですから、嵐も風も過ぎ去っていた94年という時期のリリースは、結果的にタイミングとしてベストだったように思います。

そしてこのアルバム・カバーに写るドナのポートレートの美しいこと!そのピュアな眼差しは天に向けられ、間違いなく彼女の信じた神の祝福を感じているのではないでしょうか。

そして今ドナはその神のみもとに。

今度はその同じ眼差しを、慈愛に満ちたその眼差しを下界の私たちにむけてくれていることでしょう。
今宵はそんなドナを偲んで、この素晴らしきアルバムを聴きたいと思います。

素敵な作品を有難う、ドナ。

皆様にも是非、クリスマス・アルバムのライン・ナップのひとつに加えていただければと思いますです。

Christmas Spirit

1. White Christmas
2. The Christmas Song
3. O Come All Ye Faithful
4. Christmas Is Here
5. Christmas Medley
6. I'll Be Home For Christmas
7. Christmas Spirit
8. Breath Of Heaven
9. O Holy Night
10. Lamb Of God

チャートデータ
チャート入りなし



アメリカで人気のコメディエンヌ、オージー・ロドネル企画の豪華アーティスト集結のクリスマス・アルバム。ドナも1曲参加しています。





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2012年08月05日

ドナ・サマー『ミステイクン・アイデンティティー』(91年)

Donna Summer:Mistaken Identity(91年)

91年にリリースされたドナ・サマー15枚目のオリジナル・アルバム。

89年、人気プロデュース・チーム、ストック・エイトキン・ウォーターマンを迎えた『アナザー・プレイス・アンド・タイム』が主にヨーロッパを中心に大ヒット。SAWの作りだす軽やかなユーロビートとドナ固有のダイナミズムが融合した名曲が数曲生まれましたが、アルバム全体としては若干不満の残る出来であったように思います。

ヒットしたという事でこの組み合わせによる第二弾も企画されたそうですが、ドナはSAWと再び組む事をやめ、変わりに指名したのがビリー・オーシャンやジェームズ・イングラムのアルバムを手掛けていたアーバン・ポップス系のプロデューサー、キース・ダイアモンドでした。

前作の白塗りジャケもかなりのインパクトでしたけど、本作を初めて手にとった時もかなりショッキングでございました。…金髪って?しかも表ジャケはドナの顔が上半分見切れているし、更にタイトルは『ミステイクン・アイデンティティー』=人違い、誤認、直訳しても自我を見誤ると言った不穏な響き。エラいイメージ・チェンジだなぁと当時思いましたです。
後で知った事ですが、やはり前作『アナザー・プレイス・アンド・タイム』が商業的に大成功したのに反し、ドナとしては正直意に添わない部分、納得出来ない部分があったようで、例え成功するとしても、自分の信念を曲げるような事をしてはいけないという自戒が、このタイトルとアートワークに込められたと言われています。

SAWの作品も(後発とはいえ)世界的に流行していたユーロビートという新しいムーブメントを取り入れたものでしたが、ドナは本作にてさらにアグレッシブなチャレンジを、しかもかなり貪欲に行っています。

アルバムのオープニングを飾っている「ゲット・エスニック」や「ボディー・トーク」は、何と当時猛威をふるっていたニュー・ジャック・スウィング、アルバムからのファースト・シングルに選ばれた「ホエン・ラブズ・クライ」やミステリアスな雰囲気の「クライ・オブ・ア・ウェイキング・ハート」はグランド・ビート、英国でシングル化した「ワーク・ザット・マジック」や「ホワット・イズ・イット・ユー・ウォント」はハウス・ミュージック。これだけ一度に当時の流行音楽を取り入れたアルバムって、他にあったでしょうか?
しかもこういう最新モードにベテランが手を出すとどうしても私がんばってます的な感じが出てしまうものですが、本当に凄い事にドナの場合は完ぺきに自分の物として披露。その消化ぶりはまさに「人違い」レベル(?)の素晴らしさです。





アルバムはそうした流行のブラック・ミュージックを基本に、たおやかなミディアム「ヘブン・ジャスト・ア・ウィズパー・アウェイ」、美しくも力強く歌い上げるバラード「フレンズ・アンノウン」、ゴスペル的な要素の強い、というかゴスペルな「レット・ゼア・ビー・ピース」等、ヴォーカリストとしてのドナの魅力が存分に味わえる楽曲も収録。また基本はNJSながらジャージーなテイストを加えて伝説のダンサーをトリビュートする「フレッド・アステア」、洒落たエンディングを用意した「ホワット・イズ・イット・ユー・ウォント」等の味付け具合には余裕すら感じさせてくれます。「ホエン・ラブズ・クライ」は久しぶりに全編をファルセットで歌っており、これがクールなグランド・ビートと絶妙なマッチングをみせた要因のひとつ。
ウィスパー・ヴォイスから野太いシャウトまで、その変幻自在さ、フレキシブルさはやっぱりドナの魅力ですよね。ドナのヴァーサイタルな才能を改めて示した好盤でございました。





…が、世間的なリアクションは米国でシングル「ホエン・ラブズ・クライ」がR&Bチャートで18位を記録した程度で、ポップ・チャートでは77位止まり。アルバムに至ってはトップ200入りも逃すという惨敗具合。前作が大成功した英国では独自にダンス・ポップ色の強いハウス・ナンバー「ワーク・ザット・マジック」をシングル化しますが、こちらもトップ100の下位どまりで終わってしまいました。

かくいう私も、発売当時購入したもののほとんどスルーに近いぐらい本作は聞きませんでした。

何故かと言うと、確かにこうして改めてアルバムを俯瞰してみるとそのチャレンジ精神に畏怖を覚えるくらいなのですが、あの当時は巷にこういうサウンドが溢れかえっていたし、わざわざドナ・サマーでこの手の音楽を聴きたいという感じにならなかったように思います。あぁ、ドナもNJSなんかやっちゃうんだ、ぐらいだったでしょうか。当時は全くと言っていいほどピンとこないアルバムでしたが、今回新譜気分で本作に接することが出来、その素晴らしさを再確認させていただいた次第です。

こちらはさすがに手に入れやすい作品ですので、まだという方がいらっしゃったら是非お試し下さいませ。あれから20年、最新だったNJSやグランド・ビートも既に懐かしいレベルになっていますので、また違った感覚でお聞きいただけるのではないかと思います(…私のように)。

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Mistaken Identity

1. Get Ethnic
2. Body Talk
3. Work That Magic
4. When Love Cries
5. Heaven's Just a Whisper Away
6. Cry of a Waking Heart
7. Friends Unknown
8. Fred Astaire
9. Say a Little Prayer
10. Mistaken Identity
11. What Is It You Want
12. Let There Be Peace

チャートデータ
アルバム
R&B 97位
シングル
「When Love Cries」:Pop 77位/R&B 18位
「Work That Magic」:UK 74位



キース・ダイアモンドのお仕事。

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2012年08月01日

ドナ・サマー『アナザー・プレイス・アンド・タイム』(89年)

Donna Summer:Another Place and Time(89年)

89年にリリースされたドナ・サマー14枚目のオリジナル・アルバム。

前作の失敗を受けて(…って80年代はこんな事ばかり書いてますけど…)ゲフィン・レコードはドナによりコマーシャルな成功が期待できる作品を要求。ゲフィン側が白羽の矢を立てたのが、当時カイリー・ミノーグを始め、リック・アシュトリーやバナナラマ等でワールドワイドなヒットを量産していた英国のプロデュース・チーム、ストック・エイトキン・ウォーターマンでした。

ドナはレーベルの指示通りSAWと共に曲作りを開始しアルバムを完成させます。が、またしてもゲフィンはアルバムの発売を拒否。それどころか8年の在籍期間中とうとうレーベルが期待するだけの成果を出せなかったドナに対し、レコード契約を打ち切る決定を下すに至ってしまったのです。
アルバム1枚が何百万枚と売れ、シングル・ヒットも量産されるようなミュージック・ビジネスの更なる大型化が進んでいた時代とはいえ、ドナにとってはそれはあまりにも屈辱的な決定だったと思います。

宙に浮いてしまったリリースでしたが、UKでは権利を持つワーナー・ブラザーズからアルバムが発売される事が決定。まずはファースト・シングルとして「ディス・タイム・アイ・ノウ・イッツ・フォー・リアル」をリリースしますが、UKではこれが78年「ノー・モア・ティアーズ」以来のトップ10ヒットとなり、最終的にトップ3入りする大ヒットを記録。続くセカンド・シングルの「アイ・ドント・ワナ・ゲット・ハート」もトップ10入りし、サード・カットの「ラブズ・アバウト・トゥ・チェンジ・マイ・ハート」も20位にチャートイン。その他にもトップ100に入るシングルが2曲、アルバムもトップ20入りと70年代を彷彿とさせる大成功を収めます。







追ってアメリカでもアトランティック・レコードからのリリースが決定。こちらも「ディス・タイム・アイ・ノウ・イッツ・フォー・リアル」が83年の「情熱物語」以来となるシングルのトップ10ヒットとなり、またその他の国でもヒットを記録。何とも皮肉な事にまたしてもゲフィンは自社での大ヒットを目前のところで逃す結果となってしまった訳です。

元々ドナはヨーロッパのディスコ・ミュージックであるミュンヘン・ディスコでチャンスをつかんだ訳であり、同じくヨーロッパから興ったダンス・ミュージックの最新型であるユーロ・ビートとの融合は期待が大きかったはず。ゲフィンも当然そこを見込んでの人選だったはずですが…何ともうまくいかないものですね。

アルバムは典型的なPWLサウンドを擁したユーロビート・ソング「ラブ・テイクス・オーバー・ユー」「センチメンタル」「ブレイクアウェイ」等を基調に、ドナらしいダイナミズム溢れる「アイ・ドント・ワナ・ゲット・ハート」、大空を舞う鳥のように雄大で軽やかな「ディス・タイム・アイ・ノウ・イッツ・フォー・リアル」、70年代の名曲群を彷彿とさせるスケールの大きな名曲「ラブズ・アバウト・トゥ・チェンジ・マイ・ハート」、日本ではCMソングとしてオンエアされた爽快なダンス・ナンバー「オンリー・ワン」、違う場所と時間の中で出会えたなら…という切ない恋心を歌うアルバム中唯一のスロウ・ナンバー「アナザー・プレイス・アンド・タイム」等のキー曲を要所に配した構成。





ヒットしたシングル3曲の出来が飛びぬけている以外、あまり聴くべき曲がない…とまで言ってしまうと語弊があるかもしれませんが、やはり単調なリズムの繰り返しがメインとなるユーロビート作品ではなかなかに創造的曲作りを行うのは難しいようで、発売当時それなりにヘビー・ローテーションした割には心に止まる曲が少なく、アルバムを通して聴くとどうにも平凡な印象を受けてしまう作品になってしまったように思います。

ゲフィンが発売を見送ったというのも、正直ちょっとわかるなぁという感じ。

コマーシャルな面では大成功を収めた本作ですから、当然SAWプロデュースによる第二弾のアルバムも企画されたのですが、これはドナの意向によりキャンセルされた模様。次作を、髪を金髪に染めて『ミステイクン・アイデンティティ』=人違い=自分ではないというタイトルにしたのは、このアルバムで商業的な成功を収めたとはいえ納得のいかない作品をリリースしてしまった事への自戒を込めたものだと言われています。
確かに気持ちはわかりますけど、それでも名曲と思える作品が3曲もあるんですから、これは痛し痒しでしたかね。これが最後の大ヒット作になった訳ですし…。

最後になりますが。このインパクトの大きすぎるジャケ。「もうひとつの時間と場所」という事で、京劇風の白塗りメイクにトライしてしまったドナさまなのです。衣装も遠目に見ると唐草模様風に見えちゃいますしね。いったいどの時間と場所に紛れ込んだのやら…もうっ。

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Another Place And Time

1. I Don't Wanna Get Hurt
2. When Love Takes Over You
3. This Time I Know It's For Real
4. The Only One
5. In Another Place And Time
6. Sentimental
7. Whatever Your Heart Desires
8. Breakaway
9. If It Makes You Feel Good
10. Love's About To Change My Heart

チャートデータ
アルバム
Pop 53位/R&B 71位/UK 17位
シングル
「This Time I Know It's For Real」:Pop 7位/UK 3位
「Love's About To Change My Heart」:Pop 85位/UK 20位
「I Don't Wanna Get Hurt」:UK 7位
「When Love Takes Over You」:UK 72位
「Breakaway」:UK 49位



ドナとのセカンド・プロジェクト用に制作された曲の一部はこのロニー・ゴードンのアルバムに収録されたそうです。

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2012年07月28日

ドナ・サマー『オール・システムズ・ゴー』(87年)

All Systems Go(87年)

87年にリリースされたドナ・サマー13枚目のオリジナル・アルバムです。

前作『キャッツ・ウィズアウト・クロウズ』から3年のインターバルを空けてリリースされた作品で、私個人としては初めてリアル・タイムで手に入れたドナのアルバムになります。

メイン・プロデューサーはカサブランカ後期にドナ・チームの一員となり、『トップ・ガン』のサントラ・ヒット等で80年代も活躍していたハロルド・フォルターマイヤーが担当。本作からのリード・シングルとなった「ディナー・ウィズ・ガーシュイン」は売れっ子プロデューサーのリチャード・ペリーが手掛けている他、アーバン・コンテンポラリー系のヴォーカル・グループ、クラッキンのメンバーだったピーター・バネッタ等が参加しています。





ミドル・テンポで解放感のあるサウンドが心地よく、再始動にかけるドナの気持ちが込められたような「オール・システムズ・ゴー」からアルバムはスタート、ポップ・ロック・アプローチのスピード感豊かな「バッド・レピュテーション」と「ラブ・ショック」、オリエンタル調の温かみのあるメロディが美しいヴォーカル・ナンバー「ジェレミー」、スターシップのミッキー・トーマスを迎えたAOR調バラード「オンリー・ザ・フール・サバイブ」、重量感たっぷりのサウンドに軽快なメロディー、ファンタジックな歌詞とユニークな構成をもつブレンダ・ラッセル作の「ディナー・ウィズ・ガーシュウィン」、そしてどことなくミステリアスな雰囲気を漂わせ、個人的にはリータ・ギャロウェイのバージョン等も思い出深い「ファシネイション」、清涼感のある流れる様なメロディが印象的な「ヴォイシズ・クライン・アウト」、メランコリックかつダルなヴォーカルがドナの新たな一面を見せる「マイ・ベイビー」というスロウ・ナンバー3連打でしっとりと幕が引かれる全9曲構成。





CD時代に入った事もあってか抜けのいいサウンドが特徴、久しぶりの作品という事もあってアルバムにリフレッシュしたような新鮮な空気感があるのが本作の魅力になっています。

3年振りのリリースに味わい豊かなファースト・シングル、日本では来日公演も行い「夜のヒットスタジオ」に出演したりとメディア的な露出や話題性はそこそこ高かったのですが、残念ながら米国でのチャート成績的にはシングルもトップ40入りせず(R&Bではかろうじてトップ10入り)、アルバムに至ってはトップ100入りも逃すという惨敗を期してしまいました。

やはり一度ヒット・チャートの一線から外れたベテランが再びヒットをものにするには、よほど時流に乗った展開をしないと難しいでしょうし、ホイットニーやジャネット等の次世代のスター達が70年代後半のドナばりに大ヒットを連発していた時代ですから、同じ土俵で勝負するには正直歩が悪い状況だったように思います。

そんな訳で大きなリアクションもなくひっそりと見送られたような感じでしたが、最近になって意外とこの作品、あちこちで好きだったという人が現れて隠れ人気が高いことが判明。主に玄人受けするシンガーソングライターであるブレンダ・ラッセルの「ディナー・ウィズ・ガーシュイン」人気に起因している面もありますが、後半のミスティーなバラード3連打部分も「新境地」として評価する向きがあるみたいです。

ヴォーカル・アルバムとしての純度はホリデイ作品を除くと一番高いかもしれませんね。
今後更に再評価が期待できる佳盤でございます。

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当時はCDとアナログのまだまだ共存時代。私もアルバムはCDで、シングルは7インチ・レコードで買ったりしていました。


All Systems Go

1. All Systems Go
2. Bad Reputation
3. Love Shock
4. Jeremy
5. Only the Fool Survives
6. Dinner With Gershwin
7. Fascination
8. Voices Cryin' Out
9. Thinkin' Bout My Baby

チャートデータ
アルバム
Pop 122位/R&B 53位
シングル
「Dinner With Gershwin」: Pop 48位/R&B 10位
「Only the Fool Survives」:AC 14位



「ディナー・ウィズ・ガーシュウィン」のセルフ・カバー収録。ブレンダの作品中最もライト・テイストなアルバム。

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2012年07月20日

ドナ・サマー『キャッツ・ウィズアウト・クロウズ』(84年)

Donna Summer:Cats Without Claws(84年)

83年、アトランティック・シティーで行われたコンサートの終了後、ドナは会場に残っていた500人ぐらいのファンと交流をしていました。その中にエイズに罹った男性ファンがいて、ドナに自分のために祈ってほしいとお願いし、ドナはそれに快く応じたそうです。その行為を見ていた他のファンが「そんな事は偽善に過ぎない」と発言、ドナがそれはどういう意味かと尋ね、そこからそのファンと2,3言葉を交わしました。熱心なクリスチャンとなっていたドナは「神様はこの世界を愛しているから独り子(イエス・キリスト)を遣わした」と言ったそうですが、この発言にそのファンが怒り出し、そこからさらに感情的な言葉の応酬になっていったそうです。その中でドナが「エイズがゲイ・コミュニティに広まったのは無謀な生活をしているからだ」と言った事で、その場にいた他のゲイのファンたちも怒りだしてしまった…。

これが、いわゆるドナの「エイズはゲイに対する天罰」発言の顛末のようです。

この件に関しては、「死後もデマを流布され続ける歌姫ドナ・サマー」というサイトに詳しくまとめられてますので、是非ご一読下さい→http://matome.naver.jp/odai/2133731638499210701?&page=1

本当の真実というのは映像や音声が残っているわけではないので検証のしようがないのですが、どうも感情的になって出た発言が切り取られ象徴的な言葉として流布されたというのが真相のようです。全く違うと言えば違いますけど、トシちゃんの「俺ぐらいビッグになれば…」と冗談めかして言った言葉が切り取られて伝えられたのと似ているように思います。ドナの場合、ボーン・アゲイン・クリスチャンとなっていた下地があり、ゲイ・コミュニティからの乖離が囁かれている中での騒動でしたから、余計にそういう発言をしてもおかしくないと思われ、彼女の弁明には一切耳が傾けられなかった模様ですね。人気に陰りが見え始めたアーティストには往々にして逆風ばかりが吹いたりしますが、まさにその典型的な例かもしれません。未だにこの発言に対する誤解が一部で解けていないというのがまた怖いところですし…。

ゲイ・コミュニティという大きな後ろ盾を失ったドナ。丁度時代も変革期を迎えており、エンターテイメント界の勢力地図も大きく変わろうとしている頃の出来事でした。


そんな「事件」が起こった翌84年に発売されたのが今回ご紹介のアルバム『キャッツ・ウィズアウト・クロウズ』。ドナにとって12枚目のオリジナル。アルバムになります。

前作の成功を受けてプロデュースはマイケル・オマーティアンが続投。丁度ロサンゼスル・オリンピックが開催された年でもあり、日本盤LPの帯には「ドナはいつだって愛の金メダリスト!」のキャッチがついてるのが微笑ましいというか何と言うか(smile)。

アルバムからの第一弾シングルに選ばれたのは80年代前半のオールディーズ・ブームを反映したのかドリフターズのカバー曲である「ゼア・ゴーズ・マイ・ベイビー」。
ドナにはリチャード・ハリスの「マッカーサー・パーク」やバリー・マニロウの「恋はマジック」等カバー・ヒットを放った実績があり、バラード・ナンバーを華麗なディスコ・ビートに改変するのはお手の物でしたが、こちらも現代的なポップ・ロック風アレンジを施して、ドナらしさ溢れるゴージャスなバージョンに仕上げて聞かせてくれます。PVも良い出来ですよね。





オープニングを飾るのはセカンド・シングルとなったデジタルと生音の融合感が素晴らしいハイパー・ポップス「スーパーナチュラル・ラブ」。続いてブギウギ調のノリの良いメロディが楽しい「イッツ・ノット・ザ・ウェイ」、「ゼア・ゴーズ・マイ・ベイビー」を挟んでファニーなメロディをレゲエ調の節回しを交えて歌うドナがこれまたファニーな「スザンナ」、不穏で近未来的なサウンド、預言者めいたドナの語りからポップに転調していく構成が面白い「キャッツ・ウイズアウト・クロウズ」でA面終了。
B面はメロディアスなデジタル・アーバン・ポップで離れていく恋人への思いを切なく歌い上げる「オー・ビリー・プリーズ」、うっすらとアラビアンなメロディも絡めるデジタル・グルーブ・ナンバー「アイズ」、泣きのサックスをフューチャーしたバラードでドナの情感溢れる熱唱が胸に迫る「メイビー・イッツ・オーバー」、マイアミ・サウンド・マシーンを彷彿とさせるライトなラテン・ポップ「アイム・フリー」、そして2年連続でのグラミー、ベスト・インスピレーショナル・パフォーマンス賞を受賞する事になるイエスへの祈りと自己の救済をテーマにしたバラード「許して」で美麗に幕となります。







私、前述のようにこのアルバムは『恋の魔法使い』や『情熱物語』等とほぼ同時期に手に入れて聴いていたのですが、当時はその3作に中にあって一番印象の薄いアルバムでございました。サウンドもポップ・ロックとしては平均的でしたし、楽曲も飛びぬけてキャッチーな作品があるわけではなかったので、数回聞いてもういいかなぁという感じだったんですよね。
そんな訳で今回久しぶりにじっくりとこのアルバムに耳を傾けてみたのですが、意外に個々の楽曲に個性があって、全体的に高止まりというかトータルでの完成度はかなり高かったんだなぁと認識を新たにいたしました。聞けば聞くほどに味が出てくる典型的なするめタイプのアルバムだったのですね。味が出る前に食べ止めちゃってたんだなぁ、私(反省)。

そんな『キャッツ・ウィズアウト・クロウズ』でございますが、ファースト・シングルの「ゼア・ゴーズ・マイ・ベイビー」はポップ21位、R&B20位という成績に終わり、アルバムもポップ40位、R&B24位と米国デビュー以降の最低記録を更新。…売れなかったのですね。ドナ自身前作よりもシンプルなサウンドを目指したと発言していますが、若干手堅過ぎ、でしたでしょうか。また前作のように鋭く社会問題に切り込む等の強いメッセージ性も後退してしまい、アルバムの核となる部分がぼやけたように感じられたのかも知れません。

また先に時代の変革期と書きましたけど、84年はマイケル・ジャクソンの『スリラー』が猛威を揮い、マドンナやシンディ・ローパーが頭角を現し、プリンスが「ビートに抱かれて」を特大ヒットさせる等、次世代のスターたちが大活躍をしていた年。ドナもこの『キャッツ・ウィズアウト・クロウズ』でヒットを逃しましたけど、同じく70年代から活躍してきたポップ・クイーンであるダイアナ・ロスやオリビア・ニュートン・ジョンも、翌85年リリースの『イートゥン・アライブ』と『麗しの瞳』で大コケしてしまいますから、新たな時代の波にはやはり勝てなかったのかなとも思います。

様々なトラブルに巻き込まれ、とうとうヒットのミューズからも見放されてしまったドナ。次のアルバムがリリースされるまでに3年のインターバルが必要となってしまいました。


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Cats Without Claws

A-1 Supernatural Love
A-2 It's Not The Way
A-3 There Goes My Baby
A-4 Suzanna
A-5 Cats Without Claws

B-1 Oh Billy please
B-2 Eyes
B-3 Maybe its over
B-4 I'm Free
B-5 Forgive Me

チャートデータ
アルバム
Pop 40位/R&B 24位
シングル
「There Goes My Baby」:Pop 21位/R&B 20位
「Supernatural Love」:Pop 75位/R&B 51位



マイケル・オマーティアンの代表作を2つ。
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2012年07月13日

ドナ・サマー『情熱物語』(83年)

Donna Summer:She Works Hard for the Money(83年)

ドナ・サマー、83年リリースの11枚目のオリジナル・アルバムです。

80年代に入っていまひとつ波に乗り切れない活動が続いたドナ。ゲフィンが用意したプロデューサーであるクインシー・ジョーンズとのプロジェクトも大きな成果を残せませんでしたが、このレコーディングにストリングス・アレンジとして参加していたマイケル・オマーティアンとドナは次のアルバム製作に取り掛かります。マイケルは70年代前半からミュージシャン兼プロデューサーとして活躍しており、80年のクリストファー・クロスの大ヒット・アルバム『南から来た男』でグラミー賞も受賞、ポップ・ロック系の手堅いサウンド作りで定評のある人物でした。

前作のうっぷんを吹き飛ばすようにドナは全曲でソングライトに参加、マイケルや夫ブルース・スーダノの助力を得てアルバムは完成します。が、またしてもゲフィンはこのアルバムの発売を拒否してしまうのです。度重なる期待外れの成績にゲフィン側のハードルは相当に高いものになっていたのでしょう。鉄壁の布陣で製作したクインシー作品もダメだった訳ですから、首脳陣が次の作品へ容易にGOサインが出せなかったというのも、何となくわかる気はいたします。

丁度その頃、80年から調停中だったドナがカサブランカ・レコードを相手に起こしていた契約解除の起訴についての判決が下されます。それは契約として後1枚作る予定だったアルバムをカサブランカからリリースしなければならないというものでした。話し合いの末、ゲフィンはマイケル・オマーティアンと録音したこの音源を提供することに同意。ゲフィンからすれば自社で発売する予定のないお蔵入り音源だからどうぞお好きにという感じだったのかもしれませんが、何とも皮肉なことにこれが80年代ドナ・サマーの最大のヒット・レコードになってしまうのです。

元々この題名だったのか、それともカサブランカ(実際発売されたのは当時カサブランカを吸収していたポリグラム・レーベル傘下のマーキュリー・レコード)に売られた時点で作り変えたのかはわかりませんが、そのタイトルが「She Works Hard For The Money」=「彼女はお金のために懸命に働く」だったのは、何とも出来過ぎですよね。

邦題は、(多分担当者が寝ずに考えたのでしょう)「情熱物語」と命名されたこの曲、ドナのポップ・ロック路線の完成形とも言えるタイトでキャッチーな楽曲、社会の底辺で働く女性にスポットを当てた喚起力のある歌詞、それをわかりやすく表現して更に女性の解放を訴える秀逸なPVも功を奏して発売と共に大ヒット。ポップでは3位、R&B部門では「バッド・ガールズ」以来2曲目となる1位を獲得する大成功を収め、グラミーの最優秀女性ポップ歌手部門にもノミネートされました。





アルバムはその「情熱物語」をオープニングに、ホームレス等の貧困問題を取り上げた「ストップ・ルック・アンド・リッスン」、イエス・キリストをテーマに84年のグラミー・ベスト・インスピレーショナル・パフォーマンス賞を受賞する「恋に裏切り(He's a Rebel)」、女性の人権問題について歌った「ウーマン」、子供の失踪事件を扱った「ピープル・ピープル」等、当時の世相を反映した社会問題を多く取り上げ、そこに英国のティーンによるレゲエ・バンド、ミュージカル・ユースをフューチャーしたトロピカルな「アンコンディショナル・ラブ」、東京の帝国ホテルを舞台に繰り広げられるエキゾチックなロマン・ミステリー(smile)「トキオ」、ゴスペル歌手マシュー・ウォードをフューチャーした爽やかで力強いデュエット・ナンバー「愛を心に」、スピリチュアルな雰囲気も漂わせる「恋の確信」等のラブ・ソングを配した構成になっています。







このアルバムは批評家筋からの評価も高く、一般的にも好評を持って迎えられましたが、私個人としては前作『恋の魔法使い』と同時並列的に聴いてしまったので、やたら完成度の高かったクインシー・プロの作品との比較で、タイトル曲が飛びぬけている以外はあまり強くアピールしてくる部分が正直なかったんですよね。今回改めて内容を吟味する機会を得て、そのメッセージ性や特に後半の楽曲の味わい深さ加減等、ちょっと印象を改めている次第です。

ドナはこのアルバムのリリース後、以前ご紹介した「ホット・サマー・ナイト」と題されたコンサート・ツアーを行います。そこでドナは彼女のキャリアに致命的な疵をつけてしまう「エイズはゲイへの天罰」発言をめぐる騒動に巻き込まれてしまうのですが…その顛末は次回に。




フランク・シナトラの「L.A. Is My Lady」のPV。クインシー・ジョーンズ・プロデュースのこの曲、クインシー人脈の豪華スターに混じってウェイトレス姿のドナが登場!


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She Works Hard for the Money

A-1 She Works Hard For The Money
A-2 Stop, Look And Listen
A-3 He's A Rebel
A-4 Woman

B-1 Unconditional Love
B-2 Love Has A Mind Of It's Own
B-3 Tokyo
B-4 People, People
B-5 I Do Believe (I Fell In Love)

チャートデータ
アルバム
Pop 9位/R&B 5位
シングル
「She Works Hard For The Money」:Pop 3位/R&B 1位
「Unconditional Love」:Pop 43位/R&B 9位
「Love Has A Mind Of It's Own」:Pop 70位/R&B 35位



ドナの5曲入りお手軽PV集。「情熱物語」と「アンコンディショナル・ラブ」が入ってます。
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2012年07月12日

ドナ・サマー『恋の魔法使い』(82年)

Donna Summer:Donna Summer(82年)

82年にリリースされたドナ・サマー10枚目のオリジナル・アルバムです。

80年にゲフィン・レコードに移籍したドナでしたが、第一弾となる『ワンダラー』が微妙な成績に終わり、続いて製作した『アイム・ア・レインボウ』もレーベル側の厳しい判断でお蔵入りとなってしまいました。長年ドナとコンビを組んできたジョルジョ・モロダーとピート・ベロッティはここでドナのプロデュースからの撤退を余儀なくされ、変わりにゲフィンが用意したプロデューサーがあのクインシー・ジョーンズでした。

当時のクインシーと言えばマイケル・ジャクソンの『オフ・ザ・ウォール』や自身のアルバム『愛のコリーダ』をヒットさせて大御所にして旬のプロデューサーでもあるという飛ぶ鳥を落とす勢いの真っ只中。
そんなクインシーにプロデュースを依頼して承諾させたゲフィン側の意気込みというのも相当のものがあったろうと思います。またその仕事を受けたクインシーもこれが特別な仕事だという認識をもっていたのでしょう、マイケルのアルバム以上に豪華な布陣を導入してアルバムを制作、高品質のブラコン・サウンドでドナの新たな世界を構築することに成功いたしました。レーベルもこれなら間違いなし!と太鼓判を押したんじゃないかと思うんですが…結果は残念ながらアルバム・シングルとも前作を下回る成績しか残せず、本作もかつての勢いを取り戻す起爆剤とはなりませんでした。

人気稼業の場合一度離れてしまったファンの心を取り戻すのは容易ではありませんし、またそういう流れの中にある時は何をしても上手くいかないというのは往々にしてあること。80年代最初のステップを踏み外してしまったというのはやはりドナにとって大きかったのかなと思います。また常にバーサイタルな才能を示しながらもやはりドナに求められていたのはディスコ/ダンス・クイーンとしての側面であり、新たなブラック・コンテンポラリー路線というのは思いのほか高いハードルであったのかもしれません。

まぁそんな訳で大きな成功には至らなかった本作なので、世間的にもほとんどこのアルバムに対する評価というのは聞こえてこないのですが、個人的には昔からこのアルバムは大好きで、ドナの代表作のひとつだと思っております。





軽快なリズムとホイッスルの音が高揚感を煽るブラコン・ファンク「恋の魔法使い」、ジェームズ・イングラムをフューチャーしたアーバンなメロディの「ミステリー・オブ・ラブ」、情念薫るミディアム・バラードで後にハートもカバーした「ウーマン・イン・ミー」、オリンピックのテーマ曲にしたらはまりそうな総大なワールド・ミュージック・テイストの「ステイト・オブ・インディペンデンス」、アメリカン・ドリームを歌った米国賛歌「リヴィング・イン・アメリカ」、ブルース・スプリングスティーン製作で一時期はデュエットにする案もあったという暴走ロックン・ロール「プロテクション」、ダイナミックなドナの雄叫びから厚みのあるホーンをフューチャーしてスタイリッシュに展開していく「ハーツ・ジャスト・ア・リトル」、おどろおどろしいオープニング(smile)のマイナーなミディアム・クルーヴ・ナンバー「愛をかなえて」、そして摩天楼に沈んでいく夕日を眺めているかのように美しくジャージーなスタンダード・ナンバーの「ラッシュ・ライフ」(ストリングス・アレンジは名匠ジョニー・マンデル!)という全9曲。







クインシー・ジョーンズのプロダクションに共通して言える事ですが、30年経過した今でもほとんどその音作りは古びることがなく、クインシーを始めロッド・テンパートン、デビッド・フォスター、マイケル&ダニー・センベロ、スティーブ・ルカサー、リチャート・ペイジ、ヴァンゲリス等のヒット・メイカー達が提供した楽曲もそれぞれに完成度の高い仕上がりになっています。

「ステイト・オブ・インディペンデンス」はバック・コーラスにマイケル・ジャクソンを始め、ライオネル・リッチー、スティービー・ワンダー、ディオンヌ・ワーウィック、ケニー・ロギンス、ブレンダ・ラッセル、クリストファー・クロス、マイケル・マクドナルド等錚々たるメンバーが参加しており、クインシーにとってこの時の経験が後の「ウィ・アー・ザ・ワールド」に活かされたと言われています。
大人数でのコーラス参加でそれぞれの声が識別出来るわけでもなく、正直クレジットで名前を見ても当時は実感が湧かなかったのですが、本当に最近のYou-Tubeは凄いもので、その時のレコーディング風景というのが現在はアップされて見る事が出来ます。これを見ると、改めて凄かったんだ!って思っちゃいますね(smile)。





ただしこの作品、曲も魅力的だしその雄大なスケール感も素晴らしいのですが、シングル・ヒットするには若干不向きなタイプの楽曲。また第一弾シングルとなった「恋の魔法使い」も、サビがコーラス主体であり、ドナの出番は後半になるほど少なく(ほとんど合いの手のみに)なるためどこか聴いていて物足りない印象があるんですよね。構成も面白いしトータルでの完成度は非常に高いのですけど、「ドナ・サマー」のシングルとしては若干アピールし難い楽曲だった事が、大きな成功につながらなかった原因かもしれません。

またドナは本作について「時々私はクインシー・ジョーンズのアルバムで歌っているように感じた」と述べているのですが、ドナとクインシーの間で「クリエイティビティ」=「創作権」に関する衝突というのが度々起こったらしいのです。

それまで楽曲のソングライトを中心にアルバムの制作に深く関わってきたドナと、プロデューサーとして当然のようにアルバム製作に対して主導権を握ろうとするクインシー。従来は気心のしれたメンバーと自由に意見交換しながらアルバムを作り上げていた(想像です)ドナにとっては、かなり窮屈なレコーディングとなってしまったようです。またレコーディングの時に丁度ドナは第三子を妊娠中であり、体調が万全でなかった事も一因となっているのかもしれません。

両者の間にはしばらく遺恨が残ったようで、クインシー人脈が中心となった「ウィ・アー・ザ・ワールド」にドナが参加しなかったのも、この辺りが影響してるのかなと邪知してしまいますね。

質の高いサウンドに最高のヴォーカル、時代とは上手くリンク出来ませんでしたけど、80年代のブラック・コンテンポラリーを代表する傑作だと思いますので、是非リイシューされた暁にはお聞きになってみていただきたいと思います。

本当にこれが売れなかったのは…残念。




「Sometimes Like Butterflies」→「恋の魔法使い」のB面に収録されたアルバム未収録曲です。ダスティー・スプリングフィールドのカバーもあり。


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Donna Summer

A-1 Love Is In Control(Finger On THe Trigger)
A-2 Mystery Of Love
A-3 The Woman In Me
A-4 State Of Independence

B-1 Livin' In America
B-2 Protection
B-3 (If it)Hurts just A Little
B-4 Love Is Just A Breath Away
B-5 Lush Life

チャートデータ
アルバム
Pop 20位/R&B 6位
シングル
「Love Is In Control」:Pop 10位/R&B 4位
「State Of Independence」:Pop 41位/R&B 31位
「The Woman In Me」:Pop 33位/R&B 30位



ダスティー「Sometimes Like Butterflies」収録のレア曲集。
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2012年07月07日

ドナ・サマー『アイム・ア・レインボウ』(81年/96年)

I'm a Rainbow(81年/96年)

ドナ・サマー、81年に製作されたアルバム。

…なんですが、ご存じのように未発売となり96年にCDでリリースされるまで長らくお蔵入りとなっていた作品です。

80年に鳴り物入りでカサブランカから新興のゲフィン・レコードに移籍をしたドナでしたが、その第一弾である『ワンダラー』は従来のような爆発的ヒット作品にはなりませんでした。

前回、『ワンダラー』については若干の方向性の迷いとWアルバムを続けてきた事でのインパクト不足があったように書きましたけど、プロデューサーであるジョルジョ&ピートも同じように考えざるをえなかったようで、ニューウェーブ的な要素も取り入れていた前作からよりヴォーカル・オリエンティッドな作風に路線を修正、黄金時代に習い再びのWアルバムとして作品を完成させました。ところがゲフィン側はこのアルバムの発売を拒否。ドナに別のプロデューサーと組んでアルバムを制作するように指示します。

そしてゲフィンが用意したプロデューサーがあのクインシー・ジョーンズ。ドナはクインシーとアルバムの制作に入り、ここで70年代前半から続いていたジョルジョ、ピート、ドナのトロイカ方式による制作体制は終焉を迎え、これ以降このチームで作品がつくられることはありませんでした。

ジョルジョ・モロダーはその後も「フラッシュダンス」や「トップガン」、「ネバー・エンディング・ストーリー」等主に映画絡みのヒットでスーパー・プロデューサー/作曲家の地位を堅持。ピート・ベロッティは残念ながらこれ以降表舞台に出る事は少なくなってしまいましたね。

お蔵入りとなった作品がまるごとリリースされるというのはかなり珍しい例だと思いますけど、幸運な事にこの作品はその珍しい例として96年に突如CDとして商品化されました。実際のWアルバムがこの曲順だったのかはわかりませんので、とりあえず各曲を簡単にご紹介したいと思います。
制作陣はジョルジョ、ピート、ドナの他にお馴染みのハロルド・フォルターマイヤーにキース・フォーシー、前年にドナと結婚したブルース・スーダノ、そして新たにシルヴァー・コンベンションの「フライ・ロビン・フライ」を作曲し、80年代以降は映画やテレビのスコア制作で活躍したシルベスター・リーバイが加わっています。





1. I Believe (In You)
「ヘブン・ノウズ」で共演したブルックリン・ドリームスのジョー・エスポジットとのデュエットによる南国風味のブラコン・ナンバー。
2. True Love Survives
マイナーでメロディアスな曲調が印象的な作品。
3. You To Me
『オール・システムズ・ゴー』収録の「ジェレミー」等に通じる温かみのあるポップ・バラード。
4. Sweet Emotion
80年代ならではの音使いが今となっては貴重な(smile)ポップ・ヴォーカル作品。
5. Leave Me Alone
ブロンディの「コール・ミー」(ジョルジョ制作)をドナで再現してみました、と言うような双子的位置関係にあるロック・ナンバー。
6. Melanie
きらめくシンセ音が印象的でどこか懐かしさのある軽快なポップ・ナンバー。
7. Back Where You Belong
アーバン・テイストのポップなブラコン作品。
8. People Talk
こちらも若干のアーバン風味を味付けにした軽快なシンセ・ポップ。
9. To Turn The Stone
バブパイプ(?)の音色を全編で奏でるアバの「アライバル」的な民族系ナンバー。このアレンジにインスパイアされたのか元々の予定だったのか、ソロ活動を始めたアバのフリーダが翌年この曲をカバーしてアルバムに収めています。
10. Brooklyn
ブルース・スーダノとの間に誕生した娘ブルックリンちゃんの誕生讃歌。
11. I'm A Rainbow
93年に発売されたベスト盤で先にお披露目されたアルバムのタイトル・トラック。切々と優しい情感を込めて歌い上げるポピュラー・ヴォーカル・ナンバーで、これはゲイ・ピープルに向けられた歌という解釈も出来るのかなと。
12. Walk On (Keep On Movin')
レゲエ風味のポップ・ナンバー。
13. Don't Cry For Me Argentina
ミュージカル「エビータ」の大人気曲のカバー。堂々としたドナの美しいヴォーカルが印象的。こちらも93年のベスト盤で初お目見えしました。
14. A Runner With The Pack
ラップと言うか語り風なヴォーカルがドナならではのアーバン・ポップ作品。
15. Highway Runner
映画「初体験/リッジモント・ハイ」のサントラに収録されて82年に発表された作品。「ホット・スタッフ」のテンポをぐっと抑え目にしたようなロック・ナンバー。
16. Romeo
こちらも映画「ブラッシュダンス」のサントラに収録されて先にリリースされた作品。オールディーズ・テイストのファニーなポップ・ロック曲。
17. End Of The Week
ドライヴィング・ミュージック系の明るいテイストのポップ・ナンバー。
18. I Need Time
威風堂々としたヴォーカルが印象的なクロージングに相応しいナンバー。80年代ドナの定番となるより厚みの増した歌声はここで完成された感じ。





前述したようにヴォーカルに重きをおいたポップ・ナンバーが並んでおり、完全にディスコ・クイーンから脱却したドナの姿が窺えます。曲調もバラエティに富んでいて楽しいものなのですが、今まで革新的なダンス・ナンバーで時代の先を行っていたドナ・サマー・チームの作品としては、いささか(言葉は悪いですが)凡庸な印象になってしまったのかもしれません。加えて前作『ワンダラー』が思った様な成果を上げられなかった事もゲフィン側の厳しい評価を後押ししたのかなと思います。

アルバムはお蔵入りとなりましたが、本作からは「ハイウェイ・ランナー」と「ロミオ」がサントラ曲としてリサイクルされました。また他のアーティストによって以下の楽曲がレコーディングされ、リリースされています。

ザ・リアル・シング:「アイ・ビリーブ・イン・ユー」(81年)
フリーダ:「トゥ・ターン・ザ・ストーン」(82年)※アバのフリーダ
ジョー・エスポジット:「トゥ・ターン・ザ・ストーン」(83年)
エイミー・スチュワート:「ユー・トゥ・ミー」「スウィート・エモーション」(83年)



…しかし、ゲイ・コミュニティーの象徴でもある「レインボウ」をタイトルに冠したアルバムが発売中止になるというのも、どこかその後のトラブルを予兆しているように思えてしまうんですよね。これは少し、考えすぎでしょうか。

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I'm a Rainbow

1. I Believe (In You)
2. True Love Survives
3. You To Me
4. Sweet Emotion
5. Leave Me Alone
6. Melanie
7. Back Where You Belong
8. People Talk
9. To Turn The Stone
10. Brooklyn
11. I'm A Rainbow
12. Walk On (Keep On Movin')
13. Don't Cry For Me Argentina
14. A Runner With The Pack
15. Highway Runner
16. Romeo
17. End Of The Week
18. I Need Time

チャートデータ
チャート入りなし。



それぞれ「To Turn the Stone」収録。
『I'm a Rainbow』もいつの間にか廃盤で馬鹿値に…。
posted by Suzu at 22:30| Comment(4) | TrackBack(0) | ドナ・サマー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月06日

ドナ・サマー『ワンダラー』(80年)

Donna Summer:The Wanderer(80年)

80年にリリースされたドナ・サマー9枚目のオリジナル・アルバム。

80年、ドナはそれまで所属していたカサブランカ・レコードとの契約解消を求める起訴を起こします。
ディスコ・レーベルとして70年代後半に大躍進を遂げたカサブランカでしたが、ディスコの終焉とともにその勢力にも衰えを見せ始め、同80年には社長二ール・ボガードを不正会計と売上不振により解雇。

そんなカサブランカのお家騒動の中、ドナが新天地として選んだのが、70年代にローラ・ニーロやCS&N、ジャクソン・ブラウン等を発掘し、アサイラム・レコードの社長としてリンダ・ロンシュタットやジョニ・ミッチェル等を手掛けたデビッド・ゲフィンが新たに設立したレコード会社、ゲフィン・レコードでした。
やり手のゲフィンはジョン・レノン、エルトン・ジョン、エアロスミス等錚々たる顔ぶれと契約を交わしていきますが、そのゲフィン・レコードの第一号契約アーティストがドナであり、初のレーベルとしてのリリース・レコードが『ワンダラー』でした。当時のドナの勢いからすればこれは当然の事と言えるかもしれませんね。

プロデューサーは従来と同じジョルジョ・モロダー&ピート・ベロッティが務め、ハロルド・フォルタマイヤーやキース・フォーシーが参加とブルックリン・ドリームスのメンバーが抜けた他はほぼ前作と同じラインナップで制作されております。

ファースト・シングルに選ばれたのはアルバムのタイトル曲でもある「ワンダラー」。トリップ感覚のあるニューウェーブ・タッチのエレクトロ・ポップ…とでも言えばいいのでしょうか?エルビス・プレスリー風のちょっとファニーなドナのヴォーカルも併せ、新しいような懐古的でもあるような、とても不思議な印象を残す楽曲です。シングル・チャートでは3位まで上昇、ただし当時のドナのニュー・アルバムからの第一弾シングルとしては若干物足らない成績だったでしょうか。




イントロのメロディー&ピアノ・ソロがかっこいい「ルッキング・アップ」、ガツッ、ガツッとしたビート感が面白い「コールド・ラブ」、しなやかに歌声を操るブラコン・テイストの「愛の隠れ場所」、メロディアスなロック・ナンバー「涙の祈り」、オールディーズ風ロックの「ストップ・ミー」等、よりワイルドにポップ・ロック路線を推し進めた曲がある一方、「ブレイク・ダウン」では従来のハイ・キーな歌声を全編で聞かせたり、「大いなる幻影」なんていうタイトルそのままの幻想的でアートっぽい作品があったりと、どこか試行錯誤感のある本作。




そしてラストを飾っているのはイエス・キリストへの愛をストレートに歌い上げた「イエスを信じて」なんですが、これはこの時期彼女がボーン・アゲイン・クリスチャンになった事により収録されたポップ・ゴスペル。ボーン・アゲイン・クリスチャンとは大人になってからキリスト教に改宗したり、それまでの自分の行いを反省して生まれかわったように熱心にキリスト教を信仰するようになった人を表す言葉で、ドナの場合は後者のよう。

「愛の誘惑」という直接的に性愛を表現したような楽曲でスターになった彼女は、セックスの権化に祭り上げられてしまった自分を嘆き(または反省し)、救いを宗教へ求めることになったようです。この事も後に起こる騒動の火種になるわけですが、それはまた次回に。

ロック、ポップ、ニューウェーブにゴスペル。バラエティに富んでいる、というと聞こえはいいですが、やはりどちらかというと主軸がぶれているというか方向性の迷いが露呈してしまい、中途半端な印象を抱かせる作品になってしまった気がします。
また4作品連続でWアルバムをリリースしてきた事も影響し、こじんまりとまとまってしまった感も否めないんですよね。

アルバムはトップ10に入らず、プラチナ・セールスを続けてきたセールスもゴールド止まり。大きな期待を寄せられていただけに、この成績はドナにとっては「失敗」と言えるものでした。

そしてドナな次作で大きな転換を迫られる事になるのです。


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The Wanderer

A-1 The Wanderer
A-2 Looking Up
A-3 Breakdown
A-4 Grand Illusion
A-5 Running For Cover

B-1 Cold Love
B-2 Who Do You Think You're Foolin'
B-3 Nightlife
B-4 Stop Me
B-5 I Believe In Jesus

チャートデータ
アルバム
Pop 13位/R&B 12位
シングル
「The Wanderer」:Pop 3位/R&B 13位
「Cold Love」:Pop 33位
「Who Do You Think You're Foolin'」:Pop 40位



『ワンダラー』も現在廃盤のため市場では馬鹿値がついてます。リイシューされるといいのですけど。




posted by Suzu at 21:45| Comment(4) | TrackBack(0) | ドナ・サマー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年06月24日

ポール・ジャバラ 『ザ・サード・アルバム』(79年)

Paul Jabara:The Third Album(79年)

そんな訳でポール・ジャバラさんなんですけど。

ドナが亡くなった際アレサ・フランクリンもあの「ラスト・ダンス」を忘れられる?とコメントしているように、ドナの人気曲アンケートでもとれば必ず首位争いを繰り広げるであろう「ラスト・ダンス」。
そして前回熱語りをしてしまったバーブラ・ストライサンドとのデュエット曲「ノー・モア・ティアーズ(イナフ・イズ・イナフ)」。この2曲のコンポーザーというだけでもドナ・サマーの歴史に偉大な足跡を残したと言っていいポールさんな訳ですが、実はあまり目立ってませんけど、スタジオ録音におけるドナ・サマーとの共演曲が3曲もあるのです。

カサブランカから77年〜79年の間にリリースされた3枚のポールさんのリーダー作品に1曲ずつ収録されていて、ファースト・アルバムの『シャット・アウト』に同名タイトル曲、セカンド・アルバムの『キーピング・タイム』に「サムシングス・ミッシング」、そして『サード・アルバム』に「ネヴァー・ルーズ・ユア・センス・オブ・ユーモア」という具合。それぞれYou-Tubeに音源がアップされているので以下お聞きいただきたいと思います。



「SHUT OUT」
ドナのハイトーン・ヴォイスと得意の語りをフューチャーしたエンターテイメント型ディスコ・ナンバー。




「Something's Missing In My Life」
カレン・カーペンターやマーシャ・ハインズの歌ったバージョンでも知られるナンバーをドナがゴージャスに歌いあげたバラード。




「Never Lose Your Sense Of Humor」
冒頭に「Foggy Day」が流れますがドナが登場する部分から同曲がスタート。ほんのり哀愁系メロディーも漂わせるディスコ・ナンバー。最後にして一番デュエットらしい仕上がり。


でもってそういえば…と家に積まれてるCDを漁ったら出て来ましたポールさんの『サード・アルバム』。新古品が安かったので購入し、そのままツンドク状態だったのですけど、せっかくなので今回初めて開封してみた次第です。

タキシードでキメたポールさんの横に並ぶウェディング・ドレスの女性、ジャケットが小さいのでわかりづらいですけど、実はこれもポールさんなのです。

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レコードA面は、朝を告げる一番鶏の鳴き声からウェディング・マーチ等もモチーフに取り込んだ「ディスコ・ウェディング」、そして仲良く飛行機でプエルト・リコへ新婚旅行に出かける様子をジェット・ストリーム風に綴った「ハネムーン・イン・プエルト・リコ」、そしてプエルト・リコで熱い初夜を迎えた後、突然始まった大喧嘩で離婚に至ってしまう「ディスコ・ディポーズ」の3曲による悲喜劇メドレー。



こんな事を言っては語弊があるかもしれませんけど、ディスコならではのお馬鹿コンセプト(smile)。しかも新郎、新婦、機長、フライトアテンダント等出てくる登場人物をジャケのコスプレよろしく全てポールさん一人で演じ分けております。

B面はスタンダードとは同名異曲ながらスタンダード風の「フォギー・デイ」に始まり、ドナをフューチャーした前述の「ネヴァー・ルーズ・ユア・センス・オブ・ユーモア」、そしてAOR調のバラード「ジャスト・ユー・アンド・ミー」という3曲。AB面通しても全体では30分に満たず、このあたりもディスコ時代ならではのお手軽さと言ったらお叱りを受けるでしょうか。

ドナとのデュエット曲の題名がそのまま彼の信条と言えるかもしれませんけど、自身の作品の表現にユーモア感覚を大切にしていたというポールさん。実はこのアルバム・ジャケットも、3枚目のアルバムと言うことにかけて、大好きなバーブラ・ストライサンドの『サード・アルバム』のジャケットをそのまま再現したりしているのです。

見ても聴いても忘れられないダンス・クラシックのひとつ、ウェザー・ガールズの「ハレルヤ・ハリケーン」もそういえば彼の作品ですし、ダイアナ・ロスがワーク・アウトに興じた「ワーク・ザット・ボディ」等も個人的には忘れられない楽曲。ホイットニー・ニューストンを初めてリード・ヴォーカルに抜擢してレコーディングさせたのも実は彼なのです。

惜しくも92年にエイズで他界してしまったポールさんですが、その作品は永遠に私たちを楽しませてくれることでしょう。一昨年リイシューされたこの『サード・アルバム』のライナーに、彼を失った事はつらい出来事でしたとコメントを寄せていたドナも彼の下に旅立ってしまいました。今頃天国でドナに、君ももう来ちゃったの?早いよーなんて言いながら、ねぇ、この新曲どう?なんて、やってるかもしれませんね(smile)。

最後にライナーに載っていた、ポールさんが80年にソングライター・マガジンのインタビューに寄せた言葉を紹介させていただきます。
「僕は音楽を愛し、劇場を愛し、映画を愛している。僕の仕事は僕を最高の幸せに導いてくれるんだ。これが僕の愛、僕の人生、僕の生きる目的なんだよ。」

チャートデータ
アルバム
チャート入りなし
シングル
「Never Lose Your Sense Of Humor」:チャート入りなし
「Disco Wedding」;チャート入りなし



馬鹿値ですけど、当時19才のホイットニーが歌う「エターナル・ラブ」が収録されたアルバム。ウェザー・ガールズにリータ・ギャロウェイと好事家にはたまらない人選。

posted by Suzu at 00:00| Comment(3) | TrackBack(0) | ドナ・サマー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年06月20日

ドナ・サマー『愛の軌跡 ドナ・サマー グレイテスト・ヒッツ』(79年)

Donna Summer:On the Radio Greatest Hits Volumes I & II

79年10月にリリースされたドナ・サマー初の公式グレイテスト・ヒッツ。

前回触れましたけど、4作品連続での2枚組LPとしてリリースされ、全米1位を獲得した大ヒット作でございます。
新曲2曲をA面1曲目とD面に配し、残りをこれまでのヒット曲のノン・ストップ・メドレーで構成した本作。

私ごとですが初めて聴いたドナの作品がこのアルバムのCD盤でしたが、CDだとさらにそれぞれの面のつなぎ目がなくなって、さながら70分の一大メドレーを聴いているような錯覚に陥るんですよね。小気味よく繰り出されるキャッチーなヒット曲の数々が楽しくないわけがなく、購入当時はしばらくこのCDばかり聴いていたように思います。その後色んなベスト盤が出ましたけど、オリジナル・アルバム・テイストで楽しめるという点でもこの作品は出色。ドナ・サマーをこれから聴いてみようなんて方がもしいらっしゃったら、私は迷わずこのCDをお薦めしたいと思います。

新曲はジョルジョ・モロダーが音楽を担当した映画「フォクシー・レディー」のサントラにも収録され、本盤のタイトルにもなっている「オン・ザ・レイディオ」と、バーブラ・ストライサンドとのデュエット作品「ノー・モア・ティアーズ(イナフ・イズ・イナフ)」の2曲。

「オン・ザ・レイディオ」は「ラスト・ダンス」や「ディム・オール・ザ・ライツ」等の系譜に属するロマンティック・タイプのディスコ・ナンバーで、恋人が自分に宛てた手紙が何故だかラジオで読まれて吃驚という可笑しなシチュエーションの曲ですけど、スローからアップにという鉄板の構成が生きたドナの忘れられない代表曲のひとつ。
本盤にはオープニングの通常バージョンとラストのロング・バージョンの2曲が収録されています。





そしてもう1曲がこの作品のハイライトと言うべきバーブラ・ストライサンドとのデュエット曲「ノー・モア・ティアーズ(イナフ・イズ・イナフ)」。
この曲は作者であるポール・ジャバラの尽力なくして生まれなかった作品といっていいかもしれません。

70年代初頭からミュージカル俳優として活躍していたポール・ジャバラはシンガーソングライターとして当時カサブランカ・レコードに籍を置き、歌手活動も行っていました。
そんな彼に舞い込んできたのが当時映画界に乗り出そうとしていたカサブランカ・レコードがモータウンと共同出資で企画した映画『サンクス・ゴッド・イッツ・フライデー』への出演と楽曲提供でした。彼の作った「ラスト・ダンス」は同じく出演者でありレーベルメイトであるドナ・サマーが歌い大ヒット。ドナ・サマーはこの曲でグラミー賞を受賞し、ポールも作者としてアカデミー賞の最優秀主題歌賞を受賞する大成功を収めます。

一躍注目のライターに躍り出たポールにさらなる大物からの楽曲提供依頼が舞い込みます。それは子供の頃からの彼のアイドルであるバーブラ・ストライサンドからのものでした。自分が主演する映画の主題歌を書いてほしいという依頼に天にも昇る気持だったというポール、バーブラの家に曲を持っていく段になってもまだ現実の事と信じられなかったそうです。彼はバーブラの気に入りそうなバラード・タイプの曲とアップ・テンポのバージョンの2つを用意して持って行ったそうですが、意外にもバーブラが選択したのはアップ・テンポのバージョン。これが件の「メーン・イベント/ファイト」で、このゴージャスなディスコ大曲は79年夏にチャートの3位まであがるヒット曲になり、ポールはバーブラの信頼を勝ち得る事にも成功します。
(ちなみにメイン採用とならなかったバラード・バージョンのほうもサントラには収録されています。)

そんな二人のディーヴァとのコネクションを持ったポールは、何とも大胆なことにこの二人をデュエットさせようという計画をぶち上げます。書き上げた曲「イナフ・イズ・イナフ」を話の流れとしてはまずドナ側に聴かせて賛同を得、さて次にバーブラへ。どういう風にバーブラに企画を持ちかけドナと引き合わせるかを思案しているところに、バーブラ主催の昼食会があることを知ったポールはここで一計を案じます。バーブラの家に電話をかけ、バーブラの息子ジェイソンに昼食会へ友人を連れて行ってもいいかお母さんに聴いてほしいと頼んだのです。もちろんその友人はドナ・サマー。
ドナの大ファンだったジェイソン(これ、きっとポールは知っていたんでしょうね)は大興奮。こうして昼食会にドナを連れていくことに成功したポールはこれをきっかけに二人のデュエット企画を推し進めていくことになります。

CBSとカサブランカという所属レーベルの違う二人、しかも両者の看板スター同士の共演ですからこの企画が正式にまとまるまでには相当の苦労があっただろう事は想像に難くないのですが、とにかくこの世紀のデュエットは実現することに決定いたしました。

GOサインが出てからの有名な逸話としては二つ。
当時バーブラは後に『ウェット』と題されて発売される水、雨、涙等の濡れ物をコンセプトにしたアルバムの制作にとりかかっており、「濡れ物」に関係ないこの楽曲はアルバムの収録を見送るという事になりそうだったらしいのですが、どうしてもアルバムに収録してもらいたかったポールは曲の題名を「イナフ・イズ・イナフ」から「ノー・モア・ティアーズ(イナフ・イズ・イナフ)」と変更し、曲の頭にバーブラ好みのバラード・パートを追加、歌詞も「雨が降ってるわ、土砂降りよ…」と「涙」と「雨」を盛り込んで見事にこの課題をクリアしてアルバム収録にこぎつけたんだそうです。

また楽曲を聴いていただければわかるように、とにかくバーブラとドナ、お互いのプライドと意地をかけたガチンコの歌合戦が繰り広げられているのですけど、リハーサルかレコーディングの時、ひとつの音をバーブラより長く保てないドナは、それでも何とかバーブラについて行こうと無理して声を出し続け、めまいを起こして腰かけていた椅子からすべり落ちてしまったらしいのです。で、それを見ていたバーブラが大丈夫?と声をかけたとかなんとか。このデュエットは別々に録音されたと言われていたのでスタジオも別かと思っていましたけど、同じブースに入って歌うということはなかったにせよ、同じスタジオで顔を合わせる機会はあったみたいですね。
お互いにそれぞれの存在に脅威を感じ、しかも何故相手が自分に脅威を感じてるのかわからないみたいだったというのが当時のスタッフの弁。





こうして完成された楽曲は、バーブラのオリジナル・アルバム『ウェット』とドナの『グレイテスト・ヒッツ』に収録され、シングルは米国では7インチ盤がCBSから、12インチ盤がカサブランカから発売され、外国ではその逆にという住み分けでリリースされることになりました。
最近では大物同士のコラボなんて珍しくもありませんけど、当時はまだそういう事が頻繁には行われていなかった時代。しかもポップスに進出していたとは言えポピュラー畑のバーブラとディスコ・クイーンのドナの共演なんて仰天もののインパクトだったのではないでしょうか。しかも出来上がってきたのはお互いの火花がスパークしあうスリリングな超ド級の一大エンターテイメント作品。

もちろんこの話題のデュエットは発売と同時に大ヒットとなり、バーブラとドナにとってそれぞれ4曲目の1位獲得曲となります。

この楽曲には大きくわけて3つ、シングル・バージョンとバーブラのアルバム『ウェット』に収録されたエクステンディッド・バージョン、そしてドナのアルバムに収録&12インチ発売された一番長尺なダンス・ミックス・バージョンが存在します。シングル・バージョンはせっかくのディーヴァ決戦を堪能するにはあまりにも短すぎ。

必然的に聴くならそれぞれのアルバムに収録されたバージョンになるのですが、素直に二人のヴォーカル対決に焦点をあてたバーブラの『ウェット』バージョンが個人的には一番のお気に入りです(↑がそれ)。

ドナのアルバム・バージョンはよりディスコのフィールドに近づけるべくビートや効果音的なものをプラス、『ウェット』バージョンにはないメロディー・パートも追加されたりとさらに派手な仕掛けが施されていて楽しいは楽しいのですが、どーも、バーブラの録音レベルを下げ気味にしてあったりと色々バランスが悪いんですよね。バーブラ・ファンの色眼鏡かもしれませんが、まっこう対決では歩が悪いと判断したカサブランカ側の差し金か?なんて事も思ったり。そんなことしなくても充分ドナが素晴らしいのは『ウェット』バージョンが証明しているところなんですけれど。

『ウェット』でしかこのバージョンを聴けないのが残念なのですが、ドナ・サマーのファンの方も一度はこちらのバージョンを聴いてみていただきたいと思います。

ディスコ・クイーンとして君臨し、数々の偉業を成し遂げたドナはこの『グレイテスト・ヒッツ』で鮮やかに70年代とディスコ時代を締めくくり、来たる80年代に乗り出していくことになります。その道のりは決して平坦なものにはならない(というか激動を極めることになる)のですが、それは次回以降で。

※文中の「ノー・モア・ティアーズ」についての逸話は「ビルボードNo.1ヒット」やバーブラの伝記等から引用しました。誇張や事実との相違等もあるのかなぁと思います。


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※2枚組で発売されたのにわざわざVol.1、Vol.2としたのはそれぞれ1枚物としてもリリースされたため。
※「ノー・モア・ティアーズ」の当時の日本盤は「30センチ(45回転)ジャンボ・シングル」という表記。まだ12インチという言葉は一般化してなかったんですね。




こちら、You-Tubeで見つけたのですが、一緒に歌ってます…かね?


On the Radio: Greatest Hits Volumes I & II

A-1 On The Radio
A-2 Love To Love You Baby
A-3 Try Me, I Know We Can Make It
A-4 I Feel Love
A-5 Our Love

B-1 I Remember Yesterday
B-2 I Love You
B-3 Heaven Knows
B-4 Last Dance

C-1 MacArthur Park
C-2 Hot Stuff
C-3 Bad Girls
C-4 Dim All The Lights
C-5 Sunset People

D-1 No More Tears (Enough Is Enough)
D-2 On The Radio (Long Version)

チャートデータ
アルバム
Pop 1位 / R&B 4位
シングル
「No More Tears (Enough Is Enough)」:Pop 1位 / R&B 20位
「On The Radio」:Pop 5位 / R&B 9位





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2012年06月14日

ドナ・サマー『華麗なる誘惑』(79年)

Donna Summer:Bad Girls(79年)

79年4月にリリースされたドナ・サマー7枚目のオリジナル・アルバム

ドナの作った記録で今後誰も超えられないだろうというものがひとつありまして、それはWアルバムのリリースに関するもの。
77年の『ワンス・アポン・ア・タイム』から79年の『オン・ザ・レイディオ〜グレイテスト・ヒッツ』まで4作連続でLPレコード2枚組による作品をリリース。しかも『ライブ・アンド・モア』『華麗なる誘惑』『グレイテスト・ヒッツ』に至っては3作連続でチャート1位を獲得するという華々しい成績を残しています。いかに当時ドナのチームがアグレッシブな活動を行い、勢いに乗っていたかがわかる事象ですよね。

前年グラミー賞の最優秀女性R&B歌手賞を受賞し、『ライブ・アンド・モア』と「マッカーサー・パーク」でアルバム・シングル共にチャート制覇を成し遂げたドナ。その勢いに乗って更なる攻勢を仕掛けたのが本日ご紹介の『華麗なる誘惑/Bad Girls』でございます。

アルバムのA、B面は従来のディスコ/ダンス路線をベースにしながらも、そこにロック、ポップ、ファンク、カントリー等の要素を盛り込んでミクスチャーに仕上げた作品集。

A面の巻頭を飾っているのは近年CM等にも使われて日本では最もポピュラリティーが高いんじゃないかと思われる「ホット・スタッフ」。下世話感満載にして大胆にロック・ビートを取り入れたワイルドな本作は、日本で言ったらアン・ルイスさんの「六本木心中」等の「踊れるロック」の源流ともいうべき1曲で、ドナに新設されたばかりのグラミー賞ロック部門の栄えある第一回の最優秀女性歌手賞を受賞させることになりました。



この受賞に関してはグラミー受賞という栄誉以上に、ロック部門でドナぁ?という当時の混迷ぶりを伝える珍エピソードとして語られる事のほうが残念ながら多いですよね。

ちなみにこの第一回のロック部門のノミネート者は他にシンディー・バーレンズ、リッキー・リー・ジョーンズ、ボニー・レイット、カーリー・サイモン、タニヤ・タッカーというSSW系やらカントリーやらとヴァラエティに富んだ面々。純粋にロックだなぁというのはボニー・レイットぐらいでしょうか。2回目からはパット・ベネターという大本命が現れるので表面的にはそれらしくなってきますけど、ノミネート者を見ると80年代中ごろまではそんなに第一回と大差はない感じ。ドナも第2回、第4回とその後もノミネートを受けていたりしています。

そしてビートを途切れさせる事なく続くのがドナの最大ヒット曲「バッド・ガールズ」。この曲は彼女のスタッフが「街の警官はドナを娼婦と同じだと言っているらしい」という噂話をドナにしたのをきっかけに生まれた曲だそうで、憤慨したドナはバッド・ガールズ、悲しい女たち、でも(それを買う)あたなたちといったいどこが違うっていうの?という痛烈な皮肉をこめて歌にしたんだそうです。
印象的なツーツー、ヘイ、ピーピーという掛け声は、クラクションを鳴らして娼婦を呼びとめる擬音をモチーフにしたもの。



でまたこの曲、発表前に当時のカサブランカ・レコードの社長ニール・ボガードが聴いて、同時期に同社に所属してディスコ路線を歩んでいたシェールに歌わせようという案もあったらしいんです。確かにシェールにもぴったりと言えばぴったりな曲。当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったドナにとっては必要がなかったかもしれませんが、いっその事デュエットなんていうのもありだったかな?なんて今の時点で想像するのは楽しかったりいたします(smile)。

ファンキーな「愛のゆくえ」、翌年リリースされたベスト盤のタイトルにもなり本作からの最後のシングルとなったマイナー調ポップスの「ウォーク・アウェイ」でA面終了。

B面は上記2曲の大ヒットに続いてチャート2位まで上った「ディム・オール・ザ・ライツ」からスタート。実はこの曲と同時期にリリースされて爆発的なヒットとなったのが件のバーブラとのデュエット「ノー・モア・ティアーズ」。同時にトップ3入りのヒットになっていましたので、もしもう少しデュエット曲のリリースが遅ければ、勢い的には充分1位も狙えていたのかなと思います。ロマンティックで少々カントリー風味もあるこの曲、もとはロッド・スチュワートのために書かれたものだそうですが、諸般の事情で見送られた模様。ドナ・バージョンは途中からディスコ・ビートが入ってきますけど、ロッドならそのままスロー・テンポをキープしての素敵なロッカ・バラードに仕上げていたでしょうかね。



余談ですがシェール、ロッドと引く手あまたなドナですけど、実際にドナの書いた曲を歌ってヒットさせたのは意外にもポップ・カントリーの第一人者であるドリー・パートン。その提供曲「スターティング・オーバー・アゲイン」はこの『華麗なる誘惑』と同じ80年にカントリー・チャートで1位を、ポップ・チャートでも36位を記録するヒット曲になっています(これも当時のドナの勢いを物語っていますね)。
「愛の旅路」「ワン・ナイト・イン・ア・ライフタイム」「今宵をともに」とA面の「愛のゆくえ」と同じくグルーヴィーなファンク・タイプの曲を並べてB面は終了

続くC面は当時のイメージからすれば驚きを持って迎えられたであろうダンスなしのバラード4連打。ピアノによる美しいイントロのメロディが印象的な「オン・マイ・オナー」に始まり、真摯に切々と歌い上げる「永遠の愛」や「オール・スルー・ザ・ナイト」、アーシーに盛り上げていく「愛しのベイビー」という美しい歌声とその実力のほどを十二分に生かした作品群を堪能することが出来ます。

そしてラストのD面は従来のディスコ・ファンの期待を裏切らないように用意されたダンス・フロア・サイド。エレクトロなビートが縦横に駆け巡る「アワー・ラブ」、全編ファルセットで歌われ「アイ・フィール・ラブ」を髣髴とさせる「ラッキー」、軽快なリズムにどこかしらチャイニーズなメロディを絡めた「サンセット・ピープル」という正にフロア・モード全開な3曲。オープニングの「ホット・スタッフ」も何となく東洋的な音使いがされていますけど、「サンセット」は舞台設定としての「バッド・ガールズ」等と併せて同一の世界観を感じさせる1曲になっています。



従来のファンも満足させ、新しい層へもアピールを行う。1枚のアルバムの中でそれをやろうとするのはなかなか難しいものですが、ダブル・アルバムという大容量収録の特性を生かし、しかもアナログ・レコードならではのセパレートされた4つの空間を使い分けることで、過去、現在、未来を違和感なく鮮やかに繋げてみせる構成が見事な本作。
手軽にCDでずらっと聴いてしまうのは、本当はイケない、と言うか勿体ないのかもしれませんね。

ちなみに03年にリリースされたデラックス・エディション盤は、『華麗なる誘惑』+12インチコレクションとしてリリースされていたアルバム『ダンス・コレクション』+αという仕様。
リリース当時、せっかくのデラックス盤なのにほとんど既発のバージョンばかりだったのでなんだよーって感じでしたが、唯一目玉トラックだったのが「バッド・ガールズ」のデモ・バージョン。ただし、多くのデモ・バージョンがそうであるように、これも珍しくて貴重だなぁという意外、あまり聞くところがないんですよね。完成バージョンと比較するとどうしても間延びした印象は否めませんから…。

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Bad Girls

A-1 Hot Stuff
A-2 Bad Girls
A-3 Love Will Always Find You
A-4 Walk Away

B-1 Dim All The Lights
B-2 Journey To The Center Of Your Heart
B-3 One Night In A Lifetime
B-4 Can't Get To Sleep At Night

C-1 On My Honour
C-2 There Will Always Be A You
C-3 All Through The Night
C-4 My Baby Understands

D-1 Our Love
D-2 Lucky
D-3 Sunset People

Deluxe Edition
E-1 Bad Girls(Demo Version)

チャートデータ
アルバム
Pop 1位 / R&B 1位
シングル
「Hot Stuff」:Pop 1位 / R&B 3位
「Bad Girls」:Pop 1位 / R&B 1位
「Dim All The Lights」:Pop 2位 / R&B 13位
「Walk Away」:Pop 36位 / R&B 35位


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2012年06月12日

ドナ・サマー『ライブ・アンド・モア』(78年)

Donna Summer:Live And More(78年)

やりかけだったドナ・サマーのオリジナル・アルバム・レビュー、少しずつ完成させていきたいと思います。

77年から78年にかけて行われた『ワンス・アポン・ア・タイム・ツアー』から、78年6月に行われたロサンジェルス、ユニバーサル・アンフィシアターでの公演を収録したライブ作品。

セクシー・ディスコ路線からより本来の姿であるエンターテイナー路線に切り替えを行っていた時期の作品で、転機となったのは自身も出演した映画『サンクス・ゴット・イッツ・フライデー』からの「ラスト・ダンス」の大ヒット。従来の浮遊感のあるウィスパー・ヴォイスから一転、野太さも感じさせる歌声で力強く歌い上げたスケールの大きなこのディスコ・ポップ作品は今まで以上の支持を集め、ドナをもう一段階上のスーパースターへ押し上げるきっかけとなります。

そしてさらなる決定打となったのが本作。アナログ・レコード2枚組、『ライブ・アンド・モア』という名前のとおりA〜C面までにライブ音源を、D面にスタジオ録音の新曲を収めると言う斬新な構成で、このスタジオ録音の部分からドナ初のポップ・チャート1位となる「マッカーサー・パーク」、続いて4位まで上がった「ヘブン・ノウズ」というヒットが生まれ、ドナ黄金時代の幕開けとなります。
ピーター・フランプトンの『カムズ・アライブ』等という例外はありますが、通常グレイテスト・ヒッツ的な選曲となるライブ盤からはヒット曲が出にくいもの。シングル・ヒットが出る事で連動してアルバムが長く売れるという傾向を持つあちらのマーケットとしては若干効率が悪いわけですが、そこで1面を削って新曲を収めればシングル・ヒットも狙いやすくなるというのは、非常によく出来たマーケティング戦略だったと思います、

まぁこの形式でヒットを放ったのは実際ドナしかいないのですけど(smile)、ディオンヌ・ワーウィックは全く同じ形式の2枚組ライブ・アルバム『ライブ・アンド・アザワイズ』をリリースしてますし、我が日本では岩崎宏美さんがその名もズバリ『ライブ・アンド・モア』をリリース、内外に影響を与えたのは間違いありませんです。

さてその中身ですけど、A面はニュー・アルバム・サイドと言うことで、リリースしたての『ワンス・アポン・ア・タイム』からノン・ストップで6曲を披露(1曲だけサードから「スプリング・アフェア」が選曲)。レコードよりもさらにテンポ・アップして語りもライブらしくヴォルテージが高め。一気にドナの世界に引き込まれます。
そしてB面はオールド・デイズ・サイド。冒頭からオリジナルのスタンダード風ナンバー「オンリー・ワン・マン」をブルース歌手よろしく熱唱するドナ。続く「アイ・リメンバー・イエスタデイ」「ラブズ・アンカインド」で聴かせるファニーなお子様声との落差は相当なものです。そしてガーシュイン等のスタンダードをメドレーで聴かせ、バーブラの「追憶」、一人娘のミミに捧げた「ミミの歌」と展開していきますが、このパートは完全に「ディスコ歌手」から「エンターテイナー」へと変貌を遂げたドナの姿を印象づけるのに成功しています。ユニセフのチャリティー・イベントでも歌われた「ミミの歌」の最後にはそのご本人ミミちゃんが登場。おやすみなさいの挨拶が、とっても可愛らしいのです。
そしてC面はヒット・シングル・サイド、「愛のたわむれ」〜「愛の誘惑」〜「アイ・フィール・ラブ」、ラスト高らかに「ラスト・ダンス」と鉄板の構成。会場大熱狂のうちに幕となります。






ライブとして非常に流れのよい構成なので聴いている分には全く違和感がないのですが、当時のセット・リストを見るとオープニングのニュー・アルバム部分はライブ後半の出だしだったり、オールド・デイズ部分は前半の最初のほうだったりと実際の曲順とはかなりバラバラ。レコード用にライブ音源を再構築した感じになっています。収録されなかった曲もけっこうあるようで、実際はLP4面ライブ音源収録でもぜんぜんイケた模様。マスターが残っていれば、ライブ部分の完全版なんてのも望んでみたいところですけど…どうですかね?

さてモアの部分は「マッカーサー・パーク組曲」と題された20分近くに及ぶノン・ストップ・メドレー作品。リチャード・ハリスの代表曲を大胆にもスケールの大きなダンス・ポップへとアレンジした「マッカーサー・パーク」、典型的なマイナー・ディスコ・タイプの「ワン・オブ・ア・カインド」、レーベルメイトのブルックリン・ドリームスと共演した「ヘブン・ノウズ」、そしてサークルを描く様にまた「マッカーサー・パーク」へと舞い戻る構成。澱みがなくスリリングでスケール感もたっぷり。これを超えるオリジナルのディスコ・メドレーがあれば教えて頂きたいというぐらい屈指の完成度を誇る組曲でございます。

ただし、この『ライブ・アンド・モア』、面白いことに一度もオリジナルのライブとモアが一緒になったCDって発売されたことがないんですよね。
CD1枚に収めるには原盤のままでは尺が足りず、下記にリンクを張っている『ライブ・アンド・モア』のモアは、「マッカーサー・パーク組曲」の代わりに海洋サスペンス映画『ザ・ディープ』の主題歌だった「ザ・ディープのテーマ」に差替えられています。CDの解説には時間の関係で収録出来なかったので、同時リリースした12インチ曲集である『ダンス・コレクション』を参照してほしい旨の注意書きが書かれていたりしました。今となってはジョン・バリー作曲の「ザ・ディープのテーマ」も貴重な音源だったりするのですけど、いつの日にか(先のライブの未収録部分も含め)『ライブ・アンド・モア』完全版をリリースしてもらいたいなぁと思いますです。

同年「ラスト・ダンス」でグラミーの最優秀女性R&B歌手賞を受賞し、名実ともにトップに立ったドナ。ドナの黄金時代の幕開けを告げる記念碑的作品であると共に、エンターテイナー、ドナの魅力を堪能出来る作品としてお薦めでございます。

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LPの邦題は『ベスト・オブ・ドナ・サマー〜ライブ・アンド・モア』

Live And More

A-1 Once Upon A Time
A-2. Fairy Tale High
A-3. Faster And Faster To Nowhere
A-4. Spring Affair
A-5. Rumour Has It
A-6. I Love You

B-1 Only One Man
B-2 I Remember Yesterday
B-3 Love's Unkind
B-4 My Man Medley: The Man I Love/I Got It Bad And That Ain't Good/Some Of These Days
B-5 The Way We Were
B-6 Mimi's Song

C-1 Try Me, I Know We Can Make It
C-2 Love To Love You Baby
C-3 I Feel Love
C-4 Last Dance

LP Version
D-1 Mac Arthur Park Suite:Mac Arthur Park/One Of A Kind/Heaven Knows/Mac Arthur Park(Reprise)

CD Version
D-1 Theme From The Deep (Down, Deep Inside)

実際のセット・リストはこちら↓

Act I
1.Overture Medley / Once Upon A Time Introduction
2.Could It Be Magic
3.Try Me, I Know We Can Make It
4.Only One Man
5.I Remember Yesterday
6.Love's Unkind
7.My Man Medley :The Man I Love /I Got It Bad (and That Ain't Good)/Some of These Days
8.The Way We Were"
9.If You Got It, Flaunt It"
10.A Man Like You
11.Mimi's Song

Act II
1.Once Upon a Time
2.Fairy Tale High
3.Faster And Faster To Nowhere
4.Spring Affair
5.Winter Melody
6.I Love You
7.Happily Ever After
8.One Of A Kind" (Performed on selected dates)
9.Love to Love You Baby
10.I Feel Love
11.Summer Fever (Performed on selected dates)
12.Last Dance
13.Rumour Has It
14.A Song For You

チャートデータ
アルバム
Pop 1位 / R&B 4位
シングル
「MacArthur Park」: Pop 1位 / R&B 8位
「Heaven Knows」: Pop 4位 / R&B 10位
「Theme From the Deep (Down, Deep Inside)」:Club Play 3位



8月8日にカサブランカ時代の作品が紙ジャケットにてリイシューされることが決定いたしました。

posted by Suzu at 21:30| Comment(3) | TrackBack(0) | ドナ・サマー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年06月07日

ドナ・サマー『ア・ホット・サマー・ナイト、ウィズ・ドナ』(83年)

Donna Summer:A Hot Summer Night, With Donna(83年)

またしても思い出話から入りますけど、その昔輸入ビデオって凄く安くて魅力的だったんですよね。日本版だとまぁ安くても5,000円とかしましたけど、タワーレコードなんかに並んでるのは千円台。
ほとんどレコードを買うのと同じ感覚でPV集やライブ等の映像作品を手に入れられるというのは、何だかとってもお得感があったのです。だものでうちにはけっこうな数の輸入ビデオがあるのですが、そんな中から本日は懐かしい1本をご紹介させていただきます。先日亡くなられたドナ・サマーの83年に行われたハード・フォー・ザ・マネー・ツアー、ロサンジェルス公演の模様を収録した『ア・ホット・サマー・ナイト、ウィズ・ドナ』です。

80年代に入るとジョルジョ・モロダー・チームからの離脱やレコード会社との契約トラブル等様々なゴタゴタに見舞われ始めてしまったドナなのですが、この頃は「情熱物語/She Works Hard For The Money」の大ヒットにより再び勢いを取り戻しかけた時期でした(結局そうはなりませんでしたけど…。)

パネルを並べただけのシンプルなセットにベンチ3脚と1本の街灯、警官姿のダンサーが出てきますから世界観は『華麗なる誘惑』のジャケットですよね。真ん中のベンチに掛けられた布をめくると主役ドナ・サマーの登場。拍手喝采の中歌い出すのがNo.1ヒット曲「マッカーサー・パーク」。いきなりこれか!ってオープニングです。

セット・リストは「ラスト・ダンス」以降『情熱物語』までという選曲で、「愛の誘惑」や「アイ・フィール・ラブ」等の初期セクシー系ヒットはなし。従来のオールディーズ・コーナーやセクシー・コーナーを80年代のポップ・ロック系のヒット群に入れ替えた形になって展開されます。

「マッカーサー・パーク」の後は小気味よく「恋の魔法使い」、レコードで共演したミュージカル・ユースをそのまま舞台に登場させたトロピカルな「アンコンディショナル・ラブ」、そして『フラッシュダンス』のサントラに収録されていた「ロミオ」とゴージャスに都度衣装チェンジしながらの進行。「ロミオ」はばっちりとカット割り等もされていて、単体でミュージック・ビデオとしてこの映像が使われていたような記憶あり。アップ等シーンのいくつかは別撮りで差し込まれてますよねきっと。



ちょっとお話が逸れますけど、この「ロミオ」。先にも触れましたけど同年の『フラッシュダンス』のサントラに収録されていたナンバーなのですが、どうして既に袂を分かっていたこの時期にジョルジョ・モロダー・プロデュースのサントラでドナがまた歌ってるの?と購入当時疑問に思っていたのですが、何のことはない、これお蔵入りとなった81年のアルバム『アイム・ア・レインボウ』のために録音された曲で、それの二次使用だったんですね。そういえば96年に日の目をみた同作にも収録されてましたっけ…うーん、繋がってなかった。

さらに逸れついでに言うと、既に「フェーム」というダンス絡みのヒットを放った実績のあるアイリーン・キャラが歌ったのであまり比較されることはありませんでしたけど、「フラッシュダンス−ホワット・ア・フィーリング−」ってまんまドナが歌ってはまる曲ですよね。ジョルジョ+相方+歌唱歌手っていうトリオ体制の楽曲製作も全く一緒ですし、もし3年映画の企画が早いかトリオの解消が遅ければ、この曲もドナの代表曲になっていたのだろうなぁと思わずにいられません。
最近この曲聴くと勝手にドナの声に脳内変換されちゃって困ってるんです、私(smile)。

閑話休題。

パネルの移動と共に白いバルコニーのセットがせり出してきて歌われるのは同じく『アイム・ア・レインボウ』に収録されていた『エビ―タ』の「ドント・クライ・フォー・ミー・アルジェンティーナ」。
この曲、カレン・カーペンターやオリビア・ニュートン・ジョン等も歌ってますし、バーブラが『エビ―タ』を映画化したがっていたのも有名。こういうホワイト・ディーヴァたちが好むミュージカル・ナンバーを堂々と歌い上げるドナが素敵です。ガラッとまたセット・チェンジして鏡台のセットの前で歌うのがロマンティックな大ヒット・ダンス・ナンバー「オン・ザ・レイディオ」、そして翌年リリースの『キャッツ・ウィズアウト・クロウズ』に収録してグラミーのベスト・インスピレーションという賞を受賞することになるバラードの「フォーギブ・ミー」へと続いて行きます。



女性コーラス2名との寸劇を挟んだ『情熱物語』収録の「ウーマン」では曲にちなんで観客の女性のみとサビ・パートをコール・アンド・レスポンス。そして「ディム・オール・ザ・ライツ」〜「サンセット・ピープル」〜「バッド・ガールズ」〜「ホット・スタッフ」という怒涛のヒット・メドレーを披露。この流れのまま「ラスト・ダンス」に突入ですから観客の盛り上がりも沸点に達します。

本来だとこれでエンドですけど、アンコール・ナンバーとして用意されたのは大ヒットしたての「情熱物語」。ドナもばっちりウェイトレスの扮装で登場、ダンサーも含めPVの世界をステージで再現します。そしオーラスはクインシー・ジョーンズ・プロデュースの「ステイト・オブ・インディペンデンス」。(イメージですけど)一大ネイチャー絵巻ってタイプの総大・荘厳な本作、最初に出てきて歌う可愛い女の子はドナの娘ミミちゃんですね。いつものアゲアゲな雰囲気とは一味違ったエンディングになっているのが、この時期ならではと言えるかもしれません。



当時の資料によれば、ビデオからはオミットされてしまいましたがバーブラとのデュエット「ノー・モア・ティアーズ」なんかも歌われた模様。マスター・テープがあればきっと映像も残ってるでしょうし、DVD/ブレーレイ化の暁には、ぜひ収録してほしいなぁと思いますです。

(女性に失礼ですけど)年のころ女盛りの30代半ば、まだまだスリムで美しさも全開、歌唱も(いつの時期もですけど)絶好調のドナを是非多くの方にご堪能いただきたいと思いますので、是非ともDVD/ブルーレイ化の早期実現をお願いしたいものでございます。



しかしどれもこれも馬鹿みたいな値段ですね…。


おまけ、ですけど、当時テレビ放映された『オール・システムズ・ゴー』リリース後の日本でのライブです。放映されたままフルで見れますのでお時間のある方は是非!懐かしい〜。
※6/17日追記:残念ながら削除されてしまったようです…もったいない。



そしてせっかくなので99年のVH1のライブも。こちらもフルで見れます。83年のライブと比べてもこっちのほうが声出てる?

posted by Suzu at 21:00| Comment(5) | TrackBack(0) | ドナ・サマー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年06月06日

ブルックリン・ドリームス『スリープレス・ナイト』(78年)

Brooklyn Dreams:Sleepless Nights(78年)

AOR系のブルー・アイド・ソウル・グループとしてその筋では人気の高い男性3人によるトリオ、ブルックリン・ドリームスの78年リリースのセカンド・アルバムでございます。

一般的にはドナ・サマーのヒット曲「ヘブン・ノウズ」をデュエットしたグループとしての認知度しかない…と言ったら失礼かもしれませんが、正直私自身はそういう認識しかなくって、その名前等もドナのアルバム以外では見かけたことがありませんでした。大きなヒットがドナとのデュエットしかなかったのでリイシューの機会にもなかなか恵まれなかったようですが、実際は77年から80年まで、年1作のペースでアルバムをリリースしており、冒頭にも触れましたけどAORファンの間では1作目、2作目等の評価も高く、密かな人気盤として語られてきた模様。
そんな日の当らない状況を一転させたのが昨今のリイシュー・ブーム。一昨年お馴染みBig Breakからファースト・アルバムが発売されたのを皮切りに、日本で紙ジャケットにてセカンド・アルバムが発売、直ぐ後を追いかけるようにBig Breakからもセカンドが2曲のボーナス・トラック入りでリリースされました。

ブルックリン・ドリームスはその名のとおりブルックリンのご近所さん同士で結成されたグループで、ブルース・スーダノ、エディ・ホーケンソン、ジョー・ビーン・エスポジットの3人組。ブルースが単独で音楽活動を始めた後、他の2人を誘って活動を開始、カサブランカ・レコードと契約してメジャー・デビューを果たします。そこで出会ったのがレーベル・メイトであるドナ・サマー。ファースト・アルバムにも1曲コーラスで参加してもらったのを手始めに、セカンド収録の「ヘブン・ノウズ」で再共演。ドナのツアーにもバック・バンドの一員として参加するようになり、ドナの代表作「バッド・ガールズ」は彼ら3人とドナとの共作なんですね。そしてブルースはドナと結婚、先日ドナが亡くなるまで、30年以上に亘って添い遂げた仲のいいご夫婦だったようです。

でもって本作。
やっぱり最大の売りはドナとのデュエット「ヘブン・ノウズ」の収録ですけど、その他にも心地よいグルーブ感のある「メイク・イット・ラスト」や「スリープレス・ナイツ/センド・ア・ドリーム」、スリリングなメロディーとハーモニーの妙が楽しめる「ザッツ・ノット・ザ・ウェイ・ザット・ユア・ママ・トート・ユー・トゥ・ビー」、ジェントルなバラードの「ファッション・フォー・ミー」や「ロング・ディスタンス」、ライブ音源で臨場感に溢れた「ファースト・ラブ」、ドナをバック・コーラスに配したグルーヴィーでスタイリッシュなミドル・ナンバー「ストリート・マン」、ハートウォーミーな「タッチング・イン・ザ・ダーク」、キラキラしたナイト・クルージング・タイプの「カミング・アップ・ザ・ハード・ウェイ」等好曲揃い。

トリを飾っている「ヘブン・ノウズ」はメイン・ヴォーカルをジョーが歌い、セカンド・ヴォーカルをドナが務めたブルックリン・ドリームス・バージョン。またボーナス・トラックで収められた「12インチ・プロモ・ディスコ・リミックス」も、1番はドナが単独で歌い、2番からブルックリンのヴォーカルが入ってくるという初CD化(?)のバージョンですのでお聴き逃しなく。

ここまで来たら、残り2作、79年の『ジョイライド』、80年の『ウォント・レット・ゴー』もリイシューしていただきたいですね。ジョーにはジョルジョ・モロダーと組んだ2人名義のアルバムもある模様(こちらはCD化されていたので…注文しちゃった)。

チャートデータ
アルバム Pop 151位
シングル
「Heaven Knows」:Pop 4位
「Make It Last」:Pop 69位 / R&B 10位




↑音は悪いですがブルックリン・ドリームス・メイン・バージョンです。





『華麗なる誘惑』では「バッド・ガールズ」の他にも数曲でソングライトを担当。このデラックス盤には「ヘブン・ノウズ」が組み込まれた「マッカーサー・パーク組曲」も収録されています。
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2012年05月19日

ドナ・サマー逝く…

思い出話をさせて下さい。


朝電車の中でツイッターを見るのが習慣的になっちゃてるのですけど、今朝いつものようにツイートを見始めたら「追悼ドナ・サマー」の文字。何それ?と思ってどんどん画面をスクロールさせれば次々と出てくるドナへの追悼コメント。ホイットニーを失って3ヵ月、またしてもこんな予想外で悲しすぎる訃報に接するなんて思いもしませんでした。

私がドナを最初に聴いたのは80年代の初めごろ、バーブラ・ストライサンドのアルバム『ウェット』に収録されたデュエット曲「ノー・モア・ティアーズ(イナフ・イズ・イナフ)」によってでした。
当時はまだバーブラ以外の洋楽アーティストは門外漢で、ドナが何者かというのもよく知らなかったように思いますが、その緊迫感に溢れ、お互いのプライドをかけた火花飛び散るデュエットには非常に興奮させられました。仲間内的なデュエットでも、商業性が優先されたようなただの異色の組み合わせというのでもない、慣れ合い皆無の真剣勝負。未だに、これ以上のガチンコ勝負が聴けるデュエット作品というのを私は聞いたことがありませんです。

こうして一応ドナとの邂逅はなされたのですが、アナログ時代にドナのオリジナル作品に手を出すことはありませんでした。本格的に聞き始めたのはCD時代以降、その長時間収録という特性を活かしてカサブランカ時代の2枚組アルバムが続々と1枚のディスクに収める形でCD化されてから。今見るとわざわざブックレットの前面に「Over 70Minuts Music」と謳われているのも時代を感じさせますね。
ここで初めて聴いたのがドナの(元は)2枚組LPのベスト盤『愛の軌跡:オン・ザ・レイディオ〜グレイテスト・ヒッツ』。発売当時新曲だった「オン・ザ・レイディオ」と先のバーブラとのデュエット「ノー・モア・ティアーズ」に挟まれたヒット曲はすべてディスコ仕様らしくノン・ストップのメドレーになっていて、一聴してその楽しさの虜に。購入当時はしばらくこればっかり聴いていたように思います。

リアル・タイムでの最初の作品と言えるのは87年にリリースされた『オール・システムズ・ゴー』。ブレンダ・ラッセル作のファンタジックなリード曲「ディナー・ウィズ・ガーシュイン」を始め、お得意のポップ・ロック系からムーディーなバラードまでバラエティ豊かな内容でしたがチャート・アクション的にはいまひとつ。本格的に再びシーンを沸かせたのは89年、当時世界的にブレイク中だったプロデュース・チーム、ストック・エイトキン・ウォーターマンのPWLと組んだアルバム『アナザー・プレイス・アンド・タイム』とシングルで大ヒットした「ディス・タイム・アイ・ノウ・イッツ・フォー・リアル」でした。このヒット以降は若干マイ・ペースな活動になっていきましたけど、それでもその歌声の輝きは衰える事がなく、昨年開催されたデビッド・フォスターのヒットマン・リターンズのコンサートでも堂々のトリを飾っての熱唱を披露。
新作のレコーディングなんて話もちらほら聞こえてきた矢先の訃報でございました。

グラミー賞5回(しかもR&B、ロック、ダンス、ゴスペルというジャンルレスぶり)、ポップで4曲、R&Bで2曲、クラブ・プレイ・チャートでは何と13曲のNo.1ヒットを放ち、普通に考えても破格の成功を収めたアーティストの一人でありますが、「ディスコの女王」という称号が何故かレッテルのように付きまとい、例えばR&B/ソウルの名盤ガイド等では完全に蚊帳の外にされるか、取り上げられても揶揄まじりの記述ばかりでおよそまともに彼女を論じているものには出会ったことがありません。…というのが一昔前の状況でしたが、ここ最近は以前のようなブラック系アーティストに対する極端なディープ・ソウル偏重主義というのもだいぶ意識改革されつつあるので、クラブ系ディーヴァの元祖として多大なリスペクトを受け始めていたのが現状。今回の訃報に際しても、多くのアーティストから彼女の死を惜しむ声が寄せられていたのが印象的でした。

吐息まじりのセクシー・シンガーとして頭角を現したドナでしたが、やはり彼女の魅力はそのレンジの広い野性的でダイナミックな歌声。
「マッカーサー・パーク」「ホット・スタッフ」「バッド・ガールズ」「オン・ザ・レイディオ」「情熱物語」「イッツ・フォー・リアル」等のシングル群は、そんなドナの魅力を端的に表した楽曲でした。
今さら彼女の作品を聴いたことがないなんて方はいらっしゃらないでしょうけど、私なりのお薦め作品をいくつかあげさせていただこうと思います。

初期カサブランカ時代の作品ではバラエティに富んだ内容が楽しい『アイ・リメンバー・イエスタデイ』、エンターテイナーとしての魅力と実力が存分に味わえる『ライブ・アンド・モア』、大ヒット曲を連発したゴージャスな『華麗なる誘惑』。レーベルを移籍した80年代以降では、クインシー・ジョーンズをプロデューサーに迎えた高品質なブラック・コンテンポラリー作品『恋の魔法使い』、PWLとのタッグで軽やかに時代を飛び越えて見せた『アナザー・プレイス・アンド・タイム』、ヴォーカリストとしての実力を遺憾なく発揮した『クリスマス・スピリット』等々。
またシングル・ヒットの多いドナですのでベスト盤も必需品な訳ですが、オリジナル・テイストで楽しむなら前述のノン・ストップ・メドレーが楽しめる『愛の軌跡:オン・ザ・レイディオ〜グレイテスト・ヒッツ』。大容量のベストならそれぞれ2枚組の『アンソロジー』か『ゴールド』がお薦めでございます。

敬虔なクリスチャンとしても知られるドナでしたので、今は神様の身許に招かれ、安らかな眠りについていることでしょう。素敵な作品をたくさん残してくれた事にただただ感謝です。有難う、ドナ。
ご冥福を深くお祈り申し上げます。









「ノー・モア・ティアーズ」にはシングル・バージョンやダンス・ミックス等いくつかのバージョンがありますが、『ウェット』に収録されているバージョンが一番二人のヴォーカル対決に焦点を当てた作りでお気に入りです。

その昔HP時代に最初にドナについて書いた記事です。
記事というより、シングル・ジャケット等多数載せてますのでそちらをお楽しみ下さい→http://www1.ocn.ne.jp/~suzuenta/donna.htm
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2008年11月21日

ドナ・サマー『ゴールド』(05年)

Donna Summer:Gold(05年)

夏草や兵どもが夢の跡…と申しますけれども、今年の5月に久しぶりに発売となったドナ様のニュー・アルバム『クレヨンズ』。公式HPでは発売日までのカウント・ダウンをして多いに盛り上がり、ドナ様も精力的にテレビ出演などしてプロモーションを敢行。出来上がった作品もドナ様のヴァーサイタルな面を示した好内容でしたし、チャート的にもR&Bで5位、ポップで17位となかなかの成績を収めたのですが…消え去るのも早かったですね。

相変らずダンス・チャートでは2曲のNo.1をモノにする等ダンス・クイーンの底力を見せ付けてくれましたけど、ポップやR&Bにクロスオーバーするシングル・ヒットが出なかったのも原因かも知れません。何ですか最近はよっぽどのアーティスト・パワーがないと、リリースするまでがお祭りって状態が多いような気がします。作品のせいなのかそれとも根本的な構造が変化してきてしまったのか判然としませんけど、ちょっと寂しい気がする今日この頃なのです。

(遠い目…そして我に帰るワタシ。)

ベスト盤にもシリーズがありますけれど、内容が充実していて大容量と言えばソニー系統の『ジ・エッセンシャル』とユニバーサル系の『ゴールド』。惜しみなくヒット曲や代表曲を詰め込む姿勢はアーティストの意向も何のそのといった感じで一購買者としては有難いことこの上なしでございます。

そして我らがドナ様の『ゴールド』。ベスト盤クイーンでもあるドナ様には93年に主なヒット曲を網羅した『アンソロジー』という決定版に近いベストがありましたが、唯一難点だったのが87年のアルバム『オール・システムズ・ゴー』からのヒット曲でブレンダ・ラッセル作のファンタジックな好曲「ディナー・ウィズ・ガーシュウィン」が漏れていた事。この『ゴールド』にはしっかりその曲も収録され、93年以降のアルバムやベスト盤に収録された新曲等も追加されてかなり満足度の高い選曲になっています(…その分、「ワンス・アポン・ア・タイム」や「コールド・ラブ」や「アイム・ア・レインボ」なんてところが落ちてしまいましたが。収録時間の関係もあるから仕方ないですかね)。

スケールの大きな歌手ドナ・サマーの魅力をオールタイムで味わうにはもってこいのベスト盤になっております。
他のベストを持っていても欲しい気にさせる『ジ・エッセンシャル』と『ゴールド』。特に初めての方にはお薦めしたいシリーズですね。

チャートデータ
Top Electronic Albums 21位(とりあえずチャート入りしてるのが凄い…。)

「Dinner with Gershwin」:You-Tube→http://www.youtube.com/watch?v=8V6amrsHsS4
「Melody Of Love」:You-Tube→http://www.youtube.com/watch?v=whQK4EESW-Q



この3枚あればほぼOK。

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2008年06月01日

ドナ・サマー『クレヨンズ』(08年)

Donna Summer:Crayons(08年)

Dance/Pop Queen Is Back !
(アレサに怒られないようDance/Popと付けました…。)

ドナ様のご帰還です。
スタジオ録音による完全な新譜は、あの金髪姿のジャケットがロックしていた『ミステイクン・アイデンティティー』以来17年振りなんだそうです。またベストォなんて文句を言ってましたが、数年おきには新曲入りのCDをリリースしてくれていたので、あまりそんな気がしませんよね。その甲斐あってダンス・チャートでは90年代、2000年代もコンスタントにヒットを放ってきたドナ様。マドンナ等に楽曲がサンプリングされたりもしてましたし、常にシーンとはリンクし続けてくれてはいましたが、こうして純粋な新作を手にしてみると、やはり感慨深いものがあるものでございます。

新作タイトルは『クレヨンズ』。
様々な音楽要素をバラエティ豊かに取り込んだこの作品は、確かにカラフルなクレヨンのよう。色鉛筆でもカラーペンでもなくちょっと懐かしい匂いのするクレヨン達。どこかいなたさを感じさせるのも、ドナ様らしいんですよね。
さてさてドナ様と行くワールド・ミュージックの旅。始まりで〜す。

01 Stamp Your Feet
S,T,A,M,P♪とBCRの「サタデーナイト」やVPの「YMCA」と同じアルファベット・コールで始まる軽快なオープニング曲。ドナ様の作品で言うと「スーパーナチュラル・ラブ」あたりを彷彿とさせるポップ・ロック・チューンで、以前と変わらぬ張りのある歌声が豊かに弾けてます。シングル・カット曲ですが、反応はいかに?カイリーやネリー・ファータドの作品等多方面で活躍しているグレッグ・カースティンと女優業もこなす才女ダニエル・ブリセボイスとドナ様の共作。

02 Mr. Music
現在旬の女性歌手リアーナに提供したNo.1ヒット「S.O.S.」の作者でもあるエヴァン・ボガードが参加した作品。エヴァンのお父さんはご存知ドナ様をアメリカに招聘してチャンスを作った恩人とも言えるカサブランカ・レコードの社長ニール・ボガードなわけで、きっと感慨も一入だったに違いない感動作(?)。後半でぐっとドナ独特のワイルドな世界を展開しながらも、全体の作りはどこかマドンナを連想させるダンス・チューン。常に自分に作品通してリスペクトを示し続けているマドンナに対する逆リスペクトかななんて妄想も楽しい1曲。

03 Crayons
ボブ・マーリーの長男ジギー・マーリーをフューチャーしたダンサフル・レゲエ(ダンスホールと言ってもいいのか…)作品でアルバム・タイトル曲。タイトル曲がレゲエ・サウンドの曲というのも、このアルバムをよく表してますよね。このところ息子世代が大活躍で、ジギー家の五男ダミアンはマライアの新作に参加しておりました。長男or五男の人選にも現れていますが、完全にHip-Hop的はフューチャリングの仕方だったマライアに対し、ドナ様の場合は全編で曲のバックにジギーの歌声を配置する感じで、この辺りジェネレーションの違いを感じたりもします。ドライブするヴォーカルに楽しさが溢れた好曲。

04 The Queen Is Back
これぞクイーン・イズ・バック!って気合の感じられるダイナミックなヨーロピアン・テイストのダンス・チューン。華麗でいてワイルドな魅力満開で、この高らかな帰還宣言にはただただ傅くのみ。エヴァンと同じくリアーナの作品に参加しているジョナサン・ローテム&ドナの共作。

05 Fame(The Game)
古くはミリ・バニリ、最近ではファーギーやハンナ・モンタナ(マリー・サイラス)でヒットを飛ばす売れっ子トビー・ガッドとドナ様の共作ナンバー。コンピューターによるピーコ・ピーコ・サウンドにドナの低音域な語り調、シャウト、ヴォコーダーによるコラージュ、ロック・テイストなギター・リフと盛りだくさんな1曲。どうせだったらT-Painでも客演させたらよかったのにって感じです。

06 Sand On My Feet
同じくトビー・ガッドとの共作。開幕からダンス・ダンスで駆け抜けてきたところで、雰囲気を変えてダウン・トゥ・アースな大陸的アコースティック・ナンバーが登場。ドナ様の優しい歌声にこちらも小休止です(smile)。

07 Drivin' Down Brazil
1曲目と同じグレッグ&ダニエル&ドナ様による作品。タイトル通りブラジル音楽の要素を取り込んだミディアム・ナンバー。落ち着きのあるサンバ〜ラテンのメロディーに褐色のヴォーカルが溶け込み、こちらも軽くステップを踏みたくなるような心地よさのある楽曲です。

08 I'm A Fire
ダンス・チャート向けに先行カットされ、そうそうにNo.1を獲得したドナ様らしいクラブ・チューン。以前ネットでさらっと聞いた時は割りと普通な印象でしたけど、やはりこの習慣的なリズムはトリップ感覚があって聞くほどに癖になるんですよね。後半にサンバのメロディーを挿入してひねりを効かせてたりするのも技ありな1曲。作者の一人セバスチャン・モートンはエンリケ・イグレシアスやサンタナのアルバムに参加するラテン系のコンポーザーでなるほどぉ。もう一人のアル・ケイシャは懐かしのパニック超大作「ポセイドン・アドベンチャー」や「タワーリング・インフェルノ」のテーマを手がけてアカデミー賞も受賞したことのある大御所。

09 Slide Over Backwards
ここで登場するのはトニー・ジョー・ホワイトを彷彿とさせるようなスワンピーなロック・ナンバー。曲調に併せてドナ様も声をしゃがれさせてファンキーに迫ってますが、少々声がザラつき過ぎでしょうか?ソングライターのネイサン・ディジェサレはドナの「ミステイクン・アイデンティティー」を仕切っていたキース・ダイアモンドと親交が深いらしく、その頃からのドナとは付き合いなのかもしれません。

10 Science Of Love
三度トビー・ガッドによる80年代テイストのミッド・ポップ・チューン。5曲目のFame(The Game)をよりデジタライズした感じですが、じりじりと熱気を増していくドナの歌声が作品の完成度をぐっと押し上げているのはさすがです。

11 Be Myself Again
ミュージカルの一場面から切り取ったようなドラマ性の高いヴォーカル作品。悲しみを湛えたドナの歌声が切々と思いを伝える珠玉の1曲になっています。作者レスター・メンデスはシャキーラやネリー・ファータドを手がける売れっ子、もう一人のウェイン・ヘクターもウェストライフやラスカル・フレッツの作品に参加するライターです。

12 Bring Down The Reign
アルバム・ラストを飾るのはミュージカル・ユースとの共演を思い出させるようなチルドレン・コーラスをフューチャーした、アフリカンなミディアム・ナンバー。ジャングル・ビートが大地の鼓動を感じさせ、バイオリンの音色が暮れていく夕陽を連想させる雄大な作品。作者ジェイミー・ヒューストンはサンタナからゴスペル系、「ハイ・スクール・ミュージカル」までと幅広く活躍するコンポーザー、フレッド・クロンもキーボーディスト/ライターとして活躍するミュージシャンです。

ということで、全曲ドナ様がソングライトにも参加し、新旧の敏腕たちとしっかりと作りこんだアルバムになっております。しかしどんなコンポーザーと組んでも、しっかりとザ・ドナ・サマー・ミュージックになっているのはさすがですよね。
ワールド・ミュージックの旅と書きましたが、多くの楽曲に対しブラジル音楽の影響がこれまでになく色濃く反映された作品になっているのも興味深いところです。
チャート上でもビルボードのアルバム・チャートで17位初登場と、83年リリースの大ヒット作『情熱物語』以来のトップ20入りを獲得。R&Bチャートでは5位と更に大躍進!皆女王の帰還を待っていたんですね。

タイムレスな輝きを放つ世界一のダンス・ポップ・クイーン渾身の1作。
次の作品がまた17年後なんてことだけには、ならないで欲しいものです(smile)。

関連記事:brog EVERGREEN「17年振りに新作リリースのドナ・サマー、ETに登場」→http://evergreenblog.seesaa.net/article/97305319.html
関連記事:brog Soul Food, Soul Life「Donna Summer/Crayons(2008)」→http://blog.livedoor.jp/arethafranklin/archives/736608.html




チャートデータ
アルバム
Pop 17位/R&B 5位
シングル
「I'm A Fire」:Hot Dance Music/Club Play 1位

「Stamp Your Feet(With American Idol Girls)」:You-Tube→http://www.youtube.com/watch?v=A6l5fn6G0Po
「I'm A Fire」:You-Tube→http://www.youtube.com/watch?v=g9RWD_zy2h0




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2008年03月25日

ドナ・サマー『レディー・オブ・ザ・ナイト』(74年)

Donna Summer:Lady Of The Night(74年)

そんな訳で、紹介が前後しますがドナが74年にオランダでのみリリースした実質的なデビュー・アルバム。

プロデュースをピート・ベロッティが、曲作りをジョルジョ・モロダーとピート(一部ピート単独)が担当するという初期のプロダクションが既に完成していますね。

でまぁ、曲は完全に普通のポップ・ロックというか、後のセクシーのセの字もディスコのデの字もありません。唯一タイトル曲に途中躍動的なリズムが絡んでくる箇所があるんですが、基本全体の曲のテイストは初期リンダ・ロンシュタットに近いというか、ロック+若干カントリーやらオールディーズ的な雰囲気も漂う曲調になっています。ドナの「フレンズ」や「ワウンデッド」で聴かれるダイナミックな歌声は既に完成の域に。

ヒットした「ザ・ホステージ」は日本でも当時「恐怖の脅迫電話」の邦題でシングル・リリースされている楽曲。旦那さんを誘拐した犯人から若妻の所に脅迫電話がかかってくる設定の歌らしく、土曜ワイド劇場を彷彿とさせるような(いい意味で)ヤスいドラマティックさが楽しいです。

この正攻法で真正面から歌っているアルバムを聴くと、セクシー路線の「愛の誘惑」でワールド・ワイドな人気を掴んだドナ(&G&P)たちが、いかにそのイメージから抜け出して、本来のダイナミックな持ち味に戻すのに苦労したかがわかりますよね。

まるで次第にドナのワイルドな個性がアルバムの中で開花していったように書いてきましたが、それは完全にコントロールされたものだったということで…やられました(smile)。




Lady Of The Night

A-1 Lady Of The Night
A-2 Born To Die
A-3 Friends
A-4 Full Of Emptiness*CDには入ってません。『愛の誘惑』の収録ナンバーと同一かと。
A-5 Domino

B-1 Hostage
B-2 Wounded
B-3 Little Miss Fit
B-4 Let's Work Together Now
B-5 Sing Along (Sad Song)

チャートデータ(オランダ)
アルバム 27位
シングル
「The Hostage」:2位(フランス、ベルギーでは1位)
「Lady Of The Night」:4位

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2008年02月23日

ドナ・サマー(サントラ)『イッツ・フライデー』(78年)

Donna Summer(Original Soundtrack):Thank God It's Friday(78年)

ということで、ドナ様名義にしましたが、78年に公開された映画「イッツ・フライデー」のサウンド・トラック&DVDでございます。

「イッツ・フライデー」は(きっと)前年に当たって社会現象をも巻き起こした映画「サタデー・ナイト・フィーヴァー」の2匹目のどじょうを狙い、当事カサブランカ・レコードの社長だったニール・ボガート氏が、モータウンと手を組んで製作した青春ディスコ・ムービー。ハリウッドにあるディスコ「ズー」で開かれるダンス・コンテストを主軸に、そこに集まった人々の群像劇を描く…ってな感じなのですが、正直映画としてはあまり見るべきところがない作品。今時のPVのほうがもっとドラマがあるんじゃないかと思います(そこがディスコ映画の醍醐味と言えるかも知れませんが…)。

ディスコを舞台にしているので、全編ディスコ・ミュージックがかかりっぱなし。カサブランカ(マーキュリー)からは出演もしているドナ・サマーを筆頭に、ラブ・アンド・キッセズ、サンタ・エスメラルダ、カメオ、ポール・ジャバラ(彼もこの作品に出演、コミカルな演技を披露してます)等々。モータウンからはゲスト・バンドとして本編にも登場するコモドアーズの他に、テルマ・ヒューストンとダイアナ・ロスが。
当事いまひとつヒットに恵まれない時期のダイアナでしたが、こんなところでライバルドナと音盤共演していたってのもそそる話ですよね。ダイアナの歌う「ラヴィン・リヴィン・アンド・ギヴィン」は彼女特有のコケティッシュなヴォーカルが光るナンバーです。

話をドナに戻しますが。
ドナがここで披露するのは5曲。まずは映画のテーマ曲ともいえ、劇中に彼女がステージに無理やり登場して歌い喝采を浴びる「ラスト・ダンス」。
ポール・ジャバラが作ったこのスケールの大きなディスコ・ポップは、アカデミー賞の最優秀楽曲賞を受賞し、ドナにも初めてのグラミー賞をもたらした名曲。以降ドナのステージのラストを飾る曲としても定番となります。通常バージョンと映画のラストに流れるよりロマンティックなスローのオープニングをもったバージョンの2曲を収録。

「ウィズ・ユア・ラブ」は従来のドナのセクシー路線を受け継いだノリの良いマイナー系ディスコ。アーティスト表記はサンシャインとなっていますが、ドナがヴォーカルをとるのが「テイク・イット・トゥ・ザ・ズー」で、これもスピード感のあるソウル・サウンドのディスコになっています。
で、LPのほうではボーナス12インチ的な扱いでセットされていたのが「ジュ・テーム(モア・ノン・プリ)」。言わずと知れたセルジュ・ゲンズブールの名曲で、ドナ達が「愛の誘惑」を作るきっかけとなった元祖(?)セクシー・ソングであります。ドナ・バージョンは16分におよぶロング・バージョンですが、ほぼ忠実に原曲の雰囲気を残し、上手くディスコ的なリズムも取り入れたテイクに仕上がっています。




Thank God It's Friday

A-1 Thank God It's Friday/Love And Kisses
A-2 After Dark/Patti Brooks
A-3 With Your Love/Donna Summer
A-4 Last Dance/Donna Summer


B-1 Disco Queen/Paul Jabara
B-2 Find My Way/Cameo
B-3 Too Hot Ta Trot/The Commodores
B-4 Leatherman's Thene/Wright Bros.Flying Machine
B-5 I Wanna Dance/Marathon

C-1 Take It To Tha Zoo/Sunshine
C-2 Sevilla Nights/Santa Esmeralda
C-3 You're The Most Precious Thing In My Life/Love And Kisses

D-1 Do You Want The Real Thing/D.C.LaRue
D-2 Trapped In A Stairway/Paul Jabara
D-3 Floyd's Theme/Natural Juices
D-4 Lovin' Livin' And Givin' /Diana Ross
D-5 Love Masterpiece/Thelma Houston
D-6 Last Dance(Reprise)/Donna Summer

E-1 Je T'aime(Moi Non Plus)/Donna Summer

チャートデータ
アルバム
Pop 10位/R&B 6位
シングル
Donna Summer「Last Dance」:POP 3位/R&B 5位
The Commodores「Too Hot Ta Trot」:POP 24位/R&B 1位
Love And Kisses「Thank God It's Friday」:POP 22位/R&B 23位


 ↑これも高すぎ。
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