2011年12月31日

研ナオコ『ビター』(89年)

Naoko Ken:Bitter(89年)

研ナオコさん、89年にリリースした15枚目のオリジナル・アルバムです。

前回も触れましたが、ナオコさんは87年7月に結婚、当時も言葉としてはあったのかな?いわゆる出来ちゃった結婚で同年の10月にご長男を出産されます。その関係もあって歌手としての活動もペースダウン、2年のインターバルをとってこの89年の1月にシングル「冬のカトレア海岸」を、翌月に本作『Bitter』をリリースして活動を再開します…が、実は本作のリリース時点には既に第二子であるご長女をご懐妊中。ここから次作までまた3年のインターバルをとることになります。

ま、そんな中でしたが久しぶりにリリースされたシングル「冬のカトレア海岸」。ナオコさんのシングルでは初めて短冊形のCDシングルが発売となった作品でした。ひっさしぶり〜と行きつけのレコード屋さんに買いに行ったのを覚えていますが、当時の印象は決して良いものではありませんでした。ロックバンド、ピカソのヴォーカルでもある辻畑鉄也さんと作詞家の麻生圭子さんの作品ですが、歌謡曲としてはインパクトに欠けるというか、どこか平板な曲という印象が強くて、あまり好きになれませんでした。こうして今になって聞き返してみると、そんなに悪い曲でもないんですけど(smile)。そして今更この曲が不倫の歌だったということもようやく理解したりして。いかに当時耳を素通りしていたかというのがわかっちゃいますね。

そしてこの『Bitter』。
当時はそんなこともあってアルバムに手を伸ばさなかったので、今回がお初。冒頭に「冬のカトレア海岸」が配置されていることもありましたが、どうにも最初の印象はこのシングルの延長線上にある感じで耳に馴染まないというか、耳に残っていかない作品でした。この違和感みたいのは何?と聴き続けてみる事数10回、ようやく思い当ったのが、この作品、作りが歌謡曲ではなくてJ−POPなんだなぁという事でした。
歌謡曲とJ−POPの違いって何?って思われるかもしれませんけど、申し訳ありませんがその辺は完全なる感覚で(smile)。でもたとえば「見かけませんでしたか」や「馬鹿だね、雨」等は打ち込み主体の音で作られていますし、「銀の針」や「悲しみのDance」等も、音色が当時のどこかバブリーな空気感を漂わせてる感じがするんです。92年にリリースされた次作『Re NAOKO』にはそういったイケイケ感というのはないので、やはりこれはバブル景気の絶頂にある89年という時代のなせる技なのかな?等と思ったりいたしますね。

そんな訳で、今上げた4曲は全てアルバム前半に固まっているので、LP風に言うならばJ−POPサイドといった感じでしょうか。ロックバンド、ザ・シャムロックのメンバーが作曲、ベテラン作詞家三浦徳子さんが作詞を手掛けた「見かけませんでしたか」、ゴダイゴのタケカワユキヒデさんが作曲、松本一起が作詞を担当した「馬鹿だね、雨」は、アタックが強めのシングル向きの楽曲。実際Wikipediaによれば「馬鹿だね、雨」はドラマの主題歌(ちょっと記憶にないんですが、いつものようにテレビ朝日さんの刑事ドラマでしょうか?)でシングル候補にもなった曲だそうです。シンガーソングライターの遠藤京子さんが作った「銀の針」、ユーミンのブレーンとして知られる武部聡志さん作曲、三浦徳子さん作詞の「悲しみのDance」も、どこか華やかさのあるミディアム・スロー・ナンバーで、聴き慣れればこちらもなかなかに味わいのある佳曲になっています。

でまぁ当初そのアルバム前半の印象に引きずられて意識が飛んでいたのですが、後半に並んでいる4曲が凄ぶる良くて。
ますは所ジョージさんが「迷惑」と「ひとりごと」という2曲を提供しているんですが、これが本当に滅茶苦茶良いんです。所さんの音楽家としての評判というのは多少漏れ聞こえていましたけど、詞も曲も実に味わい深くて最高。いつもテレビ等で少しだけ聞く所節丸出しと言えば丸出しなんですが、真面目に詞とかを書いたりしてもこの人とってもセンスがあるんだなぁと改めて思わされました。きっと照れくさくてスタンスとしてはあまりこういう楽曲提供のような事はしないんでしょうけど、何だかもったいないですね。
そして「冬のカトレア海岸」と同じ辻畑&麻生コンビが作った「最後の会話」は、「冬の〜」とは打って変わった歌謡曲マインドの溢れるミディアム・ナンバーでこちらも良作。お馴染みの石黒ケイさんが手がけた「今日子」も女性同士の友情がテーマ(ある種ビアン的…)で、ナオコさんらしいバラード・ナンバーになっています。

そしてアルバムの最後に収録されているのが、ナオコさんとは古い付き合いであるアルフィーの高見沢俊彦さんが作詞作曲した「BOYのララバイ」。これ、ぼーっと聞いていると全然そんな風に聞こえないんですが、タイトル通り当時生まれて間もないご長男のために作られた子守歌風のバラード。私にはナオコさんの洒落た感覚のほうが強すぎてあまり母性というものを曲から感じないんですけど、皆様にはどう聞こえているのでしょうか?

という訳で、ナオコさんとJ−POPという取り合わせに当初戸惑いを覚えた作品でしたが、種がわかってしまえば(?)といった感じで、聴きこむほどに好きになっているアルバムです。こちらも現在は廃盤ですが、中古市場では比較的手に入りやすい作品ですので、お手に取ってみていただきたいと思いますです。

チャートデータ
アルバム
わかりませんでした。
シングル
「冬のカトレア海岸」
わかりませんでした。

これで今のところリリースされているナオコさんのオリジナル・アルバムのレビューは全作終了でございます。長年のファンとしては一度取り掛かりたい仕事だったので、何とかコンプリート出来てちょっとほっとしている次第。ただしやはり予想していたとおりの展開になってしまったので、どうしても思いが強すぎると独りよがりに突っ走ってしまって、皆様にご共感いただける部分が少なくなってしまったかと反省もしております。アルバムの次は出来ればシングルもと思っておりましたが、これはまたの機会に。お付き合い下さっていた方がいらっしゃいましたら、本当に、どうも有難うございました。



bitter.jpg848.jpg



posted by Suzu at 03:00| Comment(8) | TrackBack(0) | 研ナオコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年12月30日

研ナオコ『スタンダードに悲しくて』(83年)

Naoko Ken:Standard Ni Kanashikute(83年)

研ナオコさんが83年にリリースした11枚目のオリジナル・アルバムです。

前年の82年に桑田圭祐さんの作品でサザンオールスターズのカバーでもある「夏をあきらめて」が久しぶりの大ヒットになったナオコさん。
プロデューサーである奥野秀樹さんの目利きで早くから桑田作品との関わりがあったナオコさんですが、「私はピアノ」のヒットは後輩の高田みづえさんに譲った形になってしまったので、「夏をあきらめて」のヒットはまさに念願の、という感じじゃなかったかと思います。
この流れで『研ナオコ 桑田圭祐を唄う NAOKO VS KEISUKE』というアルバムが編まれてもよかったように思いますが、残念ながらそういう企画には至らなかったようで、「夏をあきらめて」は同年11月発売のベスト盤『めぐりあい』に収録。本作はLP時代のナオコさんのベストで唯一CD化されている作品でもあり、ポピュラリティーは最も高いベストなのかなと思います。

本作はその翌年9月にリリースされた作品で、この3ヵ月前の6月にはジャズ・スタンダードと歌謡曲の融合にチャレンジした名盤『ナオコ・ミストーン』をリリースしており、何ともアイドル歌手なみのリリース・タームを決行。やはり売れるというのは、素晴らしいことなんだなと思いますです。
「ボサノバ」で都会的な大人の恋愛を唄い、「夏をあきらめて」で従来のドメスティックな歌謡曲からの脱却にも成功したナオコさん。
本アルバムは、そういった意味でも従来にない都会的なムードというか、おしゃれ感(恥)が漂ったライト・テイストな作品に仕上がっています。

そのライトなポップ感覚を牽引しているのが、和製ポップス界の大御所にしてイノベイターである筒美京平さん。
アルバムのタイトルにも採用された「スタンダードに悲しくて」という一節が入っているのが、ナオコさん32枚目のシングルで、ご本人も登場する化粧品のCMソングとして大量オンエアされた「愛どうじゃ恋どうじゃ」。森雪之丞さん作詞/筒美京平さん作曲というこちらもアイドル歌手なみの強力布陣で、当時化粧品のCMソングと言えば半分ヒットが約束されたようなものでしたし、ナオコさんが(主に企画内美人が出演するのが通常である)化粧品のCMに出演したということでかなり話題にはなったのですが、残念ながらヒットには至りませんでした。楽曲自体はCMソングらしいカラフルなポップスなんですが、言葉遊びのような歌詞が曲調に合わせすぎてちょっと軽すぎたのかもしれませんね。
シングルB面に収められていた「Lonely Star」はどこかティナ・ターナーの「ソウル・サヴァイヴァー」を思わせるようなリズムのある作品、アルバム用に書き下ろされた「Shall We Dance」は女性コーラスが華やかなスタンダード風の洒落た楽曲になっています。「Shall We Dance」と「愛どうじゃ恋どうじゃ」はアルバムのA面に、「Lonley Star」はB面に収録。

アルバムのオープニングを飾っているのは来生えつこ/たかお姉弟によるダイナミックなメロディのアップ・ナンバー「夜に蒼ざめて」。(何度か書いてるかもしれませんが)後にリミックスを施してシングル・カットされた作品です。秋元康さん作詞で「ペガサスの朝」で有名な五十嵐浩晃さん作曲の「言いだせない恋」は過去の苦い初恋に想いを馳せるノスタルジックな1曲。
そしてA面のラストを飾っているのは岡田冨美子さん作詞で、あのジュリーこと沢田研二さんが作曲を手掛けた「レインな別れ」。ナオコさんの芸能界入りのきっかけを作ったのがタイガースでしたし、あまり公式には聴いた事がない気がしますが、ジュリーの大ファンであるナオコさんにとっては嬉しい作品だったんじゃないかと思います。実はこの前年、ジュリーのラジオ番組の企画でジュリーの書いた曲に女性アーティストが詞をつけて番組内で披露するという企画があり、ナオコさんもこれに参加して自作詞を提供しているので、ひょっとするとそのお返しの意味もあったのではと想像しています。ジュリーらしいかは別にしてかっちりと出来あがった佳曲になっています。
※ナオコさん作詞の「一人ぼっちのパーティー」は、同ラジオ企画の曲を集めたジュリーのアルバム『JULIE SONG CALENDER』に収録。

B面は「Lonley Star」を真ん中に、お馴染み組と新規組が2曲ずつ。
お馴染み組は石黒ケイさんと福島邦子さんで、石黒さんは懐の大きなバラード「旅立つ男」を、福島さんはビッチー系の「不良娼女」を提供、新規組は三浦徳子さんとキャンディーズ曲等で有名な網倉一也さんによる「谷間の百合」と、芹沢類さんと鈴木キサブローさんによる「夜の錨」で、前者は逢う魔が時系の妖しさが漂うマイナー調の作品で、後者はクロージングに相応しいナイト・ミュージック風のスロウ・ナンバーになっています。

発売当時に購入して聴いていたアルバムですが、(従来作品と比較すると)やはり軽めに感じた部分もあって、それほど私的にはピンとくる作品ではありませんでした。
当時特別好きだったのは「谷間の百合」ぐらいでしたけど、こうして今になって改めて聴きなおすと、「旅立つ男」や「夜の錨」、「Shall We Dance」なんて曲も味わいがあっていいですよね。
イージーリスニングというほど軽いノリではありませんが、ナオコさんのアルバムでは比較的さらっと聴けるタイプの作品だと思いますです。

チャートデータ
アルバム
わかりませんでした。
シングル
「愛どうじゃ 恋どうじゃ」:71位



img243.jpga1.jpgimg5810287439656.jpg
※画像お借りしました。
posted by Suzu at 19:00| Comment(12) | TrackBack(0) | 研ナオコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年12月29日

研ナオコ『Re NAOKO−悲しい女−』(92年)

Naoko Ken:Re Naoko -Kanashii Onna-(92年)

研ナオコさん、92年にリリースされた16枚目のオリジナル・アルバムです。

ナオコさんは現在のご主人と87年に結婚され、同年にご長男を、89年にはご長女をご出産されています。きっと子育てを優先されていた状況があったのだと思いますが、前作『Bitter』から3年のインターバルをとってのリリースとなったアルバムです。

初のセルフ・プロデュースとなった本作ですが、お馴染みのといえるのは編曲で参加している若草恵さんぐらいで、後の方は初めて組む面々ばかり。
ナオコさんのアルバムはその人脈の広さもあって豪華な作家陣が並ぶことが多いのですけど、本作では谷村新司さん、渡辺真知子さん、オルケスタ・デ・ラ・ルスのNoraさん、シャ乱QのMAKOTOさん、専業作家では都会的な作風で知られる都志見隆さん、テレサ・テンさんの作品等でお馴染みのベテラン荒木とよひささん等が名を連ね、大人の女性のちょっと悲しい恋物語をそれぞれのタッチで綴っています。

先行シングルとしてリリースされたのは谷村新司さんらしいペーソス溢れるミディアム・ナンバーの「悲しい女」と、そのカップリングで。(歌詞では逆に歌っているけど)恋人のために綺麗でいたいと願う純粋な女心を歌った「綺麗になりたい」の2曲。綺麗になりたぁい〜♪とエステのCMソングとして大量オン・エアされたカップリングのほうが曲としては有名かもしれませんね。
書き下ろしは初めてですが、カバー曲としては過去に「秋止符」を唄っていますし、この後の『Ago』でも「帰らざる日々」を取り上げているので、ナオコさんアリスはお気に入りなんじゃないでしょうか。

また本場でも評価されているジャパニーズ・サルサ・バンド、オルケスタ・デ・ラ・ルスのNoraさんとShiroさんが書いた「P.S.話がちがうじゃない」は、みゆきさんの「みにくいあひるの子」以来となるラテン・ナンバーで、詞の内容はともかく賑やかなタッチがナオコさんのシングルとしてはニュー・タイプな感じでございました。本アルバムではナオコさんのソロで収録されていますが、3ヶ月後に敏いとうとハッピー&ブルーに在籍していた古関正美さんと和泉順也さんにより結成されたデュオ、ライラックスとのデュエット・ナンバーとして歌い直され、「ナオコwithライラックス」名義でシングル・リリースもされています。

若干異色でもあるそのナンバーを除くと、少々枯れ始めた歌声も良い具合に曲の味わいとして昇華されたような、心に沁みるナオコさんのバラードの世界がたっぷりと楽しめる本作。

MAKOTOさんの「Hold On Me」、高橋睦子さん作詞、渡辺真知子さん作曲の「材木座あたり」、荒木とよひささん作詞、都志見隆さん作曲の「悲しみよ声をかけないで」、中川麻衣さん作詞、都志見隆さん作曲の「OFF」あたりが本作の基調となる楽曲。
ここに森川ゆうさん作詞、若草恵さん作曲のボサ・ノヴァ「Half Moon」、荒木/都志見コンビによるスウィング・ジャス・テイストの「ひとり遊び」、同コンビによる本アルバムの中では比較的歌謡感の強い「涙が海になるくらい」等が緩やかな起伏をアルバムに提供しています。

本作のキーワードはやはり「綺麗になりたい」という言葉でしょうか。アルバムの随所に散りばめられたその言葉には、心身ともに愛させるべき美しい人間でありたいと願う女性の心情がにじみ出ており、ナオコさんが世の女性の思いを代弁するかのように歌い語るとても味わい深い作品です。
商品としては既に廃盤ですが、CD時代になってから発売されたアルバムのため、中古品ではよく見かけますので、機会があればお手に取ってみていただきたいと思います。

※08年8月にレビューしたものを改稿しました。
…実は3年前に一度このアルバムのレビューを書いていたらしいのですが、全く覚えていず。今回本作をレビューしようと思って曲について調べていたら、何と自分のブログがヒットしたというとんちんかんぶりでした。CD今回改めて購入して聴きこんでたんですけどね。と言うことはもう1枚家に本CDがある訳です。露ほども思い出さなかったなんて、我ながら吃驚。『恋愛論』も『中島みゆきを唄う』も同時期にレビューしてたみたいです。…二度吃驚。

チャートデータ
アルバム
わかりませんでした。
シングル
「悲しい女」
わかりませんでした。



471333.jpg
posted by Suzu at 20:45| Comment(8) | TrackBack(0) | 研ナオコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年12月17日

研ナオコ『あの頃へラブレター Ago』(93年)

Naoko Ken:Ago(93年)

研ナオコさん、93年にリリースされた17枚目のオリジナル・アルバムです。

ニューミュージック系の名曲を集めたカバー・アルバムとして企画されたもので、「あの頃へラブレター」という副題がついています。
この作品、先日ご紹介した81年の名盤『恋愛論』の続編という佇まいもあって、この企画の恩恵かその『恋愛論』自体も当時同時にCD化されてとっても有り難かった思い出があります。正直私にとっては『Ago』のほうが副次的な感じだったりして。

今回はバンバンの「いちご白書をもう一度」、丸山圭子さんの「どうぞこのまま」、吉田拓郎さんの「旅の宿」、井上陽水さんの「ジェラシー」、りりぃさんの「私は泣いています」、安全地帯の「ワインレッドの心」、つのだ☆ひろさんの「メリー・ジェーン」、梓みちよさんの「メランコリー」、石川セリ(高樹澪)さんの「ダンスはうまく踊れない」、アリスの「帰らざる日々」、サザンオールスターズの「ポカンポカンと雨が降る」というラインナップ。
よくよく見ると陽水さん関連の曲が3曲、拓郎さんの関連の曲が2曲セレクトされていますね。

発売当時、『恋愛論』と比べてしまう気持ちもありましたし、正直言ってあまり良いアルバムとは思えませんでした。なんとなく一般的受けしそうな名曲をセレクトして、あぁナオコさんが歌ってるんだなぁという感じで。声も若干枯れ具合が進んでいるようでしたし、どこか単調で、『恋愛論』のようなカバーの粋を超えたオリジナル作品!とは到底思えなかったのです。だから、今回もそんな論調でこの記事を書こうかなーと思い、それでもせっかく書くんだからと繰り返し聴いていたら…これがけっこう味が出てきた(爆)。
「私は泣いています」や「どうぞここまま」、「ダンスはうまく踊れない」なんてやっぱりナオコさんにハマるし、「メランコリー」なんかもモダン・テイストなジャズっぽいアレンジがなかなか面白い味付けになっていたりします。「ポカンポカンと雨が降る」はもう少しツイストをきかせてもよかった気がしますが、やっぱりサザン歌謡との相性の良さは感じられる出来になっています。
全体的に枯れた感じが強いんですが、けっこうこういう冬の凍てついた寒さの中でBGM的に聴くと納まりがよかったりもするんですよね。

ファンって、ダメだなぁ(smile)。

されど、やはりファン向き、もしくは全然ファンじゃない方が古今の名曲を聴きたい、的なスタンスで聴かれる感じのアルバムかなと思います。アマゾン等ではまだ手に入りますが、何だか変な値段設定になってるのは何ででしょ?(5,000円近くもする…)
しかしまたしても『研ナオコ 魅力のすべて』には全曲収録されていますので、よろしければそちらをお求めくださいませです。
(…何もこのアルバムの曲を全曲収録しなくてもよかったんですけどね…)

チャートデータ
アルバム
わかりませんでした
シングル
「メリー・ジェーン」:わかりませんでした




posted by Suzu at 23:50| Comment(2) | TrackBack(0) | 研ナオコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年12月12日

研ナオコ『恋愛論』(81年)

Naoko Ken:Ren-ai-ron(81年)

研ナオコさん81年にリリースされた9枚目のオリジナル・アルバムです。

私にとっては記念すべき最初に購入したナオコさんのオリジナル・アルバムであり、もっと言えば初めて買った歌手の方のLPがこの『恋愛論』でした。
私が歌手のナオコさんを好きになったきっかけは「みにくいあひるの子」なんですけど、その後に購入したカセットの『全曲集』を経て、次のアイテムを求めた時に丁度最新作としてリリースされていたのがこの作品でした。オリジナルと言っても、主にニューミュージック系の楽曲をセレクトしたカバー・アルバムな訳ですが、当時の私には知っている曲のほうが少なかったので、ほとんどオリジナル作品として聞いていたように記憶しています。
あれから30年が経ちますが、この作品の素晴らしさは少しも色褪せる事がありません。いつ聴いても新鮮な感動を私に与えてくれる稀有な作品なんです。

イルカさんの「雨の物語」に始まり、堀江淳さんの「メモリーグラス」、庄野真代さんの「アデュー」、福島邦子さんの「ボサノバ」、五輪真弓さんの「さよならだけは言わないで」、アリスの「秋止符」、山崎ハコさんの「白い花」、因幡晃さんの「別涙(わかれ)」、そして中島みゆきさんの「ひとり上手」と「根雪」というラインナップ。
選ばれているのが名曲ばかりというのももちろんあると思いますが、帯に書かれている「ニューミュージックの名曲に、ナオコの歌心を吹き込んだ別れの詩集を、今、あなたに」という謳い文句そのままに、ナオコさんの歌心がこれでもかと詰まった作品なんです。もちろん歌心が詰まってると言ったからって、しゃにむに歌いこんでいるわけではありません。いつものように曲に必要なエッセンスだけを抽出して、丁度良いころあいで聞かせてくれる。その丁度よいころあい加減が、このアルバムは本当に絶妙なんです。

とにかく1曲目の「雨の物語」からして、もうそこにはカバーを超えたオリジナルの世界が広がっています。イルカさんの歌う「雨の物語」も大好きですが、ナオコさんのこれも絶品。堀江淳さんの「メモリーグラス」、これは私の記憶に間違いがなければ、堀江さんが曲を書く時に想定されたのがナオコさんだったそうなんです。本家(smile)の自家薬籠ぶりが堪能出来る素晴らしいバージョンになっています。そして「アデュー」、個人的にはこの曲が本盤のハイライトでしょうか。かつての恋人たちの一瞬の再会と別れを描いたバラードですが、この曲で魅せるナオコさんの表現力の素晴らしさというのは筆舌に尽くし難いです。
夕闇が刻一刻と濃くなっていくオフィス街での怖いような静寂の中、目と目を見交わし、それでも何も言わずにすれ違って行く男女の心の機微が、余すところなく伝わってまいります。この曲、庄野真代さんバージョンだと歌詞の違うサビの繰り返しが3回あるのですが、その3番目の部分をカットしたことによって、より大人の恋愛歌としての完成度が上がったように思うんですよね。この選択に出た方、値千金だと思います。そしてこのオフィス街の静けさから徐々に俯瞰していって、夜の繁華街へとシーンをがらりと移していく「ボサノバ」への流れがまた秀逸。

「ボサノバ」は、密かにナオコさんのターニング・ポイントになった曲だと思ってるんですよね。それまではどこか「わかれうた」=「ふられうた」みたいな、一方的に置いて行かれてしまう女の人たちの歌が多かったのですが、この曲あたりからぐっと両者の関係性が対等になってきたというか、主人公が地方から上京してきたさえない女の子から、都会で生きる自立した女性にシフト・チェンジしたように思うんです。いい女度がどんどん上がっていった感じと言うんでしょうか(smile)、30才を迎えようとしていたナオコさんの実像と、80年代の空気感というのも関係しているのかもしれません。
前にも触れましたが、この曲だけはシングル・カットしたこともあってナオコさんのために書かれたオリジナル曲だと思っており、何でカバー・アルバムの中に入ってるんだろう?なんて疑問に感じていましたが、実は作者の福島邦子さんのセカンド・アルバムに収録されていた曲で、こちらもれっきとしたカバー曲でした。マイ・フェイバリットな名曲です。

そしてこの後に続く各曲も実に絶妙なさじ加減の連続。ちょっと泣き節を入れて聞かせる「白い花」や、静と動の感情のコントラストが鮮やかな「別涙(わかれ)」、スケールの大きな「根雪」等も抜群です(「ひとり上手」だけは、ちょっとマイナーに歌いすぎかな?って、気はしてますけど…)。
そしてこのアルバムの素晴らしさの一因として上げておきたいのが、編曲/アレンジの良さ。「雨の物語」のピアノの音色、前述の「アデュー」から「ボサノバ」へのつなぎ部分、「別涙(わかれ)」冒頭の静寂感等、ナオコさんの歌声を最大限引き立てる絶妙のサポートがなされているように思います。若草恵さんという方が担当されているんですが、この方の手がけたラインナップを見たら、明菜ちゃんの「難破船」や郷ひろみさんの「哀愁のカサブランカ」、坂本冬美さんの「夜桜お七」等、良いお仕事をたくさん出がけているベテラン・アレンジャーでいらっしゃいました…納得です。

そんな訳で、(ナオコさんには多いんですけど)単なるカバー・アルバムの粋を大きく超えたオリジナル・アルバムとして、ナオコさんの歌い手としての魅力を堪能出来る逸品でございます。
ナオコさんのアルバムには珍しく、93年にニュー・カバー・アルバム『Ago』のリリースに併せて、副題に「あの頃へラブレター」と付けられた上でCD化されています。現在では手に入りづらい作品になってしまいましたが、またしても(smile)CDBOX『研ナオコ 魅力のすべて』には全曲収録されておりますのでよろしければそちらを。…ただし曲間のつなぎまで含めて名盤となっている本作、出来ればオリジナルを手に入れてお聞きいただきたいですけどね。

チャートデータ
アルバム
わかりませんでした。
シングル
「ボサノバ」:69位




posted by Suzu at 21:45| Comment(10) | TrackBack(0) | 研ナオコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年12月09日

研ナオコ『ラブ・ライフ・ライブ 弥生』(08年)

Naoko Ken:Love Life Live Yayoi(08年)

研ナオコさん、08年にリリースした18枚目のオリジナル・アルバムです。

前回ご紹介した『Love Life Live Vol.1』は取りあえずベストないしコンピレーション扱いという事で、本作は『Ago』以来15年振りのオリジナル・アルバムとしてアナウンスされたアルバムです。
しかもナオコさんにとって初の大ヒットとなった「愚図」の作者である、宇崎竜童&阿木耀子夫妻の書き下ろし&カバー曲が9曲中8曲を締めるという宇崎&阿木ソングブックの様相。アルバム発売当時はナオコさんに対する想いというのが自分の中でかなり下火だった事もあり、聞いてみようという気にならなかったのですけど、今回のナオコさん再探訪であらためてお取り寄せをした次第です。

そして、またこれが本当に驚くぐらいに素晴らしい作品で。
ナオコさん、この辺りからすっかり往年の輝きを取り戻していたんですね。いやいや往年のというのとはちょっと違うのかも。また新たな魅力を私たちに見せはじめてくれていたのです。

何はともあれタイトル曲の「弥生」。これが…凄い。

若い頃理由あって子供を堕ろさなくてはならなかった女性が主人公。愛した人とも別れ、その後出会った他の男性と結婚、子供を儲けて幸せに暮らしているんですが、事あるごとに堕ろしてしまった子供の事を思い出し、贖罪の中で日々を暮らしている…というような内容。
ナオコさんにとって初めてと言ってもいい社会的内容を含んだメッセージ・ソングとも言え、内容が内容だけに、この曲を中絶反対のプロパガンダに上げているサイトもありましたが、そういう声高な主張よりも、親の子に対する愛情の深さが痛いくらいに胸に沁み込んでくるような、やるせなくも物悲しい歌曲になっています。これは宇崎さんの美しくも抑制のきいたメロディと、阿木さんの詞の巧みさ、ナオコさんの持ち味である歌の語り部としての力が相乗してそう聞かせてるんだと思います。

9分という大曲。曲と曲の間には、会えなかった幼子に聴かせる「かごめかごめ」「竹田の子守唄」「さくら」という3曲の童歌が挿入されます。
昔の童歌にはその曲が生まれることになった隠された背景があったりしますが、「かごめはかごめ」はその由来のひとつに、家の跡目騒動に巻き込まれて子供を流産させられた女性の話だとされるものがあります。また「竹田の子守唄」は、もともと大阪や京都の部落差別地方に伝わる子守歌だったという説も。そして最後に歌われる「さくら」は、亡くしてしまった子への鎮魂歌としてつぶやくように歌われます。3月に生まれたはずだから弥生と名づけた我が子を、毎年その時期に無数の花びらとなって舞落ちる桜に重ね合わせて祈りを捧げる主人公。美しく咲き誇り、またあっという間にその命を終えてしまう桜。その桜の花が散るのをただ見つめるしかない主人公の姿には、人として色々と考えさせられるものがあります。
聞き手に判断を委ねるかたちになっているから、余計にそうなのかもしれません。良いとか、悪いとかだけでは決着がつけられないことって、世の中にはたくさんありますものね。



おっと、また意識が飛んでしまった。
この曲を聴くと、自分も一瞬物思いに耽ってしまうんですよね。是非多くの方に、聴いていただきたい作品です。

そしてこのアルバム、この『弥生』1曲だけでもお釣りがくるほどなんですけど、その他の楽曲もまたとても素晴らしいんです。
その昔『笑い上戸』というシャイな男性とあけすけな女性のすれ違い恋愛の曲をナオコさんに提供した夫妻ですが、今回は同じシャイな男女同志のもどかしい関係を曲にした軽いタッチのロック・ナンバー「シャイだった」、ダウンタウンブギウギバンドのヒット曲「身も心も」の返歌として書かれたらしい、いぶし銀なメロディが光る「マイ・ボディ・アンド・ソウル」、山口百恵さんのヒット曲のカバーで、そこはかと艶めかしい軽いタッチの歌い口が新鮮な「絶対絶命」、台詞部分に年月の流れを込めたセルフ・カバーの「一年草」、内藤やす子さんとはまた違ったブルース表現が魅力の「想い出ぼろぼろ」、こちらも渋く歌い込む前述の「身も心も」、由紀さおりさんのオリジナルをぐっと枯れたナオコ・ワールドに引き寄せて聞かせる「TOKYOワルツ」、そしてブロンディの「コール・ミー」を髣髴とさせるような滅茶苦茶かっこいいロックンロールの「煌めく河」(これだけ別作者)と、まぁどれもこれもの粒ぞろい状態。

このアルバム、曲が良いということももちろんあるんですが、何よりナオコさんが歌手として新たな境地を切り開いたのが感じられるのが嬉しいんです。90年代後半以降、枯れた魅力、というには少々キツい歌声での歌唱が常態的な感じになっていたのですが、ここではそのスカスカした部分に血肉骨が詰まり、ドスが効いたというか重心が低くなったというか腰が据わったというか、低音部分の響きに厚みが増して、枯れていながらも芯のある歌声が聴けるんですよね。
もう、待ってました!という感じ。
テレビ等への露出が減った分、地道にされど精力的にコンサート活動を続けてきた成果なのかもしれません。
本年リリースの次作『一途』でも好調は堅持されてますものね。

残念ながらこのアルバムも一般流通はネット販売のみ。
「弥生」も、こんな素晴らしい楽曲がほとんどテレビ等では聞く機会がなかったというのが、まぁわかりますけど残念でなりません。以前You-TubeにBSの番組で歌われた映像がUPされていたそうですが、今は削除されてしまっています。ただし、中国の画像サイトに映像がありましたので、短いバージョンですが是非お聞きいただきたいと思います。
出来ればフルで、この曲は聴いていただきたいのですけど。

傑作と、言っちゃおうと思います。

※「弥生」の童謡部分の解釈については著名な歌謡曲サイトの記述を参考にさせていただきました。その方の見識あっての読み解きですが、この曲の「核」となる部分ゆえ引用させていただいた次第です。

チャートデータ
アルバム
チャート入りなし

「弥生」→http://v.youku.com/v_show/id_XMTkwMTU1MTk2.html

posted by Suzu at 23:00| Comment(7) | TrackBack(0) | 研ナオコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年12月08日

研ナオコ『ラブ・ライフ・ライブVol.1 35周年アニバーサリー』(06年)

Naoko Ken:Love Life Live Vol.1 35th Anniversary(06年)

研ナオコさんの2006年にリリースされた作品です。

93年にカバー・アルバム『Ago』をリリースしたのち、ベスト盤の発売等はあったものの、新たなレコーディングによる作品というのはなかなか制作されませんでした。
長らく所属していたポニーキャニオンとの契約も2001年に終了してしまった中で、本作は自主製作=インディーズ作品としてではありますが、13年振りに新録音曲のみで構成され、コンサート会場や通信販売のみで購入することが出来た作品です。(しかも35周年記念作品!)

アルバムはセルフ・カバー曲が7つと、新たなカバーが2つ、完全オリジナルの新曲が1曲の全10曲入り。セルフカバーが多いとはいえ全部が新録音曲なので、本当はオリジナル・アルバムにカウントしてもいい気がしますけど、分類としてはベスト盤扱いになってるみたいです。
セルフカバーは当然のように代表曲が並んでいて、「愚図」「あばよ」「窓ガラス」「TOKYO見返り美人」「六本木レイン」、そしてかつてレコーディングしたみゆき作品の中から「りばいばる」と「時代」が再登場しています。このセルフカバーたち、「六本木レイン」のみ大きくロック・タッチに変更されている以外は、カバー曲も含めてほぼ原曲どおりのアレンジで再演されています。

だから…というわけではないんでしょうけど、個人的には声の劣化のほうがどうしても気になってしまって、正直歌を楽しむというところまで私は行けませんでした。ここ最近の作品はだいぶ持ち直しているというか、もしくはナオコさん自身が今の声の使い方を会得されたのかあまり衰えが気にならない仕上がりになっているんですけど、まだこの06年時点ではそこまでたどり着いていなかったようで、もう何だか聴いているとこちらの喉が締め上がってくるというか、苦しくなってきちゃう感じ。ナオコさんの歌って難しいんだなーなんて、改めて思ったりもいたしましたけど。

…でもね♪(長山洋子風)

悪いことは先に書いたので、後は褒めるだけ(smile)。
今回このアルバムのために用意された新曲がね、実に素晴らしいんです!
オリジナル曲の「あした…」と、中島みゆきさんの『心守歌』のリードトラックだった「囁く雨」、セルフタイトルだった『中島みゆき』収録の「土用波」のカバーなんですが、これが本当にいい。
歌い飛ばし系のアップ・ナンバーで、アン・ルイスさんなんかを髣髴とさせる歌謡ロックの「あした…」、久しぶりにナオコ節とみゆき曲の化学反応を満喫する事が出来る「囁く雨」と、軽いこぶし回し(フェイクと言うべきかな?)が新鮮な「土用波」。聞いてるのが辛くなるその他のセルフカバーの中にあって、まるで砂漠の中でオアシスにたどり着いたかのような感覚に陥っちゃいます。本当にね、この差は何?って首をかしげたくなるぐらいの違いなんですよ。もしかしたら録音時期とかが大幅に違うのかもしれません。そんな風に思えちゃうほどこの3曲は別格。これを聴くためだけでも、このアルバムを手に入れる価値はあると思いますです。

ただし、残念ながら現在このCDはナオコさんのHPでも通販の取扱いが終了してしまっており、正規では(今のところ)手に入れることが出来なくなってしまっています。
本来はDVDとのセットで、そちらには「この空を飛べたら」「ルージュ」「あした…」「かもめはかもめ」「LA-LA-LA」等(のたぶんライブ映像)が収録されている模様。私も実は手に入れられてなくて、先日オークションに手ごろな値段で出ていたので落とす気満々だったのですけど、つい気を抜いた隙に最後の最後でさらわれてしまって涙を飲みました(馬鹿馬鹿…)。
幸運な事(?)に、ituneでCD音源のほうは発売されていたので、とりあえず今回はそちらからゲットした次第です。なので、ipodをお持ちの方はお薦めの3曲だけDLするのもありかもしれませんね。

この2年後にはほとんど復調した名作『弥生』をリリース。『弥生』にいたる序章、そう捉えてもいい作品かもしれませんです。

チャートデータ
わかりませんでした…って、入ってませんよね、当然。

70501.jpg
アルバムの曲がないので、40周年記念として銘打たれた動画(?)を。10曲聞けます。
posted by Suzu at 22:00| Comment(9) | TrackBack(0) | 研ナオコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年12月04日

研ナオコ『中島みゆきを唄う』(78年)

Naoko Ken:NAOKO VS MIYUKI(78年)

78年にリリースされたナオコさん6枚目のオリジナル・アルバムです。

前年にちょっと色々あったナオコさん。その影響で半年ほど休業を余儀なくされたんですが、起訴猶予となって芸能界にもカムバック。当時の映像等を見ると、まるで病気明けとか誰かが亡くなったショックで休業していたような雰囲気(曲前の紹介とかが、そうなんです)で、かなり温かく芸能界に再度迎え入れられたような印象があります…詳しい経緯は私も知らないですけど、そんなものなんですかね。

復帰第一弾として77年10月にリリースしたアルバム『かもめのように』から、翌年3月になってシングル・カットした「かもめはかもめ」が大ヒット。78年はみゆきイヤーと言ってもいいみゆき作品一色のリリースで、3月の「かもめはかもめ」に続き、シングルは7月の「窓ガラス」、10月の「みにくいあひるの子」と3連続。アルバムも7月にみゆきさんの曲だけで固めた『NAOKO VS MIYUKI』を発売しております。

で、その『NAOKO VS MIYUKI』。
この前の2つのアルバムは片面をみゆきさんの書き下ろした曲で、もう片面を他の作家さんの曲で固めるといった構成でしたが、本作は名前が示すように全曲をみゆき作品で構成。その代わりに新たに書き下ろした作品は収録されず、アルバムはA面を新録音ながらみゆきさん自身や他の歌手へ提供した楽曲のカバーで固め、B面は今までリリースしたみゆきさんによるナオコさんへの提供楽曲を収録するという形式になっています。

色んな苦渋を経験したという事も、もしかしたら影響しているのかもしれませんが、本当にこのアルバムのナオコさんは凄いんです。

A面は「時代」「しあわせ芝居」「わかれうた」「追いかけてヨコハマ」「アザミ嬢のララバイ」「この空を飛べたら」というラインナップ。
とにかく1曲目、「時代」の素晴らしさにまずはノックアウトされます。何という圧倒的なスケール感でしょう!この曲の持っている大きなテーマやメッセージ性を、これ以上ないぐらいに表現して歌いきっています。独断と偏見で言わせていただければ、みゆきさんのオリジナルよりも私はこのナオコさんのバージョンのほうが好き。多少へこんだ事があっても、この希望に満ちた歌声を聴けば気分が上向きになること請け合いです。こちらも原曲越えしてる(気がする)「アザミ嬢のララバイ」や、自家薬篭中という感じの「しあわせ芝居」に「追いかけてヨコハマ」、その後のコンサートのレパートリーにもなっているお登紀さんの「この空を飛べたら」等、その他の曲も本当に吃驚するぐらいクオリティが高〜い。普通大抵のカバーというのはオリジナルに比べるとどうしたって劣るものが多いんですけど、ここには肩を並べるか、もしくは上をいっちゃってる?というようなバージョンばかりが収められています。
神がかっていると言うは、こういうことを言うんだろうなぁと思いますね。

B面はナオコさん'Sヒットということで、「かもめはかもめ」「窓ガラス」「LA-LA-LA」「あばよ」「雨が空を捨てる日は」「強がりはよせョ」というこちらも強力ラインナップ。
新曲扱いだった「窓ガラス」はまだ売れる前のアルフィーの皆さんをバックに従えてテレビに出ていたことでもプチ有名ですよね。アルフィーとは東宝レコード→田辺エージュンシー→キャニオンレコードと全く同じ軌跡を辿った縁のある仲なんだそうです。その「窓ガラス」にしても「あばよ」や「強がりはよせョ」にしても、どこの街でも繰り広げられていそうな悲しくて、俯瞰するとどこか滑稽でもあるストーリーを紡がせたらみゆきさんはやっぱり日本一ですし、またそれを歌ってナオコさんもやっぱり日本一だなぁと思います。もうね、本当に詞、曲、歌がこれ以上ないほど一体化しちゃってるんですよ。つけ入る隙がないとは、これまたこういうことを言うんだろうなぁと思いますです。

そんな訳で、私はこの作品を少なからずある中島みゆき作品集の最高峰であると思っております。みゆき作品というくくりが必要のないくらい、日本の歌謡界の宝というべき傑作・名作アルバム。これを聴かずして他に何を聴くって感じでしょうか(大きく出たね)。
長らくこれだけはCDでも比較的容易に手に入りやすい作品でしたが、どうやら今は店頭在庫のみみたいですね。もう、信じられない!
(ただし、『研ナオコ 魅力のすべて』には全曲収録される予定です。)

チャートデータ
アルバム
わかりませんでした。
シングル
「窓ガラス」:8位


「時代」がなくて残念。

naoko miyuki.jpgnaoko mado.jpg
posted by Suzu at 13:00| Comment(10) | TrackBack(0) | 研ナオコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年12月01日

研ナオコ『アゲイン』(84年)

Naoko Ken:Again(84年)

84年にリリースされたナオコさん12枚目のオリジナル・アルバムです。

82年にリリースしたサザンオールスターズのカバー「夏をあきらめて」が快心のヒットとなったナオコさん。
ナオコさん陣営がこのヒットの勢いを生かしたいと思うは当然の事で、勝負の次作に選んだのが旧知の中島みゆき作品でした。本当は新曲を書いてほしかったところでしょうけど、みゆきさんも「悪女」のヒットでセカンド・ブレイク真っ只中の時期。お願いしたけど新らたに曲を書き下ろすのは難しいということで、結局78年のアルバム『かもめのように』に収録されていた「ふられた気分で」を再レコーディングしてリリースすることになった…のじゃないかと思います。
良い曲ですけど、いくら中島みゆき作品といってもシングルにするには地味過ぎる本作。リリース時点で結果は見えていたような感じでしたが、やはり連続ヒットとはいきませんでした。
その時点で本作の構想があったのかどうかはわかりませんが、タイトルから「で」がなくなった「ふられた気分」のシングル・リリースから2年後の84年になって、この「再び企画」をアルバム単位に拡大させたのが、この『Again』ということになると思います。

中島みゆき作品で歌手としてのステイタスを確立したナオコさん。
当時私が聴いていたのはシングル曲と『NAOKO VS MIYUKI』ぐらいでしたが、やはりみゆきさんとのコラボには絶対の信頼をよせていたので、この作品のリリースがアナウンスされた時は、非常に嬉しく期待に胸を高鳴らせたのを覚えています。
アルバムのジャケットに映るのはすっぴんのナオコさん。当時このすっぴんジャケは話題になりましたけど、女の人、しかもあのナオコさん(smile)が化粧を落とした姿をさらすというのは、このアルバムに対して並々ならぬ思いを抱いているんだろうなぁと思わずにはいられませんでした。

そんなこんなで非常に期待をよせた作品だったのですが…どうもこれが私的には納得のいかない内容で。
選曲されているのは「りばいばる」に始まり、「誘惑」「ピエロ」「ふられた気分」「捨てるほどの愛でいいから」「雨…」「かなしみ笑い」「笑わせるじゃないか」「おもいで河」「ルージュ」という、まぁ至極順当というか魅力的な楽曲たち。
聴き始めの「りばいばる」とかはいいんですけど、曲が進むに連れてどんどん耳に入らなくなってきて、気がつけばアルバムが終わっちゃってるって感じなんですよね。84年リリース当時がそうで、実は今回このブログを書くにあたって20数年ぶりに聴きなおしたのですが、はやりその印象は変わっていませんでした。

思うに…
ナオコさんって、楽曲との距離の置き方が抜群に上手いシンガーだと思うんです。一歩引いているというか、曲に必要な情感だけを上手くすくい上げて、必要以上にベタベタしたところがない、語り部に徹するタイプのシンガーかなと。レコードでは泣き節的な歌い方をする事もありますけど、それでもどこかそういう自分を冷静に見つめているもう一人の自分がいて、きちんとコントロールを利かせているように思えるんですね。
このアルバム、久しぶりにがっつりとみゆき作品に取り組むということで、回りの期待に加えて自分自身へのプレッシャー、すっぴんをさらすぐらいに良い作品と作ろうという気負いがかなり入ってしまったんじゃないでしょうか。だから、感情が入りすぎて、いつものような曲とのうまい距離感が保てなくなってしまったのかなと。
「誘惑」はもっと洒落た感じが欲しいし、「笑わせるじゃないか」はもっと滑稽でいいし、「ルージュ」はもっとたおやかさがあっていいと思うんです。「捨てるほどの愛でいいから」や「雨…」も泣きすぎ。どれもこれも必要以上にウェットで、悪く言うと一本調子。みゆきさんの世界に入り込みすぎちゃって、ナオコさん本来の引きの魅力が生きていないように思えて仕方がないのです。

あくまで、これは私個人の印象。これらの曲は既にみゆきさん自身の歌で私が慣れ親しみすぎていたというのもありますし、異様に期待値が高かったというのも、そういう悪い印象を抱かせる原因になったのかもしれません。
幸いこのアルバムは、もうひとつの中島みゆき作品集である傑作『NAOKO VS MIYUKI』とセットになってCD化され、運が良ければ一部店頭在庫等でまだ手に入る可能性もないことはないので、興味のある方はぜひ聴き比べを兼ねてお聞きいただければと思います。曲順とかバラバラですけど、先日ご紹介した5枚組BOXセット『研ナオコ魅力のすべて』には全曲収録されている模様です。

否定的意見ばかり並べてすみません。この作品好き!なんて方がいらっしゃいましたら、是非とも私の心をほぐしていただきたくお願い申し上げます。

チャートデータ
アルバム
わかりませんでした。
シングル
「ふられた気分」:53位



naoko again.jpgimg6680508352402.jpg
posted by Suzu at 23:15| Comment(10) | TrackBack(0) | 研ナオコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月27日

研ナオコ『第三の女』(74年)

Naoko Ken:Daisan No Onna(74年)

研ナオコさんが東宝レコードから74年にリリースしたセカンド・アルバムです。

実はこのアルバムの存在を知ったのは、本当にここ数年の出来事。
積極的に調べなかったというのもありますけど、リアルタイムでナオコさんに夢中になっていた80年代は今のようにネットを使えば何でも情報が手に入るような時代じゃありませんでしたので、私的には既に廃盤となっていた東宝時代のアルバムの事など知りようもなく。たまたま手に入れた東宝時代のベスト盤『研ナオコ・その道』が唯一のLPだと思っていたぐらいでした。ネット時代になって、オークションの画像などでファースト・アルバム『女ごころ』はたまに見かけたのでその存在は知っていましたけど、このセカンドにいたっては(タイミングの問題でしょうけど)一切見かけるという機会がなく、最近急に記述が充実してきたWikipediaのアルバム情報にて、初めて本作の存在を知ったという具合です。

ナオコさん、当時は歌手としてよりも女優やタレントさんとして大活躍していた時代。
一躍ナオコさんにスポットライトを当てた愛川欽也さん共演の「僕は美人しか撮らない、だからシャッター押せない」で有名なミノルタのCMに始まり、TBSの人気ドラマ「時間ですよ」や「ありがとう」への出演、映画では『にっぽん美女物語』で何とどうどうの主演をはっていたりと、本当に売れっ子さんだったんですよね。それでもナオコさんの目標は歌手として成功すること、その執念が実るのはもう少し先のことですが、歌い手さんとしても充分に力を蓄えていた事は、本セカンド・アルバムを聴けばよくわかりますです。

オリジナル曲はファースト・アルバムにも収録されていた「うわさの男」「女心のタンゴ」に、アルバム初収録となるブルージーな8thシングル「第三の女」の3曲。他はりりぃさんの「私は泣いています」、朝丘雪路さんの「雨はやんだら」、坂本スミ子さんの「夜が明けて」、いしだあゆみさんの「砂漠のような東京で」、菊池章子さんの「星の流れに」、エド邦枝さんの「カスバの女」、弘田三枝子さんの「人形の家」、奥村チヨさんの「終着駅」、ペドロ&カプリシャスの「教会へ行く」という新旧取り混ぜた女性歌手たちのヒット歌謡曲のカバーで構成されています。

当時21才のナオコさんが歌うには随分大人びた曲が並んでいますけど、張りのある歌声でどうどうと歌いきっていてとても魅力的。「星の流れに」や「カスバの女」なんて放浪歌謡的なものを歌っても、シラケと呼ばれたいしだあゆみさんの「砂漠のような〜」を歌っても、どこかに希望の活力が漲っちゃう感じなのはご愛嬌ですが、それはそれで愛おしく思えたりするわけです
東宝時代の曲とキャニオン時代になってからの曲を比較すると、あきらかに声の厚みというか声の出し方が違ってますよね。より繊細な表現をキャニオン時代になるとするようになって、悲しい恋の歌が似合う大人の女性へと変貌を遂げて行ったナオコさん。それはそれでもちろん素敵な事ですけど、ここだけで味わえる若さいっぱいの歌唱というのも、ファンとしては捨てがたいと思う訳です。「私は泣いています」は、こちらも93年リリースのカバー・アルバム『Ago』で渋く再レコーディングされていますので、聴き比べ等してもらえたら、そんな思いも汲んでいただけると思うんですけど…難しいですよね(溜息)。

若いって、素晴らしいー。

※と言う事で、こちらのアルバムもちあきなおみの私設HPの管理人でいらっしゃいます、ウシオ様に音源協力をいただきました。本当に空よりも高く感謝です。有難うございました。

チャートデータ
アルバム
わかりませんでした。
シングル
「第三の女」:チャート入りなし



naoko daisan.jpgnaoko uwasa.jpgnaoko tango.jpg

『第三の女』のアルバム・ジャケットが残念ながら手に入らなかったので、とりあえずシングルを。

IMG_4926.JPG

…だったのですが、ウシオ様よりジャケット写真をいただきました。うーん、生涯初めて見ました。本当に河よりも広く感謝です。
posted by Suzu at 19:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 研ナオコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月26日

研ナオコ『女ごころ』(73年)

Naoko Ken:Onnagokoro(73年)

研ナオコさんの記念すべきファースト・アルバムでございます。

静岡県の天城湯ヶ島で生まれ育ったナオコさん。小さな頃から歌が大好きな女の子だったそうで、憧れの歌手は美空ひばりさん。小学校の高学年から地域ののど自慢大会等に出場し始め、高校生の時に見た日劇のウェスタン・カーニバルに衝撃を受けて歌手になることを決意、(親御さんの同意を得たうえで)高校を中退して70年に上京いたします。運が良いことにナオコさんの叔父さんが東京宝塚劇場で照明の仕事をしていて、叔父さんの口利きで当時新たにレコード会社を作ろうとしていた東宝の歌手オーデションを受ける事に成功、見事にオーディションをクリアして、東宝レコードの第一号歌手として契約いたしました。ただしまだレコード会社発足前だったので、正式に立ち上げになるまでは映画館でアルバイトをすることに。会社が立ち上がった後も、実際のデビューは素人さんということで一番後に回されたんだそうです。

そしてようやく71年4月1日(…エイプリルフールじゃん…)に「大都会のやさぐれ女」で歌手デビュー。初めてのレコーディングで、しかもナオコさんが当時出せたキーのぎりぎりの音を要求されて大変苦労したというこの曲…演歌です。まぁナオコさんのルーツは美空ひばりさんにあるわけですし、オーデションでは演歌なども歌っていたそうですから、流れ的にこういう曲が出来上がってきたのかなと思います。この曲は作詞:坂口宗一郎/作曲:中山大全というコンビで書かれていますが、セカンドの「屋根の上の子守歌」からは作詞に阿久悠先生が登場、サードの「二人で見る夢」は阿久先生に加えて作曲は筒美京平先生とう超ゴージャス・コンビ。初めてオリコン・チャート入りするヒット曲(52位)となった4thの「京都の女の子」から8thの「第三の女」までは作詞:阿久悠/作曲:森田公一と、こちらも豪華な布陣になっています(東宝レコード、バックがバックだけに予算はたくさんあったんだろうなぁ…)。

ということで、73年11月にリリースされた本アルバムは、「大都会のやさぐれ女」「屋根の上の子守歌」「二人で見る夢」「京都の女の子」「こんにちは男の子」「女心のタンゴ」「うわさの男」という1stから7thまでのシングルA面曲と「うわさの男」のB面だった「嘆きのブルーレディ」に、八代亜紀さんの「なみだ恋」、麻丘めぐみさんの「私の彼は左きき」、いしだあゆみさんの「ブルーライト・ヨコハマ」、安西マリアさんの「涙の太陽」という4曲のカバー作品を加えるという半ベスト盤的な構成になっています。
都会で生きる女の悲哀を歌わせてみたり、夢見る夢子さん的な曲を歌わせてみたり、演歌にポップスにブルースにタンゴ、やはり「研ナオコ」という強烈な個性をどう料理したものか、試行錯誤している様子がうかがえますよね。カバーされている楽曲も、正統派歌謡曲にアイドル・ポップス、アクション歌謡に演歌と見事なまでにバラバラ。そしてそれがまたどれもけっこうなクオリティだったりするものですから、舵取りの方向を決めかねたのもわからないではない気がいたします。ご本人も仰ってますが、とにかく若さにまかせて思いっきりよく歌っていたそうで、後の語りかけるような唱法などかけらもありゃしない(smile)。でもそこが、この時代ならではの魅力になってるのも事実。もうナオコさん声出まくりなんですもん。
正直オリジナル曲はイマイチ垢抜けないものが多いんですが、やはりヒットしただけあって、覚えやすいリフが印象的な「京都の女の子」や楽しい「うわさの男」等はいい線いってると思います(ただ「うわさの男」は、アン・ルイスさんのカバーのほうがかっこよかったりするんですけどね)。
後、この時代の曲について、レア・グルーブの視点から語っていらっしゃるブログを見つけたのでご紹介させていただきます。こちら→http://funknholic.cocolog-nifty.com/blog/2008/01/post_3e98.html

歌手研ナオコさんの初めの一歩が刻まれた作品として貴重な1枚なのですけど、残念ながら東宝レコード時代の音源は数曲を除いてほとんどが未CD化となっているのが現状です。多くのファンは、この時代の音源の復刻を悲願としてきているので、版権を持っている会社さんございましたら、是非とも我々の願いを叶えていただければと、平にお願いする次第でございます。

※本アルバムは、ちあきなおみの私設HPの管理人でいらっしゃいます、ウシオ様にご協力いただいて初めて聴くことが出来ました。LPでもなかなか手に入らない作品なので、こういう事でもなければ私的には幻の作品になっていたと思います。ウシオ様、海よりも深く感謝です。有難うございました。
※文中のエピソードの多くは再びナオコさんのエッセイ『ナオコの笑TIME』から引用させていただきました。


チャートデータ
アルバム
わかりませんでした。
シングル
「大都会のやさぐれ女」:チャート入りなし
「屋根の上の子守歌」:チャート入りなし
「二人で見る夢」:チャート入りなし
「京都の女の子」:52位
「こんにちは男の子」:チャート入りなし
「女心のタンゴ」:59位
「うわさの男」:60位



julvqp3M.jpgnaoko kyoto.jpgnaoko kyoto2.jpg
「京都の女の子」ジャケ2タイプ。


posted by Suzu at 00:00| Comment(6) | TrackBack(0) | 研ナオコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月23日

研ナオコ『愚図』(75年)

Naoko Ken:Guzu(75年)

研ナオコさんの75年にリリースされた3枚目のオリジナル・アルバムです。

デビューから在籍していた東宝レコードを離れ、キャニオン・レコードに移籍しての第一弾。

71年にデビューしてから、タレントとしては確実に知名度を上げていたものの、本業の歌手としてはブレイクを果たせていなかったナオコさん。そんなタイミングで出会ったのが、当時芸能プロダクション会社田辺エージェンシーを立ち上げて間もなかった元スパイダースの田辺昭知さんでした。田辺さんはその頃東宝レコードの制作顧問をされていて、東宝レコードの所属タレントから誰か気に入った人がいたらどうぞ、と言われて選んだのがナオコさんだったそうです。そして田辺社長の考えで所属レーベルをキャニオン・レコードに移籍、そこで歌うことになったのが、当時ダウンタウンブギウギバンドでブレイク中だった宇崎竜童さんと、奥様の阿木耀子さんが書かれた「愚図」でした。

田辺社長からは歌い方から衣装まで全部ナオコさん自身の考えでやってみるように言われたそうで、ナオコさんもこの曲が売れなかったら歌手を辞める覚悟で東奔西走。もちろん会社も精一杯のバックアップ体制で援護射撃(「愚図」のレコードの題字を書いたのは、あの森繁久彌さん、ね、力入ってますでしょ)。その甲斐もあってこの曲はナオコさん初のオリコントップ10入りする大ヒット曲となり、ナオコさんは念願だった歌手としてのステイタスを確立していくことになりました。
人との出会いっていうのはやはり大きいですよね。田辺社長と出会わなかったら今のナオコさんはなかったかもしれません。またこのタイミングで「愚図」という名曲に出会ったというのも、やはり運命的と言わざるを得ないように思います。「愚図」が東宝時代の楽曲と決定的に違うのは、歌の持つリアリティ。自分に自信のない女の子が、気持ちを押し隠し道化者になりながら、自分の友達を自分の大好きな男性に紹介してあげるという悲しすぎるシチュエーション。テレビで道化者を演じていたナオコさんが歌うことで、その歌の主人公がそのままナオコさんに重なっていき、多くの人の共感を呼んだのは想像に難くありません。東宝時代は、もちろんナオコさんがまだ若かったという事もありますけど、どういう歌手としてナオコさんを育てていくかという青写真がきちっと出来ていなかったように思うんです。それがここにきて初めて何を歌っていくべきか、どういう方向性で今後進んでいくべきかという、その焦点をきちっと合わせる事が出来た、これが一番大きい成功の要因じゃないかと思います。そこに導くきっかけを作ったのは、やはり田辺社長との出会いな訳ですから、本当にこの出会い、神様に感謝しなければいけませんです。

と言う事で、「愚図」の大ヒットを受けて制作された本アルバムは、急ごしらえだったのか元々こういうコンセプトで作ろうとしていたのかわかりませんが、「愚図」と、そのB面だった「さよならは嫌いな言葉」(これも名曲)を除き、全て当時人気だったフォーク・ソングや歌謡ヒットのカバー曲で構成されています。

選曲されているのは(敬称略)小坂恭子「想い出まくら」、吉田拓郎「旅の宿」、岡林信康「山谷ブルース」、中村雅俊「いつか街で会ったなら」、泉谷しげる「春夏秋冬」、布施明「シクラメンのかほり」、野口五郎「夕立ちのあとで」、沢田研二「時の過ぎゆくままに」、八代亜紀「ともしび」、堺正章「明日の前に」というラインナップ。
ナオコさんって本当に歌が上手いので、何を歌っても楽々水準以上に聞かせてくれるんですけど、フォークソング的なマテリアル、特に男歌的なものががっつりと馴染むかというとそれはまた別の話で。合っているという点では、やはり小坂さんや八代さんの曲なんかがしっくりきますね。「旅の宿」は93年にリリースされたカバー・アルバム『Ago』でも取り上げられていて、そちらはぐっと枯れた味わい。瑞々しい本盤の歌唱と聴き比べると面白かったりいたします。

CD化されることはないと思うので(諦観…)言ってもしょうがないんですけど、当時の時代の空気感を楽しむという点では、十分に満足出来るアルバムだと思いますです。
ちなみに文中で太文字にした曲は、今年の12月21日に発売予定のナオコさんの5枚組CDBOXセット『研ナオコ魅力のすべて』に収録がアナウンスされておりますので、(正直あまり満足のいくセレクトのBOXではないんですが)そちらをお求めいただければCD音源で聞くことが可能です。「旅の宿」だけ、どちらのバージョンかわかりませんけど…。

※文中のエピソードの多くは84年に発刊されたナオコさんのエッセイ『ナオコの笑TIME』から引用させていただきました。
※76年にカセットテープのみで発売となったベスト盤『研ナオコ』に、このアルバムのアウトテイクと思われる森進一さんの「襟裳岬」が収録されています。

チャートデータ
アルバム
わかりませんでした。
シングル
「愚図」:9位



naoko guzu.jpgnaoko guzus.jpg
posted by Suzu at 14:30| Comment(9) | TrackBack(0) | 研ナオコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月22日

研ナオコ『あきれた男たち』(80年)

Naoko Ken:Akireta Otoko Tachi(80年)

『あきれた男たち』、ナオコさん8枚目のオリジナル・アルバムで、80年代最初の作品です。

私が一番最初に買ったナオコさんのオリジナル・アルバムはこの次にリリースされた『恋愛論』なんですけど、ミュージック・テープの『全曲集』に始まり、プラス『恋愛論』でどっぷりとナオコさんの魅力にはまってしまった小学生の私、次に手を伸ばしたのが前作にあたるこの『あきれた男たち』でございました。
確か『恋愛論』の帯のディスコグラフィーにこのアルバムが載っていて、次はこれだなとレコード屋さんに買いに行ったわいいんですが、行きつけのレコード屋さんには残念ながらLPの在庫がなく。その代わりミュージックテープの方は置いてあったので、(昔から我慢の効かない私は)そちらをお会計して帰ったのでした。

以来30年、ずっと愛聴してきた大好きな作品です。

これ以前のアルバムは、みゆき作品集とか阿久悠作品集とか、A面/B面で分けて提供作家を同じ人にする等、割とカラーが統一された作品ばかりだったのですが、ナオコさんの新たな魅力を発掘すべく(?)、数人の作家に楽曲提供を依頼した初めての幕の内式アルバムになっているのが本作のトピックと言えるのかも。
お馴染みのところでは中島みゆきさん、他は初提供の方ばかりで、かぐや姫の伊勢正三さん、フォークシンガーの荒木一郎さん、アンニュイ系の美人シンガーとして人気だった石黒ケイさん、「池上線」で有名な西島三恵子さん、そして当時デビュー3年目を迎えていたサザンオールスターズの桑田佳祐さんという面々になっています。

お馴染み度も高いので、今回は1曲づつ語らせていただきますね。

A-1. プロローグ〜あばよ〜 (作曲:中島みゆき)
インストルメンタルによる短いプロローグ。
A-2. 空中ブランコ (作詞:岡田冨美子/作曲:伊勢正三)
白昼夢を連想させるようなシュールな前サビと日常の光景を積み上げたAメロ・Bメロのコントラストが面白い佳曲。 歌詞にサーカスが出て来ますけど、その世界そのままに可笑しさと悲しさが同居する感じが不思議な魅力になって心に残ります。
A-3. 居留守 (作詞・作曲:荒木一郎)
心離れて去って行こうとしている恋人に精いっぱいの愛想尽かしを、しかも独り語りでつぶやく女性が悲しすぎ。しみじみと、聴くほどに味わいが増してくるような好曲です。
A-4. あいつのこと (作詞:岡田冨美子/作曲:桑田佳祐)
ご存じサザン&高田みづえさんのヒット曲「私はピアノ」との歌詞違い曲です。最初聴いた時はへぇ歌詞違いなんだーとしか思わなかったんですけど、 みづえさんのシングルとナオコさんのアルバムのリリース日が4日しか違わなかったり、そもそも何で歌詞違い?とかそのうちむくむくとこの曲の誕生経緯について疑問が湧き上がってきた私。真相が知りたくて色々調べたんですけどわからなかったので、これは知ってそうな人を探すのが早いと、一度ナオコさんのmixiコミュにトピックを立てたのですが回答は得られず、 それならコアなファンが多そうなサザンのほうで何かわかるかもと聞いてみたら、ご親切な方が以下のブログを教えてくれました。
ナオコさんの音楽プロデューサーを務めていた奥野秀樹さんの『明日は月の上で』です。→http://lovereco.blog49.fc2.com/ 
サザン側からもアプローチがあった件とか、田辺社長が桑田さんの歌詞を気に入らなかった件等、なかなか興味深いでしょう?どうして(ナオコさんと仲の良かった)みづえさんが原曲のままほぼ同じタイミングでカバーする事になったのかとか、まだまだわからない点もあるので、もしご存じの方がいらっしゃったら、引き続き情報をお寄せいただきたくお願い申し上げます。
岡田さんの歌詞も普通にいいですよね。鼻歌を歌う場合、私はたいていこちらの歌詞バージョンで歌ってしまいます。
A-5. Bravo-Bravo (作詞:ちあき哲也/作曲:西島三重子)
これ、大好き。奥様愛の劇場とか、昼のメロドラマのエンディング・テーマにしたらぴったりなんじゃないかと思うドラマティックな1曲です。歌詞も、泣けるんだなぁ。
A-6. 海鳴り (作詞・作曲:中島みゆき)
みゆきさんの4thアルバム『愛していると云ってくれ』に収録されていた曲のカバー。みゆきさんのバージョンを聴いていると真夜中の飲み込まれそうに暗い海が目の前に浮かんでくるんですけど、ナオコさんのは寒風の吹きつける薄曇りの寂れた海岸を連想。聴いてると本当、淋しい気分になってきます。
B-1. 砂の舟 (作詞:岡田冨美子/作曲:伊勢正三)
全てが比喩というか、心象風景のような歌詞がどこか甘美にも響く名曲。ファン人気の高い1曲です。
B-2. ひとりぽっちで踊らせて (作詞・作曲:中島みゆき)
こんなに優美なうらみ歌って他にあるでしょうか?メロディも歌詞もアレンジも歌唱もとにかく素晴らしくて異様に高い完成度を誇る傑作。何故に売れなかったかなぁ…。
B-3. 憎いあんちくしょうのブルース (作詞:ヨシモトレイ/作曲:石黒ケイ)
石黒ケイさんのバージョンもいいけど、ナオコさんのこのバージョンも負けず劣らずに素晴らしいんです。アンニュイないい女になりきるナオコさんに惚れちゃいます。
B-4. くちぐせ (作詞・作曲:荒木一郎)
歌謡曲としかいいようのないメロディが心地よすぎるほろ酔い系歌謡の名曲。歌詞に「都はるみ」という個人名が登場するのも当時少し話題になりましたよね。最初に入るSP音源的なジャズのメロディとバーのSEがいい効果を出してます。
B-5. のおあんさあ (作詞:門谷憲二/作曲:西島三重子)
エンドロール的な1曲。のぉ、あんさぁ(ねぇ、あなた)と問いかけるも No Answer だという、悲しいダブル・ミーニングですね。

というわけで、一度目よりも二度目が、二度目よりは三度目のほうが、そんなこんなで30年近く聴き続けても飽きの来ない魅力のある好盤。
表だって傑作とか名盤!とかって雰囲気じゃないんですけど、ナオコさんの歌い手としての旨味がとってもジューシーに詰まった作品であると思います。

チャートデータ
アルバム
わかりませんでした。
シングル
「ひとりぽっちで踊らせて」:39位
「くちぐせ」:31位
「砂の舟」:チャート入りなし



naoko akireta.jpgnaoko hitori.jpgnaoko sunano.jpg
posted by Suzu at 23:30| Comment(9) | TrackBack(0) | 研ナオコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月20日

研ナオコ『泣き笑い』(76年)

Naoko Ken:Nakiwarai(76年)

『泣き笑い』、76年にリリースされたナオコさん4枚目のオリジナル・アルバムです。

4枚目と言っても、今までのアルバムは当時流行していた歌謡曲やフォーク・ソングのカバーを多く含んでいましたので、ナオコさんのためだけのオリジナル楽曲だけで構成されたという意味では、この作品が初めての「オリジナル」アルバムと言えるんじゃないかと思います。

前年にデビューから在籍した東宝レコードよりキャニオン・レコードに移籍、歌手人生をかけた「愚図」が大ヒットしてようやく歌い手としてひと花咲かせたナオコさん。
続いてリリースした、「愚図」と同じ宇崎&阿木コンビによる「一年草」は小ヒットに終わった(これ、良い曲ですけど、さすがに地味すぎたかな〜)ものの、運命の出会いと言うべき中島みゆきさん提供の「LA-LA-LA」がトップ10近くまで上昇するヒットを記録。上昇気流に乗る中でリリースされたアルバムでございます。

A面は中島みゆきさん、B面は宇崎竜童&阿木耀子夫妻による作品集。

ちょっと短いキャリアの中で書かせていただくと、CMやドラマ・映画出演等タレントとしての成功がホップ、「愚図」での歌手としての成功がステップとすれば、中島みゆき作品との出会いは歌手としてのステイタスを確立されたという意味でジャンプという事になるのかなと思います。ご本人談によれば、みゆきさんのデビュー曲「アザミ嬢のララバイ」を聞いてこの人に曲を書いてもらいたいとナオコさんが思った事から実現したというコラボレーション。
みゆきさんはテレビで大口を開けて笑っているナオコさんを見て、若い女の子がのどの奥まで見せる勢いで笑ってる、その裏側に潜む想いを創作に生かしたらしいですが、みゆきさんが初期に好んで(?)書いていた恋愛下手な女性のうらみ節みたいなものと、ナオコさんの持つ「企画外美人」としてのキャラクター性が相乗して、これ以上ないほどのリアリティが曲に生まれたことが、普遍的な魅力となって世の人々に認知されたのかなと思います。

いかにもみゆき節、という感じでご本人のレコーディング・バージョンもそれぞれ存在する「強がりはよせよ」「雨が空を捨てる日は」「あばよ」の他に、カントリーの「明日靴が乾いたら」、ラテンの「LA-LA-LA」、とぼけた味わいの「忘れ鳥」というラインナップ。追ってリリースされたみゆきさんのセカンド・アルバム『みんな去ってしまった』のプレ盤と言ってもいいような内容になっていますね。「あばよ」はここだけで聴けるアルバム・バージョン。シングル・バージョンより若干アレンジや演奏がユルめの仕上がりになっています。
記念すべき初コラボですが、さすがに最初っからすべてがしっくりいっているという訳ではなかったんだなぁと。
この数年後にリリースされたみゆき作品集『VS MIYUKI』になると、例えばみゆきさんの代表曲である「時代」ですらもう完全にナオコさん色に染め上げられていますけど、ここではまだ歌の背後にチラチラみゆきさんの顔が見え隠れする部分がある感じ。完全なる化学反応を起こすには、お互いにまだ少しだけ距離があったのかなぁという気がするんです。そういうところが、また初々しい魅力だったりもするんですけどね(smile)。

B面は宇崎竜童&阿木耀子夫妻による作品集。
夫妻にとって「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」の大ヒットの後、提供作家コンビとして初めてヒットしたのがナオコさんに書いた「愚図」でした。その実績を買われて(だと思う)のアルバム片面全部の楽曲提供。お二人にとっても初めてのチャレンジングだったろうと思われます。
恋人たちの心の機微の描き方に阿木さんらしい繊細さを感じる「あなたと私のティータイム」や「あの子」、ストレートなロックンロールをナオコさんもハードに歌い飛ばす「パントマイム」、ブラスも賑やかでナオコさんのキャラクターを想定して書かれたんじゃないかと思われる「笑い上戸」、小気味の良いリズムが個人的には大好物な「メルヘン通り」、優しいメロディをソフトな語り口で聞かせる「微笑の挽歌」等、なかなかの佳曲ぞろい。翌年山口百恵さんとの出会いで一気に第一線に躍り出る夫妻の原点という意味でも、貴重な作品集なんじゃないかなと思います。

そんな訳で、これから歌謡史、音楽史に残る大活躍を始める偉人たちが、そのタクトを揮い始めた瞬間が記録されたアルバムでございます。それぞれに手さぐりしている感じが、初物ならでは。これも埋もれさせておくには、もったいない作品だと思うんですけどね…。

チャートデータ
アルバム
わかりませんでした。
シングル
「LA-LA-LA」:12位
「あばよ」:1位



naoko nakiwarai.jpgnaoko lalala.jpgnaoko abayo.jpg

posted by Suzu at 08:00| Comment(8) | TrackBack(0) | 研ナオコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月13日

研ナオコ『ナオコ・ミストーン』(83年)

Naoko Ken:Naoko Mistone(83年)

いいじゃないのスウィングすれば……

何だか素敵なので帯のキャッチコピーを引用してみました。
研ナオコさん10枚目のオリジナル・アルバムでございます。

海の向こうではただ今由紀さおりさんがピンク・マルティーニというオーケストラと組んで大変なことになってますが、かれこれ30年前、オーケストラと組んでナオコさんもこんな素敵なアルバムを作っていたんです。

…しかしこれ、リアルタイムでは買わなかったんですよねぇ。良さそうだなぁとは思ってましたけど、ノン・シングルだったし、何しろ曲目が童謡だったりジャズ/ポピュラー系だったりして、中学生の私には何だかちょっと手が伸びにくい雰囲気があったように思います。スルーすること30年、ようやくこの機会でのご開帳となりました。

70年代からコンポーザー/アレンジャー/サックス奏者/バンド・リーダーとして現在に亘りご活躍されている三木敏悟(みきびんご)さん率いるインナー・ギャラクシー・オーケストラとの共演アルバムで、取り上げているのはジャズ/ポピュラー系楽曲からラテン、戦前の流行歌、童謡等など。童謡になるともう発表年がわからないですけど、1910年、20年あたりから、一番新しいのでコール・ポーターの50年代ぐらいに作られた楽曲がチョイスされています。

開幕を告げる拍子木の音。オーケストラがゆったりと演奏を開始して、テンポ・アップしてスライドしていくのはコール・ポーターの「IT'S ALL RIGHT WITH ME」、日本題は「さらわれて突然」とつけられていて、あちらの楽曲は全て本作品用に新たに書き下ろされた日本語詞で歌われていきます。この曲の担当は森雪之丞さん。続いては「夏にしとくれ "SOFTLY AS IN A MORNING SUNRISE"」、この曲は本来「朝日のようにさわやかに」という邦題で知られていて、ミュージカルの巨匠オスカーハマースタイン2世がオペレッタ用に作った作品が後に単独でジャズ/ポピュラー曲として人気を博していったもの。滑らかなオーケストレーションの心地よさを堪能出来る1曲です。熱海の海岸散歩する〜♪で有名な「金色夜叉」、大相撲のラヂオ中継とコラージュして演奏される「通りゃんせ」は、まさに温故知新な世界。こういうのをさらっと歌って、ナオコさん本当に上手いしハマるんですよね。個人的にも大好きなチャップリンの楽曲をベースにした「ライムライトでもう一度 Based on "LIMELIGHT"」で夢見心地にさせられてA面終了。

B面はペギー葉山さんのバージョンでお馴染みの「DOMINO」からスタート。ここでは阿木耀子さんが「堕天使メロディ」として詞を提供、原曲のイメージを生かしながら新たな現代的魅力を曲に付加しています。ラテンの名曲「BESAME MUCHO」に「初恋」とノスタルジックな詞を提供してるのは秋元康さん。続く「のんき節」は大正7年ごろから流行した俗謡で、時事問題にあぁのんきだねぇ〜とつけて社会風刺にも使われていたという楽曲。ナオコさんにこういう曲が合わない訳がない(smile)、街頭で歌って聴衆を陽気にアジテイトしている姿が目に浮かぶようです。ラスト2曲はそれぞれ童謡と流行歌、ジャズと童謡のメドレーで、「ほたる〜宵待草」と「ある日ふっと"IT'S ALL RIGHT WITH ME"〜花いちもんめ」。叙情的な味わいで通じる前者はもちろんながら、スウィンギーなジャズに童謡をミックスさせた後者も不思議なほど違和感がなくて面白い聴きものになっています。

このアルバムを一言で表現すると「粋」。
年代的に合わないところもありますけど、モダンボーイ、モダンガールが闊歩した、西洋文化の上陸を受けてみんなが新鮮な空気を感じながら洒落のめしていた時代に迷い込んだかのような感覚を覚えさせてくれる作品です。

こういうジャズ・オーケストラとの共演だと、やはりせっかくジャズを演るんだったら英語で歌う曲を1曲ぐらい…なんて思いそうですけど、そういう事をやらないところがナオコさんらしいですよね。あくまでスタンスは自身のフィールドである歌謡曲に置いているというか、色んな音楽の要素を自分の中に取り込んで、最大限自分らしく魅力的に聞かせる、こんな事が出来る歌い手さんって、そうそういないと思います。

日本の歌謡史に残ると言っていい隠れた(いやいや隠れる過ぎてる)名盤。これを眠らせておく手は、ないですよね?
ね?

※追記:11月23日、人気番組「相棒シーズン10」にナオコさんが伝説のジャズシンガー役で出演。劇中でガーシュインの「Summertime」とオリジナル曲「When Love Kills You」を披露しました。オリジナル曲の出来がよかった〜。このアルバムを真っ先に思い出させる素敵な歌声、CD化してほしいなぁ。

チャートデータ
アルバム
わかりませんでした。


右は「ライムライトでもう一度 Based on "LIMELIGHT"」
左は音源がないのでその時代の「のんき節」を。

a.jpg
posted by Suzu at 01:00| Comment(6) | TrackBack(0) | 研ナオコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月12日

研ナオコ『ディープ』(85年)

Naoko Ken:Deep(85年)

人間は過ちを犯す生き物

…って、自分の事なんですけど。
この『Deep』、ナオコさんの14枚目のオリジナル・アルバムですが、オリジナル作では初めてリアルタイムにCDがリリースされた作品でした。85年あたりってのが、本当にレコードからCDへの転換が急速に進んだ時期でしたよね。『Deep』についてはLPを買うかCDを買うかで迷った記憶がないので、もう基本CDを買う生活に自分もチェンジしていたんだと思います。(バーブラの作品等は発売の早い輸入盤LPを先に買い、発売の遅い国内盤CDを後で手に入れるなんて贅沢なことをしてましたけど…。)

そんな思い出深い『Deep』のはずですが…売り払ったんですね、わたし。

90年代前後っていうのは洋楽のほうにがっつりとはまっていき、大学生から社会人になっていく中でまぁまぁ懐にも余裕が出来てきて、音楽も湯水のように消費していた時代。一番歌謡曲とは遠いところにいた時期の自分にとって、ナオコさんへのロイヤルティはかなり下がっておりました。
今ならそんな事は考えられないけど、持っていても聞かないなら処分しちゃってもいいかな?なんて大きな気の迷いをおこした時が一回だけあって、忘れもしない当時渋谷の東急ハンズの前にあった中古ショップに持ち込んで売り払ってしまったのでした。まさか20年弱後に再び買い戻すことになるなんてその時は思ってなかったよなー、しかもLPで(smile)。
『Deep』のCDはさすがに転換期の作品だけあって出回った数も少なく、吃驚するような値段でもありませんけど現在若干プレミアがついていたりするんですよね。そこまでして買い戻すのもなんなので、今回お手頃な値段のLPがあったのでそちらを入手してみた次第です。

そんな状況下で聞いてたし、売ったぐらいなので当時はそんなに響いてくる作品ではなかったんですけど、今こうして改めて聞いてみると、良いアルバムなんですよね、これがまた。
書き下ろし作品ばかりではないので若干フェイク気味ではあるんですけど、帯に麗々しく名前が並んでいるように曲提供アーティストがまずはゴージャス。ユーミン、吉田拓郎、さだまさし、五輪真弓、細野晴臣、山本達彦等のアーティスト系に、筒美京平、松本隆、後藤次利、森雪之丞、売野雅勇等の売れっ子専業作家という布陣。

A面は山本達彦さんらしい品のよいメロディーが心地よい「悲しいオペラ」、後藤&売野というアイドル提供なみの売れっ子コンビによる作品で、煌びやかで刹那的な歌詞がドラマティックな曲調と相乗して鮮烈なイメージを焼き付けてくる好曲「ヴェネツィアの情事」、70年代のようなわかりやすい拓郎節とはまた違ったテイストながらも、この時期のオリジナルでは屈指の完成度をほこる名曲「六本木レイン」、追い払えない恋心を役に立たない案山子に例えた、じんわりと染みてくる佳曲「案山子」、アルバム『OLIVE』にも収録されていたユーミンの79年のシングル曲のカバーで、ユーミンには珍しいウェットな歌詞がナオコさんにベスト・マッチな「帰愁」というラインナップ。「帰愁」は、個人的には同年の紅白での歌唱も懐かしいところです。

B面は85年の夏に大ヒットした田原俊彦さんとのデュエット曲「夏ざかり ほの字組」からスタート。軽快ながらも意外にアーバンなメロディーを持ったこの曲、トシちゃんの華やか(?)な歌声に寄り添うナオコさんのいい女っぷりが素敵なんですよね。この大人のビターなラブ・ソング集の中にあって、決して浮いた印象にならないのはそのあたりがきちんと作り込まれているからなのかなと(さすが筒美先生)。
ザ・細野晴臣なオリエンタル・チューン(作詞は松本隆さん…お、「天国のキッス」のコンビですね)の「日本人形」、どこかユーモラスな雰囲気もある五輪(真弓)メロディーが見事にはまってる「ジェラシー」、作家として有名な落合恵子さんが作詞を担当したマイナー系の小品「行き暮れて」、最後はこちらもザ・さだまさしなメロディーを、優しさと悲しさをいっぱいに湛えながら歌い上げた「Deja-vu(予知夢)」が、とても爽やかな余韻を感じさせながらアルバムを締めくくっています。

多彩な作家陣の楽曲を、それぞれの味わいをきちんと残しながら、そして自分の色も出しながらで聞かせたナオコさんがスゴくて素敵すぎる1枚。こういう丁度よいアーバン志向の作品って、なかなかないもんですよね。
20年前の自分に、ダメ出しですわ。

チャートデータ
アルバム
わかりませんでした。
シングル
「六本木レイン」:41位
「夏ざかり ほの字組」:5位
「帰愁」:チャート入りなし



naoko deep.jpgnaoko roppongi.jpg

posted by Suzu at 00:00| Comment(10) | TrackBack(0) | 研ナオコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月07日

研ナオコ『かもめのように』(77年)

Naoko Ken:Kamome No Youni(77年)

そして『かもめのように』、研ナオコさん5枚目のオリジナル・アルバムです。

これは今回手に入れたものではなくて、以前に入手しておりました。片面が中島みゆき作品で構成されていて、ここでしか聞けない楽曲もあるものですから、とりあえず両者のファンとしては買っておかないとという事で数年前に(たまたま中古屋さんで見かけたからですけど)手中にしておった次第です。

A面がみゆきさんでB面が他作家というのは、前作『泣き笑い』と全く同じ構成ですね。
どうせだったら全曲みゆき作品で固めてくれたらよかったのにと思ってしまいますが、当時はみゆきさんにしても新進のシンガーソングライターでしたし、やはりアルバム1枚まかせてしまうのには不安があったとか、自身の活動と並行しての提供作家活動でしたので曲作りに限界があったとか、そんなところなのかなと思います。
そういえばユーミンは郷ひろみさん(作詞のみ)や小林麻美さん(詞曲全部)等他アーティストのアルバムをまるごと手掛けた事ありますけど、みゆきさんはないですよね。アルバムの片面でもナオコさんとちあきなおみさん、後ミニアルバム全曲の工藤静香さんぐらいでしょうか。しかも自身のストックを混ぜたにしても全曲新たにってのはナオコさんの『泣き笑い』と工藤静香さんの『静香』(作詞のみ)ぐらいで、他はカバー曲との混合ですし。反対(?)にみゆきさんのカバー・アルバムっていうのは曲提供したアイドル陣をはじめけっこうあるんですけど、ユーミンはASAP等の企画物を覗いて有名アーティストがカバー曲だけで作った作品ってなかったような(あります?)。ユーミン側が許可しないとか、意外にご本人カラーが強くて挑戦するのが難しいとかあるんですかね?今ならそういう企画も、通りやすい気がしますけど…。

って、閑話休題。

A面みゆきサイドは「はぐれ鳥」「ふられた気分で」「さよならを伝えて」「杏村から」「かってにしやがれ」「かもめはかもめ」というラインナップ。「はぐれ鳥」と「ふられた気分で」はみゆきさんのセルフ・カバーが存在しないという点でも貴重度A、「杏村から」と「かってにしやがれ」はこのアルバムのみで聞ける歌唱曲ですので貴重度Bって感じでしょうか。
詞、メロディーともに初期みゆき作品の魅力(特徴)がよく出ている「はぐれ鳥」、ペーソスのあるアレンジが後のシングル・バージョンよりも味わい深い「ふられた気分で」、ドラマティックな曲展開が裏切られた主人公の心根をそのまま物語っているかのような「さよならを伝えて」、都会で暮らす地方出身者への子守歌とでも言うべき「杏村から」、みゆきさんのオリジナルよりもさらにからっと聞かせる「かってにしやがれ」、そして深すぎる諦観の念に何故かこちらの心まで一緒に浄化されていく気がする名曲「かもめはかもめ」。
過去のみゆきさんのインタビュー記事等を読むと、この時期のナオコさんとはシンクロする部分がかなりあったようで、その重なりあった部分=共鳴する部分の多さというのが、二人のコラボレーションをより強固に、魅力的にしていたのかなと思います。ちょっと企画外の美人で、普段は滅茶苦茶陽気だけど、でも本当はね…というところ、二人似てますもんね。最強コンビの驚くべきケミストリーを堪能できるAサイド、鉄壁完ぺきでございますです。

そしてもってB面サイドは、杉本真人さんの作品集。
杉本さんは小柳ルミ子さんの「お久しぶりね」や「今さらジロー」、渡哲也さん&いしだあゆみさんの「わかれ道」、ちあきなおみさんの「かもめの街」等の作家として知られる方で、提供作家活動と並行して自身もシンガーとして活動、2007年に「すぎもとまさと」名義でリリースした「吾亦紅」が紅白出場をきっかけに大ヒットしたのも記憶に新しいところですね。ナオコさんにもここに収録されている「オヽ神様」「ふられてやるさ」の他に、「夢枕」や「見ないで」等のシングル曲を提供してくれております。
ふられてやるさと自分を捨てた男に精一杯に強がってみせる歌詞(ここまでくるともはや悲喜劇…でも気持ちわかるなぁ)が悲しすぎる名曲「ふられてやるさ」。別離の決意を抱えて疾走する夜汽車の雰囲気をうまくメロディーで表現した「夜行列車」、美空ひばりさんに憧れて芸能界を目指したナオコさんにはその出自に演歌的なスタイル(こぶし)というのも垣間見えますが、そんな演歌歌い的な側面がのぞいた「踊り子」に、日吉ミミさんでも歌いそうなニュー・フォーク・演歌的(?)な味わいの「北風は知らない」、神様にまで救いを求める主人公の心の嵐がダイナミックな曲調に乗って吹き荒れる「オヽ神様」、溢れ出そうになる別れた恋人への思いを、その一歩手前で懸命にこらえている主人公の姿が切ない「ブルース」等、より歌謡曲らしいミクスチャーな世界が楽しめる、A面みゆきサイドにも劣らない魅力を持った楽曲集になっております。

前作『泣き笑い』にはまだ若干マテリアルとなる歌とナオコさん自身のキャラクターに乖離が見られた気がしますが、このアルバムからはそのあたりが完全に一致。ナオコさんの黄金期突入を告げる作品として記憶されるべき名盤だと思います。
これも中島きゆき、「吾亦紅」のすぎもとまさと作詞作曲の!とかって宣伝文句をつければそこそこ需要のある品だと思うんですけどね。何でかなー。

チャートデータ
アルバム
わかりませんでした。
シングル
「オヽ神様」:43位
「ふられてやるさ」:35位
「かもめはかもけ」:7位



04151135_4da7aedd6d0b8.jpg20057394.jpg471287.jpg

posted by Suzu at 22:00| Comment(10) | TrackBack(0) | 研ナオコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月02日

研ナオコ『名画座』(84年)

Naoko Ken:Meigaza(84年)

さてさて『名画座』、ナオコさん13枚目のオリジナル・アルバムです。

思いっきりリアル・タイムでしたけど、スルーしてしまったアルバム。
当時シングルは相変わらず買い続けていましたけど、アルバムは買い控えていたような感じ。
理由としては、この前にリリースされた『Again』や『スタンダードに悲しくて』というアルバムが私の中の評価としてはイマイチだったからで、アルバムをどうしても聞きたいという衝動がおきなかったからだと思います。
そのあたりと並行していて聞いていたのが中島みゆきさんだったというのも大きかったでしょうか。比較対象が『臨月』とか『寒水魚』とかでしたし、若いですから間口も小さいし評価も極端に下していたような気がするので、余計にこの2枚に対しては評価が辛かったのかなと。
(この2枚、現在家庭内行方不明になっているので、そのうち発見したら再度聞きこんでみたいと思っとります。)

でもって『名画座』
ん〜これも良いアルバムですねぇ。
A面1曲目の「旅路の果て」。ナオコさんには珍しい感じの派手目のアレンジがされたアップ・テンポの楽曲で、若干のどの調子が悪かったのか70年代のような声の伸び(爆発力というべきか)がイマイチだったりしますけど、充分シングルにも切れそうなキャッチーさが魅力的。派手さの要因=ブラス・アレンジとしてトランペット奏者であり、キャンディーズのバックバンドを前身としたロック・バンドスペクトラムのメンバーでもあった新田一郎さん名前が特別にクレジットされています。
2〜4曲目にはナオコさん中期の代表曲と言っていい「ボサノバ」を提供した福島邦子の作品が並んでいて、「旅路の果て」と対になるような80年代仕様のアップ・ナンバー「NO NO BOY」、オールドタイミーな「ロマネスク」に、ほとんどテクノ・ポップ(ってアレンジ船山基紀さんだし…)の「東京美人」とそれぞれ毛色の異なった楽曲を提供。福島さん自身もシンガーソングライターとして活動されていてアルバムも9枚ほどリリースされてるんですね。「ボサノバ」も元は福島さんのセカンド・アルバムに収録されていた楽曲で、『恋愛論』を聞いた際、カバー・アルバムの中になんで1曲だけオリジナルが混ざってるんだろうととちょっと違和感あったんですけど、カバーであったなら納得です。ちょっと他の楽曲と知名度の差がありすぎたんですね。
A面ラストには『スタンダードに悲しくて』からリミックスを施してシングル・カットされた来生姉弟の「夜に蒼ざめて」がそのシングル・バージョンで再収録されています。

B面は「泣かせて」と「名画座」の2曲のシングル曲からスタート。
小椋佳さんの「泣かせて」は、正直あの頃あんまり好きな曲じゃありませんでした。当時はバラードにしても「見ないで」とか「ふられてやるさ」なんかのもっと情感過多な楽曲のほうが好きだったので、この曲の静かに静かに涙を流すような感じ、泣かせてと言ってるわりにはどこか乾いた印象のある曲の感じが好みじゃなかったんですよね。最近になってようやくこの曲の良さが分かるというか染みるようになってきた私でございます。
アルバム・タイトルにもなっている「名画座」は佐藤隆さん作曲の作品。佐藤さんと言えば高橋真梨子さんの「桃色吐息」や中森明菜さんの「アルマージ」等、ヨーロッパ調というか異国情緒を漂わせた作風で知られるソングライターでいらしゃいますので、この曲でもそのあたりの感覚が存分に発揮され、歌詞のとおりフランス映画のワン・シーンを思わせるようなしっとりと洒落た佳曲になっています。
で、ここからの3曲が、個人的には本盤のハイライト。
岡田冨美子/伊藤銀次コンビによる「蒼い秋」、竜真知子/西島三恵子コンビによる「河は流れる」、稲葉喜美子さんによる「Bye Bye Bye」という、ミディアム・バラードの3連打なんですけど、枯れ葉が敷き詰められた銀杏並木の下を一人物思い耽りながら歩いている時のBGMに最高…みたいな、ノスタルジックでそこはかと情緒的な、聞くほどに味わいが増してくるタイプのするめ曲のそろい踏みです。A面のアグレッシブに攻めたナオコさんもいいですが、やはりこういう物悲しさを湛えたバラードの味わいは格別なものがありますよね。
3曲だけループしてその世界に浸っていたいと思わせられるシーケンスでございました。

そんな訳で、当時のリリース・タイミングも秋でしたが、今の季節に聴くのにぴったりな名盤。
気軽にお聞きいただけないのが、ホント残念です。

チャートデータ
わかりませんでした。
シングル
「泣かせて」:41位
「夜の蒼ざめて」:チャート入りなし
「名画座」:チャート入りなし



「河は流れる」→http://youtu.be/IbqkQ3sRCPw いい曲です。

naoko meigaza.jpgnaoko nakasete.jpgnaoko yoruni.jpg
posted by Suzu at 23:00| Comment(9) | TrackBack(0) | 研ナオコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月31日

研ナオコ『研ナオコ VS 阿久悠』(79年)

Naoko vs. Aku Yu(79年)

79年にリリースされたナオコさん7枚目のオリジナル・アルバム。

前年『vs. Miyuki』として中島みゆき作品集を作った路線で製作されたのは、歌謡界の超大御所作詞家阿久悠先生の作品集。
ジャケット写真も素敵なナオコさんのドアップ・ポートレイトですけど、中の歌詞カードも2面折りでドレスアップした美しいナオコさんのショットを掲載。阿久先生直々のエッセイ風推薦分に、おまけとして「今…ナオコ 君の唇に色あせぬ言葉を」という先生お気に入りの言葉が添えられた直筆の色紙(もちろん印刷ですけど)が単体でついていて、かなり力の入った企画であった事がうかがえる仕様になっています。
この前のリリースが『かもめのように』、『Naoko vs. Miyuki』、この後が『あきれた男たち』、『恋愛論』と、良質なアルバムを次々とリリースしていた時期の作品ですので、こちらのアルバムへの期待値というのも相当なものがあったのですが、やはりというか当然というか、充実しまくりのナオコさんの名唱がたっぷり楽しめる作品に仕上がっています。

カバーが8曲に、シングル・リリースもされたオリジナル楽曲が4曲という構成。
北原ミレイさんの「ざんげの値打もない」、藤佳子さんの「別れの旅」、大橋純子さんの「たそがれマイ・ラブ」、都はるみさんの「北の宿から」、岩崎宏美さんの「あざやかな場面」等、オリジナル歌手の個性や印象が強い楽曲たちを、こともなげに自分の世界に引き込んで、まるで自分のために作られたオリジナル曲のごとく聞かせてしまうナオコさん。声量が山ほど必要な気がする大橋さんの曲や、あれだけ大ヒットした都はるみさんの曲ですら、本当に何の違和感を感じさせる事なく聴かせることが出来るんですから、この時期のナオコさんに神が降りていた説というのも、本当だよなぁと思ってしまいます。
ブラス歌謡風にアレンジされた杏真理子さんの「さだめのように河は流れる」、優しさのにじみ出た堺先生の「街の灯り」等も素敵すぎ。

オリジナル曲はイントロのスリリングでドラマティックなアレンジが秀逸な「陽は昇り 陽は沈み」、80年代の大人のいい女路線を先取りした「口紅をふきとれ」のシングルA面曲と、そのカップリングだった「グッバイ」と「愛の喝采」を収録。
どちらもかなり力のこもった作品だったのですが、残念ながらヒット曲にはならず、阿久先生も生前執筆されていたHP上のコラム「あまり売れなかったがなぜか愛しい歌」の中で「口紅をふきとれ」を取り上げ、その事を残念そうに述懐されています。
実はナオコさんがキャニオン・レコードに移籍する前、最初に所属した東宝レコードにて、デビュー曲の「大都会のやさぐれ女」以外7枚リリースしたシングルは全て阿久先生が作詞を担当されていたんですよね。阿久作品では目が出ずその後宇崎竜童&阿木耀子夫妻、中島みゆき作品などでヒットを飛ばしてメジャー歌手となったナオコさんに再び楽曲を提供する事になり、阿久先生もそれなりの意気込みでリベンジに挑んだのは間違いないはずなので、余計に思い入れは強かったんだろうなと思います。

ナオコさんのメジャーなヒット曲は、前述の2組の他に桑田佳祐さん、小椋桂さん等いわゆる少し歌謡畑とは違った作家から生まれたものばかりで、いわゆる専業作家で大ヒットした作品ってないんですよね。純正歌謡曲歌手であるナオコさんと純正歌謡曲作家の作品では、水が合いすぎてスリルに欠けちゃうんでしょうか?
面白いもんだなぁと思いますです。

傑作・秀作揃いの本アルバムですが、唯一穴があるとすれば「愛の喝采」でしょうか。阿久先生描き下ろしのコンサート終幕で歌われるようなスケール感のあるバラードなんですが、どうにもこうにもこういう大仰な世界は、ナオコさんに合わない。ふられ歌恨み歌ばかりのナオコさんにこういう曲があってもいいんじゃないか?という先生の思いはわかるけど、残念ながらこういう真正面から愛を歌い上げるような曲は、彼女の個性と相入れないものがあるなと思います。
「らしく」ないし、「らしさ」が全く出てないんですもん。

そんな訳で、本当に良いアルバムなんです。ちょっと不謹慎かもしれませんけど、阿久先生がお亡くなりになった後のリイシュー・ラッシュのタイミングとかでCD化されたなら、多少の話題にはなったかも。
ま、そんな注目を集めるような展開にならないのが、ナオコさんらしいんですけど…。

チャートデータ
アルバム
わかりませんでした。
シングル
「口紅をふきとれ」:55位
「陽は昇り 陽は沈み」:33位



naoko akuyu.jpgnaoko rouge.jpgnaoko hiwa.jpg
posted by Suzu at 21:00| Comment(8) | TrackBack(0) | 研ナオコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月30日

研ナオコ『一途』(11年)

Naoko Ken:Ichizu(11年)

ナオコ、ナオコ、ナオコ…。 

研ナオコさんの3年ぶりのニュー・アルバムでございます。

初めて「歌手」いう存在のファンになったのが研ナオコさんでした。小学生の時だったのであれから30数年が経つことになりますね。とにかく彼女への思い入れは強くて、歌も大好きだったけど、タレントとしての存在感、人となり等にも惹かれていた部分があった私。ただそうやって勝手に思い入れが強かった分、次第に何だか納得出来ない、というような事も多くなってしまって、歌手業があまり表立たなくなっていった事もあり、どこか遠巻きに見ているようなところ、一ファンが言うのもおかしな話ですが、とにかくあまり関わらないようにしようとしていたところがありました。

それでもやっぱりナオコさんの歌う歌は大好きで。
自分の中のベースにはナオコさんの歌がもうどうしようもないぐらい根付いてるんですよね。
ここのところツイッター等でナオコさんファンからのお話を聞く機会も多くなり、自分の中の「大好き心」が揺さぶられる事が度々あったので、ここは面倒くさい個人的な感情等は抜きにして、もう一度彼女の作品を純粋に楽しみたい!と思うようになった次第です。

…って、何の話だかわからないでしょ(smile)。本当に、勝手なファンの暴走妄想なのでお許し下さい。

そんな訳で、ここのところのナオコさんの作品はほとんど手にしていなかった(…といってもそんなにたくさん出てた訳じゃないですけど)のですが、手始めにという事でタイミングよく発売されたニュー・アルバムをお取り寄せいたしました。
こちらはナオコさんのHPケンズ・ファミリーさんに直接注文したのですけど、最新作『一途』に一昨年リリースされたライブ・ハウス・ツアーの模様を収めたDVD『研ナオコ 感 〜feel〜 Vol.1』がセットされて、奥さん驚きの1,500円ぽっきり!という優れ物。インディーズ作品なので基本通販のみの販売で、一応このDVDセットは初回限定という事らしいです。アマゾン等でも購入出来るんですが、説明にはあくまで1枚ものとしか表記されていないので、お買いになるならケンズ・ファミリーさんのほうに問い合わせの上注文されたほうが無難かなと思います。

そしてこの『一途』という作品。…あぁ、もう眩暈がしちゃう。

この10数年、どうしてもテレビ等でナオコさんが歌っているのを聞くと、正直声の出てなさ具合に残念な思いをさせられる事が多かったのですが、ここのところだいぶ持ち直してきたという噂もちらほらと。
そんな噂を証明するかのように、来ましたよ皆さん、来ましたねこれは。

1曲目に収められている「コントロール」、これが本当に素っ晴らしい。

昨年残念ながら鬼籍に入られた浅川マキさんが83年にリリースした曲のカバーで、後藤次利さんが作曲、マキさんが作詞をした、マキさんには割と珍しい(んじゃないかと思う)歌謡曲テイストを感じさせる楽曲なんですが、これが吃驚するぐらいナオコさんにはまってる。歌の世界観といい、もうナオコさんのために作られたオリジナルなんじゃないかと思うぐらいです。ミソとしては最近出にくくなっている高い音(声)を出さなくてもいいというのもあるんだと思いますが、味わいを増した中低音が曲の間を滑らかに泳いで行って、本当に全盛期のナオコさんを髣髴とさせる1曲になっています。ギターをじゃかじゃか鳴らすアレンジもかっこいいんですよね。あまりに素晴らしいんで、追いかけてマキさんのオリジナルも購入いたしましたが(大きな声じゃ言えませんけどナオコさん、オリジナル超えちゃってます)。

この1曲だけでも十二分に満足なのですが、そこから続くセルフ・カバーを中心とした5曲もなかなかの聴きもの揃い。
特に語り歌として生まれ変わった「愚図」にはぞくっとさせられました。宇崎竜童さんがコーラス参加したジャジーな「Tokyo見返り美人」、荘厳な「かもめはかもめ」、ひばりさんへの思いを込めて歌われる「愛燦々」、そして阿木&宇崎夫妻による書き下ろしの新曲「一途」も味わいのある佳曲で、どの曲にも今のナオコさんの歌の魅力をしっかりと感じる事が出来たのが何よりも嬉しかったです。

ついでにDVDのほうにも触れちゃうと、デビュー40周年を目前にしてのライブ・ハウス公演の模様が収められているのですが、ご本人もトークで触れているように、彼女の歌は本来大ホールで聞くよりも、こういうインティメイトな空間で聞いたほうがより映えるタイプの曲が多いので、このライブ・ハウス公演というのは大正解なんですよね。最初の3曲(せっかく中島みゆきパートなんですけど)は空間に慣れないせいか緊張してるのが歌にも出ちゃってるんですけど、阿木&宇崎曲に移った4曲目の「身も心も」から調子をつかんだようで、友人内藤やす子さんの「想い出ぼろぼろ」等は、さながら自分のオリジナルのような消化具合で披露。由紀さおりさんの「TOKYOワルツ」も凄く良いし、(あまり曲は好きじゃないんだけど)すぎもとまさとさんの「吾亦紅」もじっくりと聞かせてくれます。後半のオリジナル楽曲パートも以前に比べれば格段に声も出ていていいんですけど、ファン・サービス的に1コーラスを披露するテレサ・テンさんの「つぐない」と愛娘ひとみさんと共演する狩人の「あずさ2号」がまたすごく良かったりするんですよね。ほんとうに地力を持った歌い手さんってのは凄いんだなぁと、あらためて研さんの歌の魅力に酔わされた作品でございました。

ライブ、行きたくなっちゃったな。

ファンだファンだと言いながら、意外にナオコさんの作品で取りこぼしているのも多いので、これからそのあたりなども発掘していきたいと思っております。レコードも掘り起こしやすくなった事ですし(smile)。
はぁ、やっぱりナオコさん、大好き。

チャートデータ
チャート入りなし。


残念ながら「コントロール」がYou-Tubeにはないようです。聴いてもらいたかった…。
代わりにライブ・ハウスの模様を。


「feel」、単品だと5,000円もするんですよね…。
posted by Suzu at 00:30| Comment(6) | TrackBack(0) | 研ナオコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。