研ナオコさん、89年にリリースした15枚目のオリジナル・アルバムです。
前回も触れましたが、ナオコさんは87年7月に結婚、当時も言葉としてはあったのかな?いわゆる出来ちゃった結婚で同年の10月にご長男を出産されます。その関係もあって歌手としての活動もペースダウン、2年のインターバルをとってこの89年の1月にシングル「冬のカトレア海岸」を、翌月に本作『Bitter』をリリースして活動を再開します…が、実は本作のリリース時点には既に第二子であるご長女をご懐妊中。ここから次作までまた3年のインターバルをとることになります。
ま、そんな中でしたが久しぶりにリリースされたシングル「冬のカトレア海岸」。ナオコさんのシングルでは初めて短冊形のCDシングルが発売となった作品でした。ひっさしぶり〜と行きつけのレコード屋さんに買いに行ったのを覚えていますが、当時の印象は決して良いものではありませんでした。ロックバンド、ピカソのヴォーカルでもある辻畑鉄也さんと作詞家の麻生圭子さんの作品ですが、歌謡曲としてはインパクトに欠けるというか、どこか平板な曲という印象が強くて、あまり好きになれませんでした。こうして今になって聞き返してみると、そんなに悪い曲でもないんですけど(smile)。そして今更この曲が不倫の歌だったということもようやく理解したりして。いかに当時耳を素通りしていたかというのがわかっちゃいますね。
そしてこの『Bitter』。
当時はそんなこともあってアルバムに手を伸ばさなかったので、今回がお初。冒頭に「冬のカトレア海岸」が配置されていることもありましたが、どうにも最初の印象はこのシングルの延長線上にある感じで耳に馴染まないというか、耳に残っていかない作品でした。この違和感みたいのは何?と聴き続けてみる事数10回、ようやく思い当ったのが、この作品、作りが歌謡曲ではなくてJ−POPなんだなぁという事でした。
歌謡曲とJ−POPの違いって何?って思われるかもしれませんけど、申し訳ありませんがその辺は完全なる感覚で(smile)。でもたとえば「見かけませんでしたか」や「馬鹿だね、雨」等は打ち込み主体の音で作られていますし、「銀の針」や「悲しみのDance」等も、音色が当時のどこかバブリーな空気感を漂わせてる感じがするんです。92年にリリースされた次作『Re NAOKO』にはそういったイケイケ感というのはないので、やはりこれはバブル景気の絶頂にある89年という時代のなせる技なのかな?等と思ったりいたしますね。
そんな訳で、今上げた4曲は全てアルバム前半に固まっているので、LP風に言うならばJ−POPサイドといった感じでしょうか。ロックバンド、ザ・シャムロックのメンバーが作曲、ベテラン作詞家三浦徳子さんが作詞を手掛けた「見かけませんでしたか」、ゴダイゴのタケカワユキヒデさんが作曲、松本一起が作詞を担当した「馬鹿だね、雨」は、アタックが強めのシングル向きの楽曲。実際Wikipediaによれば「馬鹿だね、雨」はドラマの主題歌(ちょっと記憶にないんですが、いつものようにテレビ朝日さんの刑事ドラマでしょうか?)でシングル候補にもなった曲だそうです。シンガーソングライターの遠藤京子さんが作った「銀の針」、ユーミンのブレーンとして知られる武部聡志さん作曲、三浦徳子さん作詞の「悲しみのDance」も、どこか華やかさのあるミディアム・スロー・ナンバーで、聴き慣れればこちらもなかなかに味わいのある佳曲になっています。
でまぁ当初そのアルバム前半の印象に引きずられて意識が飛んでいたのですが、後半に並んでいる4曲が凄ぶる良くて。
ますは所ジョージさんが「迷惑」と「ひとりごと」という2曲を提供しているんですが、これが本当に滅茶苦茶良いんです。所さんの音楽家としての評判というのは多少漏れ聞こえていましたけど、詞も曲も実に味わい深くて最高。いつもテレビ等で少しだけ聞く所節丸出しと言えば丸出しなんですが、真面目に詞とかを書いたりしてもこの人とってもセンスがあるんだなぁと改めて思わされました。きっと照れくさくてスタンスとしてはあまりこういう楽曲提供のような事はしないんでしょうけど、何だかもったいないですね。
そして「冬のカトレア海岸」と同じ辻畑&麻生コンビが作った「最後の会話」は、「冬の〜」とは打って変わった歌謡曲マインドの溢れるミディアム・ナンバーでこちらも良作。お馴染みの石黒ケイさんが手がけた「今日子」も女性同士の友情がテーマ(ある種ビアン的…)で、ナオコさんらしいバラード・ナンバーになっています。
そしてアルバムの最後に収録されているのが、ナオコさんとは古い付き合いであるアルフィーの高見沢俊彦さんが作詞作曲した「BOYのララバイ」。これ、ぼーっと聞いていると全然そんな風に聞こえないんですが、タイトル通り当時生まれて間もないご長男のために作られた子守歌風のバラード。私にはナオコさんの洒落た感覚のほうが強すぎてあまり母性というものを曲から感じないんですけど、皆様にはどう聞こえているのでしょうか?
という訳で、ナオコさんとJ−POPという取り合わせに当初戸惑いを覚えた作品でしたが、種がわかってしまえば(?)といった感じで、聴きこむほどに好きになっているアルバムです。こちらも現在は廃盤ですが、中古市場では比較的手に入りやすい作品ですので、お手に取ってみていただきたいと思いますです。
チャートデータ
アルバム
わかりませんでした。
シングル
「冬のカトレア海岸」
わかりませんでした。
これで今のところリリースされているナオコさんのオリジナル・アルバムのレビューは全作終了でございます。長年のファンとしては一度取り掛かりたい仕事だったので、何とかコンプリート出来てちょっとほっとしている次第。ただしやはり予想していたとおりの展開になってしまったので、どうしても思いが強すぎると独りよがりに突っ走ってしまって、皆様にご共感いただける部分が少なくなってしまったかと反省もしております。アルバムの次は出来ればシングルもと思っておりましたが、これはまたの機会に。お付き合い下さっていた方がいらっしゃいましたら、本当に、どうも有難うございました。

