ドナ・サマー、81年に製作されたアルバム。
…なんですが、ご存じのように未発売となり96年にCDでリリースされるまで長らくお蔵入りとなっていた作品です。
80年に鳴り物入りでカサブランカから新興のゲフィン・レコードに移籍をしたドナでしたが、その第一弾である『ワンダラー』は従来のような爆発的ヒット作品にはなりませんでした。
前回、『ワンダラー』については若干の方向性の迷いとWアルバムを続けてきた事でのインパクト不足があったように書きましたけど、プロデューサーであるジョルジョ&ピートも同じように考えざるをえなかったようで、ニューウェーブ的な要素も取り入れていた前作からよりヴォーカル・オリエンティッドな作風に路線を修正、黄金時代に習い再びのWアルバムとして作品を完成させました。ところがゲフィン側はこのアルバムの発売を拒否。ドナに別のプロデューサーと組んでアルバムを制作するように指示します。
そしてゲフィンが用意したプロデューサーがあのクインシー・ジョーンズ。ドナはクインシーとアルバムの制作に入り、ここで70年代前半から続いていたジョルジョ、ピート、ドナのトロイカ方式による制作体制は終焉を迎え、これ以降このチームで作品がつくられることはありませんでした。
ジョルジョ・モロダーはその後も「フラッシュダンス」や「トップガン」、「ネバー・エンディング・ストーリー」等主に映画絡みのヒットでスーパー・プロデューサー/作曲家の地位を堅持。ピート・ベロッティは残念ながらこれ以降表舞台に出る事は少なくなってしまいましたね。
お蔵入りとなった作品がまるごとリリースされるというのはかなり珍しい例だと思いますけど、幸運な事にこの作品はその珍しい例として96年に突如CDとして商品化されました。実際のWアルバムがこの曲順だったのかはわかりませんので、とりあえず各曲を簡単にご紹介したいと思います。
制作陣はジョルジョ、ピート、ドナの他にお馴染みのハロルド・フォルターマイヤーにキース・フォーシー、前年にドナと結婚したブルース・スーダノ、そして新たにシルヴァー・コンベンションの「フライ・ロビン・フライ」を作曲し、80年代以降は映画やテレビのスコア制作で活躍したシルベスター・リーバイが加わっています。
1. I Believe (In You)
「ヘブン・ノウズ」で共演したブルックリン・ドリームスのジョー・エスポジットとのデュエットによる南国風味のブラコン・ナンバー。
2. True Love Survives
マイナーでメロディアスな曲調が印象的な作品。
3. You To Me
『オール・システムズ・ゴー』収録の「ジェレミー」等に通じる温かみのあるポップ・バラード。
4. Sweet Emotion
80年代ならではの音使いが今となっては貴重な(smile)ポップ・ヴォーカル作品。
5. Leave Me Alone
ブロンディの「コール・ミー」(ジョルジョ制作)をドナで再現してみました、と言うような双子的位置関係にあるロック・ナンバー。
6. Melanie
きらめくシンセ音が印象的でどこか懐かしさのある軽快なポップ・ナンバー。
7. Back Where You Belong
アーバン・テイストのポップなブラコン作品。
8. People Talk
こちらも若干のアーバン風味を味付けにした軽快なシンセ・ポップ。
9. To Turn The Stone
バブパイプ(?)の音色を全編で奏でるアバの「アライバル」的な民族系ナンバー。このアレンジにインスパイアされたのか元々の予定だったのか、ソロ活動を始めたアバのフリーダが翌年この曲をカバーしてアルバムに収めています。
10. Brooklyn
ブルース・スーダノとの間に誕生した娘ブルックリンちゃんの誕生讃歌。
11. I'm A Rainbow
93年に発売されたベスト盤で先にお披露目されたアルバムのタイトル・トラック。切々と優しい情感を込めて歌い上げるポピュラー・ヴォーカル・ナンバーで、これはゲイ・ピープルに向けられた歌という解釈も出来るのかなと。
12. Walk On (Keep On Movin')
レゲエ風味のポップ・ナンバー。
13. Don't Cry For Me Argentina
ミュージカル「エビータ」の大人気曲のカバー。堂々としたドナの美しいヴォーカルが印象的。こちらも93年のベスト盤で初お目見えしました。
14. A Runner With The Pack
ラップと言うか語り風なヴォーカルがドナならではのアーバン・ポップ作品。
15. Highway Runner
映画「初体験/リッジモント・ハイ」のサントラに収録されて82年に発表された作品。「ホット・スタッフ」のテンポをぐっと抑え目にしたようなロック・ナンバー。
16. Romeo
こちらも映画「ブラッシュダンス」のサントラに収録されて先にリリースされた作品。オールディーズ・テイストのファニーなポップ・ロック曲。
17. End Of The Week
ドライヴィング・ミュージック系の明るいテイストのポップ・ナンバー。
18. I Need Time
威風堂々としたヴォーカルが印象的なクロージングに相応しいナンバー。80年代ドナの定番となるより厚みの増した歌声はここで完成された感じ。
前述したようにヴォーカルに重きをおいたポップ・ナンバーが並んでおり、完全にディスコ・クイーンから脱却したドナの姿が窺えます。曲調もバラエティに富んでいて楽しいものなのですが、今まで革新的なダンス・ナンバーで時代の先を行っていたドナ・サマー・チームの作品としては、いささか(言葉は悪いですが)凡庸な印象になってしまったのかもしれません。加えて前作『ワンダラー』が思った様な成果を上げられなかった事もゲフィン側の厳しい評価を後押ししたのかなと思います。
アルバムはお蔵入りとなりましたが、本作からは「ハイウェイ・ランナー」と「ロミオ」がサントラ曲としてリサイクルされました。また他のアーティストによって以下の楽曲がレコーディングされ、リリースされています。
ザ・リアル・シング:「アイ・ビリーブ・イン・ユー」(81年)
フリーダ:「トゥ・ターン・ザ・ストーン」(82年)※アバのフリーダ
ジョー・エスポジット:「トゥ・ターン・ザ・ストーン」(83年)
エイミー・スチュワート:「ユー・トゥ・ミー」「スウィート・エモーション」(83年)
…しかし、ゲイ・コミュニティーの象徴でもある「レインボウ」をタイトルに冠したアルバムが発売中止になるというのも、どこかその後のトラブルを予兆しているように思えてしまうんですよね。これは少し、考えすぎでしょうか。
I'm a Rainbow
1. I Believe (In You)
2. True Love Survives
3. You To Me
4. Sweet Emotion
5. Leave Me Alone
6. Melanie
7. Back Where You Belong
8. People Talk
9. To Turn The Stone
10. Brooklyn
11. I'm A Rainbow
12. Walk On (Keep On Movin')
13. Don't Cry For Me Argentina
14. A Runner With The Pack
15. Highway Runner
16. Romeo
17. End Of The Week
18. I Need Time
チャートデータ
チャート入りなし。
それぞれ「To Turn the Stone」収録。
『I'm a Rainbow』もいつの間にか廃盤で馬鹿値に…。


全部通して聴いたわけではないので、あれですけど、悪くはないですよね。
結構ドナのちゃんとしたボーカルも聴けるし。
でもこの雰囲気で2枚組というのは、当時としては辛かったかもしれませんね。
ゲフィン側もそこにちょっと難色を示したのでしょうか?
「アイム・ア・レインボウ」、タイトル曲にもなってる位だからドナとしても思い入れのある曲だったのでしょうね。
まあ前作で、それまでドナの強い支持団体だった組合もちょっと離れたのを受けて、メッセージを出そうとしたんでしょうか。
でも結局このアルバムも出せなくなり、何だかんだでやさぐれちゃって、あの物議をかもす発言になったんですかね(笑)
一度手に入れてしまうとあまり気にしなくなってしまうものですが、ドナのカサブランカ時代以外の作品は軒並み廃盤なんですよね。ネット価格なのでちょっと盛ってある気はしますけど、彼女ぐらい著名なアーティストの作品はいつも手に入れられる状態だったらいいのになぁと思いますね。
正直このアルバム、手に入れた頃はあまり聞きませんでした。数回聞いて普通だなぁって思って棚にしまわれた感じで(smile)。今回結構がっつり聞いてそれなりにいいアルバムだと感想は変わりましたけど、やはりインパクトが弱いかなというところで、お蔵入りも仕方なかったかなと改めて思っております。
組合とのトラブルも、色々な事情と誤解が入り組んでるみたいですよね。わかる範囲で今度まとめて書きたいと思ってます。
アルバムとしてはなかなか良く出来た感じですね。
それにしても、誌子さんもおっしゃるように
結構なお値段。ゲフィン時代のアルバム、
一気にCD化されないかなぁ。欲を言えば、
5枚組CDBOXのような形でもいいんですが。
ゲフィン時代のはなかなかリイシューされないので本当にけっこうなお値段がついてしまいましたよね。
まぁきっとこれだけリイシューが進んでる昨今ですから、早晩ゲフィン時代のも対象になるんじゃないかと思います。ドナの場合は要望も多くなるでしょうしね。
今週になってこのアルバムを聴いています。
ドナ・サマーの歌唱力も聴けて良いです。
ブログの記事楽しめました(*´Д`)