2012年06月29日

ミュージカル『サンセット大通り』(12年)

Sunset Boulevard(12年)

赤坂ACTシアターで行われているミュージカル「サンセット大通り」を見てまいりました。

1950年に公開された監督ビリー・ワイルダー、主演にグロリア・スワンスンとウィリアム・ホールデンを迎えた名画を93年にアンドリュー・ロイド・ウェーバーがミュージカル化。
初演のロンドン版はパティ・ルポンが主演、米国上演の際にも当初はパティがキャスティングされていましたが、より役のイメージに近いグレン・クロースに出会ってしまったウェーバーは違約金を払ってパティとの契約を解除。グレン主演で上演された作品はトニー賞で7部門の受賞を果たす高評価と成功を収めました。

その後もベティ・バックリーやペトゥラ・クラーク、ダイアン・キャロル等の大物女優で舞台が上演され、主役のノーマ・デズモンドが歌う「As If We Never Said Goodbye」や「With One Look」は人気曲としてバーブラ・ストライサンドやシャーリー・バッシー等がレコーディングしたりステージのレパートリーに加えたりしております。



お話は売れない脚本家ジョー・ギリスが車の取り立て屋に追われてサイレント映画時代の大女優ノーマ・デズモンドが執事と二人で暮らす屋敷に迷い込むところからスタート。映画界への復帰を目論むノーマはジョーが脚本家と知って自分が執筆中の脚本の手直しを依頼。住み込みで働かせるうちにジョーに魅かれていくノーマ、そして打算的にその愛に応えるジョー。パラマウント映画からの電話に自分の脚本が認めらたと思いこみ撮影所にセシル・B・デミル監督を訪ねるノーマ。しかし本当の目的は彼女のクラシック・カーを借りたいというものであった…というもの。

50年の映画は業界内幕物としての批判精神とブラック・ユーモアに溢れ、本物の往年の大スターグロリア・スワンスンをはじめとする虚と実が混在した出演者たちの好演(怪演)が強烈な印象を残す傑作。舞台版は忠実に原作映画のストーリーをなぞって進行。お話の面白さは揺るぎようがなく、ロイド・ウェーバーが作る美しくも悲劇的なスコアの数々はとにかく素晴らしいものでございました。

今回の日本版は主演のノーマ・デズモンド役に宝塚の男役トップだった安蘭けいさん、狂言回しである脚本家ジョー・ギリス役に田代万里生さん、ノーマの忠実な僕である執事マックス役に元劇団四季の鈴木綜馬さん、ジョーと共同で脚本を書きジョーに惹かれていくヒロイン、ベティ・シェイファー役に同じく宝塚出身の彩吹真央さん、そしてセシル・B・デミル役にこちらも元劇団四季の浜畑賢吉さんというキャスティング。





終演後のプレゼント抽選会でもサービス精神たっぷりな進行で楽しませてくれた鈴木さんの達者で重厚な演技、出番は少ないながらもさすがの存在感を示した浜畑賢吉さん、若干年齢のギャップ(22才の役ですから…)はありましたけど、清楚な雰囲気と歌声が素敵だった彩吹真央さん、そしてダイナミックなダンスとなかなかに個性的なメンバーを揃えたアンサンブルの方々と、脇を固める俳優さんたちはとても素晴らしいものでした。
…ただし、主役のお二人については(ファンの方には大変申し訳ないのですけど)正直ミス・キャストだったかなぁという印象が強いです。

ノーマ・デズモンドは過去の遺物であるサイレント映画の大スターで、過ぎ去った栄光から抜け出せず、執事マックスの支える虚栄の世界だけで生きているような存在。スターとしての威厳と気高さの他に、支える者がいないと崩れ落ちてしまうような弱さ、妄想に囚われた狂気等を体現しなければならない難役です。
安蘭さんも頑張ってらっしゃったとは思うのですが、どこか劇画調の演技も含め、大女優の貫録や狂気を表現しきれていなかったですし、噂では風邪を引いてらしたという事ですが、歌もこじんまりとまとまってしまって、せっかくの見せ場を盛り上げ切れなかったのが残念。

またジョー・ギリスは脚本家として目が出ずにハリウッドの生活に行き詰まり、もう田舎へ帰るしかないという状況に追い込まれた崖っぷちの三十路男。
田代万里生さんは登場のところから颯爽とし過ぎていて、とても落ちぶれてどんずまりの状況にあるようには見えませんでしたし、もう少しシニックな面というのがあってもよかったのに、どうにもギラギラ感が前に出過ぎ。役作りよりも若さが勝ってしまったという感じでしょうか。歌はさすがに素晴らしかったので、10年後にもう一度この役をやってる田代さんを見たいなぁという風に思いましたです。

まぁ予習も兼ねて前日に映画版「サンセット」を見直してから舞台に挑んだので、余計にグロリアやウィリアムの強烈な印象が脳裏に焼き付いて辛くなってしまったというのはあると思うのですけど。
セットも豪華絢爛たるあちらのスチールを見慣れてしまっていたからか、回転する階段をうまく場面転換で使った演出はよかったのですけど、どうしても規模の縮小感は否めなかったですし…。

物語としての面白さ、スコアの素晴らしさにはとにかく魅了されましたので、新たなキャストでの再演とか行われれば、是非もう一度見たいとなぁと思わされる作品でございました。

(出来ればお話もよくわかったので、本場物が見てみたいというのが本音ですけど…。)




↑これ見たばかりでしたからねぇ…。


posted by Suzu at 23:15| Comment(4) | TrackBack(0) | 映画・ミュージカル系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
へ〜〜〜、「サンセット大通り」のミュージカル
があるとは知りませんでした。
しかも、グレン・グローズがこんなに歌える女優
さんだなんて、初めて知って、なおさらびっくり。
「危険な情事」や「101」のようなどちらかと
言うととても個性的な役が印象的でした。

ただ、こうしたハリウッドモノ、洋モノを日本人
が演じると、オリジナルのイメージが強いから
なかなか難しいですよねぇ。
Posted by 小さな足 at 2012年06月30日 06:48
小さな足さん、こんにちはです。

本当にむこうの俳優さんは多芸多才ですよね。同じころでしたかねぇ、「ガープの世界」等に出てるジョン・リスゴウもミュージカルに主演してトニー賞とか受賞してました。ぜんぜんそんな事やりそうじゃないのであれも吃驚でしたけど。

グレンはグロリア・スワンソンともイメージが近いので、この役には適役ですよね。もう何だかその存在感だけで見てられるというか。

日本なら誰がいいですかね?私的には大竹しのぶさんとか高畑敦子さんとか演技の出来る女優さんにやってほしいんですけど。
Posted by Suzu at 2012年06月30日 07:56
大竹さんとかよさそうですね。み
結構歌える人ですし、ちょっと狂気が入った役とかうまいですもんね。
高畑さんもアタシ嫌いではないし、ルックス的にはなかなか合ってる気もします。
ただ歌ってるのは聴いたことないですけど(笑)

などと書いてますけど、アタシ翻訳もののミュージカルの舞台って実は観たことないんですよね。
観れば多分楽しめるんでしょうけど、英語の歌詞で馴染んだ曲を日本語の歌詞で聴くことに違和感を覚えてしまって。
食わず嫌いなんでしょうけどね(^^;
Posted by 詩子♂カンタービレ at 2012年06月30日 08:36
詩子♂カンタービレさん、こんにちはです。

大竹さんは歌えるし、何より演技で魅せてくれそうで。
高畑さんは、グレンの着てるノーマの衣装を見てたら何だか高畑さんの顔が浮かんできたもので(smile)。だって凄く似合いそうなんですもん。こちらも間違いなく重厚な演技で魅せてくれるはずですしね。

私も自分のお金を出して観に行ったのは「レミゼ」に続いててこれが2回目です。もうちょっとバブリーだった頃は会社で観劇会というのがあったので、「ジーザス・クライスト」とか「屋根の上」「美女と野獣」なんか見ましたね。最初はどうしても違和感ありますけど、没頭出来ればけっこう気になりなくなるものでした。
Posted by Suzu at 2012年06月30日 18:57
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