80年にリリースされたドナ・サマー9枚目のオリジナル・アルバム。
80年、ドナはそれまで所属していたカサブランカ・レコードとの契約解消を求める起訴を起こします。
ディスコ・レーベルとして70年代後半に大躍進を遂げたカサブランカでしたが、ディスコの終焉とともにその勢力にも衰えを見せ始め、同80年には社長二ール・ボガードを不正会計と売上不振により解雇。
そんなカサブランカのお家騒動の中、ドナが新天地として選んだのが、70年代にローラ・ニーロやCS&N、ジャクソン・ブラウン等を発掘し、アサイラム・レコードの社長としてリンダ・ロンシュタットやジョニ・ミッチェル等を手掛けたデビッド・ゲフィンが新たに設立したレコード会社、ゲフィン・レコードでした。
やり手のゲフィンはジョン・レノン、エルトン・ジョン、エアロスミス等錚々たる顔ぶれと契約を交わしていきますが、そのゲフィン・レコードの第一号契約アーティストがドナであり、初のレーベルとしてのリリース・レコードが『ワンダラー』でした。当時のドナの勢いからすればこれは当然の事と言えるかもしれませんね。
プロデューサーは従来と同じジョルジョ・モロダー&ピート・ベロッティが務め、ハロルド・フォルタマイヤーやキース・フォーシーが参加とブルックリン・ドリームスのメンバーが抜けた他はほぼ前作と同じラインナップで制作されております。
ファースト・シングルに選ばれたのはアルバムのタイトル曲でもある「ワンダラー」。トリップ感覚のあるニューウェーブ・タッチのエレクトロ・ポップ…とでも言えばいいのでしょうか?エルビス・プレスリー風のちょっとファニーなドナのヴォーカルも併せ、新しいような懐古的でもあるような、とても不思議な印象を残す楽曲です。シングル・チャートでは3位まで上昇、ただし当時のドナのニュー・アルバムからの第一弾シングルとしては若干物足らない成績だったでしょうか。
イントロのメロディー&ピアノ・ソロがかっこいい「ルッキング・アップ」、ガツッ、ガツッとしたビート感が面白い「コールド・ラブ」、しなやかに歌声を操るブラコン・テイストの「愛の隠れ場所」、メロディアスなロック・ナンバー「涙の祈り」、オールディーズ風ロックの「ストップ・ミー」等、よりワイルドにポップ・ロック路線を推し進めた曲がある一方、「ブレイク・ダウン」では従来のハイ・キーな歌声を全編で聞かせたり、「大いなる幻影」なんていうタイトルそのままの幻想的でアートっぽい作品があったりと、どこか試行錯誤感のある本作。
そしてラストを飾っているのはイエス・キリストへの愛をストレートに歌い上げた「イエスを信じて」なんですが、これはこの時期彼女がボーン・アゲイン・クリスチャンになった事により収録されたポップ・ゴスペル。ボーン・アゲイン・クリスチャンとは大人になってからキリスト教に改宗したり、それまでの自分の行いを反省して生まれかわったように熱心にキリスト教を信仰するようになった人を表す言葉で、ドナの場合は後者のよう。
「愛の誘惑」という直接的に性愛を表現したような楽曲でスターになった彼女は、セックスの権化に祭り上げられてしまった自分を嘆き(または反省し)、救いを宗教へ求めることになったようです。この事も後に起こる騒動の火種になるわけですが、それはまた次回に。
ロック、ポップ、ニューウェーブにゴスペル。バラエティに富んでいる、というと聞こえはいいですが、やはりどちらかというと主軸がぶれているというか方向性の迷いが露呈してしまい、中途半端な印象を抱かせる作品になってしまった気がします。
また4作品連続でWアルバムをリリースしてきた事も影響し、こじんまりとまとまってしまった感も否めないんですよね。
アルバムはトップ10に入らず、プラチナ・セールスを続けてきたセールスもゴールド止まり。大きな期待を寄せられていただけに、この成績はドナにとっては「失敗」と言えるものでした。
そしてドナな次作で大きな転換を迫られる事になるのです。
The Wanderer
A-1 The Wanderer
A-2 Looking Up
A-3 Breakdown
A-4 Grand Illusion
A-5 Running For Cover
B-1 Cold Love
B-2 Who Do You Think You're Foolin'
B-3 Nightlife
B-4 Stop Me
B-5 I Believe In Jesus
チャートデータ
アルバム
Pop 13位/R&B 12位
シングル
「The Wanderer」:Pop 3位/R&B 13位
「Cold Love」:Pop 33位
「Who Do You Think You're Foolin'」:Pop 40位
『ワンダラー』も現在廃盤のため市場では馬鹿値がついてます。リイシューされるといいのですけど。


ゲフィンレコードも悪いレーベルではないんですけどね。
おっしゃるように、ディスコミュージックからどう方向転換しようかと試行錯誤している感じで、聴いている方もどう付いていっていいのか、悩ましい気分で聴いたアルバムでした。
この作品だけCD化がけっこう遅れたんですよね。だから割と後で聴いたのですが、あまりピンとくる作品じゃありませんでした。
リアルタイムだったら、やっぱり「…?」ってなってたかも(smile)。
ジョルジョは80年代に入ってもヒットを出し続けますから、単純に時代に追いつけなかったって訳じゃないんでしょうけどね。舵取りがうまく行かなかったのかなぁと。
だったので、とても印象的でした。今まで
ディスコ、ダンスミュージックから、更にロック
や他のサウンドにチャンレジする所がカッコ良い
と思って当時、当然LPですが、結構聴いた
作品でした。だから、僕にとってはとても
ビビビ〜〜って来たアルバムでしたね。
当時は確かジェフ・バクスターなんかも参加した
って話題になったような気がします。。。。。
やっぱり最初に聞いたアルバムっていうのは強烈な印象を残しますよね。どうしても私なんかですとドナの全盛期は知らず後追いなので、その時代の熱気みたいなものを語れないのが残念です。
スティーリー・ダンの人がドナのアルバムに…話題になったんですね(smile)。
ディスコ&ソウル・ファンとしては少し物足りない感がありました。
「ワンダラー」はTV「独占!女の60分」と言う番組で泉アキが熱唱していたのを思い出しました。