2012年07月29日

『黒蜥蜴』(68年)

Black Lizard(68年)

唐突ですけど『黒蜥蜴』。

私、ポプラ社の少年探偵団シリーズを手始めに江戸川乱歩作品を読み漁った口で、初期の巧妙な短編作品から後期の猟奇通俗小説まで、本当に大好きでございました。

最近はさすがに少なくなりましたけど、映像化作品も目にする機会が多かった昭和の時代を過ごしているので、土曜ワイド劇場での天地茂さん主演の明智小五郎シリーズとかも思い入れがたっぷり。見たのは割と最近ですけど、カルト映画の代表とも言える「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」とか船越英二さんと緑魔子さんが倒錯の限りをつくす「盲獣」なんかも忘れられない作品だったりします。

そんな映像化作品の中でも一番のお気に入りが62年(昭和37年)に大映で撮られた京マチ子さん主演の『黒蜥蜴』。『黒蜥蜴』は女盗賊黒蜥蜴と名探偵明智小五郎のダイヤと美女を巡る攻防と悲恋を描いた変則型ラブ・ストーリーともいえる作品で、最初に見たのはテレ東のお昼の映画劇場だったと思いますけど、そのミュージカル・タッチのモダンな演出と乱歩独特の猟奇的世界の融合っぷりの素晴らしさにノック・ダウンされました。黒蜥蜴=京マチ子さんが犯行現場から男装して踊りながら逃亡をはかるシーンなんて、本当に最高。大木実さんの颯爽とした明智小五郎も素敵でしたし、どんなに3丁目の夕日が素晴らしくても再現出来えない本物だけが持つあの時代のパッケージというのも、今となってはとても貴重な素晴らしい作品でございました。(手持ちのVHSは永久保存…ただし機械が壊れないうちにデータ化したいところです。)

でもって『黒蜥蜴』と言って忘れちゃならないのが丸山明宏さん=美輪明宏さん主演版のもうひとつの『黒蜥蜴』。





乱歩が『黒蜥蜴』を執筆したのは34年(昭和9年)ですが、61年(昭和36年)に三島由紀夫氏が戯曲化した事で視覚的なエンターテイメントとしてコンバートされ、まず62年、初代水谷八重子さんの舞台と京マチ子さんの映画版がほぼ同時に上演。続いて68年に美輪さん主演で舞台版と映画版が制作され、以降美輪さんの当たり役として度々舞台版のほうは上演されています。(知りませんでしたけど、つい先月まで明治座創業140周年記念作品として、浅野ゆう子さん主演の『黒蜥蜴』が上演されていたらしいです。)

一度こちらの作品も見たいと思っていたのですが、残念ながらレンタルやセルでもソフト化された事があるのかないのか定かでなく、私の中では幻の一編となっておりました。しかし、ひょんな事からYou-Tubeで『黒蜥蜴』と検索したら、あれま吃驚、美輪さん主演の『黒蜥蜴』がまるまるアップされてるじゃありませんか!本当に最近のYou-Tubeは凄いですね(って3年前からアップされてたみたいですけど)。早速(消えないうちに)拝見させていただいた次第です。

正直明智小五郎役の木村功さんにあまり魅力がないのと作品全体の作りも京マチ子さん版のほうに色々軍配があがるところですが、やはり美輪さんの独特な雰囲気、そしてより三島さんの戯曲に近いんじゃないかと思う芝居がかった詩的な台詞の数々(京さん版も原作は三島さんの戯曲)等、抗いようのない魅力に溢れた作品でございました。三島由紀夫さんも特別出演していてその肉体美を披露してたりするのも貴重ですよね。英語の字幕がついてるし、最後のクレジットを見るとどうやら英国でソフト化されたものをアップしくれた模様。残念ながら英国amazonで検索しても商品自体はヒットしなかったので、今はやはり幻の作品であることに違いはないみたいです。

しかし、68年にいわゆるマイノリティの方の主演映画がこうして堂々と作られている訳ですから、日本ってある意味進んだ国だったんですかね。芸能の世界に関しては、歌舞伎の女形とか宝塚とか、ある種認められる下地というのがあったから実現足りえたのでしょうか?

未見の方は、消えないうちにどうぞご覧くださいませです。
その妖艶優美の世界、必見です。




全部で9分割されています。



あのピンク・マルティーニが「黒蜥蜴」の主題歌をレコーディングしてます。さすがトーマスさん!


61-yMVGo46L__AA300_.jpgkurotokage_02.jpg

やはりこの作品はソフト化されてないのかな?美輪さんのCDもこんなに高値でやだやだ。03年の舞台版ポスター。



乱歩の原作も超面白いです。そして京さんのはVHSやレーザー・ディスクになってますのでハードがある方は是非。天地さん版では小川真由美さんが黒蜥蜴に。他に岩下志麻さんも演じています。
posted by Suzu at 01:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 映画・ミュージカル系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月28日

ドナ・サマー『オール・システムズ・ゴー』(87年)

All Systems Go(87年)

87年にリリースされたドナ・サマー13枚目のオリジナル・アルバムです。

前作『キャッツ・ウィズアウト・クロウズ』から3年のインターバルを空けてリリースされた作品で、私個人としては初めてリアル・タイムで手に入れたドナのアルバムになります。

メイン・プロデューサーはカサブランカ後期にドナ・チームの一員となり、『トップ・ガン』のサントラ・ヒット等で80年代も活躍していたハロルド・フォルターマイヤーが担当。本作からのリード・シングルとなった「ディナー・ウィズ・ガーシュイン」は売れっ子プロデューサーのリチャード・ペリーが手掛けている他、アーバン・コンテンポラリー系のヴォーカル・グループ、クラッキンのメンバーだったピーター・バネッタ等が参加しています。





ミドル・テンポで解放感のあるサウンドが心地よく、再始動にかけるドナの気持ちが込められたような「オール・システムズ・ゴー」からアルバムはスタート、ポップ・ロック・アプローチのスピード感豊かな「バッド・レピュテーション」と「ラブ・ショック」、オリエンタル調の温かみのあるメロディが美しいヴォーカル・ナンバー「ジェレミー」、スターシップのミッキー・トーマスを迎えたAOR調バラード「オンリー・ザ・フール・サバイブ」、重量感たっぷりのサウンドに軽快なメロディー、ファンタジックな歌詞とユニークな構成をもつブレンダ・ラッセル作の「ディナー・ウィズ・ガーシュウィン」、そしてどことなくミステリアスな雰囲気を漂わせ、個人的にはリータ・ギャロウェイのバージョン等も思い出深い「ファシネイション」、清涼感のある流れる様なメロディが印象的な「ヴォイシズ・クライン・アウト」、メランコリックかつダルなヴォーカルがドナの新たな一面を見せる「マイ・ベイビー」というスロウ・ナンバー3連打でしっとりと幕が引かれる全9曲構成。





CD時代に入った事もあってか抜けのいいサウンドが特徴、久しぶりの作品という事もあってアルバムにリフレッシュしたような新鮮な空気感があるのが本作の魅力になっています。

3年振りのリリースに味わい豊かなファースト・シングル、日本では来日公演も行い「夜のヒットスタジオ」に出演したりとメディア的な露出や話題性はそこそこ高かったのですが、残念ながら米国でのチャート成績的にはシングルもトップ40入りせず(R&Bではかろうじてトップ10入り)、アルバムに至ってはトップ100入りも逃すという惨敗を期してしまいました。

やはり一度ヒット・チャートの一線から外れたベテランが再びヒットをものにするには、よほど時流に乗った展開をしないと難しいでしょうし、ホイットニーやジャネット等の次世代のスター達が70年代後半のドナばりに大ヒットを連発していた時代ですから、同じ土俵で勝負するには正直歩が悪い状況だったように思います。

そんな訳で大きなリアクションもなくひっそりと見送られたような感じでしたが、最近になって意外とこの作品、あちこちで好きだったという人が現れて隠れ人気が高いことが判明。主に玄人受けするシンガーソングライターであるブレンダ・ラッセルの「ディナー・ウィズ・ガーシュイン」人気に起因している面もありますが、後半のミスティーなバラード3連打部分も「新境地」として評価する向きがあるみたいです。

ヴォーカル・アルバムとしての純度はホリデイ作品を除くと一番高いかもしれませんね。
今後更に再評価が期待できる佳盤でございます。

51g69iJcnVL__AA300_.jpg
img1631.jpgR-1021430-1328500369.jpgR-2575008-1291247104.jpg

当時はCDとアナログのまだまだ共存時代。私もアルバムはCDで、シングルは7インチ・レコードで買ったりしていました。


All Systems Go

1. All Systems Go
2. Bad Reputation
3. Love Shock
4. Jeremy
5. Only the Fool Survives
6. Dinner With Gershwin
7. Fascination
8. Voices Cryin' Out
9. Thinkin' Bout My Baby

チャートデータ
アルバム
Pop 122位/R&B 53位
シングル
「Dinner With Gershwin」: Pop 48位/R&B 10位
「Only the Fool Survives」:AC 14位



「ディナー・ウィズ・ガーシュウィン」のセルフ・カバー収録。ブレンダの作品中最もライト・テイストなアルバム。

posted by Suzu at 00:00| Comment(6) | TrackBack(0) | ドナ・サマー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月25日

『ロック・オブ・エイジズ』(12年)

Rock Of Ages(12年)

話題の映画『ロック・オブ・エイジズ』のサントラ盤でございます。

06年ロサンジェルスで初演され、その後オフ・ブロードウェイからブロードウェイに進出した人気ミュージカルの映画化作品。日本でもTMレボリューションの西川貴教さんや島谷ひとみさん等の出演で昨年舞台が上演されたばかりです。

お話はサンセット大通りのライブ・ハウスで働きながらロック歌手を目指す青年ドリューと同じく歌手を目指すシェリーの恋物語を軸に、荒れた生活を送る人気ロック・スターのステイシーとの関係や、サンセット大通りからロックを追放しようとする市長の妻と地域住民の対立等を描く青春サクセス・ストーリー。

主人公のドリューにはラテン・アメリカ等で人気のシンガーだという新人のディエゴ・ボネータ、シェリーには『バーレスク』にダンサー役で出ていたジュリアン・ハフを抜擢。ライブ・ハウスの店長にアレック・ボールドウィン、ロック弾圧の急先鋒となるロサンゼルス市長の妻役にキャサリン・ゼタ・ジョーンズ、他にもメアリー・J・ブライジや(ケイティ・ペリーと離婚したばかりの)ラッセル・ブランド等が出演者として名を連ねています。しかし何と言っても話題は人気ロック・スター役で出演のトム・クルーズと言うことになるでしょうか。

上半身ムキムキの裸でロン毛のステージ写真が早々にメディアに流れましたけど、この写真が娘スリちゃんの教育上よろしくないとかで離婚の引き金になったなんて報道もありましたね。あくまで役だからしょうがないじゃん!って話ですが、まぁこれはもう坊主憎けりゃ袈裟までも的なお話でしょうか(smile)。

でまぁ、トム・クルーズが歌うわけですよ。トムの歌唱シーンと言えば(歌ってないけど)『卒業白書』でのボブ・シ-ガー「オールド・タイム・ロックンロール」のアテぶりや、『トップ・ガン』での酒場でケリー・マクギリスをナンパする時に歌う調子っぱずれな「ふられた気持ち」等がすぐ思い浮かび、決して歌える印象はなかった訳です。だからこの役をやると聞いた時、正直「・・・」って感じだったのですが、サントラの冒頭からためらいもせずのトム登場。歌うはガンズ・アンド・ローゼズの「パラダイス・シティ」。

・・・・・・変じゃない!
てかけっこう上手い!





グリーの音楽プロデューサーでもあるアダム・サンダースとヴォーカルの猛特訓をしたらしいのですけど、ハイ・トーン系ってことでアクセルの歌声とダブルところもあり、全然違和感なく歌の世界に入っていく事が出来ました。やっぱり世界のトップ俳優はそう簡単には馬脚を現しませんね。いやいや、お見逸れいたしました。

舞台となっているのが1987年と言うことで、本作を彩るミュージカル・ナンバーはガンズを筆頭に、ボンジョヴィ、デブ・レパード、ホワイト・スネーク、ポイゾン、パット・ベネター、ジャーニー、REOスピードワゴン、エクストリーム、クオーター・フラッシュ、ツイステッド・シスター等全てキラ星のような80年代のロック・ソングばかり。決してロックに明るくない私ですけど、どれも大ヒット曲なのでサビなんか一緒に口ずさめてしまうし、とにかく懐かしさも手伝って楽しさ満点!

キャサリン・ゼタ・ジョーンズやメアリー・J等さすがに良いお仕事してくれてますし、とにかく80年代のロック・コンピレーションを聴いてるような感覚でアルバムを楽しむ事が出来ます。





惜しむらくは歌唱力的には全然問題ないのですけど。若手の主人公二人が何故かあまりロック向きの声をしてない事でしょうか。ジュリアン・ハフはロック・シンガー役じゃないのでこれでいいのかもしれませんが、ディネゴ・ボネータのほうもロック志望って割には若干荒々しさが足りない感じなんですよね。舞台版ではアイドル(ボーイズ・バンド)として売り出されそうになる設定だそうなので、そのあたりも考慮しての人選なのかもしれませんけど。

後、曲があちこちグリーと被るので若干新鮮味に欠けるきらいがあったりするんです。作品としてはこちらのほうが早いのでどちらかというとグリーが被せてる訳ですが、やっぱりラストの「ドント・ストップ・ビリービン」は、どうにもニュー・ディレクションズの歌の印象が強すぎて損しちゃってる感じでございます。
まぁこの辺りの不満は、映画を見る事で解消してくれたらいいなぁと思っておりますが。

映画自体、残念ながら興行的にはコケてしまった模様ですが、サントラはビルボード・アルバム・チャート最高5位のヒットを記録。前述したように80年代ロック・コンピとして映画と切り離しても楽しめるのが勝因かと思います。
映画がコケたのは、トム・クルーズのロック・スター役が見たいかそうでもないかって事のような気がするのですが…どうでしょう?
日本公開は9月、個人的には楽しみにしたい作品です。

本当のロック・ファンの方にはお薦め出来ないかもしれませんが、80年代組にはたまらない内容ですので是非お試しくださいませです。





チャートデータ
アルバム
Pop 5位/Soundtrack 1位



意外と好きだったPoison。


posted by Suzu at 21:00| Comment(2) | TrackBack(0) | サントラ系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月22日

由紀さおり『う・ふ・ふ/由紀さおり 宇崎竜童を歌う』(77年)

Saori Yuki:U Fu Fu Saori Yuki Sings Ryudou Uzaki(77年)

ピンク・マルティーニとの共演アルバムの大ヒットを受けて、由紀さおりさんの旧譜8作品が紙ジャケットでのリリースとあいなりました。

同時代の歌い手さんとしては、何と言ってもBOXセット「ねぇあんた」の発売を機に火がついたちあきなおみさん再評価による怒涛のリリース・ラッシュが記憶に新しいところですけど、由紀さんの場合現役歌手として新譜を大ヒットさせての凱旋みたいなものですから、その意味合いはまたちょっと違うのかなと思います。他に与える影響と言うことを抜きに考えれば、ちあきさんの場合きっとどんなに願ってもそれは過去の偉大なる遺産の発掘にしかならないでしょうけど、由紀さんの場合はその反応が何がしか現在の活動への活力としてフィードバックされる可能性がある訳で、そういう期待が持てるだけでもこのリイシューはとても意味のあることだと思うんですよね。

そして今回ですが、ピンク・マルティーニとの作品がカバー集だったという事で、リイシューの対象に選ばれたのも全てカバー曲メインのアルバムということになってしまいました。いわゆる昨今のカバー曲ブームと由紀さんのやった事は全く別物だと思うのですが、まぁマーケティング的な事を考えても手始めとしてこういう着想になったのは致し方ないのかなと。

歌謡曲系の方のアルバムのリイシューというのは売れるか売れないかという事よりもほとんど企画者の情熱に左右されてるようなところもあるのですが、由紀さんのように明確に売れて注目度が高いという実績があればリイシューの企画も通りやすいはず。ブーム的なものが続いているうちに、出来ればほぼ聞く機会のないオリジナル作品メインのアルバムのリリースにも手を伸ばしていただきたいと(切に)思いますです。

もちろん全作品いずれは揃えたいのですけど、とりあえず最初の1枚ということでチョイスしたのがこれ『う・ふ・ふ/由紀さおり 宇崎竜童を歌う』。その名の通りタイトル曲の「う・ふ・ふ」と「ふらりふられて」という由紀さんの為に書かれたオリジナル曲の他、「横須賀ストーリー」「夢先案内人」「硝子坂」「ワン・デイ」「想いでぼろぼろ」等の宇崎竜童作品を集めたカバー曲集でございます。

三味線イメージの思いっきり演歌的な出だしからスピード感豊かな洋風メロディにスライドしていき、本編の由紀さんの歌はこぶしを回す勢いの和テイストな「う・ふ・ふ」。もう少し抑えめながら同じようなテイストで、ふられたのはあれのせい?…と理由を並べてみる歌詞がユニークな「ふらりふられて」は、もう日本でしかありえないザ・歌謡曲といった風情が満載。こういう和的なものと洋風なものとの絶妙なミクスチャー表現は、由紀さんの真骨頂ですよね。また今さら何をという感じですけど、宇崎竜童という作曲家のテリトリーの幅広さも実感出来る作品だと思いますです。





カバー曲ではちょっと泣きの入った「愛人(アマン)」が最高。「サヨナラは嫌いな言葉」「欲しいものは」「風恋歌」等のはまり具合も素晴らしいです。まぁ元も子もない事を言えば由紀さんの場合本当に何を歌っても上手いので言うことないのですけど(smile)。敢えて文句をつけるなら「横須賀ストーリー」等はさすがに百恵さんの圧倒的なヨコスカ感の前では普通の歌謡曲になってる感じですし、「硝子坂」もあのシュールな世界が妙に安定感のあるものになってしまってるのがちょっと違うかな?なんて思ったりもいたします。あくまで敢えて言うなら、ですけど。

由紀さんはこの後宇崎さんと組んで「TOKYOワルツ」という名曲を発表してます。これも本当に、良い曲なんですよねー。




少々の文句をつけながらも最近は『1969』に変わってこのアルバムばかり聞いている私でございます。由紀さんのアルバムはコスト・パフォーマンスがダントツなんですよね。はー、他のも買わなきゃ。




研ナオコさんの宇崎竜童作品集。こちらも傑作です。



posted by Suzu at 00:00| Comment(4) | TrackBack(0) | 歌謡曲/J-POP系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月21日

シェール・ロイド『スティックス+ストーンズ』(11年)

Cher Lloyd:Sticks + Stones(11年)

現在ビルボードのシングル・チャートで「ウォント・ユー・バック」が16位上昇中と大ヒットになりそうな気配を見せているのがシェール・ロイド。英国出身の現在18才のシンガーです。

何を隠そう(?)彼女もUKの人気オーディション番組「Xファクター」の出身者でして、2010年の出場ですから現在人気大爆発中のワン・ダイレクションと同期なんですね。「女子」の代表選手でしたがトータル順位は1Dに次ぐ4位。それでも早々にレコード契約が決まってデビュー曲の「スワガー・ジャガー」は1位獲得となかなか順調な滑り出しを見せ、UK→USという最近の輸出ラインにも上手く乗ってアメリカでも成功しそうな勢いでございます。

ファッションは完全に日本の「カワイイ」文化が入っており、ジャケ写を遠目から見るとスザンヌか若槻千夏かと空目可能なぐらい。歌の他にラップもこなるのが彼女の特徴で、ニッキー・ミナージュほど本格的ではないにしろ、オーディションの時からこれをセールス・ポイントにしてきた模様です。あまりうまい例えじゃありませんけど、ケイティー・ペリーとニッキー・ミナージュを足して割ってガーリーに仕上げましたって感じでしょうか。

アルバム制作にはエイコン一派の売れっ子プロデューサーであるレッドワンを中心に、シェルバック、マイク・ポンスナー、マックス・マーティン等が参加。大御所バスタ・ライムスをフューチャーした「グロウン・アップ」から勢い溢れる高速系ラップを披露してお転婆カワイイぶりを発揮。全米ヒット中の「ウォント・ユー・バック」等も強気に攻める部分とキュートなポップ・プリンセス部分とが上手く融合して、いかにも今の時代らしいカラフルでちょっぴり尖がったポップスになっています。
コールドプレイ?な「スーパーヒーロー」とかモータウン調+ハワイアン+Hip-Hopってもう何だかわかんないじゃん的な面白さの「オーバー・ザ・ムーン」、ニッキー・ミナージュの「スターシップ」を先取り(?)したような「スワガー・ジャガー」等、今時珍しく3分前後の曲を畳みかけるように10曲収録したコンパクトさもお手軽感があっていいですね。

今時のポップスとは何ぞ?という方にお薦めしてみたいアルバムでございます。

Xファクターに出場した時が16才であれから2年、下の動画を順番にご覧いただければ一目ですが、いやいや本当に垢抜けてきれいになってきてます!一番変わるお年頃ですからね、ご覧あれ〜。








チャートデータ(UK)
アルバム 4位
シングル
「Swagger Jagger」:1位
「With Ur LOVE」:4位
「Want U Back」:25位(US 16位↑)


posted by Suzu at 16:45| Comment(0) | TrackBack(0) | POPS系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月20日

ドナ・サマー『キャッツ・ウィズアウト・クロウズ』(84年)

Donna Summer:Cats Without Claws(84年)

83年、アトランティック・シティーで行われたコンサートの終了後、ドナは会場に残っていた500人ぐらいのファンと交流をしていました。その中にエイズに罹った男性ファンがいて、ドナに自分のために祈ってほしいとお願いし、ドナはそれに快く応じたそうです。その行為を見ていた他のファンが「そんな事は偽善に過ぎない」と発言、ドナがそれはどういう意味かと尋ね、そこからそのファンと2,3言葉を交わしました。熱心なクリスチャンとなっていたドナは「神様はこの世界を愛しているから独り子(イエス・キリスト)を遣わした」と言ったそうですが、この発言にそのファンが怒り出し、そこからさらに感情的な言葉の応酬になっていったそうです。その中でドナが「エイズがゲイ・コミュニティに広まったのは無謀な生活をしているからだ」と言った事で、その場にいた他のゲイのファンたちも怒りだしてしまった…。

これが、いわゆるドナの「エイズはゲイに対する天罰」発言の顛末のようです。

この件に関しては、「死後もデマを流布され続ける歌姫ドナ・サマー」というサイトに詳しくまとめられてますので、是非ご一読下さい→http://matome.naver.jp/odai/2133731638499210701?&page=1

本当の真実というのは映像や音声が残っているわけではないので検証のしようがないのですが、どうも感情的になって出た発言が切り取られ象徴的な言葉として流布されたというのが真相のようです。全く違うと言えば違いますけど、トシちゃんの「俺ぐらいビッグになれば…」と冗談めかして言った言葉が切り取られて伝えられたのと似ているように思います。ドナの場合、ボーン・アゲイン・クリスチャンとなっていた下地があり、ゲイ・コミュニティからの乖離が囁かれている中での騒動でしたから、余計にそういう発言をしてもおかしくないと思われ、彼女の弁明には一切耳が傾けられなかった模様ですね。人気に陰りが見え始めたアーティストには往々にして逆風ばかりが吹いたりしますが、まさにその典型的な例かもしれません。未だにこの発言に対する誤解が一部で解けていないというのがまた怖いところですし…。

ゲイ・コミュニティという大きな後ろ盾を失ったドナ。丁度時代も変革期を迎えており、エンターテイメント界の勢力地図も大きく変わろうとしている頃の出来事でした。


そんな「事件」が起こった翌84年に発売されたのが今回ご紹介のアルバム『キャッツ・ウィズアウト・クロウズ』。ドナにとって12枚目のオリジナル。アルバムになります。

前作の成功を受けてプロデュースはマイケル・オマーティアンが続投。丁度ロサンゼスル・オリンピックが開催された年でもあり、日本盤LPの帯には「ドナはいつだって愛の金メダリスト!」のキャッチがついてるのが微笑ましいというか何と言うか(smile)。

アルバムからの第一弾シングルに選ばれたのは80年代前半のオールディーズ・ブームを反映したのかドリフターズのカバー曲である「ゼア・ゴーズ・マイ・ベイビー」。
ドナにはリチャード・ハリスの「マッカーサー・パーク」やバリー・マニロウの「恋はマジック」等カバー・ヒットを放った実績があり、バラード・ナンバーを華麗なディスコ・ビートに改変するのはお手の物でしたが、こちらも現代的なポップ・ロック風アレンジを施して、ドナらしさ溢れるゴージャスなバージョンに仕上げて聞かせてくれます。PVも良い出来ですよね。





オープニングを飾るのはセカンド・シングルとなったデジタルと生音の融合感が素晴らしいハイパー・ポップス「スーパーナチュラル・ラブ」。続いてブギウギ調のノリの良いメロディが楽しい「イッツ・ノット・ザ・ウェイ」、「ゼア・ゴーズ・マイ・ベイビー」を挟んでファニーなメロディをレゲエ調の節回しを交えて歌うドナがこれまたファニーな「スザンナ」、不穏で近未来的なサウンド、預言者めいたドナの語りからポップに転調していく構成が面白い「キャッツ・ウイズアウト・クロウズ」でA面終了。
B面はメロディアスなデジタル・アーバン・ポップで離れていく恋人への思いを切なく歌い上げる「オー・ビリー・プリーズ」、うっすらとアラビアンなメロディも絡めるデジタル・グルーブ・ナンバー「アイズ」、泣きのサックスをフューチャーしたバラードでドナの情感溢れる熱唱が胸に迫る「メイビー・イッツ・オーバー」、マイアミ・サウンド・マシーンを彷彿とさせるライトなラテン・ポップ「アイム・フリー」、そして2年連続でのグラミー、ベスト・インスピレーショナル・パフォーマンス賞を受賞する事になるイエスへの祈りと自己の救済をテーマにしたバラード「許して」で美麗に幕となります。







私、前述のようにこのアルバムは『恋の魔法使い』や『情熱物語』等とほぼ同時期に手に入れて聴いていたのですが、当時はその3作に中にあって一番印象の薄いアルバムでございました。サウンドもポップ・ロックとしては平均的でしたし、楽曲も飛びぬけてキャッチーな作品があるわけではなかったので、数回聞いてもういいかなぁという感じだったんですよね。
そんな訳で今回久しぶりにじっくりとこのアルバムに耳を傾けてみたのですが、意外に個々の楽曲に個性があって、全体的に高止まりというかトータルでの完成度はかなり高かったんだなぁと認識を新たにいたしました。聞けば聞くほどに味が出てくる典型的なするめタイプのアルバムだったのですね。味が出る前に食べ止めちゃってたんだなぁ、私(反省)。

そんな『キャッツ・ウィズアウト・クロウズ』でございますが、ファースト・シングルの「ゼア・ゴーズ・マイ・ベイビー」はポップ21位、R&B20位という成績に終わり、アルバムもポップ40位、R&B24位と米国デビュー以降の最低記録を更新。…売れなかったのですね。ドナ自身前作よりもシンプルなサウンドを目指したと発言していますが、若干手堅過ぎ、でしたでしょうか。また前作のように鋭く社会問題に切り込む等の強いメッセージ性も後退してしまい、アルバムの核となる部分がぼやけたように感じられたのかも知れません。

また先に時代の変革期と書きましたけど、84年はマイケル・ジャクソンの『スリラー』が猛威を揮い、マドンナやシンディ・ローパーが頭角を現し、プリンスが「ビートに抱かれて」を特大ヒットさせる等、次世代のスターたちが大活躍をしていた年。ドナもこの『キャッツ・ウィズアウト・クロウズ』でヒットを逃しましたけど、同じく70年代から活躍してきたポップ・クイーンであるダイアナ・ロスやオリビア・ニュートン・ジョンも、翌85年リリースの『イートゥン・アライブ』と『麗しの瞳』で大コケしてしまいますから、新たな時代の波にはやはり勝てなかったのかなとも思います。

様々なトラブルに巻き込まれ、とうとうヒットのミューズからも見放されてしまったドナ。次のアルバムがリリースされるまでに3年のインターバルが必要となってしまいました。


220px-Cats_Without_Claws.jpgR-161468-1320866206.jpg
05191342_4fb7249d0a257.jpgimg214.jpgR-882667-1227129746.jpg

Cats Without Claws

A-1 Supernatural Love
A-2 It's Not The Way
A-3 There Goes My Baby
A-4 Suzanna
A-5 Cats Without Claws

B-1 Oh Billy please
B-2 Eyes
B-3 Maybe its over
B-4 I'm Free
B-5 Forgive Me

チャートデータ
アルバム
Pop 40位/R&B 24位
シングル
「There Goes My Baby」:Pop 21位/R&B 20位
「Supernatural Love」:Pop 75位/R&B 51位



マイケル・オマーティアンの代表作を2つ。
posted by Suzu at 20:45| Comment(6) | TrackBack(0) | ドナ・サマー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月13日

ドナ・サマー『情熱物語』(83年)

Donna Summer:She Works Hard for the Money(83年)

ドナ・サマー、83年リリースの11枚目のオリジナル・アルバムです。

80年代に入っていまひとつ波に乗り切れない活動が続いたドナ。ゲフィンが用意したプロデューサーであるクインシー・ジョーンズとのプロジェクトも大きな成果を残せませんでしたが、このレコーディングにストリングス・アレンジとして参加していたマイケル・オマーティアンとドナは次のアルバム製作に取り掛かります。マイケルは70年代前半からミュージシャン兼プロデューサーとして活躍しており、80年のクリストファー・クロスの大ヒット・アルバム『南から来た男』でグラミー賞も受賞、ポップ・ロック系の手堅いサウンド作りで定評のある人物でした。

前作のうっぷんを吹き飛ばすようにドナは全曲でソングライトに参加、マイケルや夫ブルース・スーダノの助力を得てアルバムは完成します。が、またしてもゲフィンはこのアルバムの発売を拒否してしまうのです。度重なる期待外れの成績にゲフィン側のハードルは相当に高いものになっていたのでしょう。鉄壁の布陣で製作したクインシー作品もダメだった訳ですから、首脳陣が次の作品へ容易にGOサインが出せなかったというのも、何となくわかる気はいたします。

丁度その頃、80年から調停中だったドナがカサブランカ・レコードを相手に起こしていた契約解除の起訴についての判決が下されます。それは契約として後1枚作る予定だったアルバムをカサブランカからリリースしなければならないというものでした。話し合いの末、ゲフィンはマイケル・オマーティアンと録音したこの音源を提供することに同意。ゲフィンからすれば自社で発売する予定のないお蔵入り音源だからどうぞお好きにという感じだったのかもしれませんが、何とも皮肉なことにこれが80年代ドナ・サマーの最大のヒット・レコードになってしまうのです。

元々この題名だったのか、それともカサブランカ(実際発売されたのは当時カサブランカを吸収していたポリグラム・レーベル傘下のマーキュリー・レコード)に売られた時点で作り変えたのかはわかりませんが、そのタイトルが「She Works Hard For The Money」=「彼女はお金のために懸命に働く」だったのは、何とも出来過ぎですよね。

邦題は、(多分担当者が寝ずに考えたのでしょう)「情熱物語」と命名されたこの曲、ドナのポップ・ロック路線の完成形とも言えるタイトでキャッチーな楽曲、社会の底辺で働く女性にスポットを当てた喚起力のある歌詞、それをわかりやすく表現して更に女性の解放を訴える秀逸なPVも功を奏して発売と共に大ヒット。ポップでは3位、R&B部門では「バッド・ガールズ」以来2曲目となる1位を獲得する大成功を収め、グラミーの最優秀女性ポップ歌手部門にもノミネートされました。





アルバムはその「情熱物語」をオープニングに、ホームレス等の貧困問題を取り上げた「ストップ・ルック・アンド・リッスン」、イエス・キリストをテーマに84年のグラミー・ベスト・インスピレーショナル・パフォーマンス賞を受賞する「恋に裏切り(He's a Rebel)」、女性の人権問題について歌った「ウーマン」、子供の失踪事件を扱った「ピープル・ピープル」等、当時の世相を反映した社会問題を多く取り上げ、そこに英国のティーンによるレゲエ・バンド、ミュージカル・ユースをフューチャーしたトロピカルな「アンコンディショナル・ラブ」、東京の帝国ホテルを舞台に繰り広げられるエキゾチックなロマン・ミステリー(smile)「トキオ」、ゴスペル歌手マシュー・ウォードをフューチャーした爽やかで力強いデュエット・ナンバー「愛を心に」、スピリチュアルな雰囲気も漂わせる「恋の確信」等のラブ・ソングを配した構成になっています。







このアルバムは批評家筋からの評価も高く、一般的にも好評を持って迎えられましたが、私個人としては前作『恋の魔法使い』と同時並列的に聴いてしまったので、やたら完成度の高かったクインシー・プロの作品との比較で、タイトル曲が飛びぬけている以外はあまり強くアピールしてくる部分が正直なかったんですよね。今回改めて内容を吟味する機会を得て、そのメッセージ性や特に後半の楽曲の味わい深さ加減等、ちょっと印象を改めている次第です。

ドナはこのアルバムのリリース後、以前ご紹介した「ホット・サマー・ナイト」と題されたコンサート・ツアーを行います。そこでドナは彼女のキャリアに致命的な疵をつけてしまう「エイズはゲイへの天罰」発言をめぐる騒動に巻き込まれてしまうのですが…その顛末は次回に。




フランク・シナトラの「L.A. Is My Lady」のPV。クインシー・ジョーンズ・プロデュースのこの曲、クインシー人脈の豪華スターに混じってウェイトレス姿のドナが登場!


41RTDXV58EL__SL500_AA300_.jpgR-186000-1264586203.jpg
img1611.jpgimg1621.jpgimg.jpg

She Works Hard for the Money

A-1 She Works Hard For The Money
A-2 Stop, Look And Listen
A-3 He's A Rebel
A-4 Woman

B-1 Unconditional Love
B-2 Love Has A Mind Of It's Own
B-3 Tokyo
B-4 People, People
B-5 I Do Believe (I Fell In Love)

チャートデータ
アルバム
Pop 9位/R&B 5位
シングル
「She Works Hard For The Money」:Pop 3位/R&B 1位
「Unconditional Love」:Pop 43位/R&B 9位
「Love Has A Mind Of It's Own」:Pop 70位/R&B 35位



ドナの5曲入りお手軽PV集。「情熱物語」と「アンコンディショナル・ラブ」が入ってます。
posted by Suzu at 21:15| Comment(4) | TrackBack(0) | ドナ・サマー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月12日

ドナ・サマー『恋の魔法使い』(82年)

Donna Summer:Donna Summer(82年)

82年にリリースされたドナ・サマー10枚目のオリジナル・アルバムです。

80年にゲフィン・レコードに移籍したドナでしたが、第一弾となる『ワンダラー』が微妙な成績に終わり、続いて製作した『アイム・ア・レインボウ』もレーベル側の厳しい判断でお蔵入りとなってしまいました。長年ドナとコンビを組んできたジョルジョ・モロダーとピート・ベロッティはここでドナのプロデュースからの撤退を余儀なくされ、変わりにゲフィンが用意したプロデューサーがあのクインシー・ジョーンズでした。

当時のクインシーと言えばマイケル・ジャクソンの『オフ・ザ・ウォール』や自身のアルバム『愛のコリーダ』をヒットさせて大御所にして旬のプロデューサーでもあるという飛ぶ鳥を落とす勢いの真っ只中。
そんなクインシーにプロデュースを依頼して承諾させたゲフィン側の意気込みというのも相当のものがあったろうと思います。またその仕事を受けたクインシーもこれが特別な仕事だという認識をもっていたのでしょう、マイケルのアルバム以上に豪華な布陣を導入してアルバムを制作、高品質のブラコン・サウンドでドナの新たな世界を構築することに成功いたしました。レーベルもこれなら間違いなし!と太鼓判を押したんじゃないかと思うんですが…結果は残念ながらアルバム・シングルとも前作を下回る成績しか残せず、本作もかつての勢いを取り戻す起爆剤とはなりませんでした。

人気稼業の場合一度離れてしまったファンの心を取り戻すのは容易ではありませんし、またそういう流れの中にある時は何をしても上手くいかないというのは往々にしてあること。80年代最初のステップを踏み外してしまったというのはやはりドナにとって大きかったのかなと思います。また常にバーサイタルな才能を示しながらもやはりドナに求められていたのはディスコ/ダンス・クイーンとしての側面であり、新たなブラック・コンテンポラリー路線というのは思いのほか高いハードルであったのかもしれません。

まぁそんな訳で大きな成功には至らなかった本作なので、世間的にもほとんどこのアルバムに対する評価というのは聞こえてこないのですが、個人的には昔からこのアルバムは大好きで、ドナの代表作のひとつだと思っております。





軽快なリズムとホイッスルの音が高揚感を煽るブラコン・ファンク「恋の魔法使い」、ジェームズ・イングラムをフューチャーしたアーバンなメロディの「ミステリー・オブ・ラブ」、情念薫るミディアム・バラードで後にハートもカバーした「ウーマン・イン・ミー」、オリンピックのテーマ曲にしたらはまりそうな総大なワールド・ミュージック・テイストの「ステイト・オブ・インディペンデンス」、アメリカン・ドリームを歌った米国賛歌「リヴィング・イン・アメリカ」、ブルース・スプリングスティーン製作で一時期はデュエットにする案もあったという暴走ロックン・ロール「プロテクション」、ダイナミックなドナの雄叫びから厚みのあるホーンをフューチャーしてスタイリッシュに展開していく「ハーツ・ジャスト・ア・リトル」、おどろおどろしいオープニング(smile)のマイナーなミディアム・クルーヴ・ナンバー「愛をかなえて」、そして摩天楼に沈んでいく夕日を眺めているかのように美しくジャージーなスタンダード・ナンバーの「ラッシュ・ライフ」(ストリングス・アレンジは名匠ジョニー・マンデル!)という全9曲。







クインシー・ジョーンズのプロダクションに共通して言える事ですが、30年経過した今でもほとんどその音作りは古びることがなく、クインシーを始めロッド・テンパートン、デビッド・フォスター、マイケル&ダニー・センベロ、スティーブ・ルカサー、リチャート・ペイジ、ヴァンゲリス等のヒット・メイカー達が提供した楽曲もそれぞれに完成度の高い仕上がりになっています。

「ステイト・オブ・インディペンデンス」はバック・コーラスにマイケル・ジャクソンを始め、ライオネル・リッチー、スティービー・ワンダー、ディオンヌ・ワーウィック、ケニー・ロギンス、ブレンダ・ラッセル、クリストファー・クロス、マイケル・マクドナルド等錚々たるメンバーが参加しており、クインシーにとってこの時の経験が後の「ウィ・アー・ザ・ワールド」に活かされたと言われています。
大人数でのコーラス参加でそれぞれの声が識別出来るわけでもなく、正直クレジットで名前を見ても当時は実感が湧かなかったのですが、本当に最近のYou-Tubeは凄いもので、その時のレコーディング風景というのが現在はアップされて見る事が出来ます。これを見ると、改めて凄かったんだ!って思っちゃいますね(smile)。





ただしこの作品、曲も魅力的だしその雄大なスケール感も素晴らしいのですが、シングル・ヒットするには若干不向きなタイプの楽曲。また第一弾シングルとなった「恋の魔法使い」も、サビがコーラス主体であり、ドナの出番は後半になるほど少なく(ほとんど合いの手のみに)なるためどこか聴いていて物足りない印象があるんですよね。構成も面白いしトータルでの完成度は非常に高いのですけど、「ドナ・サマー」のシングルとしては若干アピールし難い楽曲だった事が、大きな成功につながらなかった原因かもしれません。

またドナは本作について「時々私はクインシー・ジョーンズのアルバムで歌っているように感じた」と述べているのですが、ドナとクインシーの間で「クリエイティビティ」=「創作権」に関する衝突というのが度々起こったらしいのです。

それまで楽曲のソングライトを中心にアルバムの制作に深く関わってきたドナと、プロデューサーとして当然のようにアルバム製作に対して主導権を握ろうとするクインシー。従来は気心のしれたメンバーと自由に意見交換しながらアルバムを作り上げていた(想像です)ドナにとっては、かなり窮屈なレコーディングとなってしまったようです。またレコーディングの時に丁度ドナは第三子を妊娠中であり、体調が万全でなかった事も一因となっているのかもしれません。

両者の間にはしばらく遺恨が残ったようで、クインシー人脈が中心となった「ウィ・アー・ザ・ワールド」にドナが参加しなかったのも、この辺りが影響してるのかなと邪知してしまいますね。

質の高いサウンドに最高のヴォーカル、時代とは上手くリンク出来ませんでしたけど、80年代のブラック・コンテンポラリーを代表する傑作だと思いますので、是非リイシューされた暁にはお聞きになってみていただきたいと思います。

本当にこれが売れなかったのは…残念。




「Sometimes Like Butterflies」→「恋の魔法使い」のB面に収録されたアルバム未収録曲です。ダスティー・スプリングフィールドのカバーもあり。


R-564271-1329510709.jpgR-564271-1182290963.jpgimg9251.jpg
R-658628-1157378446.jpgR-1006369-1183270088.jpgimg1601.jpg


Donna Summer

A-1 Love Is In Control(Finger On THe Trigger)
A-2 Mystery Of Love
A-3 The Woman In Me
A-4 State Of Independence

B-1 Livin' In America
B-2 Protection
B-3 (If it)Hurts just A Little
B-4 Love Is Just A Breath Away
B-5 Lush Life

チャートデータ
アルバム
Pop 20位/R&B 6位
シングル
「Love Is In Control」:Pop 10位/R&B 4位
「State Of Independence」:Pop 41位/R&B 31位
「The Woman In Me」:Pop 33位/R&B 30位



ダスティー「Sometimes Like Butterflies」収録のレア曲集。
posted by Suzu at 22:45| Comment(4) | TrackBack(0) | ドナ・サマー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月11日

『アメリカン・アイドル シーズン11 トップ10 ハイライツ』(12年)

American Idol Season 11: Top 10 Highlights(12年)

小ネタですけど。

アメリカン・アイドルのゴージャスで突っ込みどころ満載だったフィナーレから早一ヶ月と半月。
病を押して出場し見事優勝に輝いたフィリップ・フィリップスは無事に大手術を終えて回復を見せ、準優勝したジェシカ・サンチェスにはあの人気番組グリーからオファーがあって、秋から始まるシーズン4に数話ゲスト出演することが決まりました。

従来準優秀者にはアルバム・リリースと報酬17.5万ドルが約束されていたそうなのですが、昨今の番組の人気低迷からの厳しい台所事情を反映し、今期からアルバム・リリースの保障はなくなりシングル・リリースの報酬として3万ドルが支払われるのみと契約が変わったそうなので、ジェシカにとっては本当に何よりなご褒美&ビッグ・チャレンジになる事と思います。フィナーレのステージでジェニファー・ホリデイにボコられた経験(smile)を活かして、グリーでのあっと驚くような下剋上を期待したいところです。

あちらでは先週7日からラスト10人に残ったコンテスタンツによる毎年恒例のアメリカン・アイドル・ツアーが始まったようですが、タイミングよくうちにも注文しておいたシーズン11のCDが到着いたしました。リリースされたのはツアー・メンバー10人の代表曲を収録した『ハイライツ』と、コンテスト中に披露されたデュエット・ナンバーだけを集めた『デュエッツ』、そしてフィリップ、ジェシカ、ジョシュア、ホリー、スカイラーのトップ5それぞれの単独作品という合計7種類。私がチョイスしたのは『ハイライツ』とフィリップの単独作ですが、先に『ハイライツ』のみが到着したので本日はそちらをご紹介させていただきます。

収録作品は以下の通り。一口コメントつきです。

1.It's A Man's Man's Man's World (Joshua Ledet)
ジョシュアは文句なしのこれ!

2.I will Always Love You (Jessica Sanchez)
ジェシカ…やっぱりどうにもこうにもホイットニーと比較しちゃう…

3.Volcano (Phillip Phillips)
まだ回復前の録音?もっさりしててパフォーマンスに元気がないんですけど。

4.Gunpowder & Led (Skylar Laine)
スカイラーのリトル・ダイナマイトぶりが遺憾なく発揮された好ナンバー。
(※スカイラー、うちの妻には「渡辺絵美」と呼ばれています…。)

5.Master Blaster (Deandre Brackensick)
軽やかさがいいなー、ディアンドレ。

6.The Power Of Love (Hollie Cavanagh)
ホリー…これもなぁ、歴代の歌手だちが凄いからなぁ…

7.New York State Of Mind (Erika Van Pelt)
エリカ様、なかなかどっしり聴かせてくれてます。

8.Whole Lotta Love (Elise Testone)
エリーズ姐さん絶賛妖しく暴走中。

9.Everything (Colton Dixon)
コルトン他に良い曲なかったっけ?

10.A Song For You (Heejun Han)
ステージでの巫山戯た態度さえ思い出さなければ悪くは、ない…。

まぁ卒業制作みたいなものですし、プロの作品という訳ではないので、良い事も悪い事も含めて今シーズンの思い出を噛みしめながら楽しむのが正解といったところでしょうか。
とりあえず正式なレコード・デビューが決まっているのはフィリップだけですし、これが最後という人もいるでしょうけど、多方面での皆さんの活躍を期待したいところです。

既に来シーズンの話題としては、相変わらずのジェニファー・ロペス降板説の他に、審査員候補としてアダム・ランバートの名前が上がってるとのこと!実現したらそれはそれで面白いかもしれませんね。


せっかくなのでコンサートの映像を(あまり画像やアングルはよくありませんが…)。



相変わらず弾けきらないジェシカ、器用なディアンドレ、随所にDIVA感が出てしまうジョシュア…。




gleeか!って話しですが(smile)。最初の大女子小女子の4ショットが笑撃です。そしてどーしてここにる?、ヒュージョンみたいな…。



posted by Suzu at 21:45| Comment(2) | TrackBack(0) | POPS系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月07日

ドナ・サマー『アイム・ア・レインボウ』(81年/96年)

I'm a Rainbow(81年/96年)

ドナ・サマー、81年に製作されたアルバム。

…なんですが、ご存じのように未発売となり96年にCDでリリースされるまで長らくお蔵入りとなっていた作品です。

80年に鳴り物入りでカサブランカから新興のゲフィン・レコードに移籍をしたドナでしたが、その第一弾である『ワンダラー』は従来のような爆発的ヒット作品にはなりませんでした。

前回、『ワンダラー』については若干の方向性の迷いとWアルバムを続けてきた事でのインパクト不足があったように書きましたけど、プロデューサーであるジョルジョ&ピートも同じように考えざるをえなかったようで、ニューウェーブ的な要素も取り入れていた前作からよりヴォーカル・オリエンティッドな作風に路線を修正、黄金時代に習い再びのWアルバムとして作品を完成させました。ところがゲフィン側はこのアルバムの発売を拒否。ドナに別のプロデューサーと組んでアルバムを制作するように指示します。

そしてゲフィンが用意したプロデューサーがあのクインシー・ジョーンズ。ドナはクインシーとアルバムの制作に入り、ここで70年代前半から続いていたジョルジョ、ピート、ドナのトロイカ方式による制作体制は終焉を迎え、これ以降このチームで作品がつくられることはありませんでした。

ジョルジョ・モロダーはその後も「フラッシュダンス」や「トップガン」、「ネバー・エンディング・ストーリー」等主に映画絡みのヒットでスーパー・プロデューサー/作曲家の地位を堅持。ピート・ベロッティは残念ながらこれ以降表舞台に出る事は少なくなってしまいましたね。

お蔵入りとなった作品がまるごとリリースされるというのはかなり珍しい例だと思いますけど、幸運な事にこの作品はその珍しい例として96年に突如CDとして商品化されました。実際のWアルバムがこの曲順だったのかはわかりませんので、とりあえず各曲を簡単にご紹介したいと思います。
制作陣はジョルジョ、ピート、ドナの他にお馴染みのハロルド・フォルターマイヤーにキース・フォーシー、前年にドナと結婚したブルース・スーダノ、そして新たにシルヴァー・コンベンションの「フライ・ロビン・フライ」を作曲し、80年代以降は映画やテレビのスコア制作で活躍したシルベスター・リーバイが加わっています。





1. I Believe (In You)
「ヘブン・ノウズ」で共演したブルックリン・ドリームスのジョー・エスポジットとのデュエットによる南国風味のブラコン・ナンバー。
2. True Love Survives
マイナーでメロディアスな曲調が印象的な作品。
3. You To Me
『オール・システムズ・ゴー』収録の「ジェレミー」等に通じる温かみのあるポップ・バラード。
4. Sweet Emotion
80年代ならではの音使いが今となっては貴重な(smile)ポップ・ヴォーカル作品。
5. Leave Me Alone
ブロンディの「コール・ミー」(ジョルジョ制作)をドナで再現してみました、と言うような双子的位置関係にあるロック・ナンバー。
6. Melanie
きらめくシンセ音が印象的でどこか懐かしさのある軽快なポップ・ナンバー。
7. Back Where You Belong
アーバン・テイストのポップなブラコン作品。
8. People Talk
こちらも若干のアーバン風味を味付けにした軽快なシンセ・ポップ。
9. To Turn The Stone
バブパイプ(?)の音色を全編で奏でるアバの「アライバル」的な民族系ナンバー。このアレンジにインスパイアされたのか元々の予定だったのか、ソロ活動を始めたアバのフリーダが翌年この曲をカバーしてアルバムに収めています。
10. Brooklyn
ブルース・スーダノとの間に誕生した娘ブルックリンちゃんの誕生讃歌。
11. I'm A Rainbow
93年に発売されたベスト盤で先にお披露目されたアルバムのタイトル・トラック。切々と優しい情感を込めて歌い上げるポピュラー・ヴォーカル・ナンバーで、これはゲイ・ピープルに向けられた歌という解釈も出来るのかなと。
12. Walk On (Keep On Movin')
レゲエ風味のポップ・ナンバー。
13. Don't Cry For Me Argentina
ミュージカル「エビータ」の大人気曲のカバー。堂々としたドナの美しいヴォーカルが印象的。こちらも93年のベスト盤で初お目見えしました。
14. A Runner With The Pack
ラップと言うか語り風なヴォーカルがドナならではのアーバン・ポップ作品。
15. Highway Runner
映画「初体験/リッジモント・ハイ」のサントラに収録されて82年に発表された作品。「ホット・スタッフ」のテンポをぐっと抑え目にしたようなロック・ナンバー。
16. Romeo
こちらも映画「ブラッシュダンス」のサントラに収録されて先にリリースされた作品。オールディーズ・テイストのファニーなポップ・ロック曲。
17. End Of The Week
ドライヴィング・ミュージック系の明るいテイストのポップ・ナンバー。
18. I Need Time
威風堂々としたヴォーカルが印象的なクロージングに相応しいナンバー。80年代ドナの定番となるより厚みの増した歌声はここで完成された感じ。





前述したようにヴォーカルに重きをおいたポップ・ナンバーが並んでおり、完全にディスコ・クイーンから脱却したドナの姿が窺えます。曲調もバラエティに富んでいて楽しいものなのですが、今まで革新的なダンス・ナンバーで時代の先を行っていたドナ・サマー・チームの作品としては、いささか(言葉は悪いですが)凡庸な印象になってしまったのかもしれません。加えて前作『ワンダラー』が思った様な成果を上げられなかった事もゲフィン側の厳しい評価を後押ししたのかなと思います。

アルバムはお蔵入りとなりましたが、本作からは「ハイウェイ・ランナー」と「ロミオ」がサントラ曲としてリサイクルされました。また他のアーティストによって以下の楽曲がレコーディングされ、リリースされています。

ザ・リアル・シング:「アイ・ビリーブ・イン・ユー」(81年)
フリーダ:「トゥ・ターン・ザ・ストーン」(82年)※アバのフリーダ
ジョー・エスポジット:「トゥ・ターン・ザ・ストーン」(83年)
エイミー・スチュワート:「ユー・トゥ・ミー」「スウィート・エモーション」(83年)



…しかし、ゲイ・コミュニティーの象徴でもある「レインボウ」をタイトルに冠したアルバムが発売中止になるというのも、どこかその後のトラブルを予兆しているように思えてしまうんですよね。これは少し、考えすぎでしょうか。

I'm_A_Rainbow.jpgR-596811-1168800868.jpg

I'm a Rainbow

1. I Believe (In You)
2. True Love Survives
3. You To Me
4. Sweet Emotion
5. Leave Me Alone
6. Melanie
7. Back Where You Belong
8. People Talk
9. To Turn The Stone
10. Brooklyn
11. I'm A Rainbow
12. Walk On (Keep On Movin')
13. Don't Cry For Me Argentina
14. A Runner With The Pack
15. Highway Runner
16. Romeo
17. End Of The Week
18. I Need Time

チャートデータ
チャート入りなし。



それぞれ「To Turn the Stone」収録。
『I'm a Rainbow』もいつの間にか廃盤で馬鹿値に…。
posted by Suzu at 22:30| Comment(4) | TrackBack(0) | ドナ・サマー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月06日

ドナ・サマー『ワンダラー』(80年)

Donna Summer:The Wanderer(80年)

80年にリリースされたドナ・サマー9枚目のオリジナル・アルバム。

80年、ドナはそれまで所属していたカサブランカ・レコードとの契約解消を求める起訴を起こします。
ディスコ・レーベルとして70年代後半に大躍進を遂げたカサブランカでしたが、ディスコの終焉とともにその勢力にも衰えを見せ始め、同80年には社長二ール・ボガードを不正会計と売上不振により解雇。

そんなカサブランカのお家騒動の中、ドナが新天地として選んだのが、70年代にローラ・ニーロやCS&N、ジャクソン・ブラウン等を発掘し、アサイラム・レコードの社長としてリンダ・ロンシュタットやジョニ・ミッチェル等を手掛けたデビッド・ゲフィンが新たに設立したレコード会社、ゲフィン・レコードでした。
やり手のゲフィンはジョン・レノン、エルトン・ジョン、エアロスミス等錚々たる顔ぶれと契約を交わしていきますが、そのゲフィン・レコードの第一号契約アーティストがドナであり、初のレーベルとしてのリリース・レコードが『ワンダラー』でした。当時のドナの勢いからすればこれは当然の事と言えるかもしれませんね。

プロデューサーは従来と同じジョルジョ・モロダー&ピート・ベロッティが務め、ハロルド・フォルタマイヤーやキース・フォーシーが参加とブルックリン・ドリームスのメンバーが抜けた他はほぼ前作と同じラインナップで制作されております。

ファースト・シングルに選ばれたのはアルバムのタイトル曲でもある「ワンダラー」。トリップ感覚のあるニューウェーブ・タッチのエレクトロ・ポップ…とでも言えばいいのでしょうか?エルビス・プレスリー風のちょっとファニーなドナのヴォーカルも併せ、新しいような懐古的でもあるような、とても不思議な印象を残す楽曲です。シングル・チャートでは3位まで上昇、ただし当時のドナのニュー・アルバムからの第一弾シングルとしては若干物足らない成績だったでしょうか。




イントロのメロディー&ピアノ・ソロがかっこいい「ルッキング・アップ」、ガツッ、ガツッとしたビート感が面白い「コールド・ラブ」、しなやかに歌声を操るブラコン・テイストの「愛の隠れ場所」、メロディアスなロック・ナンバー「涙の祈り」、オールディーズ風ロックの「ストップ・ミー」等、よりワイルドにポップ・ロック路線を推し進めた曲がある一方、「ブレイク・ダウン」では従来のハイ・キーな歌声を全編で聞かせたり、「大いなる幻影」なんていうタイトルそのままの幻想的でアートっぽい作品があったりと、どこか試行錯誤感のある本作。




そしてラストを飾っているのはイエス・キリストへの愛をストレートに歌い上げた「イエスを信じて」なんですが、これはこの時期彼女がボーン・アゲイン・クリスチャンになった事により収録されたポップ・ゴスペル。ボーン・アゲイン・クリスチャンとは大人になってからキリスト教に改宗したり、それまでの自分の行いを反省して生まれかわったように熱心にキリスト教を信仰するようになった人を表す言葉で、ドナの場合は後者のよう。

「愛の誘惑」という直接的に性愛を表現したような楽曲でスターになった彼女は、セックスの権化に祭り上げられてしまった自分を嘆き(または反省し)、救いを宗教へ求めることになったようです。この事も後に起こる騒動の火種になるわけですが、それはまた次回に。

ロック、ポップ、ニューウェーブにゴスペル。バラエティに富んでいる、というと聞こえはいいですが、やはりどちらかというと主軸がぶれているというか方向性の迷いが露呈してしまい、中途半端な印象を抱かせる作品になってしまった気がします。
また4作品連続でWアルバムをリリースしてきた事も影響し、こじんまりとまとまってしまった感も否めないんですよね。

アルバムはトップ10に入らず、プラチナ・セールスを続けてきたセールスもゴールド止まり。大きな期待を寄せられていただけに、この成績はドナにとっては「失敗」と言えるものでした。

そしてドナな次作で大きな転換を迫られる事になるのです。


e443d0920ea0041256c5d110_L__AA300_.jpg
img1581.jpgimg9241.jpgimg1591.jpg


The Wanderer

A-1 The Wanderer
A-2 Looking Up
A-3 Breakdown
A-4 Grand Illusion
A-5 Running For Cover

B-1 Cold Love
B-2 Who Do You Think You're Foolin'
B-3 Nightlife
B-4 Stop Me
B-5 I Believe In Jesus

チャートデータ
アルバム
Pop 13位/R&B 12位
シングル
「The Wanderer」:Pop 3位/R&B 13位
「Cold Love」:Pop 33位
「Who Do You Think You're Foolin'」:Pop 40位



『ワンダラー』も現在廃盤のため市場では馬鹿値がついてます。リイシューされるといいのですけど。




posted by Suzu at 21:45| Comment(4) | TrackBack(0) | ドナ・サマー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月04日

ベスト盤天国

お買い得ですよ、奥さん!

…とまぁ、大変下世話なお話で申し訳ないのですけど。

最近円の関係とか抜きにしてもCDがお安い。この値段でこのボリューム、この内容のものが買えちゃうの?なんてネットやCDショップで慄然となることもしばしばな訳です。お値段のつけ方はお店によってまちまちではあるんですけど、総じて2枚組で千円前後。英国のDemon Music Groupという会社が出しているMusic Club Deluxe というシリーズですが、Rhinoとかが編集したものを販売してる正規盤。そのアーティストと内容の素晴らしさがわかっている世代としては、お値段と比例して中身までヤスいと思われないかな?…なんて余計な事を考えてみたり。だって本当に安くで腹が立つんですもん(怒)。

私が購入したものをいくつかご紹介いたします(買ってるんじゃん)。


Linda Ronstadt:The Collection



我らが歌姫リンダ・ロンシュタッドの2枚組ベスト。全46曲入りで、ストーンポニーズ時代の「ロング・ロング・タイム」から96年の子守歌アルバムまでをカバー。ヒット曲はもちろんマイナーなアルバム曲まで収録時間の許す限り詰め込んであります。ちゃんと「ホワッツ・ニュー」やラテン・アルバムからのチョイスももあるのがエラい。


Chaka Khan:The Essential



ファンクの女王で先日行われたアメリカン・アイドルのフィナーレでもオレンジのボディ・スーツに身を包んで颯爽と登場、衰え知らずの歌声で会場を沸かせたチャカ(シャカ)・カーンの2枚組ベスト。33曲ですけどこれは1曲の長さの関係。こちらもソロ時代のヒット曲はほぼ網羅されており、+ルーファスとの「エイント・ノーバディ」。それはもう聴きごたえ満点です。


Dionne Warwick:The Essential



説明不要の大御所、ディオンヌ・ワーウィックの2枚組ベスト。全44曲入りで、60年代のバカラック/デイヴィッド=セプター時代と70年代のワーナー時代を中心に、80年代のアリスタ時代も英国で大ヒットした2曲のみチョイス。ランダム収録なので「アルフィー」の後に「ハートブレイカー」が来る等違和感のある構成なのですけど、まぁ我慢いたしましょう。


Sheena Easton:The Collection



80年代を代表する女性ポップ・シンガーであるシーナ・イーストンの2枚組ベスト。なかなかレコード会社の壁を越えられず、今回もEMI期だけ(「ラバー・イン・ミー」等が入らず)の編集ですが、全31曲、シングル曲を中心にB面曲等もチョイス。シーナの硬質だけれども艶のある歌声、そして素晴らしき80年代ポップスの楽しさを満喫できます。


Kim Wilde:The Collection



80年代でもう一人忘れられない活躍をした女性歌手、キム・ワイルドの2枚組ベスト。シーナはニューウェーブ感覚のポップスと言われましたけど、キムはニューウェーブ・ロックとカテゴライズされてましたね。全33曲収録で初期3枚のRAKレーベルの作品にNo.1ヒット「キープ・ミー・ハンギング・オン」や「ユー・ケイム」を追加した構成。


Paula Abdul:Straight Up! the Very Best of



私にとっての「Forever Girl」、ポーラ・アブドゥルの2枚組ベストでございます。最近の若い方だと、アメリカン・アイドルの審査員だった変なオバさんという印象しかないかもしれないですが、彼女は革新的なダンス・パフォーマーでありキュートな歌い手だったのです!全31曲、サントラ曲まで入った初の大容量ベスト、全米No.1が6曲もあるんですよー!!


この他にもカルチャー・クラブやバナナラマ、アン・ヴォーグにシック、シスター・スレッジ等各種取り揃えておりますので(smile)、懐かしい方も初めての方も色々お試し下さいませです。



Music Club Deluxeのサイトはこちら→http://www.demonmusicgroup.co.uk/content/65.chtml?Type=FC&pPage=2
posted by Suzu at 19:45| Comment(4) | TrackBack(0) | エンタメetc | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月01日

マーカス・コリンズ 『マーカス・コリンズ』(12年)

Marcus Collins:Marcus Collins(12年)

ブログをお読みいただいている方はおわかりかと思いますが、最近私英国産のシンガーに注目しております。

英国産…というとちょっと聞こえがいいですが、ようは英国開催のオーディション番組「Xファクター」出身の歌手の皆様ですね。JLSとかオリー・マーズ、ワン・ダイレクションの情報等を追っていると、どうしても「Xファクター」関係の情報が目に入るようになってしまって、あの人もこの人もぉ♪(by大阪ラプソディー)状態になってしまうのです。

昨年開催された「Xファクター2011」では女性ヴォーカル・グループのリトル・ミックスと言う方々が優勝されたのですが、こちらは現在デビュー・アルバムの制作中。一足お先にとアルバム・デビューを飾ったのが、準優勝となった本日ご紹介のマーカス・コリンズでございます。

「Xファクター」は何度かご説明しているようにボーイズ、ガールズ、グループ、シニアの4セクションに分かれて優勝を争うのですが、マーカスはボーイズ枠の代表としてコンペに参加。惜しくも優勝は逃しましたけど、そのお目々ぱっちりなキュート系ルックスと爽やかソウルな歌声で人気者となり、メジャー・デビューの切符を手に入れました。

爽やかソウル…って、なんか訳わかんないですけど(smile)、あまり粘着性のない歌声でコクは適度にあるけどさらっと聞けるというか、アメリカン・コーヒーで作ったカフェオレみたいな?(余計不明)。クリス・ブラウンと比べるより、ブルーノ・マーズやマルーン5なんかと並べるとしっくりくるようなタイプのシンガーでございます。

ファースト・シングルでトップ10入りのヒットになったのはロック・バンド、ホワイト・ストライブスのカバー曲である「セブン・ネイション・アーミー」。この曲、英国のNMEという音楽誌が選んだ「史上最低のカバー・ソング30曲」の1曲に選ばれてしまったりしたのですが、原曲をうまくクールなポップ・ソウルに変換していて私は嫌いじゃありません。ホワイト・ストライプス自体がかなり崇拝系のバンドなので、その筋の方から反発をくらってしまったのかもしれませんね。



60'sソウルの温かみを再現したような「ドント・サレンダー」、賑やかなホーン隊を引き連れて派手にキメるセカンド・シングルの「マーシー」、ジャッキー・ウィルソンの名曲のマイルド・カバー「ハイヤー・アンド・ハイヤー」、こちらも初期デトロイト・ソウルな雰囲気の「イッツ・タイム」、ファンの「ウィ・アー・ヤング」にフューチャーされて知名度をあげたジャネール・モナエのカバーとなるリズミカルな高速ノリの「タイトロープ」、アゲアゲ系ソウルの「フィール・ライク・アイ・フィール」、イントロが「ユー・キープ・ミー・ハンギング・オン」してる「ブレイク・ディーズ・チェイン」等、古き良き時代のR&Bを今の時代にリファインしたような楽曲が並んでおり、何だかこうまったりしてしまうような心地よさがあるのが好印象でございます。

「Xファクター」でボーイズのメンターを務めているのは我らがテイクザットのゲイリー・バーロウ。教え子のデビューに力を注がない先生はいない訳で、「フィール・ライク・アイ・フィール」のソングライトを手掛けているのはゲイリーですし、エクザクティブ・プロデューサーも彼が務めております。カバー意外の楽曲はマーカス自身が制作にも加わっており、もちろん彼の資質と持ち味あっての事ですが、どこかに漂う品の良さはゲイリーの関与というのも大きいのかなと思いますね。

デビューしたてですし、正直セカンド・シングルの「マーシー」は194位と惨敗してしまいましたけど、まだまだこれから、頑張ってほしいと思いますです。



ちなみに彼はオープンリーなゲイ。目がね、語ってました(smile)。

チャートデータ(UK)
アルバム 7位
シングル
「Seven Nation Army」:9位
「Mercy」:194位



ホワイト・ストライプスの原曲はこちら。なるほどなぁという感じ→http://youtu.be/0J2QdDbelmY
モナエさんの「Tightrope」もいいですよ→http://youtu.be/pwnefUaKCbc


posted by Suzu at 12:15| Comment(2) | TrackBack(0) | R&B系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。