2012年03月30日

ラトーヤ・ジャクソン『イマジネーション』(86年)

LaToya Jackson:Imagination(86年)

ジャクソン一家のバッド・ガールこと、ラトーヤ・ジャクソンさんが86年にリリースした4thアルバム。

ラトーヤと言えば正直歌手というよりお騒がせタレントいうイメージが強く、ジャクソン家の中でも最も薄口なヴォーカルを聴かせ、目立ったヒットもないことから音楽的にはほとんど評価されていないというのが現状。よって私もディスコグラフィー等を今まであまりまともに調べたことはありませんでした。
記憶にあったのは数年前にCD化されたファーストと、唯一R&B本等で紹介されることのあるセカンド、リアルタイムだったフォル・フォースやPWL関与の『ゴナ・ゲット・ロック』ぐらいでしたが、この度AMGにも載っておらずエア・ポケットに入っていた84年の3rdと86年の4thがお馴染みFunkytowngroovesから同時にCD化。このところリイシュー・ラッシュでお財布の紐を締めたいところではありましたが、これを逃すとという焦燥感に押されてとりあえずのゲット。本日は後者のほうをご紹介したいと思います。

本作は80年代特有の丸みを帯びたシンセ・サウンドが全編に敷き詰められていて、当時を知る者としてはもうその音色だけで加点をつけちゃうといった感じの作品。

1曲目の「ヒーズ・ア・プリテンダー」。曲名からもしかして?との期待がありましたが、これがビンゴ。
個人的なお気に入りソングでモータウンの女性R&Bトリオであるハイ・イナジーや、「ドリームガールズ」のジェニファー・ホリデイが歌った曲と同じものでございました。本アルバムのプロデューサーを務めるGary Goetzman, Mike Piccirilloのコンビが作った作品で、なかなかにヒット感度の高いキャッチーな楽曲なので、3度目の正直として本アルバムにも投入、シングルにも選ばれてプッシュされたようですが、今回も残念ながらR&Bチャートで最高位76位とヒットには至らなかったようです(いい曲なんですけどね…)。
Gary Goetzman, Mike Piccirilloは80年代前後を中心に活躍したプロデュース・チームで、代表的な作品はスモーキー・ロビンソンの「ビーイング・ウィズ・ユー」やキム・カーンズの「モア・ラブ」、No.1ヒットになったロバート・ジョンの「サッド・アイズ」等。他にもナタリー・コールやティファニー、ステイプル・シンガーズ等人気シンガーの作品を数多く手がけています。
その他にもトロピカル調の「オン・ア・ナイト・ライク・ディス」に、ポインタース等を思わせるポップ・ロック・アプローチの「ベイビー・シスター」や「ウィーク・スポット」、派手目なシンセ・ダンス・ポップの「イマジネーション」、スウィート&メロウ系のミディアム「ラブ・トーク」等、なかなかにソング・オリエンティッドな楽曲が揃っていて楽しめます。

唯一ウィーク・スポットならぬウィーク・ポイントがあるとすれば、やはりラトーヤのヴォーカルが弱い事ですかね。いい感じにはまってる部分もあるんですけど、どうにもこうにも惜しい…みたいな。普段オリジナル尊重でダンス・ミックス的なものはあまり好みじゃないのですけど、今回ばっかりはボーナス・トラックで収録のよりビート・アップされた「イマジネーション」の各バージョン等、ラトーヤの非力なヴォーカルを補う効果を発揮していて大好きです。
また声質的には同じお仲間といっていいダイアナ・ロスをちらほら髣髴とさせる部分(「オン・ア・ナイト〜」なんて容易に「タッチ・バイ・タッチ」に変換可能)もあって、ダイアナがポップ・ロック路線をひた走っていた思い出深きRCA期とデジャブ。これがダイアナだったらさぞ…なんて身も蓋もない妄想が膨らんでしまいました。

そして解説を(英語なもので)斜め読みしていたら飛びこんできたのはJapanese Pop Superstar Minako Honda の文字。最初吉田美奈子とソラ目しましたけどもちろん本田美奈子さんのことですね。「ラブ・トーク」の解説で、美奈子さんが87年にリリースした海外録音アルバム『OVERSEA』の中で、「Girl Talk」と改題して同曲を歌っているとの記述でした。このラインで追ってみると、美奈子さんが同アルバム・リリース後の87年にはラトーヤとジョイント・コンサートを開いたそうですし、そういえば美奈子さんマイケルやバブルスと一緒に撮った写真もあったよなーなんて事まで思い出してみたり。意外なところで意外な名前に出会えてちょっと嬉しくなってしまいました(そして『OVERSEA』を注文してみた…)。

そんなこんなで80's好きには惹きつけられる要素大のアルバム。
こういう美味しい作品に出会えたりするから、Funkytown漁りは止められないんですよね。
86年と言えばジャネットの『コントロール』が大ヒットし始めた年。89年にはプレイボーイ誌でヌードを披露、91年にはジャクソン家の暴露本出版とお騒がせを発揮し始める前の、まだまだキュートさが売りだったラトーヤの素敵な作品でございます。
狭い層限定ですが、お薦めですよ。

チャートデータ
アルバム
チャートインなし
シングル
「He's a Pretender]:R&B 76位



キャッチーでしょう?



ダイアナの84年作、「Touch By Touch」収録です。
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2012年03月25日

ザ・ウォンテッド『バトルグラウンド』(11年)

The Wanted:Battleground(11年)

せっかくなので、ザ・ウォンテッドのほうも書いておきたいと思います。

デビューはワン・ダイレクションより1年早い2010年。英国のガールズ・グループ、サンデイズやパレード等のマネージャーを務めるジェイン・コリンズさん主催のオーディションで選ばれたマックス、ネイサン、シヴァ、ジェイ、トムの5人組。これ以前にマックスやトムはXファクターのオーディションにも参加経験があり、シヴァは俳優としてテレビ番組等に出演していたようです。
スティーブ・マック、ガイ・チェンバース、グレッグ・カースティン、タイオ・クルズ、キャッシー・デニス等ゴージャスな面子が参加したデビュー作からはNo.1になった「オール・タイム・ロウ」をはじめ3曲がシングル・ヒットし、アルバムも4位獲得と成功を収めて一躍人気グループに。でもって昨年早くも本セカンド・アルバムをリリースして、再びのNo.1シングル「グラード・ユー・ケイム」を放つ等、今波に乗っているグループなのです。

そんな英国の状況を踏まえた上で今年12年に満を持して米国進出を目論んでいたザ・ウォンテッド。勝負曲に選んだ「グラード・ユー・ケイム」は当初20位〜30位ぐらいのヒットという線(それでも英国のポップ・バンドとしては立派な成績なほう)だったのですが、2月に放映された人気番組「グリー」の中で、ニュー・ディレクションズのライバルであるダルトン・アカデミーのザ・ウォブラーズが地区予選会の曲としてパフォーマンスしたところ一気に本家のほうに火が付き、現在もビルボードのシングル・チャートで3位とヒットを続けております。面白いものだと思うのは、正直パフォーマンスとしては完全にオリジナルを超えているウォブラーズ盤のほうは90位とチャート・アクション的には振るわなかったのに、あっという間にオリジナルのほうはブレイクしたこと。それだけ潜在的なポテンシャルが楽曲とザ・ウォンテッドのほうにあったという事なのかもしれません(新生ウォブラーズ、歌声の引きはちょっと弱いですしね…)。

ヒット中の「グラード・ユー・ケイム」ですが、何だかこう、ちょっと懐かしいサウンドですよね。歌っているのが若い男子くんたちなのであまりそういう夜の匂いはしてこないのですが、いわゆるレイブ・サウンドってやつで、彼らのヴォーカルがなければジュリアナあたりで羽根扇子をふりふりしてるワンレン・ボディコンのお姉さまがたの姿が浮かんでくる感じ。英国で本アルバムからのファースト・シングルになった「ゴールド・フォーエヴァー」なんて、思わず「yeh yeh yeh wow wow wow」なんてTRFの「survival dAnce」でも歌いたくなっちゃいますもの。他にも「ライトニング」や「ウィークエンド」等いわゆるそういったエレクトロなサウンドを多用していながらも、あくまでヴォーカルは硬派を貫いているので派手派手しく聞こえないというのが、彼らの面白いところでしょうか。併せてダイアン・ウォーレンがソングライトしたメロディアス・ロック調の「ロケット」や、同じくロック的なダイナミズムを取り入れた「ワーゾーン」や「ラスト・トゥ・ノウ」、聴かせる系バラードの「アイ・ウヮント・イット・オール」等ベクトルの違う曲も収録されているので、余計に全体の印象は硬質なものになっているんだと思います。

平均年齢22才とワン・ダイレクションよりも4才高いだけあって甘酸っぱさや無邪気さというものはないものの、もう少し深いところの恋愛を歌って様になっているし、じっくりと聞けたりする要素も大きい本作なのです。
幸先のよいシングル・ヒットをものにした上で、いよいよ4月には米国でもアルバムがリリースされるザ・ウォンテッド。どんなアクションになるのか非常に楽しみです。

チャートデータ
アルバム
UK 4位
シングル
「Gold Forever」:3位
「Glad You Came」:UK 1位/US 3位
「Lightning」:2位
「Warzone」:21位



せっかくなのでグリーのも貼っておきます。聴き比べ&見比べをどうぞ。ウォブラーズのグラント・ガスティン、かっちょいいです。



4月の米国盤アルバム…安いです。


posted by Suzu at 18:00| Comment(2) | TrackBack(0) | POPS系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月24日

ワン・ダイレクション『アップ・オール・ナイト』(11年)

One Direction:Up All Night(11年)

そんな訳で、ここに来て話題沸騰中の英国のアイドル・グループ、ワン・ダイレクションをご紹介。

ここ数年の英国勢の席捲具合というのは凄いものがあって、エイミー・ワインハウス、ダフィー、レオナ・ルイスあたりから決定打とでも言うべきアデルまで、次々と米国を制覇するとともに世界的な人気を獲得する人が多い訳ですが、そんな中でもさすがにこういう分野はねぇと思っていた英国(欧州)産アイドル・グループ(ボーイズ・バンド)。

遡ればテイクザットはさすがに「バック・フォー・グッド」というトップ10ヒットを米国でも放ちましたけど、その後のボーイゾーン、ウェストライフ、ブルー等はことごとく米国上陸には至らずで、ヨーロッパ中心の活動に終始した感じでした。そんな中最近はXファクター等のオーディション番組からボーイズ・バンドが続々と誕生するようになって、先日ご紹介したJLSや、ザ・ウォンテッド、そしてこのワン・ダイレクション等が英国では現在大人気になっていた訳です。

なんとなく今までの状況から、こういうグループのアメリカ攻略は難しいよなぁと思っていた矢先、まず飛び込んできたのはザ・ウォンテッドのブレイク。米国の人気番組『グリー』にてウォブラーズが彼らの曲「グラード・ユー・ケイム」をカバーしたところ、今まで20〜30位あたりをうろうろしていたのがいきなりのトップ10ヒット。今週のビルボード・チャートでも3位をキープとヒットを続けています。ラッキーも実力のうちですけど、これは本当にラッキーな出来事でした。
そしてワン・ダイレクションのほうはと言えば、もう皆様ご存じのように今週のビルボード・アルバム・チャートで英国のグループとしては史上初となる初登場1位を記録。少し前にシングル「ホワット・メイクス・ユー・ビューティフル」も英国新人では久しぶりの高位初登場(28位)とプチ話題にはなっていたのですが、さすがにアルバムが1位に飛び込んでくるとは予想していませんでした。
トゥデイズ・ショウのパフォーマンス等を見ると、圧倒的な黄色い声援に囲まれていてファンはほとんどがロウ・ティーンといった感じ。最近少し落ち着きを見せてきたディズニー・アイドルのジョナス・ブラザーズ等のファン層をがっちりと捕まえた感じなんでしょうね。成長の速いティーンの女の子を相手にするのは大変な事ですが、しばらくはワン・ダイレクションがピンナップ・アイドルとしての役割を担っていくのかなと思います。

略歴を簡単に触れておくと、メンバーは2010年度の英国のオーディション番組「Xファクター」に出演したナイル、ゼイン、リアム、ハリー、ルイという5人。「Xファクター」というのは「アメリカン・アイドル」と違って「男子」「女子」「グループ」「25歳以上」という括りでオーディションを競っていくのですが、当初5人それぞれが「男子」枠で出場していたものの、策士サイモン・コーウェルの提案でグループを組んで「グループ」枠に鞍替え。これでもって順調に勝ち進んでいって、優勝は出来なかったものの3位でファイナル。その後メジャー・デビューを果たし、前述のデビュー曲「ホワット・メイクス・ユー・ビューティフル」は見事英国のシングル・チャートで初登場1位を獲得。この曲はそして今年のブリッツ・アワードでアデルの「サムワン・ライク・ユー」等を抑えてブリティッシュ・ベスト・シングル賞まで受賞しちゃってます。何だかね、本当に英国ってこういうところ、懐が深いなぁと思いますね。

生で歌っている感じはもうコテコテのアイドル!って感じで、これからまだまだ伸びしろがあるんだろうなぁという歌唱力なんですが、CDで聞く分にはそのあたりは調節済みでOK(smile)。楽曲も久しぶりにストレートなアイドル・ポップスといった陰りのなさが魅力です。ザ・ウォンテッドのほうは意外にみんな渋い系の声で落ち着いた感があるのですが、ワン・ダイレクションのほうは渋い系もいればザ・アイドルといったまだまだ可愛い系の歌声も混ざっていて、この辺りの混合ぶりというのがよりアピール・ポイントになってる気がします。そのアンバランスな魅力がよく出てるのがラストに収録されている「ストール・マイ・ハート」。何かの曲に似てたりしますけど、平歌部分のちょっぴりセクシーさも湛えた落ち着き声からサビで一気にアイドル声で弾けるところが面白かったりします。ビートルズ的なマイナー・メロディーの「アイ・ワント」等も個人的なお気に入り。歌詞にケイティ・ペリーが登場する「アップ・オール・ナイト」とかライブでの盛り上がりが想像出来る「ワン・シング」、大ヒット・シングルの「ホワット・メイクス〜」、ケリー・クラークソンが作者に名を連ねる「テル・ミー・ア・ライ」等アップ系のハッピーさ、清潔感の漂うバラードの「ガッタ・ビー・ユー」や「モア・ザン・ディス」等の初々しさも好印象で、アルバムとしての完成度はかなり高く、ドライブのお供にしたら間違いないですね。

そんな訳で世界に飛び出した英国産ボーイズ・バンドのデビュー・アルバム。旬を味わうなら今しかありません。これからどんな風な成長を遂げていくのか、平均年齢19才という彼ら(…)をお父さん目線で見守ってまいりたいと思いますです。

チャートデータ
アルバム
UK/US:1位
シングル
「What Makes You Beautiful」:UK 1位/US 18位↑
「Gotta Be You」:UK 3位
「One Thing」:UK 9位




実力のほどはライブで(smile)。「ワン・シング」のアイドルっぷりを!



「イヤー・ブック・エディション」に「スーベニア・エディション」
posted by Suzu at 09:30| Comment(0) | TrackBack(0) | POPS系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月17日

平井堅『ジャパニーズ・シンガー』(11年)

Ken Hirai:Japanese Singer(11年)

自由だな、平井さん

昨年リリースされていた平井堅さんの7枚目のオリジナル・アルバムを超遅ればせながらゲット。

タイトルは『ジャパニーズ・シンガー』。帯のキャッチは「生まれてこのかた、純国産」。
彫の深すぎる顔で外国人に間違えられることもあるという平井さんな訳ですが、ここであえて自分は純粋な国内産=根っから日本人な歌い手ですと宣言しております。
もうこれぐらいのおとぼけは平井さんのキャラクターが浸透してきた今となっては何でもないわけですけど、それにしても今回はけっこう遊んでるというか全体的に余裕の感じられる作り。
曲タイトルからして「いとしき日々」とか「さよならマイ・ラブ」とか「Missサマータイム」とかどこかで聴いたことあるようなものが並んでますし、楽曲も何だかなーとつっこみたくなるようなもの多し。

例えば「R&B」っていう曲。「瞳をとじて」などの大泣きバラード路線であまり言われなくなってきてますけど、それでも和製R&Bの代表選手ってイメージは根強くある平井さん。そんな風に言われてしまうのが気恥ずかしいのか、いやいやフェイクだって踊りだってそんなにうまくないんですよぉ(それでもR&Bは大好きですけど…)なんて謙遜してみせる歌。
「Girls3x」は、のっけから「百戦錬磨のオレ様は抱いたオンナの数知れず」なんて超肉食系の歌詞を巻き舌で歌ってみせる。エロ系は得意な平井さんですけど、本道はもっと淫靡な爬虫類タイプ。それをこんなガオーッって襲いかかる感じなのはもうわかった上で自分のイメージを逆手にとって遊んでるとしか思えません。
平井さん王道エロ系の「CANDY」は途中で唐突に宇多田ヒカルがインサートされるし、ちらっと郷ひろみしちゃってみたり、これはユーミン?これはサザン?これはドリカム?等やりたい放題。

しかしそれでも平井堅ミュージックとして成立してるのは、元ネタへのリスペクトが相当に感じられるからですかね。完全に確信犯的にやってますし、あくまで自分の形をもった上で遊んでるのがわかるから嫌味にならない。みなさんもこいうのお好きでしょ?なんてにっこりされちゃって、はいはい確かに好きです…って感じでしょうか(smile)。このあたり、今までの活動に裏打ちされた人徳(?)なのかもしれませんね。

形を持っていると言えば、今回もあります「瞳をとじて」系のバラード。「いとしき日々よ」「僕は君に恋をする」「アイシテル」「夢のむこうで」。よく言えば型を持ってるですけど、悪く言えばどれも同じの金太郎飴状態。どの曲のサビをどの曲とシャフルしても通じちゃう感じです。そんな中でも今回頭ひとつ抜けてるのは「僕は君に恋をする」かなぁ。「さよなら、また会おう、ごめんね、好きだよ」…丁度時期が311の待っただ中だった事もあって、もうシンクロしまくりで泣かされちゃいました。質の高い金太郎飴ですからね、何だかんだ言って、どれも美味しゅうございますです。

あっけらかんと浮気な恋を歌うポップな「お願いジュリー☆」、ちょっと懐かしい香りのする歌謡R&B系の「BLIND」、優しすぎて悲しい歌詞がメロウなメロディと相乗する「さよならマイ・ラブ」、ピアノ伴奏一本で語られる希求と救済のバラード「あなたと」等、キメ曲以外も好曲揃い。個人的には「Love Love Love」系列の高らかな人生応援歌である「Sing Forever」みたいな曲はストレートすぎてちょっと苦手なんですけど、こういうのを正面切って歌える平井さんは、素敵だなぁと思いますです。

プロデューサーに旧知の松尾潔さんが復帰してるのも今回のポイント。雑多なマテリアルがきちんと一本の作品にまとまっているのは彼の力に負うところが大きいと思います。
振り幅の大きさが平井さんならではの大エンターテイメント作。
あれこれいちゃもんつけられるのも楽しい良盤です。

チャートデータ
アルバム 3位
シングル
「CANDY」:7位
「僕は君に恋をする」:3位
「Sing Forever」:7位
「アイシテル」:9位
「いとしき日々よ」:7位





需要に応じてって事なんでしょうけど、やはりこういうのはファン泣かせ。
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2012年03月11日

ピンク・マルティーニ&由紀さおり『1969』(11年)

Pink Martini & Saori Yuki:1969(11年)

あの震災から一年が経ちましたね。

43年生きて来ましたけど、世界が一変するという経験をしたのはあの時が初めてかもしれません。
2万人に近い人の命を奪った未曾有の大災害。地震に始まり、津波、原発事故。スーパーからは物が無くなり、電気がいつ来なくなるかと心配するなんて、正直考えた事もありませんでした。
我々が日々築いているものなんて、ある時一瞬で崩れ去ってしまう。それでも、だからこそ日々悔いのないように一生懸命生きる事の大切さも改めて教えられた気がします。
あの日亡くなられた全ての方に、心からの祈りを捧げます。
どうか、どうか安らかに。生かされた僕たちは精いっぱい頑張って生きていきますので。


震災からの数日間、自宅の駅の3駅手前で電車が折り返し運転することになってしまったため、毎朝1時間歩いて駅まで通っていたのですけど、その時よく聴いていたのが由紀さおりさんが09年にリリースした『いきる』というアルバムでした。以前から大好きだった由紀さんですが、丁度この時期にこの象徴的なタイトルのアルバムに出会っていたというのも、何となく偶然以上のものを勝手に感じてしまっております。
そしてその8月、由紀さんが震災のチャリティー・コンサートを東京国際フォーラムで開く事が決定し、何とも幸運な事にチケットを入手した友人からお誘いいただいて、そのコンサートを見る事が出来ました。
チャリティー・コンサートということで曲数なども少ないのかな?等という危惧をよそに、ボリューム満点のセット・リスト。自身の歌謡ヒット・メドレーからスタンダード、ジャズ、童謡まで本当に圧巻のステージを楽しませていただきました。その中で、今度ピンク・マルティーニという楽団と共演して、世界で発売されることが決まりましたといって披露されたのが黛じゅんさんのカバーである「夕月」。また凄い歌を世界に向けて発売するんだなぁとその時は思いましたけど…もう皆様ご存じのように、これがとんでもない事になってしまったんですね。

同曲を含んだアルバム『1969』が10月に発売されるや世界中のItuneチャートで大ヒット。米国のItuneチャートで1位!と言っても正直最初はピンと来なかったのですけど、あのビルボードのジャズ・チャートのアルバム部門で5位を獲得した時は、こりゃぁ本物だ〜と小躍りしちゃいましたよ。まさかあの由紀さんがよもや世界的なヒットを飛ばすことになるなんて、一体どれだけの人が予想出来たでしょうか。

日本の歌謡曲が世界に認められた!といった紹介もよく見受けられますけど、正直なところ日本ではそれほど知名度が高くなかったものの、あちらではラウンジ的なポップ・オーケストラとして人気の高い楽団ピンク・マルティーニと組んだというところがまずは成功の要因であったと思います。そして選んだマテリアルが1969年当時に流行った歌謡曲が主体。もともと歌謡曲って洋的なものと和的なものが巧みに融合したハイセンスな音楽だった訳で、しかもその歌謡曲が最も才気走っていた黄金時代の名曲たちが選ばれているのですから悪いはずがないですよ。そしてそれを歌っているのが日本を代表する名シンガー由紀さおりさんな訳ですから、もう成功は約束されていたようなものです!

…なんて、嘘。
結果的には確かにそう言う事なんですけど、実際にこうして我らが由紀さんと我らが歌謡曲(しかも大半が日本語で歌われたもの)が、堂々と世界の市場で通用するなんて、先に「スキヤキ」なんて成功例はあるものの、やはり私には予想出来ませんでした。だからね、やっぱりピンク・マルティーニの人気って凄いんだなぁなんて思ったりするわけです(smile)。
ただし、そうだとしても、その楽団の人気を落とさないだけのクオリティをきちんと由紀さん側(日本側)が提示出来ているというのは、やっぱり凄いことなんですよね。ニューヨークでの公演の模様がテレビで放映されましたけど、あそこで見る事が出来た「パフ」のパフォーマンス。曲が始まった時の拍手は、あれはきっと懐かしい曲を演奏してくれる事への拍手だったと思いますが、曲の後半や、曲の終わりに自然と湧き上がったあの拍手は、あきらかに由紀さんの歌声に対して贈られたものだと思います。曲の情感が、言葉を超えてしっかりと伝わった証しに違いありません。

楽団のバンドマスターであるトーマス・ローダーデールさんが地元のレコード屋で偶然見つけた由紀さんのデビュー・アルバムをジャケ買い(smile)し、そこに収められていた「タ・ヤ・タン」をバンドで演奏した事がきっかけで始まった今回のコラボレーション。見過ごしてしまえばそれだけの事を、ここまでしっかりと結果に結実させた由紀さんとそのスタッフは、本当に凄いですよね。アメリカの楽団に歌謡曲を日本語で歌った作品を録音させてしまうなんて、伊達や酔狂で出来るはずありませんもの。そしてこの企画に乗ったトーマスさんの度量というのも、やっぱり凄い。由紀さんの才能に惚れこむと同時に、あの天使のようでいて妖艶な歌声が、世界の市場でも充分通用することを見抜いた訳ですから。…あぁ、ってことは、やっぱりトーマスさまさまな訳ですね。本当に有難う、トーマス!!

そんな訳で、素晴らしき才能が結集して作られた本当に素晴らしいアルバム。

一気に「和」の世界に誘うオープニングの「夕月」に始まり、本当に洒落ている「真夜中のボサ・ノバ」、どこまでも美しい「さらば夏の日」、情感の込め方が素晴らしくて泣ける「パフ」、まさに歌謡曲といった風情の湿度を湛えた「いいじゃないの幸せならば」や「私もあなたと泣いていい?」、オリジナルを尊重して幻想的に奏でられる「夜明けのスキャット」、ラテンに衣替えした「ブルー・ライト・ヨコハマ」に、あえて日本語で歌われるラテンの名曲「マシュ・ケ・ナダ」、女優魂炸裂のファニーで愛らしい「イズ・ザット・オール・ゼア・イズ?」、静かなたたずまいが味わい深く語りも効果的な「わすれたいのに…」、そして唯一の新曲である穏やかに降り注ぐ日差しのような「季節の足音」。
(※私が購入したのは輸入盤なので「夕月」で始まりますが、日本盤は「ブルー・ライト・ヨコハマ」がオープニングを飾っています。マーケティング的に、これは正解だったと思いますね。)

もう、本当に言う事ありません。素晴らしすぎ。
発売以来4カ月が経過しますけど、いまだに中2日ぐらいで通勤時に聞いちゃったりしてますからね。いくら聞いても飽きがこないというか、また聴きたくなっちゃう。歌声、演奏、楽曲、どれをとっても最高なんですもん。いい意味でのイージーリスニングになるところが、この作品の強みだと思います。重すぎず、軽すぎず。何もかも本当に丁度良い頃合い(バランス)。なかなかないんですよね、こういう作品って。

ちなみに、今回選ばれた激動の年1969年は、私が生まれた年でもあるんです。由紀さんが歌謡曲歌手としてデビューされたのが69年なのでそんな事もあってのチョイスだと思いますが、やっぱり何か、縁を感じちゃわない訳にはいきません(smile)。自分が生まれた時はこんな曲が流行ってたのかと別の感慨もあったり、何だか本当、個人的に贈り物をもらったような、気分です。

有難う由紀さん。
一生大切に、聴き続けますので。
そして全ての方に、この素晴らしき歌声を捧げさせていただきます。
こんな凄いこと、我らが由紀さんがやってくれたんですよ!

アルバム
オリコン:4位
ビルボード・ジャズ・チャート:5位



本当に素晴らしい表現力。そして「真夜中のボザ・ノバ」、なんて洒落た曲なんだろう!



トーマスさんが見つけたのはこのファースト・アルバム。
『いきる』も、歌謡曲をワールドワイドな視点から捉えた素晴らしいアルバムです。

どちらも以前記事を書いておりますので、よろしければご覧ください。
『夜明けのスキャット』→http://suzuenta-etc.seesaa.net/article/117328521.html
『いきる』→http://suzuenta-etc.seesaa.net/article/191369725.html
posted by Suzu at 09:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 歌謡曲/J-POP系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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