2011年11月27日

研ナオコ『第三の女』(74年)

Naoko Ken:Daisan No Onna(74年)

研ナオコさんが東宝レコードから74年にリリースしたセカンド・アルバムです。

実はこのアルバムの存在を知ったのは、本当にここ数年の出来事。
積極的に調べなかったというのもありますけど、リアルタイムでナオコさんに夢中になっていた80年代は今のようにネットを使えば何でも情報が手に入るような時代じゃありませんでしたので、私的には既に廃盤となっていた東宝時代のアルバムの事など知りようもなく。たまたま手に入れた東宝時代のベスト盤『研ナオコ・その道』が唯一のLPだと思っていたぐらいでした。ネット時代になって、オークションの画像などでファースト・アルバム『女ごころ』はたまに見かけたのでその存在は知っていましたけど、このセカンドにいたっては(タイミングの問題でしょうけど)一切見かけるという機会がなく、最近急に記述が充実してきたWikipediaのアルバム情報にて、初めて本作の存在を知ったという具合です。

ナオコさん、当時は歌手としてよりも女優やタレントさんとして大活躍していた時代。
一躍ナオコさんにスポットライトを当てた愛川欽也さん共演の「僕は美人しか撮らない、だからシャッター押せない」で有名なミノルタのCMに始まり、TBSの人気ドラマ「時間ですよ」や「ありがとう」への出演、映画では『にっぽん美女物語』で何とどうどうの主演をはっていたりと、本当に売れっ子さんだったんですよね。それでもナオコさんの目標は歌手として成功すること、その執念が実るのはもう少し先のことですが、歌い手さんとしても充分に力を蓄えていた事は、本セカンド・アルバムを聴けばよくわかりますです。

オリジナル曲はファースト・アルバムにも収録されていた「うわさの男」「女心のタンゴ」に、アルバム初収録となるブルージーな8thシングル「第三の女」の3曲。他はりりぃさんの「私は泣いています」、朝丘雪路さんの「雨はやんだら」、坂本スミ子さんの「夜が明けて」、いしだあゆみさんの「砂漠のような東京で」、菊池章子さんの「星の流れに」、エド邦枝さんの「カスバの女」、弘田三枝子さんの「人形の家」、奥村チヨさんの「終着駅」、ペドロ&カプリシャスの「教会へ行く」という新旧取り混ぜた女性歌手たちのヒット歌謡曲のカバーで構成されています。

当時21才のナオコさんが歌うには随分大人びた曲が並んでいますけど、張りのある歌声でどうどうと歌いきっていてとても魅力的。「星の流れに」や「カスバの女」なんて放浪歌謡的なものを歌っても、シラケと呼ばれたいしだあゆみさんの「砂漠のような〜」を歌っても、どこかに希望の活力が漲っちゃう感じなのはご愛嬌ですが、それはそれで愛おしく思えたりするわけです
東宝時代の曲とキャニオン時代になってからの曲を比較すると、あきらかに声の厚みというか声の出し方が違ってますよね。より繊細な表現をキャニオン時代になるとするようになって、悲しい恋の歌が似合う大人の女性へと変貌を遂げて行ったナオコさん。それはそれでもちろん素敵な事ですけど、ここだけで味わえる若さいっぱいの歌唱というのも、ファンとしては捨てがたいと思う訳です。「私は泣いています」は、こちらも93年リリースのカバー・アルバム『Ago』で渋く再レコーディングされていますので、聴き比べ等してもらえたら、そんな思いも汲んでいただけると思うんですけど…難しいですよね(溜息)。

若いって、素晴らしいー。

※と言う事で、こちらのアルバムもちあきなおみの私設HPの管理人でいらっしゃいます、ウシオ様に音源協力をいただきました。本当に空よりも高く感謝です。有難うございました。

チャートデータ
アルバム
わかりませんでした。
シングル
「第三の女」:チャート入りなし



naoko daisan.jpgnaoko uwasa.jpgnaoko tango.jpg

『第三の女』のアルバム・ジャケットが残念ながら手に入らなかったので、とりあえずシングルを。

IMG_4926.JPG

…だったのですが、ウシオ様よりジャケット写真をいただきました。うーん、生涯初めて見ました。本当に河よりも広く感謝です。
posted by Suzu at 19:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 研ナオコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月26日

研ナオコ『女ごころ』(73年)

Naoko Ken:Onnagokoro(73年)

研ナオコさんの記念すべきファースト・アルバムでございます。

静岡県の天城湯ヶ島で生まれ育ったナオコさん。小さな頃から歌が大好きな女の子だったそうで、憧れの歌手は美空ひばりさん。小学校の高学年から地域ののど自慢大会等に出場し始め、高校生の時に見た日劇のウェスタン・カーニバルに衝撃を受けて歌手になることを決意、(親御さんの同意を得たうえで)高校を中退して70年に上京いたします。運が良いことにナオコさんの叔父さんが東京宝塚劇場で照明の仕事をしていて、叔父さんの口利きで当時新たにレコード会社を作ろうとしていた東宝の歌手オーデションを受ける事に成功、見事にオーディションをクリアして、東宝レコードの第一号歌手として契約いたしました。ただしまだレコード会社発足前だったので、正式に立ち上げになるまでは映画館でアルバイトをすることに。会社が立ち上がった後も、実際のデビューは素人さんということで一番後に回されたんだそうです。

そしてようやく71年4月1日(…エイプリルフールじゃん…)に「大都会のやさぐれ女」で歌手デビュー。初めてのレコーディングで、しかもナオコさんが当時出せたキーのぎりぎりの音を要求されて大変苦労したというこの曲…演歌です。まぁナオコさんのルーツは美空ひばりさんにあるわけですし、オーデションでは演歌なども歌っていたそうですから、流れ的にこういう曲が出来上がってきたのかなと思います。この曲は作詞:坂口宗一郎/作曲:中山大全というコンビで書かれていますが、セカンドの「屋根の上の子守歌」からは作詞に阿久悠先生が登場、サードの「二人で見る夢」は阿久先生に加えて作曲は筒美京平先生とう超ゴージャス・コンビ。初めてオリコン・チャート入りするヒット曲(52位)となった4thの「京都の女の子」から8thの「第三の女」までは作詞:阿久悠/作曲:森田公一と、こちらも豪華な布陣になっています(東宝レコード、バックがバックだけに予算はたくさんあったんだろうなぁ…)。

ということで、73年11月にリリースされた本アルバムは、「大都会のやさぐれ女」「屋根の上の子守歌」「二人で見る夢」「京都の女の子」「こんにちは男の子」「女心のタンゴ」「うわさの男」という1stから7thまでのシングルA面曲と「うわさの男」のB面だった「嘆きのブルーレディ」に、八代亜紀さんの「なみだ恋」、麻丘めぐみさんの「私の彼は左きき」、いしだあゆみさんの「ブルーライト・ヨコハマ」、安西マリアさんの「涙の太陽」という4曲のカバー作品を加えるという半ベスト盤的な構成になっています。
都会で生きる女の悲哀を歌わせてみたり、夢見る夢子さん的な曲を歌わせてみたり、演歌にポップスにブルースにタンゴ、やはり「研ナオコ」という強烈な個性をどう料理したものか、試行錯誤している様子がうかがえますよね。カバーされている楽曲も、正統派歌謡曲にアイドル・ポップス、アクション歌謡に演歌と見事なまでにバラバラ。そしてそれがまたどれもけっこうなクオリティだったりするものですから、舵取りの方向を決めかねたのもわからないではない気がいたします。ご本人も仰ってますが、とにかく若さにまかせて思いっきりよく歌っていたそうで、後の語りかけるような唱法などかけらもありゃしない(smile)。でもそこが、この時代ならではの魅力になってるのも事実。もうナオコさん声出まくりなんですもん。
正直オリジナル曲はイマイチ垢抜けないものが多いんですが、やはりヒットしただけあって、覚えやすいリフが印象的な「京都の女の子」や楽しい「うわさの男」等はいい線いってると思います(ただ「うわさの男」は、アン・ルイスさんのカバーのほうがかっこよかったりするんですけどね)。
後、この時代の曲について、レア・グルーブの視点から語っていらっしゃるブログを見つけたのでご紹介させていただきます。こちら→http://funknholic.cocolog-nifty.com/blog/2008/01/post_3e98.html

歌手研ナオコさんの初めの一歩が刻まれた作品として貴重な1枚なのですけど、残念ながら東宝レコード時代の音源は数曲を除いてほとんどが未CD化となっているのが現状です。多くのファンは、この時代の音源の復刻を悲願としてきているので、版権を持っている会社さんございましたら、是非とも我々の願いを叶えていただければと、平にお願いする次第でございます。

※本アルバムは、ちあきなおみの私設HPの管理人でいらっしゃいます、ウシオ様にご協力いただいて初めて聴くことが出来ました。LPでもなかなか手に入らない作品なので、こういう事でもなければ私的には幻の作品になっていたと思います。ウシオ様、海よりも深く感謝です。有難うございました。
※文中のエピソードの多くは再びナオコさんのエッセイ『ナオコの笑TIME』から引用させていただきました。


チャートデータ
アルバム
わかりませんでした。
シングル
「大都会のやさぐれ女」:チャート入りなし
「屋根の上の子守歌」:チャート入りなし
「二人で見る夢」:チャート入りなし
「京都の女の子」:52位
「こんにちは男の子」:チャート入りなし
「女心のタンゴ」:59位
「うわさの男」:60位



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「京都の女の子」ジャケ2タイプ。


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2011年11月23日

研ナオコ『愚図』(75年)

Naoko Ken:Guzu(75年)

研ナオコさんの75年にリリースされた3枚目のオリジナル・アルバムです。

デビューから在籍していた東宝レコードを離れ、キャニオン・レコードに移籍しての第一弾。

71年にデビューしてから、タレントとしては確実に知名度を上げていたものの、本業の歌手としてはブレイクを果たせていなかったナオコさん。そんなタイミングで出会ったのが、当時芸能プロダクション会社田辺エージェンシーを立ち上げて間もなかった元スパイダースの田辺昭知さんでした。田辺さんはその頃東宝レコードの制作顧問をされていて、東宝レコードの所属タレントから誰か気に入った人がいたらどうぞ、と言われて選んだのがナオコさんだったそうです。そして田辺社長の考えで所属レーベルをキャニオン・レコードに移籍、そこで歌うことになったのが、当時ダウンタウンブギウギバンドでブレイク中だった宇崎竜童さんと、奥様の阿木耀子さんが書かれた「愚図」でした。

田辺社長からは歌い方から衣装まで全部ナオコさん自身の考えでやってみるように言われたそうで、ナオコさんもこの曲が売れなかったら歌手を辞める覚悟で東奔西走。もちろん会社も精一杯のバックアップ体制で援護射撃(「愚図」のレコードの題字を書いたのは、あの森繁久彌さん、ね、力入ってますでしょ)。その甲斐もあってこの曲はナオコさん初のオリコントップ10入りする大ヒット曲となり、ナオコさんは念願だった歌手としてのステイタスを確立していくことになりました。
人との出会いっていうのはやはり大きいですよね。田辺社長と出会わなかったら今のナオコさんはなかったかもしれません。またこのタイミングで「愚図」という名曲に出会ったというのも、やはり運命的と言わざるを得ないように思います。「愚図」が東宝時代の楽曲と決定的に違うのは、歌の持つリアリティ。自分に自信のない女の子が、気持ちを押し隠し道化者になりながら、自分の友達を自分の大好きな男性に紹介してあげるという悲しすぎるシチュエーション。テレビで道化者を演じていたナオコさんが歌うことで、その歌の主人公がそのままナオコさんに重なっていき、多くの人の共感を呼んだのは想像に難くありません。東宝時代は、もちろんナオコさんがまだ若かったという事もありますけど、どういう歌手としてナオコさんを育てていくかという青写真がきちっと出来ていなかったように思うんです。それがここにきて初めて何を歌っていくべきか、どういう方向性で今後進んでいくべきかという、その焦点をきちっと合わせる事が出来た、これが一番大きい成功の要因じゃないかと思います。そこに導くきっかけを作ったのは、やはり田辺社長との出会いな訳ですから、本当にこの出会い、神様に感謝しなければいけませんです。

と言う事で、「愚図」の大ヒットを受けて制作された本アルバムは、急ごしらえだったのか元々こういうコンセプトで作ろうとしていたのかわかりませんが、「愚図」と、そのB面だった「さよならは嫌いな言葉」(これも名曲)を除き、全て当時人気だったフォーク・ソングや歌謡ヒットのカバー曲で構成されています。

選曲されているのは(敬称略)小坂恭子「想い出まくら」、吉田拓郎「旅の宿」、岡林信康「山谷ブルース」、中村雅俊「いつか街で会ったなら」、泉谷しげる「春夏秋冬」、布施明「シクラメンのかほり」、野口五郎「夕立ちのあとで」、沢田研二「時の過ぎゆくままに」、八代亜紀「ともしび」、堺正章「明日の前に」というラインナップ。
ナオコさんって本当に歌が上手いので、何を歌っても楽々水準以上に聞かせてくれるんですけど、フォークソング的なマテリアル、特に男歌的なものががっつりと馴染むかというとそれはまた別の話で。合っているという点では、やはり小坂さんや八代さんの曲なんかがしっくりきますね。「旅の宿」は93年にリリースされたカバー・アルバム『Ago』でも取り上げられていて、そちらはぐっと枯れた味わい。瑞々しい本盤の歌唱と聴き比べると面白かったりいたします。

CD化されることはないと思うので(諦観…)言ってもしょうがないんですけど、当時の時代の空気感を楽しむという点では、十分に満足出来るアルバムだと思いますです。
ちなみに文中で太文字にした曲は、今年の12月21日に発売予定のナオコさんの5枚組CDBOXセット『研ナオコ魅力のすべて』に収録がアナウンスされておりますので、(正直あまり満足のいくセレクトのBOXではないんですが)そちらをお求めいただければCD音源で聞くことが可能です。「旅の宿」だけ、どちらのバージョンかわかりませんけど…。

※文中のエピソードの多くは84年に発刊されたナオコさんのエッセイ『ナオコの笑TIME』から引用させていただきました。
※76年にカセットテープのみで発売となったベスト盤『研ナオコ』に、このアルバムのアウトテイクと思われる森進一さんの「襟裳岬」が収録されています。

チャートデータ
アルバム
わかりませんでした。
シングル
「愚図」:9位



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posted by Suzu at 14:30| Comment(9) | TrackBack(0) | 研ナオコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月22日

研ナオコ『あきれた男たち』(80年)

Naoko Ken:Akireta Otoko Tachi(80年)

『あきれた男たち』、ナオコさん8枚目のオリジナル・アルバムで、80年代最初の作品です。

私が一番最初に買ったナオコさんのオリジナル・アルバムはこの次にリリースされた『恋愛論』なんですけど、ミュージック・テープの『全曲集』に始まり、プラス『恋愛論』でどっぷりとナオコさんの魅力にはまってしまった小学生の私、次に手を伸ばしたのが前作にあたるこの『あきれた男たち』でございました。
確か『恋愛論』の帯のディスコグラフィーにこのアルバムが載っていて、次はこれだなとレコード屋さんに買いに行ったわいいんですが、行きつけのレコード屋さんには残念ながらLPの在庫がなく。その代わりミュージックテープの方は置いてあったので、(昔から我慢の効かない私は)そちらをお会計して帰ったのでした。

以来30年、ずっと愛聴してきた大好きな作品です。

これ以前のアルバムは、みゆき作品集とか阿久悠作品集とか、A面/B面で分けて提供作家を同じ人にする等、割とカラーが統一された作品ばかりだったのですが、ナオコさんの新たな魅力を発掘すべく(?)、数人の作家に楽曲提供を依頼した初めての幕の内式アルバムになっているのが本作のトピックと言えるのかも。
お馴染みのところでは中島みゆきさん、他は初提供の方ばかりで、かぐや姫の伊勢正三さん、フォークシンガーの荒木一郎さん、アンニュイ系の美人シンガーとして人気だった石黒ケイさん、「池上線」で有名な西島三恵子さん、そして当時デビュー3年目を迎えていたサザンオールスターズの桑田佳祐さんという面々になっています。

お馴染み度も高いので、今回は1曲づつ語らせていただきますね。

A-1. プロローグ〜あばよ〜 (作曲:中島みゆき)
インストルメンタルによる短いプロローグ。
A-2. 空中ブランコ (作詞:岡田冨美子/作曲:伊勢正三)
白昼夢を連想させるようなシュールな前サビと日常の光景を積み上げたAメロ・Bメロのコントラストが面白い佳曲。 歌詞にサーカスが出て来ますけど、その世界そのままに可笑しさと悲しさが同居する感じが不思議な魅力になって心に残ります。
A-3. 居留守 (作詞・作曲:荒木一郎)
心離れて去って行こうとしている恋人に精いっぱいの愛想尽かしを、しかも独り語りでつぶやく女性が悲しすぎ。しみじみと、聴くほどに味わいが増してくるような好曲です。
A-4. あいつのこと (作詞:岡田冨美子/作曲:桑田佳祐)
ご存じサザン&高田みづえさんのヒット曲「私はピアノ」との歌詞違い曲です。最初聴いた時はへぇ歌詞違いなんだーとしか思わなかったんですけど、 みづえさんのシングルとナオコさんのアルバムのリリース日が4日しか違わなかったり、そもそも何で歌詞違い?とかそのうちむくむくとこの曲の誕生経緯について疑問が湧き上がってきた私。真相が知りたくて色々調べたんですけどわからなかったので、これは知ってそうな人を探すのが早いと、一度ナオコさんのmixiコミュにトピックを立てたのですが回答は得られず、 それならコアなファンが多そうなサザンのほうで何かわかるかもと聞いてみたら、ご親切な方が以下のブログを教えてくれました。
ナオコさんの音楽プロデューサーを務めていた奥野秀樹さんの『明日は月の上で』です。→http://lovereco.blog49.fc2.com/ 
サザン側からもアプローチがあった件とか、田辺社長が桑田さんの歌詞を気に入らなかった件等、なかなか興味深いでしょう?どうして(ナオコさんと仲の良かった)みづえさんが原曲のままほぼ同じタイミングでカバーする事になったのかとか、まだまだわからない点もあるので、もしご存じの方がいらっしゃったら、引き続き情報をお寄せいただきたくお願い申し上げます。
岡田さんの歌詞も普通にいいですよね。鼻歌を歌う場合、私はたいていこちらの歌詞バージョンで歌ってしまいます。
A-5. Bravo-Bravo (作詞:ちあき哲也/作曲:西島三重子)
これ、大好き。奥様愛の劇場とか、昼のメロドラマのエンディング・テーマにしたらぴったりなんじゃないかと思うドラマティックな1曲です。歌詞も、泣けるんだなぁ。
A-6. 海鳴り (作詞・作曲:中島みゆき)
みゆきさんの4thアルバム『愛していると云ってくれ』に収録されていた曲のカバー。みゆきさんのバージョンを聴いていると真夜中の飲み込まれそうに暗い海が目の前に浮かんでくるんですけど、ナオコさんのは寒風の吹きつける薄曇りの寂れた海岸を連想。聴いてると本当、淋しい気分になってきます。
B-1. 砂の舟 (作詞:岡田冨美子/作曲:伊勢正三)
全てが比喩というか、心象風景のような歌詞がどこか甘美にも響く名曲。ファン人気の高い1曲です。
B-2. ひとりぽっちで踊らせて (作詞・作曲:中島みゆき)
こんなに優美なうらみ歌って他にあるでしょうか?メロディも歌詞もアレンジも歌唱もとにかく素晴らしくて異様に高い完成度を誇る傑作。何故に売れなかったかなぁ…。
B-3. 憎いあんちくしょうのブルース (作詞:ヨシモトレイ/作曲:石黒ケイ)
石黒ケイさんのバージョンもいいけど、ナオコさんのこのバージョンも負けず劣らずに素晴らしいんです。アンニュイないい女になりきるナオコさんに惚れちゃいます。
B-4. くちぐせ (作詞・作曲:荒木一郎)
歌謡曲としかいいようのないメロディが心地よすぎるほろ酔い系歌謡の名曲。歌詞に「都はるみ」という個人名が登場するのも当時少し話題になりましたよね。最初に入るSP音源的なジャズのメロディとバーのSEがいい効果を出してます。
B-5. のおあんさあ (作詞:門谷憲二/作曲:西島三重子)
エンドロール的な1曲。のぉ、あんさぁ(ねぇ、あなた)と問いかけるも No Answer だという、悲しいダブル・ミーニングですね。

というわけで、一度目よりも二度目が、二度目よりは三度目のほうが、そんなこんなで30年近く聴き続けても飽きの来ない魅力のある好盤。
表だって傑作とか名盤!とかって雰囲気じゃないんですけど、ナオコさんの歌い手としての旨味がとってもジューシーに詰まった作品であると思います。

チャートデータ
アルバム
わかりませんでした。
シングル
「ひとりぽっちで踊らせて」:39位
「くちぐせ」:31位
「砂の舟」:チャート入りなし



naoko akireta.jpgnaoko hitori.jpgnaoko sunano.jpg
posted by Suzu at 23:30| Comment(9) | TrackBack(0) | 研ナオコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月20日

研ナオコ『泣き笑い』(76年)

Naoko Ken:Nakiwarai(76年)

『泣き笑い』、76年にリリースされたナオコさん4枚目のオリジナル・アルバムです。

4枚目と言っても、今までのアルバムは当時流行していた歌謡曲やフォーク・ソングのカバーを多く含んでいましたので、ナオコさんのためだけのオリジナル楽曲だけで構成されたという意味では、この作品が初めての「オリジナル」アルバムと言えるんじゃないかと思います。

前年にデビューから在籍した東宝レコードよりキャニオン・レコードに移籍、歌手人生をかけた「愚図」が大ヒットしてようやく歌い手としてひと花咲かせたナオコさん。
続いてリリースした、「愚図」と同じ宇崎&阿木コンビによる「一年草」は小ヒットに終わった(これ、良い曲ですけど、さすがに地味すぎたかな〜)ものの、運命の出会いと言うべき中島みゆきさん提供の「LA-LA-LA」がトップ10近くまで上昇するヒットを記録。上昇気流に乗る中でリリースされたアルバムでございます。

A面は中島みゆきさん、B面は宇崎竜童&阿木耀子夫妻による作品集。

ちょっと短いキャリアの中で書かせていただくと、CMやドラマ・映画出演等タレントとしての成功がホップ、「愚図」での歌手としての成功がステップとすれば、中島みゆき作品との出会いは歌手としてのステイタスを確立されたという意味でジャンプという事になるのかなと思います。ご本人談によれば、みゆきさんのデビュー曲「アザミ嬢のララバイ」を聞いてこの人に曲を書いてもらいたいとナオコさんが思った事から実現したというコラボレーション。
みゆきさんはテレビで大口を開けて笑っているナオコさんを見て、若い女の子がのどの奥まで見せる勢いで笑ってる、その裏側に潜む想いを創作に生かしたらしいですが、みゆきさんが初期に好んで(?)書いていた恋愛下手な女性のうらみ節みたいなものと、ナオコさんの持つ「企画外美人」としてのキャラクター性が相乗して、これ以上ないほどのリアリティが曲に生まれたことが、普遍的な魅力となって世の人々に認知されたのかなと思います。

いかにもみゆき節、という感じでご本人のレコーディング・バージョンもそれぞれ存在する「強がりはよせよ」「雨が空を捨てる日は」「あばよ」の他に、カントリーの「明日靴が乾いたら」、ラテンの「LA-LA-LA」、とぼけた味わいの「忘れ鳥」というラインナップ。追ってリリースされたみゆきさんのセカンド・アルバム『みんな去ってしまった』のプレ盤と言ってもいいような内容になっていますね。「あばよ」はここだけで聴けるアルバム・バージョン。シングル・バージョンより若干アレンジや演奏がユルめの仕上がりになっています。
記念すべき初コラボですが、さすがに最初っからすべてがしっくりいっているという訳ではなかったんだなぁと。
この数年後にリリースされたみゆき作品集『VS MIYUKI』になると、例えばみゆきさんの代表曲である「時代」ですらもう完全にナオコさん色に染め上げられていますけど、ここではまだ歌の背後にチラチラみゆきさんの顔が見え隠れする部分がある感じ。完全なる化学反応を起こすには、お互いにまだ少しだけ距離があったのかなぁという気がするんです。そういうところが、また初々しい魅力だったりもするんですけどね(smile)。

B面は宇崎竜童&阿木耀子夫妻による作品集。
夫妻にとって「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」の大ヒットの後、提供作家コンビとして初めてヒットしたのがナオコさんに書いた「愚図」でした。その実績を買われて(だと思う)のアルバム片面全部の楽曲提供。お二人にとっても初めてのチャレンジングだったろうと思われます。
恋人たちの心の機微の描き方に阿木さんらしい繊細さを感じる「あなたと私のティータイム」や「あの子」、ストレートなロックンロールをナオコさんもハードに歌い飛ばす「パントマイム」、ブラスも賑やかでナオコさんのキャラクターを想定して書かれたんじゃないかと思われる「笑い上戸」、小気味の良いリズムが個人的には大好物な「メルヘン通り」、優しいメロディをソフトな語り口で聞かせる「微笑の挽歌」等、なかなかの佳曲ぞろい。翌年山口百恵さんとの出会いで一気に第一線に躍り出る夫妻の原点という意味でも、貴重な作品集なんじゃないかなと思います。

そんな訳で、これから歌謡史、音楽史に残る大活躍を始める偉人たちが、そのタクトを揮い始めた瞬間が記録されたアルバムでございます。それぞれに手さぐりしている感じが、初物ならでは。これも埋もれさせておくには、もったいない作品だと思うんですけどね…。

チャートデータ
アルバム
わかりませんでした。
シングル
「LA-LA-LA」:12位
「あばよ」:1位



naoko nakiwarai.jpgnaoko lalala.jpgnaoko abayo.jpg

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2011年11月13日

研ナオコ『ナオコ・ミストーン』(83年)

Naoko Ken:Naoko Mistone(83年)

いいじゃないのスウィングすれば……

何だか素敵なので帯のキャッチコピーを引用してみました。
研ナオコさん10枚目のオリジナル・アルバムでございます。

海の向こうではただ今由紀さおりさんがピンク・マルティーニというオーケストラと組んで大変なことになってますが、かれこれ30年前、オーケストラと組んでナオコさんもこんな素敵なアルバムを作っていたんです。

…しかしこれ、リアルタイムでは買わなかったんですよねぇ。良さそうだなぁとは思ってましたけど、ノン・シングルだったし、何しろ曲目が童謡だったりジャズ/ポピュラー系だったりして、中学生の私には何だかちょっと手が伸びにくい雰囲気があったように思います。スルーすること30年、ようやくこの機会でのご開帳となりました。

70年代からコンポーザー/アレンジャー/サックス奏者/バンド・リーダーとして現在に亘りご活躍されている三木敏悟(みきびんご)さん率いるインナー・ギャラクシー・オーケストラとの共演アルバムで、取り上げているのはジャズ/ポピュラー系楽曲からラテン、戦前の流行歌、童謡等など。童謡になるともう発表年がわからないですけど、1910年、20年あたりから、一番新しいのでコール・ポーターの50年代ぐらいに作られた楽曲がチョイスされています。

開幕を告げる拍子木の音。オーケストラがゆったりと演奏を開始して、テンポ・アップしてスライドしていくのはコール・ポーターの「IT'S ALL RIGHT WITH ME」、日本題は「さらわれて突然」とつけられていて、あちらの楽曲は全て本作品用に新たに書き下ろされた日本語詞で歌われていきます。この曲の担当は森雪之丞さん。続いては「夏にしとくれ "SOFTLY AS IN A MORNING SUNRISE"」、この曲は本来「朝日のようにさわやかに」という邦題で知られていて、ミュージカルの巨匠オスカーハマースタイン2世がオペレッタ用に作った作品が後に単独でジャズ/ポピュラー曲として人気を博していったもの。滑らかなオーケストレーションの心地よさを堪能出来る1曲です。熱海の海岸散歩する〜♪で有名な「金色夜叉」、大相撲のラヂオ中継とコラージュして演奏される「通りゃんせ」は、まさに温故知新な世界。こういうのをさらっと歌って、ナオコさん本当に上手いしハマるんですよね。個人的にも大好きなチャップリンの楽曲をベースにした「ライムライトでもう一度 Based on "LIMELIGHT"」で夢見心地にさせられてA面終了。

B面はペギー葉山さんのバージョンでお馴染みの「DOMINO」からスタート。ここでは阿木耀子さんが「堕天使メロディ」として詞を提供、原曲のイメージを生かしながら新たな現代的魅力を曲に付加しています。ラテンの名曲「BESAME MUCHO」に「初恋」とノスタルジックな詞を提供してるのは秋元康さん。続く「のんき節」は大正7年ごろから流行した俗謡で、時事問題にあぁのんきだねぇ〜とつけて社会風刺にも使われていたという楽曲。ナオコさんにこういう曲が合わない訳がない(smile)、街頭で歌って聴衆を陽気にアジテイトしている姿が目に浮かぶようです。ラスト2曲はそれぞれ童謡と流行歌、ジャズと童謡のメドレーで、「ほたる〜宵待草」と「ある日ふっと"IT'S ALL RIGHT WITH ME"〜花いちもんめ」。叙情的な味わいで通じる前者はもちろんながら、スウィンギーなジャズに童謡をミックスさせた後者も不思議なほど違和感がなくて面白い聴きものになっています。

このアルバムを一言で表現すると「粋」。
年代的に合わないところもありますけど、モダンボーイ、モダンガールが闊歩した、西洋文化の上陸を受けてみんなが新鮮な空気を感じながら洒落のめしていた時代に迷い込んだかのような感覚を覚えさせてくれる作品です。

こういうジャズ・オーケストラとの共演だと、やはりせっかくジャズを演るんだったら英語で歌う曲を1曲ぐらい…なんて思いそうですけど、そういう事をやらないところがナオコさんらしいですよね。あくまでスタンスは自身のフィールドである歌謡曲に置いているというか、色んな音楽の要素を自分の中に取り込んで、最大限自分らしく魅力的に聞かせる、こんな事が出来る歌い手さんって、そうそういないと思います。

日本の歌謡史に残ると言っていい隠れた(いやいや隠れる過ぎてる)名盤。これを眠らせておく手は、ないですよね?
ね?

※追記:11月23日、人気番組「相棒シーズン10」にナオコさんが伝説のジャズシンガー役で出演。劇中でガーシュインの「Summertime」とオリジナル曲「When Love Kills You」を披露しました。オリジナル曲の出来がよかった〜。このアルバムを真っ先に思い出させる素敵な歌声、CD化してほしいなぁ。

チャートデータ
アルバム
わかりませんでした。


右は「ライムライトでもう一度 Based on "LIMELIGHT"」
左は音源がないのでその時代の「のんき節」を。

a.jpg
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2011年11月12日

研ナオコ『ディープ』(85年)

Naoko Ken:Deep(85年)

人間は過ちを犯す生き物

…って、自分の事なんですけど。
この『Deep』、ナオコさんの14枚目のオリジナル・アルバムですが、オリジナル作では初めてリアルタイムにCDがリリースされた作品でした。85年あたりってのが、本当にレコードからCDへの転換が急速に進んだ時期でしたよね。『Deep』についてはLPを買うかCDを買うかで迷った記憶がないので、もう基本CDを買う生活に自分もチェンジしていたんだと思います。(バーブラの作品等は発売の早い輸入盤LPを先に買い、発売の遅い国内盤CDを後で手に入れるなんて贅沢なことをしてましたけど…。)

そんな思い出深い『Deep』のはずですが…売り払ったんですね、わたし。

90年代前後っていうのは洋楽のほうにがっつりとはまっていき、大学生から社会人になっていく中でまぁまぁ懐にも余裕が出来てきて、音楽も湯水のように消費していた時代。一番歌謡曲とは遠いところにいた時期の自分にとって、ナオコさんへのロイヤルティはかなり下がっておりました。
今ならそんな事は考えられないけど、持っていても聞かないなら処分しちゃってもいいかな?なんて大きな気の迷いをおこした時が一回だけあって、忘れもしない当時渋谷の東急ハンズの前にあった中古ショップに持ち込んで売り払ってしまったのでした。まさか20年弱後に再び買い戻すことになるなんてその時は思ってなかったよなー、しかもLPで(smile)。
『Deep』のCDはさすがに転換期の作品だけあって出回った数も少なく、吃驚するような値段でもありませんけど現在若干プレミアがついていたりするんですよね。そこまでして買い戻すのもなんなので、今回お手頃な値段のLPがあったのでそちらを入手してみた次第です。

そんな状況下で聞いてたし、売ったぐらいなので当時はそんなに響いてくる作品ではなかったんですけど、今こうして改めて聞いてみると、良いアルバムなんですよね、これがまた。
書き下ろし作品ばかりではないので若干フェイク気味ではあるんですけど、帯に麗々しく名前が並んでいるように曲提供アーティストがまずはゴージャス。ユーミン、吉田拓郎、さだまさし、五輪真弓、細野晴臣、山本達彦等のアーティスト系に、筒美京平、松本隆、後藤次利、森雪之丞、売野雅勇等の売れっ子専業作家という布陣。

A面は山本達彦さんらしい品のよいメロディーが心地よい「悲しいオペラ」、後藤&売野というアイドル提供なみの売れっ子コンビによる作品で、煌びやかで刹那的な歌詞がドラマティックな曲調と相乗して鮮烈なイメージを焼き付けてくる好曲「ヴェネツィアの情事」、70年代のようなわかりやすい拓郎節とはまた違ったテイストながらも、この時期のオリジナルでは屈指の完成度をほこる名曲「六本木レイン」、追い払えない恋心を役に立たない案山子に例えた、じんわりと染みてくる佳曲「案山子」、アルバム『OLIVE』にも収録されていたユーミンの79年のシングル曲のカバーで、ユーミンには珍しいウェットな歌詞がナオコさんにベスト・マッチな「帰愁」というラインナップ。「帰愁」は、個人的には同年の紅白での歌唱も懐かしいところです。

B面は85年の夏に大ヒットした田原俊彦さんとのデュエット曲「夏ざかり ほの字組」からスタート。軽快ながらも意外にアーバンなメロディーを持ったこの曲、トシちゃんの華やか(?)な歌声に寄り添うナオコさんのいい女っぷりが素敵なんですよね。この大人のビターなラブ・ソング集の中にあって、決して浮いた印象にならないのはそのあたりがきちんと作り込まれているからなのかなと(さすが筒美先生)。
ザ・細野晴臣なオリエンタル・チューン(作詞は松本隆さん…お、「天国のキッス」のコンビですね)の「日本人形」、どこかユーモラスな雰囲気もある五輪(真弓)メロディーが見事にはまってる「ジェラシー」、作家として有名な落合恵子さんが作詞を担当したマイナー系の小品「行き暮れて」、最後はこちらもザ・さだまさしなメロディーを、優しさと悲しさをいっぱいに湛えながら歌い上げた「Deja-vu(予知夢)」が、とても爽やかな余韻を感じさせながらアルバムを締めくくっています。

多彩な作家陣の楽曲を、それぞれの味わいをきちんと残しながら、そして自分の色も出しながらで聞かせたナオコさんがスゴくて素敵すぎる1枚。こういう丁度よいアーバン志向の作品って、なかなかないもんですよね。
20年前の自分に、ダメ出しですわ。

チャートデータ
アルバム
わかりませんでした。
シングル
「六本木レイン」:41位
「夏ざかり ほの字組」:5位
「帰愁」:チャート入りなし



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2011年11月07日

研ナオコ『かもめのように』(77年)

Naoko Ken:Kamome No Youni(77年)

そして『かもめのように』、研ナオコさん5枚目のオリジナル・アルバムです。

これは今回手に入れたものではなくて、以前に入手しておりました。片面が中島みゆき作品で構成されていて、ここでしか聞けない楽曲もあるものですから、とりあえず両者のファンとしては買っておかないとという事で数年前に(たまたま中古屋さんで見かけたからですけど)手中にしておった次第です。

A面がみゆきさんでB面が他作家というのは、前作『泣き笑い』と全く同じ構成ですね。
どうせだったら全曲みゆき作品で固めてくれたらよかったのにと思ってしまいますが、当時はみゆきさんにしても新進のシンガーソングライターでしたし、やはりアルバム1枚まかせてしまうのには不安があったとか、自身の活動と並行しての提供作家活動でしたので曲作りに限界があったとか、そんなところなのかなと思います。
そういえばユーミンは郷ひろみさん(作詞のみ)や小林麻美さん(詞曲全部)等他アーティストのアルバムをまるごと手掛けた事ありますけど、みゆきさんはないですよね。アルバムの片面でもナオコさんとちあきなおみさん、後ミニアルバム全曲の工藤静香さんぐらいでしょうか。しかも自身のストックを混ぜたにしても全曲新たにってのはナオコさんの『泣き笑い』と工藤静香さんの『静香』(作詞のみ)ぐらいで、他はカバー曲との混合ですし。反対(?)にみゆきさんのカバー・アルバムっていうのは曲提供したアイドル陣をはじめけっこうあるんですけど、ユーミンはASAP等の企画物を覗いて有名アーティストがカバー曲だけで作った作品ってなかったような(あります?)。ユーミン側が許可しないとか、意外にご本人カラーが強くて挑戦するのが難しいとかあるんですかね?今ならそういう企画も、通りやすい気がしますけど…。

って、閑話休題。

A面みゆきサイドは「はぐれ鳥」「ふられた気分で」「さよならを伝えて」「杏村から」「かってにしやがれ」「かもめはかもめ」というラインナップ。「はぐれ鳥」と「ふられた気分で」はみゆきさんのセルフ・カバーが存在しないという点でも貴重度A、「杏村から」と「かってにしやがれ」はこのアルバムのみで聞ける歌唱曲ですので貴重度Bって感じでしょうか。
詞、メロディーともに初期みゆき作品の魅力(特徴)がよく出ている「はぐれ鳥」、ペーソスのあるアレンジが後のシングル・バージョンよりも味わい深い「ふられた気分で」、ドラマティックな曲展開が裏切られた主人公の心根をそのまま物語っているかのような「さよならを伝えて」、都会で暮らす地方出身者への子守歌とでも言うべき「杏村から」、みゆきさんのオリジナルよりもさらにからっと聞かせる「かってにしやがれ」、そして深すぎる諦観の念に何故かこちらの心まで一緒に浄化されていく気がする名曲「かもめはかもめ」。
過去のみゆきさんのインタビュー記事等を読むと、この時期のナオコさんとはシンクロする部分がかなりあったようで、その重なりあった部分=共鳴する部分の多さというのが、二人のコラボレーションをより強固に、魅力的にしていたのかなと思います。ちょっと企画外の美人で、普段は滅茶苦茶陽気だけど、でも本当はね…というところ、二人似てますもんね。最強コンビの驚くべきケミストリーを堪能できるAサイド、鉄壁完ぺきでございますです。

そしてもってB面サイドは、杉本真人さんの作品集。
杉本さんは小柳ルミ子さんの「お久しぶりね」や「今さらジロー」、渡哲也さん&いしだあゆみさんの「わかれ道」、ちあきなおみさんの「かもめの街」等の作家として知られる方で、提供作家活動と並行して自身もシンガーとして活動、2007年に「すぎもとまさと」名義でリリースした「吾亦紅」が紅白出場をきっかけに大ヒットしたのも記憶に新しいところですね。ナオコさんにもここに収録されている「オヽ神様」「ふられてやるさ」の他に、「夢枕」や「見ないで」等のシングル曲を提供してくれております。
ふられてやるさと自分を捨てた男に精一杯に強がってみせる歌詞(ここまでくるともはや悲喜劇…でも気持ちわかるなぁ)が悲しすぎる名曲「ふられてやるさ」。別離の決意を抱えて疾走する夜汽車の雰囲気をうまくメロディーで表現した「夜行列車」、美空ひばりさんに憧れて芸能界を目指したナオコさんにはその出自に演歌的なスタイル(こぶし)というのも垣間見えますが、そんな演歌歌い的な側面がのぞいた「踊り子」に、日吉ミミさんでも歌いそうなニュー・フォーク・演歌的(?)な味わいの「北風は知らない」、神様にまで救いを求める主人公の心の嵐がダイナミックな曲調に乗って吹き荒れる「オヽ神様」、溢れ出そうになる別れた恋人への思いを、その一歩手前で懸命にこらえている主人公の姿が切ない「ブルース」等、より歌謡曲らしいミクスチャーな世界が楽しめる、A面みゆきサイドにも劣らない魅力を持った楽曲集になっております。

前作『泣き笑い』にはまだ若干マテリアルとなる歌とナオコさん自身のキャラクターに乖離が見られた気がしますが、このアルバムからはそのあたりが完全に一致。ナオコさんの黄金期突入を告げる作品として記憶されるべき名盤だと思います。
これも中島きゆき、「吾亦紅」のすぎもとまさと作詞作曲の!とかって宣伝文句をつければそこそこ需要のある品だと思うんですけどね。何でかなー。

チャートデータ
アルバム
わかりませんでした。
シングル
「オヽ神様」:43位
「ふられてやるさ」:35位
「かもめはかもけ」:7位



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2011年11月02日

研ナオコ『名画座』(84年)

Naoko Ken:Meigaza(84年)

さてさて『名画座』、ナオコさん13枚目のオリジナル・アルバムです。

思いっきりリアル・タイムでしたけど、スルーしてしまったアルバム。
当時シングルは相変わらず買い続けていましたけど、アルバムは買い控えていたような感じ。
理由としては、この前にリリースされた『Again』や『スタンダードに悲しくて』というアルバムが私の中の評価としてはイマイチだったからで、アルバムをどうしても聞きたいという衝動がおきなかったからだと思います。
そのあたりと並行していて聞いていたのが中島みゆきさんだったというのも大きかったでしょうか。比較対象が『臨月』とか『寒水魚』とかでしたし、若いですから間口も小さいし評価も極端に下していたような気がするので、余計にこの2枚に対しては評価が辛かったのかなと。
(この2枚、現在家庭内行方不明になっているので、そのうち発見したら再度聞きこんでみたいと思っとります。)

でもって『名画座』
ん〜これも良いアルバムですねぇ。
A面1曲目の「旅路の果て」。ナオコさんには珍しい感じの派手目のアレンジがされたアップ・テンポの楽曲で、若干のどの調子が悪かったのか70年代のような声の伸び(爆発力というべきか)がイマイチだったりしますけど、充分シングルにも切れそうなキャッチーさが魅力的。派手さの要因=ブラス・アレンジとしてトランペット奏者であり、キャンディーズのバックバンドを前身としたロック・バンドスペクトラムのメンバーでもあった新田一郎さん名前が特別にクレジットされています。
2〜4曲目にはナオコさん中期の代表曲と言っていい「ボサノバ」を提供した福島邦子の作品が並んでいて、「旅路の果て」と対になるような80年代仕様のアップ・ナンバー「NO NO BOY」、オールドタイミーな「ロマネスク」に、ほとんどテクノ・ポップ(ってアレンジ船山基紀さんだし…)の「東京美人」とそれぞれ毛色の異なった楽曲を提供。福島さん自身もシンガーソングライターとして活動されていてアルバムも9枚ほどリリースされてるんですね。「ボサノバ」も元は福島さんのセカンド・アルバムに収録されていた楽曲で、『恋愛論』を聞いた際、カバー・アルバムの中になんで1曲だけオリジナルが混ざってるんだろうととちょっと違和感あったんですけど、カバーであったなら納得です。ちょっと他の楽曲と知名度の差がありすぎたんですね。
A面ラストには『スタンダードに悲しくて』からリミックスを施してシングル・カットされた来生姉弟の「夜に蒼ざめて」がそのシングル・バージョンで再収録されています。

B面は「泣かせて」と「名画座」の2曲のシングル曲からスタート。
小椋佳さんの「泣かせて」は、正直あの頃あんまり好きな曲じゃありませんでした。当時はバラードにしても「見ないで」とか「ふられてやるさ」なんかのもっと情感過多な楽曲のほうが好きだったので、この曲の静かに静かに涙を流すような感じ、泣かせてと言ってるわりにはどこか乾いた印象のある曲の感じが好みじゃなかったんですよね。最近になってようやくこの曲の良さが分かるというか染みるようになってきた私でございます。
アルバム・タイトルにもなっている「名画座」は佐藤隆さん作曲の作品。佐藤さんと言えば高橋真梨子さんの「桃色吐息」や中森明菜さんの「アルマージ」等、ヨーロッパ調というか異国情緒を漂わせた作風で知られるソングライターでいらしゃいますので、この曲でもそのあたりの感覚が存分に発揮され、歌詞のとおりフランス映画のワン・シーンを思わせるようなしっとりと洒落た佳曲になっています。
で、ここからの3曲が、個人的には本盤のハイライト。
岡田冨美子/伊藤銀次コンビによる「蒼い秋」、竜真知子/西島三恵子コンビによる「河は流れる」、稲葉喜美子さんによる「Bye Bye Bye」という、ミディアム・バラードの3連打なんですけど、枯れ葉が敷き詰められた銀杏並木の下を一人物思い耽りながら歩いている時のBGMに最高…みたいな、ノスタルジックでそこはかと情緒的な、聞くほどに味わいが増してくるタイプのするめ曲のそろい踏みです。A面のアグレッシブに攻めたナオコさんもいいですが、やはりこういう物悲しさを湛えたバラードの味わいは格別なものがありますよね。
3曲だけループしてその世界に浸っていたいと思わせられるシーケンスでございました。

そんな訳で、当時のリリース・タイミングも秋でしたが、今の季節に聴くのにぴったりな名盤。
気軽にお聞きいただけないのが、ホント残念です。

チャートデータ
わかりませんでした。
シングル
「泣かせて」:41位
「夜の蒼ざめて」:チャート入りなし
「名画座」:チャート入りなし



「河は流れる」→http://youtu.be/IbqkQ3sRCPw いい曲です。

naoko meigaza.jpgnaoko nakasete.jpgnaoko yoruni.jpg
posted by Suzu at 23:00| Comment(9) | TrackBack(0) | 研ナオコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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