朝電車の中でツイッターを見るのが習慣的になっちゃてるのですけど、今朝いつものようにツイートを見始めたら「追悼ドナ・サマー」の文字。何それ?と思ってどんどん画面をスクロールさせれば次々と出てくるドナへの追悼コメント。ホイットニーを失って3ヵ月、またしてもこんな予想外で悲しすぎる訃報に接するなんて思いもしませんでした。
私がドナを最初に聴いたのは80年代の初めごろ、バーブラ・ストライサンドのアルバム『ウェット』に収録されたデュエット曲「ノー・モア・ティアーズ(イナフ・イズ・イナフ)」によってでした。
当時はまだバーブラ以外の洋楽アーティストは門外漢で、ドナが何者かというのもよく知らなかったように思いますが、その緊迫感に溢れ、お互いのプライドをかけた火花飛び散るデュエットには非常に興奮させられました。仲間内的なデュエットでも、商業性が優先されたようなただの異色の組み合わせというのでもない、慣れ合い皆無の真剣勝負。未だに、これ以上のガチンコ勝負が聴けるデュエット作品というのを私は聞いたことがありませんです。
こうして一応ドナとの邂逅はなされたのですが、アナログ時代にドナのオリジナル作品に手を出すことはありませんでした。本格的に聞き始めたのはCD時代以降、その長時間収録という特性を活かしてカサブランカ時代の2枚組アルバムが続々と1枚のディスクに収める形でCD化されてから。今見るとわざわざブックレットの前面に「Over 70Minuts Music」と謳われているのも時代を感じさせますね。
ここで初めて聴いたのがドナの(元は)2枚組LPのベスト盤『愛の軌跡:オン・ザ・レイディオ〜グレイテスト・ヒッツ』。発売当時新曲だった「オン・ザ・レイディオ」と先のバーブラとのデュエット「ノー・モア・ティアーズ」に挟まれたヒット曲はすべてディスコ仕様らしくノン・ストップのメドレーになっていて、一聴してその楽しさの虜に。購入当時はしばらくこればっかり聴いていたように思います。
リアル・タイムでの最初の作品と言えるのは87年にリリースされた『オール・システムズ・ゴー』。ブレンダ・ラッセル作のファンタジックなリード曲「ディナー・ウィズ・ガーシュイン」を始め、お得意のポップ・ロック系からムーディーなバラードまでバラエティ豊かな内容でしたがチャート・アクション的にはいまひとつ。本格的に再びシーンを沸かせたのは89年、当時世界的にブレイク中だったプロデュース・チーム、ストック・エイトキン・ウォーターマンのPWLと組んだアルバム『アナザー・プレイス・アンド・タイム』とシングルで大ヒットした「ディス・タイム・アイ・ノウ・イッツ・フォー・リアル」でした。このヒット以降は若干マイ・ペースな活動になっていきましたけど、それでもその歌声の輝きは衰える事がなく、昨年開催されたデビッド・フォスターのヒットマン・リターンズのコンサートでも堂々のトリを飾っての熱唱を披露。
新作のレコーディングなんて話もちらほら聞こえてきた矢先の訃報でございました。
グラミー賞5回(しかもR&B、ロック、ダンス、ゴスペルというジャンルレスぶり)、ポップで4曲、R&Bで2曲、クラブ・プレイ・チャートでは何と13曲のNo.1ヒットを放ち、普通に考えても破格の成功を収めたアーティストの一人でありますが、「ディスコの女王」という称号が何故かレッテルのように付きまとい、例えばR&B/ソウルの名盤ガイド等では完全に蚊帳の外にされるか、取り上げられても揶揄まじりの記述ばかりでおよそまともに彼女を論じているものには出会ったことがありません。…というのが一昔前の状況でしたが、ここ最近は以前のようなブラック系アーティストに対する極端なディープ・ソウル偏重主義というのもだいぶ意識改革されつつあるので、クラブ系ディーヴァの元祖として多大なリスペクトを受け始めていたのが現状。今回の訃報に際しても、多くのアーティストから彼女の死を惜しむ声が寄せられていたのが印象的でした。
吐息まじりのセクシー・シンガーとして頭角を現したドナでしたが、やはり彼女の魅力はそのレンジの広い野性的でダイナミックな歌声。
「マッカーサー・パーク」「ホット・スタッフ」「バッド・ガールズ」「オン・ザ・レイディオ」「情熱物語」「イッツ・フォー・リアル」等のシングル群は、そんなドナの魅力を端的に表した楽曲でした。
今さら彼女の作品を聴いたことがないなんて方はいらっしゃらないでしょうけど、私なりのお薦め作品をいくつかあげさせていただこうと思います。
初期カサブランカ時代の作品ではバラエティに富んだ内容が楽しい『アイ・リメンバー・イエスタデイ』、エンターテイナーとしての魅力と実力が存分に味わえる『ライブ・アンド・モア』、大ヒット曲を連発したゴージャスな『華麗なる誘惑』。レーベルを移籍した80年代以降では、クインシー・ジョーンズをプロデューサーに迎えた高品質なブラック・コンテンポラリー作品『恋の魔法使い』、PWLとのタッグで軽やかに時代を飛び越えて見せた『アナザー・プレイス・アンド・タイム』、ヴォーカリストとしての実力を遺憾なく発揮した『クリスマス・スピリット』等々。
またシングル・ヒットの多いドナですのでベスト盤も必需品な訳ですが、オリジナル・テイストで楽しむなら前述のノン・ストップ・メドレーが楽しめる『愛の軌跡:オン・ザ・レイディオ〜グレイテスト・ヒッツ』。大容量のベストならそれぞれ2枚組の『アンソロジー』か『ゴールド』がお薦めでございます。
敬虔なクリスチャンとしても知られるドナでしたので、今は神様の身許に招かれ、安らかな眠りについていることでしょう。素敵な作品をたくさん残してくれた事にただただ感謝です。有難う、ドナ。
ご冥福を深くお祈り申し上げます。
「Macarthur Park」→ http://youtu.be/gcC3VT67HfI
「This Time I Know It's For Real」→ http://youtu.be/DCtDAAPO-j4
「ノー・モア・ティアーズ」にはシングル・バージョンやダンス・ミックス等いくつかのバージョンがありますが、『ウェット』に収録されているバージョンが一番二人のヴォーカル対決に焦点を当てた作りでお気に入りです。
その昔HP時代に最初にドナについて書いた記事です。
記事というより、シングル・ジャケット等多数載せてますのでそちらをお楽しみ下さい→http://www1.ocn.ne.jp/~suzuenta/donna.htm

